HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
湖の上を部隊を率いて移動していた俺は、とんでもない報告に目を見開いた。
「……フォンフが出ただとぉ!?」
『はい、現在現場にいた須澄様達が交戦中です!!』
「そんなことはわかってる! だが、寄りにもよってヴィヴィたちが巻き込まれてるだと!?」
ええいとんでもないことになってきた!
そんなことを避けるために避難誘導を手伝わせたのに、どういう展開だこれは!!
どうする? 俺たちは今、砲撃を行っている連中をどうにかするために移動している。
水平線の向こうから砲撃をぶちかまされている以上、戦闘を行うにはどうしてもある程度距離を縮める必要がある。
しかしまあ、陽動作戦の可能性は考慮していたが、フォンフまで出てくるとはさすがにきついな!!
「……どちらにしても砲撃は何とかしなければいけないか」
砲撃の射程距離がどこまでかわからない以上、市街地に撃たれる可能性も考慮しなければならない。
それは、まずいな。
ゆえに、やることは決まっている。
「グランソードと雪侶はUターンしてヴィヴィ達の保護を頼む!! 砲撃の方は俺とシルシでどうにかする!!」
「了解だ大将!!」
「こんなところで死なないでくださいましね、兄上!!」
即座に二人がUターンする中、俺とシルシは敵の元凶を見つける。
……三胴型の駆逐艦だな。この科学っぷり、やはりフォンフか。
大方クージョー連盟でまだ息のかかった連中がいるんだろう。そこから提供してもらったということか。
「それで、どうやって倒すの兵夜さん?」
シルシがそう聞くが、お前も分かっているだろう
ただでさえフォンフがヴィヴィ達と交戦中。できればさっさと終わらせる必要がある。
ゆえに……。
「初手から合体だ。短期決戦でぶっ飛ばすぞ!!」
「そういうと思ったわ!」
理解が速くて助かるさ!!
シルシは即座にアーティファクトを展開して俺と融合。そして俺は即座に接近戦を仕掛ける。
駆逐艦はCIWSを起動して対空防御を仕掛けるが、今回は時間がないので無理やり再生能力を頼りに突貫。
弾丸の雨を無理やり突っ切って艦尾に回り込み、俺は即座に全力の光魔力の槍を十数本展開してぶっ放す。
悪いがデータは残骸からとらせてもらう!!
そして遠慮なくぶっ放したその瞬間―
「はっはっは! その攻撃、バッドだね!!」
発生したエネルギーの膜によって、俺の攻撃はすべて防がれた。
……魔力でも光力でもない。まさか純正科学!?
チッ! あの野郎今度は何を開発した!!
「全員後退!!」
どうやら短期決戦は困難のようだ。
俺は即座に部隊を下がらせると、迎撃のためにそれを見据える。
……人型ロボットだった。
もう一度言おう。
人型ロボットだった。
「……なんというロマン兵器を!!」
アザゼルかもしくはシーグヴァイラ様の関係者か?
いや、エイエヌがらみの一件でも見たな。水陸両用型っぽいタイプのが。
だが、今回はアザゼルが関わったかのように完璧な人型だ。指も五本ある。
しかも、大型のシールドを保持している。どうやらあれでこちらの攻撃を防いだようだ。
「これはグッドだね!! 小型で高性能を再現できないなら大型化すればいいと思ったけど、高出力で無理やり起動すればここまでのものができるのか!!」
などと堂々とのたまう女の声が聞こえるが、いったい何者だ?
「初めまして諸君! 私はピレオ・ウッドフィールド!! 君たちに通りのいい言葉でいうなら、木原といっておこうか!!」
木原? 木原というと学園都市のハイスペックマッドサイエンティストが名乗ることの多い苗字だ。
と、言うことは―
「貴様、転生者か!!」
「その答えはYESだよ!! マリンスノーから聞いてないかい?」
マリンスノーということは、小雪の関係者か何かか?
ええい、マジで面倒くさいことになってきた!!
「……では、そろそろ撤退するとしようか!!」
と、思ったら即座に撤退体勢に入りやがった!?
「……お前、何しに来たんだ!!」
「それはもう、クージョー連盟から回収した技術のテストと君への嫌がらせだよ!! ……上は君たちのことが大嫌いなんだ」
確かに、フォンフのオリジナルであるフィフスを殺したのは俺だからな。逆転の決め手をほぼおっぱいでやったイッセーに次ぐレベルで忌み嫌われているだろう。
だが―
「……お前らの逆恨みで、この街に住む無関係な悪魔たちまで恐怖に陥れて、ただで済むと思っているのか?」
いや、そんなことは気にしないだろう。
木原とは
すなわち、研究のためならば手段を選ばない。倫理観の欠如したサイコパスが基本形。そんな連中に人の通りを解いたところで、理解を示すとは思えない。
しかし、ウッドフィールドはそれに対して皮肉気な笑みを浮かべた。
「はっはっは。君たちにそれを言う権利はないだろう? 私のような人種にもないけどね」
失礼な。俺は基本的に堅気には危害は加えないぞ?
しかし、ウッドフィールドは全く持って意に介さない。
「さあ、それでは足止めを受けてもらうとしようか!!」
言うが早いか、駆逐艦のハッチが開き、数百体の魔獣が姿を現す。
両足が肥大化した鳥のような姿をした魔獣は、一斉にこちらに襲い掛かってきた。
チッ! 思った以上に数が多い。
高い砲戦能力と大量の兵員輸送能力だと? お前はロボット物の母艦か何かか!! 非現実的な!!
ええい、これはメーデイアの戦力では対応しきれない! 逃がすしかないか!
「シルシ! 須澄達の方は大丈夫なのか!?」
もうそっちのことを気にした方が早いようだ。
せめてあいつらの無事だけは確保しないと、完膚なきまでに負けっぱなしじゃねえか!!
―待ってて! 今そっちを見るから!!
ああ全く。頼むから間に合ってくれよグランソード!!
そのころ、須澄達は激戦を繰り広げていた。
そして、その戦いはフォンフが優勢だった。
「この!!」
「喰らいなさい!!」
接近して聖槍を突き出す須澄と、ヒット&アウェイで魔剣を振るうアップ。
連携戦闘訓練こそまだ少ないものの、幼馴染としての付き合いの長さがなかなかの連携を生み出して、フォンフ・ランサーを襲う。
だが、それをフォンフ・ランサーはやすやすと回避する。
もともとフォンフシリーズのオリジナルであるフィフスの戦闘能力は高位の英霊にも匹敵する。
それを高水準で受け継いだフォンフの技量は、間違いなく並の英霊なら十分に倒せるほどのものだった。
くわえて、獣鬼を素体としているフォンフはその身体能力からして圧倒的だ。
さらにその上、英霊の力すら憑依させているフォンフは、間違いなくこの世界でも有数の戦力なのだ。
それを相手にするには、聖槍ロンギヌスと魔帝剣グラムという最高峰の装備二つをもってしても足りない。
加えて、使い手の技量の差も大きい。
須澄は確かに攻撃速度こそ一流だが、聖槍に頼り気味の一面があり小手先の技術や兵法では劣る。
アップも弱い者いじめを根幹に置いた戦法を中心とするため、得意なのは殲滅戦と防御戦法だ。主に格下を蹂躙し格下に逆襲されない強さを求めてきたため、格上との戦闘ではどうしても一歩下を行く。
……そもそも、アップはグラムの使い手としては歴代でも下位に属する。
エイエヌのエージェントとして選ばれたアップは、基本的に弱い者いじめを欲している。ゆえに必然的に魔導士としての技量は弱い者いじめに特化している。
弱い者いじめの前提条件。それは極めて単純だ。
自分が格下に負けないこと。
自分より弱い相手を、相手より強い自分が蹂躙する。その過程において敗北があってはならないし、その条件を無視することがあってはならない。
ゆえに彼女の魔導士としての方向性は大きく分けて三つに特化している。
相手の反撃を余裕でしのぐ防御力・自分より格上から逃走する機動力・そしてより蹂躙するための攻撃方法。
その点で考えるのなら、強者相手に勝率を上げるための切り札ともいえるグラムは、彼女の適性からは離れている。
それは偏に、強者と戦闘することになったときのための保険に他ならない。そういう状況でも戦力として活用するためにエイエヌが従僕の技術を応用して用意した保険なのだ。
ゆえに、アップは格上との戦闘に向いていないのだ。
加えて、フォンフ自体の立ち回りもうまい。
ステップをうまく組み合わせ、残りの四人の介入を阻害する立ち回りで戦闘をおこなっていた。
そのせいで、六対一にも関わらず、事実上の二対一で立ち回られている。
市街地でのあまり開けていない戦闘であることもあり、フォンフ・ランサーは戦闘の趨勢を支配していた。
「あ~もうっ! これじゃ援護できないよっ!!」
「流石はフォンフ。立ち回りがうまいです……っ」
戦闘に介入できず歯噛みするトマリとアインハルトの視線の先で、すでに何回目かになる負傷による鮮血が舞う。
今回傷を負ったのは須澄。だが、アップもまた何か所にも傷ができていた。
このままでは、じわじわとなぶり殺しにされるのみ。
そんな嫌な予感を二人が感じている中―
「―あれ? ノーヴェは?」
その時、ヴィヴィオはその視野の広さから自分のコーチの姿が消えていることに気づいた。
そして、その瞬間事態は動く。
「……下ががら空きだ!!」
道路が破壊され、そして同時に道がそこから空中へとできる。
そして、その軸線上にいたフォンフ・ランサーは蹴りを受けて打ち上げられた。
「流石は戦闘用! どこかに隠れていたのには気づいていたが、下水道から回り込んでいたとはね」
「一応戦闘用なんでね。その辺は気にしねえよ!!」
フォンフはあえてブレイクライナーを駆け上がり距離を取ろうとするが、ノーヴェの速度はその上を行く。
ジェットエッジを利用した陸上高速移動。さらに空中に道を作り上げるその固有能力により、ノーヴェの機動力はかなり高い。
さらにそれが障害物となることでフォンフの軌道にある程度の妨害をうみ、それがさらにノーヴェに有利に働く。
そしてノーヴェはその加速力で一気に迫り―
「だがあまい」
次の瞬間、ノーヴェの斜め後方にフォンフは移動していた。
瞬動術。足に魔力もしくは気を展開することにより、瞬間的に超高速で移動することを可能とする高速移動技術。
魔法世界のその技術を、フォンフもまた習得していた。
むろん、その技量は使い手中の使い手ともいえる桜花久遠に比べれば明確に劣るだろう。
だが、戦闘の駆け引きの一つとして習得する分には何の問題もない。
「まずは一人!!」
そして、何の躊躇もなく槍が突き出され。
「―舐めるな!!」
次の瞬間、まったく別の場所にノーヴェの姿が現れていた。
さらに道を展開して即座に距離を取られる。
その正体を、フォンフは即座に把握する。
それは、瞬動術だった。
「この短期間に習得するとは、できるな」
素直に感心しながら追撃戦を行おうとして、しかしフォンフは己の失態に気が付く。
すでに自身は建物をはるか下に見下ろせる高度にまで上昇していた。
すなわち、下から撃ち落とす分には何の問題もないということ。
「……最初からこれが狙いか!!」
「いまだ、撃て!!」
フォンフとノーヴェの声が重なったその瞬間―
「お久しぶりだよ、ザ・スマッシャー!!」
その後、多頭龍の砲撃がフォンフ・ランサーを包み込んだ。
どんどん進んでいく勘違い。ピレオも兵夜の勘違いをわかったうえで助長している節があります。
そして強者感あふれるフォンフ・ランサー。これで目的が全人類貧乳化計画でなければすごくシリアスになれました。
腐っても百年近く鍛錬を積んだフィフスの能力を大幅に引き継いでいるフォンフは、戦闘経験にかける相手では苦戦必須。努力と積み重ねで強くなっているフィフスの強さに、獣鬼の性能がかけ合わさっているためかなりの強者です。
くわえて、このフォンフ・ランサーはものすごいチート存在として設定されているので、その戦闘能力はフォンフ・シリーズでも最高レベル。まともにやり合うとエイエヌでもかなり苦戦する超絶戦闘能力を保有しております。