HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
まったく。なんだこいつらは。
バイオのハンターをデフォルメしたような外見をした、なんというか戯画的なモンスターを、俺は見下ろした。
手ごたえ的には下級悪魔の上といったところか。戦闘職でなければ有利に戦うのは困難だろう。
「アルサム、今回の件、誰と誰に話した?」
「そもそも公募したのだ。ある程度の情報は上級悪魔のものならば誰もが把握することができる。場所も調べようと思えば簡単にできるだろう」
「だったらもっと警備を厳重にしてほしかったな」
確かに俺とお前がいれば並大抵の敵は返り討ちにできるだろうが、貴族の子息を相当数集めてるんだぞ?
万が一にも神クラスが襲撃して殺されれば、責任問題でとんでもないことになるはずなんだが。
「これでも結界は多重に張っていたのだ。感知に特化しているから、侵入されればすぐに気づくはずなのだがな」
「つまり、結界を張った連中の中に内通者がいたということか」
誰だか知らんがあとで覚えてろ。
一族郎党とは言わんが、獄中で余生を過ごすことも覚悟しておくといい。
「……俺は眷属を今回連れてきてないんだ。そっちは?」
「シェンたちは別の棟にいる。すぐに呼び戻そう」
今回、上級悪魔の鍛えなおしが目的だということもあって俺たちは眷属悪魔を別の場所のおいてある。
俺の場合はそれを前もって知っていたので、全員連れて来なかった。
……さすがに油断しすぎたか。一応グランソードの舎弟を数百人ほど別の場所に待機させてあるんだがな。
「一応少し離れたところに、緊急用の軍勢を用意している。彼らを呼ぶか」
「それは俺がやる。お前は貴族の子息を避難させろ。こういう時にかっこつけておけば、心象がよくなるからな」
こいつには今回の件で嫌われ役をやってもらうわけにはいかないんだよ。
ここは俺がしっかりと行動しておかないとな。
「わかった。すまんな、面倒ごとを押し付ける」
「恩返ししたいなら早く行け。嫌われ役は俺が引き受ける」
「礼を言うぞ!!」
アルサムが駆け出すのを見送りながら、俺は即座に外部の部隊に連絡を取る。
「アルサム・カークリノラース・グラシャラボラス様の代理のものだ! こちらに敵襲があった、すぐに来てくれ!!」
魔方陣を展開して簡潔に内容を伝えるが、しかしすぐには返信がやってこない。
なんだ? いったい何が―
『―こ、こちら緊急即応部隊!! 申し訳ありません、少し時間がかかります!!』
「―どうした? これが躓くとアルサム様の未来に陰りが生まれるのはわかっているだろう?」
ああ、アルサムの用意した連中に限って、「実は寝てましたすぐに起きれませーん」なんてことはあり得ない。
つまり、逆説的に考えて向こうも襲撃を受けているということか―
『……沿岸警備隊に職務質問を受けております。どうも人間世界での活動のための資料提出に不備があったみたいで』
「何やってんだあの馬鹿!」
どういううかつな失敗をしてるんだよ!!
おい、沿岸警備隊って悪魔の群れすら足止めできるのか!?
公権力すごいなぁ!!
「それで、今のところどうだね?」
大統領は、ホワイトハウスの職務室から夜空を見上げて秘書に質問する。
「ご安心ください。グラシャラボラスが提出した許可を求める資料ですが、不幸な行き違いで受理されなかったようです。沿岸警備隊が現在、護衛用の武装隊の船を臨検中ですので、三十分はかかると思われます」
わざとらしい声で返ってきた秘書官の答えに、大統領は満足げな顔を浮かべた。
まあ、今回の襲撃犯が成功する可能性は低いだろう。
今回の目的はあくまで実戦データの収集だ。これで倒せると思うほど、自分たちも耄碌していない。
正真正銘自殺といってもいい命令に、部隊の面々はよく頷いてくれたといっていい。彼らの犠牲を無駄にするわけにはいかない。
人類が正しい意味で地球の未来をかじ取りする存在となるためには、悪魔たちと真正面から渡り合う力を手にする必要がある。
これ以上、腐敗した天使たちに頭を押さえられる状況など御免なのだ。
人類の未来は人類が決める。これ以上、化け物共の好きにはさせない。
いずれハーデスとも配下ではなく同等の関係に至らねばなるまい。しかし、先ずはあまりにも奇天烈な三大勢力だ。
「変質者とテロリストを英雄としてあがめるほど、我々は非常識ではないぞ、三大勢力……っ!」
これはその決別のための第一歩だと知るがいい。
そう言外につげ、大統領は報告を待つまで眠らないことを決めた。
「舐めるな雑魚どもがぁ!」
その場にいる上級悪魔は、数十人を超える。
そんな彼らを相手にするには、目の前の敵はあまりにも弱かった。
上級悪魔の山肌すら削り取る一撃の前に、襲い掛かる怪物たちは一瞬で吹き飛ばされる。
吹き飛ばされる……のだが。
「ええい、まだ終わらんのか!?」
何度撃破しても、いまだに数が減る気配がない。
同時に出てくる数は百体もあれば多い方なのだが、倒しても少しするとすぐに現れるのだ。
しかも広範囲から襲い掛かってくるため、一回の攻撃で吹き飛ばせるのは、十体にも届かない。
しかもある程度距離を取りながら、弾幕を張ってチクチク削っていく戦法のせいで、ストレスも大幅にたまっていた。
だが、これならこちらも負けることはない。
そう確信しているからこそ、イラついてはいるがしかし余裕はあった。
そしてそうやって反撃をしようとしたその瞬間―
地表で、爆発が起きた。
「ぬぉぉお!?」
「な、なんだ!?」
爆発が連続して起きるなか、上級悪魔たちは混乱する。
それがあまりにも致命的な隙だった。
今放たれたのは、80mmの迫撃砲だった。
必然的に簡単な火力では、上級悪魔を倒せるようなものではない。無視するという選択肢もしっかりと会ったのだ。
だが、上級悪魔たちは不意に起きたせいで明確に混乱状態に突入した。
それが、あまりにも致命的な隙だった。
「いまだ! 一斉射撃!!」
その瞬間を狙って、森の片隅から姿を現す人影があった。
総数三十名弱。歩兵一個小隊ほどの部隊が、一斉に銃らしきものを構えて、上級悪魔の一人に狙いを定める。
放たれる弾丸は物質ではなくエネルギーで構成されたもの。まるで神器を思わせる其れは、一発一発の火力が中級クラスにも匹敵していた。
距離は数十メートル。正確に狙いをつけている状況下。そして相手は棒立ち。
間違いなく、大半が直撃する。
いかに中級クラスに届くレベルとはいえ、その火力は先程の迫撃砲よりはるかに強力。まず間違いなく同時にいくつも当たれば上級悪魔といえど若手ならば命に係わる。
その瞬間、その上級悪魔は死の気配というものを自覚した。
完膚なきまでの不意打ちに、彼は動きを完全に止めてしまった。
そしてその瞬間に産まれるのは、自分がこんな簡単に死ぬ程度の存在だという絶望。
上級悪魔でありながら、たかが雑魚の群れに襲われて死ぬ程度の実力しかないという事実にこそ、彼は絶望していた。
いやだ。
嫌だ。
死にたくない。
こんな死に方は嫌だ。
こんな、雑魚の群れにやられるようなあっけない最期を迎えてしまえば、一族のものに死後嘲笑されるのは目に見えている。
そんなのは―
「嫌だぁあああああああああ!?」
「なら防御ぐらいしないか戯けが!!」
その瞬間、放たれた攻撃がすべて弾き飛ばされた。
これでジャブですらないとか人類恐るべし。
兵器のメリットの一つは資材さえあれば量産できること。それを最大限に生かした戦法を取りました。
さらに現代兵器も相手の虚を突くことはできる。とどめにウツセミを陽動とした歩兵部隊の一斉射撃。アルサムがいなければ1人確実に仕留められました。
さらに地味なファインプレーである資料関係のトラブル。これに関しては兵夜たちも人類が今牙をむく余裕があるとは思ってないこともあり、不幸な行き違いで終わる予定です。ちょっと思考が異形側によってますね、兵夜も。