HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
『今回の試合、冥界の未来を担う若者達の全力を賭けたぶつかり合いでしたね。実に良い試合だったと思います』
『ええ。転生悪魔の期待の星である兵藤一誠選手と、純血悪魔の新たな可能性であるアルサム・カークリノラース・グラシャラボラス選手。彼らがまだ成長途上でありながら、半端な神クラスなら返り討ちにできる力を持っているというのは、悪魔にまだ可能性があるということの証明でしょう……』
試合のテレビ中継が終わり、スタジオで感想が話されている中、俺はワインを一口飲んでみた。
……うん。酒は気分が良い時に飲むと味わい深い。
「良い酒が飲める良い試合だった。まあ、俺達があんなのと戦う可能性があるという視点で見るとちょっとぞっとするが」
「いやぁ。俺様は戦わねえから残念だけどな」
そうだねグランソード。できれば今からでもリザーブ入ってくれないか?
とはいえ、かなりハイレベルな激戦だった。
王が悪魔同士の試合でいうのならば、これほどのものは今のところなかったはずだ。少なくとも俺は見ていない。
乳乳帝のイッセーと、魔王剣のアルサム。この二人の戦いは、ある意味で若手悪魔の頂上決戦だろう。
こと、アルサムのもう一つの覇剣と新たな覇剣の可能性を見ることができたのは収穫だった。
さらに魔導士の能力も脅威度を修正するべきだろう。
フェニックスの不死を事実上無効化するあれは、シルシのいる俺たちにとっても脅威的だ。ある意味俺たちの生命線ともいえる索敵要員をあっさり無力化される可能性があった。先にアルサムと当たっていれば、同じ戦法でやられていただろう。
反面、この戦法はヴィヴィ達のいる俺達も使えるのも効果的だ。イッセーやライザーとやり合う時は、ぜひヴィヴィ達に活躍してもらおう。
「俺としてはイッセーが負けたのはちょっと残念だったけど、ヴィヴィ達からしてみればリオちゃんやコロナちゃんが初参加の試合で勝てたのは嬉しい事かな?」
俺がそう言うと、ヴィヴィもハイディも割と嬉しそうな表情を浮かべて頷いた。
「はい! 二人とも頑張ってたし、やっぱり勝ったのは嬉しいです」
「親友が負けられた兵夜さんには悪いですが、お二人の初戦が勝利で本当に良かったです」
うんうん。ま、そうだよなぁ。
「かまわないって。第一俺たちもぶつかったら強敵なんだし。厄介な優勝候補が躓いたのは好都合だしな?」
「アンタ、やっぱり黒いよ」
「すいません。ごめんね兄さんが黒くて」
ノーヴェと須澄には少し引かれたが、もうこの際性分だから諦めてもらおう。
とはいえ、今回のレーティングゲームはいろんな意味で俺達の今後にいい影響を与えるだろう。
イッセーには悪いが、アルサムがイッセーに勝利したことは、純血悪魔の評価向上に繋がるかもしれない。
転生悪魔の中でも、ポテンシャルだけならおそらくトップであろう兵藤一誠。天龍をその身に宿すアイツを倒すのは、純血悪魔では困難だ。
もとより龍種の中でも準最強に位置する天龍だ。しかもイッセーの場合はそれを昇華させている節がある。魔王すら殺すといわれる天龍を昇華させたものを倒せる純血悪魔など、それこそ超越者だけだろう。
だが、それをアルサムは乗り越えた。
同年代の純血悪魔でアイツに対抗できるのはサイラオーグ・バアルぐらいだ。
しかし、サイラオーグはいろんな意味で参考にならない。とてもまともな悪魔のやり方とは言えないだろう。
だから、本当の意味で悪魔であるアルサムがイッセーを下したのは、悪魔の意識改革にもなる。
そのアルサムが自分が強くなったやり方なら、多くの悪魔がそれを参考にしようと思うだろう。
あとはアルサムが上手く手加減して努力の価値を教えられるかどうかだ。まあ、前回の失敗で多少は手加減の必要性を覚えただろうし行けるだろう。今度は俺も最初の段階から調整させてもらう。
「でも、どっちもシャレにならない戦力よね? 戦った時、勝てるのかしら?」
「アップちゃん。義理のお兄さんにドS発揮するのは酷いと思うよっ」
アップがニヤニヤしながらそんなことを言ってきて、トマリにたしなめられる。
ふむ、確かにあいつら全員脅威だが……。
「勝ち目はあるだろ」
「あら、なんでよ?」
そのアップからの疑問に、俺は何を言ってるんだとすら思う。
おいおい、確かにイッセーは強敵だ。それを下したアルサムも強敵だ。
だが……。
「俺は兵藤一誠に並び立つ者。その為に血のにじむような努力をしてきたし、様々なものを取り込んできた。コネクション形成もその一環だ」
そう、俺個人にできることなど限りがある。
人間には限界がある。少なくとも、俺はそんなものを突破できるようなイレギュラーなつもりはない。
自分の分はわきまえている。そのうえで、それではどうしようもないものをどうにかするためにできる限りのことはやってきた。
その答えこそが後ろ盾。自らを売り込み、人材を斡旋し、そしてその恩恵により味方を得る。
そして、それに関していえば俺は中々な物だ。
足りないものはよそから持ってくる。魔術師の基本に則ったこの手腕。今でも忘れたことはない。
そう、つまりは―
「お前らがいる。なら、太刀打ちできない道理はないだろうさ」
「……流石、須澄のお兄さんね。須澄がいなければ惚れてたかも」
……あれぇ? 俺、別に口説いてないよ!?
「し、姉妹丼ならぬ兄弟丼!? はわわっ! アップちゃん進んで……痛い痛い痛いからかってないです本気ですぅっ!!」
「「もっと酷い!!」」
トマリがいらんこと言って両腕をひねりあげられているが、まあ吸血鬼だし治るだろうから放置。
っていうか、NTR耐性のない俺が、なぜ人の女をNTRしようというのだ。失礼千万極まりないからもっとやってくれ。
あと、ヴィヴィとハイディにNTRはまだ早いからその分もお願いします。
「兄弟丼って、親子丼の親戚ですか? 親子丼はママが作ってくれたことありますけど」
「……あと5,6年ぐらいしてから教えてやるよ」
グランソード。すまん。
「……なあ、私はこいつらと組んでていいのか不安になってきたんだけど」
「あ、兄上はその辺の線引きはきちんとできますのよ? 自分のことになるととんといい加減ですけど」
俺の将来の義妹……いや義姉がすまん、ノーヴェ。あと雪侶は俺の関係者なんだから他人事じゃないぞ?
ま、まあ気を取り直してだ。
「ま、まだ晩飯も残ってるし、ここは雑談レベルでイッセーやアルサムのチームと当たったらどうするか考えよう。とりあえずイッセーは俺と須澄と暁の三人がかりで潰すということで」
「徹底的ね。男衆全員総出とかやりすぎじゃない?」
シルシが苦笑するが、しかしそうもいかない。
「乳乳帝となったイッセーの戦闘能力は、マツダの非じゃない。真面目な話、グレモリー眷属と禍の団の争いは、イッセーがエロ絡めて逆転してきたようなものだからな」
まったくもってそれでも安心できない。
なにせ、乳乳帝状態のあの砲撃に対抗するには、暁の眷獣ですらなお不安視するレベルだ。
天龍を乳で昇華させたあれは、単純な一撃の破壊力ならこのアザゼル杯に参加しているものの中でも正真正銘のトップクラスだ。
っていうか、単独戦力としては低めに見積もってもトップ10を狙えるだろう。ぶっちゃけ俺達のチームで一対一で対抗できる奴がいない。
俺ならカウンター狙いで行動をほぼ読み切れるが、基礎スペックが違いすぎるから俺を相手にしないという戦法を取られたらやばいからな。
暁が眷獣を全力で使えば打ち合いでも渡り合えるが、暁には戦闘経験と技量が足りてない。
神器の性能ならば須澄も大概だが、こちらも戦闘技術などで後れを取られているため、苦戦だ。
はっきり言って三人がかりで挑んでも、機動力で距離を取られたら抜けられる可能性がある。
隠し玉のスケベ技を使われたら、間違いなく初回の場合喰らってしまうのだ。
「……やはり、機動力特化の新兵器が必要か。ノーヴェ、魔導士関係で何かないか?」
うーん。なんとしてもイッセーを取り押さえる必要があるんだけどなぁ。
仕方がない。こうなればマジで瞬動術を習得する為の練習をするべきだな。
さて、まあ次は乳乳帝チームのもう一つの要であるアーシアちゃん対策としてデバイスの練習を―
その瞬間、爆発音が響き渡った。
「「「「「「「「「「……っ」」」」」」」」」」
エイエヌ事変という修羅場を潜っているだけあって、その辺に関しては全員まとめて速攻で反応できた。
全員がすぐに戦闘態勢を取る中、俺とシルシはさらに行動を開始。
「……ビーチの方よ」
「わかった。……警備隊、すぐに部隊をいくつかビーチに送れ。同時に湖周辺に使い魔を放って敵影を確認しろ。それとシェルターを開放して、市民を避難させる準備を急げ!」
シルシの索敵で即座に爆発の位置を把握しながら、俺達はすぐに動き始める。
「いいか、市街警備隊は市民の安全を最優先に! 同時に俺達が出たら城に結界を張って事態が解決するか増援が来るまで意地でも開けるな!!」
チッ! この情勢で比較的小規模とはいえ街にテロ活動をするとか、いったいどこの馬鹿野郎だ?
とにかく、早急に事態を解決する必要があるな。
防衛部隊はゼクラム・バアルから用意してもらった大王派の最上級悪魔。加えて研究施設はアーチャーによって工房通り越して神殿となっている。
さらに技術奪取を狙ったテロ組織に対抗する為に、シェルターも完備。そして前にも言ったが三層構造の城壁もある為陸戦勢力では突入困難。
有力貴族の城下町に匹敵する防衛網を持つこのメーデイアに仕掛けてきた阿呆には、高い罰金を支払わせてやる!!
と、思ったのだが、この戦いが、のちに起こる五の動乱すら超える大規模戦乱の前哨戦の一つであることを知るのは、まだ先の話である。