HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
廊下を足早に進みながら、俺は必要な手配を即座に終える。
周囲の街や施設、そしてグレモリー本家に救援要請は必要不可欠。
同時に魔術師を奪取されないようにするための警戒網の増大。
加えて民間人の被害を最小限に抑えることも必要だ。
やることが多いが、しかしやるしかない。
さて、それではまず真っ先にすることがある。
「ノーヴェ、悪いがヴィヴィとハイディを連れて避難誘導の手伝いを頼みたい」
「大将、いいのか?」
真っ先にグランソードがそう言うが、しかしこれは当然の行動だ。
まあ、普通なら真っ先に避難させるか安全な場所にいてもらうのが筋なんだが……。
「どうせ、駄目といっても君たち手伝いたがるだろう? だったら最初からお願いしておくさ」
「……一応言っとくけどな、実戦はできるだけ避けろよ?」
「「は、はい」」
二人係りで言い含められて、ヴィヴィとハイディはかしこまる。
視線が合って、俺とノーヴェは苦笑した。
この子たちいい子なんだけど、だからこそこういう時気にしちゃいそうだからなぁ。
完全に隔離するとモヤモヤするだろうし、何よりこっちも緊急事態。戦力として活用できる人材は実に助かる。
敵影すら確認できていないうえ、これが陽動である可能性もある以上、避難誘導は戦闘能力の低い下級の兵士が行うことになるだろう。
ヴィヴィ達なら、万が一強敵が出てきても時間稼ぎはできる。積極的な危険に巻き込むわけでもないから体裁も整えられる。加えて、何かしているという意識が暴走を産ませにくい。
そういうわけで、お手伝いしてもらうことにする。
「……ノーヴェ。いざという時は無理やりでも止めろよ?」
「わかってるって。保護者として当然のことをするさ」
よし、こっちはこれでいい。
さて次は―
「須澄たちは悪いが手薄な方向の警戒を頼んでしていいか? 陽動の可能性があるから、本命の警戒をしたい」
「うん、わかってるよ兄さん」
「できれば雑魚の方が来てほしいわね。……最近弱い者いじめしてなくて寝つきが悪いのよ」
「まっかせてお義兄さん! いや、
さすがは腐敗していた当時のフォード連盟で聖杯戦争にかかわった猛者。平然としてるな。
まあ、これに関しても念のための警戒。
一番危険であることに関しては無論のこと―
「……そして我が眷属! 俺たちはすぐにビーチに向かう!!」
―領主とその眷属の仕事だ。
「我が主リアス・グレモリーより賜りし領地を荒らす狼藉物に、この地の観光代が高いことを教えてやれ!」
「「「イエス、マイロード!!」」」
さて、それじゃあそろそろ本気で行くか。
覚悟してもらおうか、狼藉者どもが!!
そして、俺たちはビーチに到着する。
すでに爆発はさらに追加で発生しているらしく、警備の兵士がいつでも結界を展開できるように準備しながら警戒していた。
「兵夜様!!」
俺の姿に気づいた兵士たちは、略式の敬礼を即座の行い、しかし視線は爆発の起きた方向に向けている。
さすがはゼクラム・バアルが直接派遣した兵士だ。よく訓練されている。
「状況を報告しろ!! 爆発の正体は把握できたか!!」
「はっ!! 詳細はまだ不明ですが、魔力などの反応がないことから、爆薬によるものと思われます!!」
爆薬だと? この冥界で?
確かに状況によっては爆薬が冥界で使用されることもあるが、しかし攻撃に爆薬を使うだと?
戦闘職ならば相当の使い手だっているだろうし、それなのに爆薬を使うとはどういうことだ?
とはいえ、事前に設置されたものではないというのなら手段もだいぶ想定できる。
つまりは、ロケットもしくはミサイル。または実弾砲。
……フォード連盟旧政府か、クージョー連盟関係者の報復か何かか?
どっちにしてもフォンフが関わっているから、絶霧の量産型があるから転移そのものは不可能ではないだろう。
とはいえ、実弾兵器をこんなところで使ってくるとはどういうことだ?
「……どう思う、お前ら?」
「旧式の兵器の処分を兼ねた嫌がらせとかではありませんの?」
「いや、それならリサイクルするだろフィフスなら」
「でも、フォンフはフィフスの後継であってそのものではないのでしょう?」
俺たちは顔を見合わせて相談するが、しかしすぐにはわからない。
まあ、実弾兵器は信頼性があるからフォンフなら用意してもおかしくないが、いっそのこと核弾頭でも使った方が楽じゃねえか?
と、思った瞬間空気を切り裂く音が聞こえてきた。
あ、これ実弾砲だ。
「総員障壁を張れぇえええええ!!!」
Other Side
「兄さん、兄さん大丈夫かな?」
どんどん間隔が短くなってきた爆発音に、須澄はちょっと不安になって後ろ振り返った。
あのエイエヌ事変を生き残った猛者の一人である兵夜なら大丈夫だとは思うが、しかし敵の正体も不明なのである。
そもそもこのメーデイアが兵夜の領地なのは、異形社会の出身なら大半のものが知っているところだ。そして冥界は異形の世界。当然異形の存在達しか存在しない。
つまり、この襲撃は兵夜を敵に回すことを前提として行われているのだ。
仮にも最上級に手が届いた転生悪魔。必然的に、相手をするというのなら、相当の戦力を用意しているはずである。
グランソードがいる以上、生半可な相手に後れを取るとは思わないが、少し心配にもなってしまう。
「まあ大丈夫でしょう。仮にもあのエイエヌ様の平行存在よ? 不利だと判断したらすぐにこっちに救援を求めてくるでしょ」
アップはそういうが、こういうのは理屈でないから困ったものである。
そんなこともあり少し落ち着いていない須澄に、アップはすこし寄り添った。
「……アップ?」
「大丈夫よ、須澄」
そういいながら、アップは須澄の手を取る。
「あなたと一緒に、エイエヌ様を倒した彼がそう簡単にやられるわけがないでしょう? いざとなったら、私がソニックムーブを使ってすぐに助けに行ってあげるわよ」
そう告げ、そしてアップは微笑んだ。
「安心しなさい。私がどれだけあなたを追い詰めたと思ってるのよ。少しは能力を信用してよね?」
「……うん。ありがとう」
少しだけだが、確かに須澄はほっとする。
それでもどうしても取れない不安を取り除くため、須澄はアップにすり寄った。
「~~~っ!?」
「ちょっとだけ、こうしてもいいかな?」
「………うん。かまわないわよ」
そんな暖かい光景を、後ろからトマリは見ていた。
……だらだらと鼻血を垂れ流しながら。
一言言おう。台無しである。
「はぁはぁ……。うう、二人とも初々しくて可愛いよぅ。今すぐいって抱きしめたいけど、もうちょっとあの光景を見続けたいようぅっ!?」
「なにやってんの?」
視線を感じて慌てて振り返れば、ノーヴェがものすごい半目でトマリに視線を向けていた。
「あのさあ。ヴィヴィオ達の情操教育に悪いから、そういうのやめてくれない?」
「ご、ごめんごめん! ちょっと我を失ってたよ!!」
それもそうだと思い、慌ててトマリは鼻血をぬぐった。
確かに、今の光景は子供の情操教育に悪いだろう。それはわかる。
わかるのだが。
「あんな光景、もう二度と見れないと思ってたんだもん。ちょっとぐらいテンション上げてもいいじゃないっ」
「……ああ~」
そこを言われると返す言葉もない。
なにせ、エイエヌによって今まで全く見てもいなかった自分の悪性を自覚してしまったアップははっちゃけてしまった。
当時の現政権を支配していたエイエヌの使いっパシリとして、聖杯戦争における執行者として動きながら、イレギュラーなどを弱い者いじめして楽しみながら行動していた。
だから、須澄はもう終わらせるしかないと思っていたし、実際そうしたのだ。
それが何の奇跡か神器が内心の苦しみに応えていたことで三人一緒にいることができたが、しかしそれは本当に多くの偶然があったからだ。
殺し合って終わるしかないと思っていた二人が和解できたことに、年長者であるトマリは感動するほかない。
それは、ノーヴェも分かっている。
わかっているが……。
「だったら鼻血ながすなよ」
「だって、だって萌えるんだもんっ!!」
どうも神喰いの神魔チームのメンバーは、癖が強すぎるのが多すぎる。
リーダーの宮白兵夜は言うに及ばず、その妹の雪侶もかなり濃い。
トマリはもちろん異常性癖一歩手前のアップも冷静に考えると問題だし、愛が重くてヤンデレ気味の須澄にいたっては、兵夜の血のつながらない年上の実弟というわけのわからない関係性だ。
ああ、そういえばアインハルトもいろいろと抱え込んで妙な方向に突っ走っていた。自分も一時期はかなりぐれていた……というレベルではないし、人に歴史ありというべきか。
まあ、奇跡的にも善良だったり一応は常識をわきまえているかのどちらかなのは不幸中の幸いだが、もっと自分が子供二人と彼等の間に立った方がいいかもしれない。
などと保護者じみたことを考えていると、ヴィヴィオとアインハルトが走ってきていた。
「あ、ノーヴェ! こっちは避難誘導終わったよ!!」
「もうこの周辺に人はいないはずです」
「よし! それじゃあ私達も避難するぞ!! これ以上兵夜たちに迷惑かけるわけにもいかないからな!!」
ヴィヴィオたちはあくまで民間人だ。それも、まだ本格的に交流していない時空管理局の出身でもある。
兵夜の立場からしてみても、エイエヌ事変のような緊急時でもないのに鉄火場に巻き込むわけにはいかないはずだ。
だから、このまま自分たちもシェルターに移動しようとして―
「……畜生っ」
その耳が、音を聞いた。
戦闘機人として生み出されたノーヴェは、通常の人間より性能が高く設計されている。
当然五感なども常人の平均値よりは上だ。多少の隠密活動程度ではごまかされない。というより、センサー類などの上乗せもしていなければ正式採用型の戦闘機人とは言えないだろう。
それが、間違いなく潜入者を知覚した。
「……下だ、須澄、アップ!!」
「「!?」」
その言葉に、荒事に慣れていた二人はすぐに反応できた。
即座の城壁から飛びのいた次の瞬間、莫大な紫の炎が城壁を焼き尽くした。
あり得ないことだ。この城壁はかの堕天使元総督アザゼルが技術の粋を集めて作り上げた特注品。その強度はかのヴァーリ・ルシファーですら一発で破壊するのは困難な代物である。乾坤一擲の策に対するゼクラム・バアルの影響力もあって最大級の代物となっている。
それを成し遂げるということは、すなわち低く見積もっても神滅具級ということである。
「なに!? なんなの!? 誰が来たの!?」
「どうやらただのトチ狂った馬鹿じゃないようね!!」
半ばパニック寸前になりながらも須澄は聖槍を構え、そしてアップは冷静に敵の脅威を認識しながらグラムを構える。
そして、その時点ですでにトマリ達も戦闘準備を万全にしていた。
その警戒の視線が向かう先。城壁を焼き尽くす紫の炎の中から、人影が出た。
白とも銀ともつかぬ髪をもつ男。その男を、この場にいる誰もが知っていた。
「……フォンフ、シリーズ!!」
須澄はそれに対する警戒心を心から強くする。
当然だ。フォンフシリーズは全員が神滅具の禁手を母体として生成されている。
その戦闘能力は文字通り神すら殺せる。一騎当千の人間サイズの戦略兵器がそこにあった。
「やれやれ。気分転換に冥界に来てみれば、面白いことになっているようだね」
フォンフシリーズの一体、フォンフ・ランサーは金属製の槍を構えて面白そうに笑う。
「さて、これも一興。少しぐらいは運動した方がよさそうだね、これが」
ひょうや、盛大にうらめる。
来客に無理をさせるわけにもいかないが、しかし気にすると判断したので比較的安全そうな仕事や保険をさせたのですが、底いフォンフ襲来。
そしてそれが原因でもちろん大本がフォンフだと勘違いすることになります。このニアミス、致命的。