HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
フォンフシリーズが動きを見せている中、俺達もまた苦労することが多い。
何故なら、この混沌とした世界情勢で暗躍している禍の団の残党は多いからだ。
なにせ、人間世界は第三次世界大戦及び五の動乱で大きく混沌とした状況になっている。
流石に終戦直後の犯罪発生率十倍上の暗黒時代は過ぎた。それでも犯罪発生率は平均して数倍に向上している。
これは能力者の安易な生産方法や気や魔法などの戦闘技術が大きく広まってしまったことが大きい。
これまで世界がまがいなりにもパワーバランスが整っていたのは、兵器が主力だったからだ。
兵器は金と資材があればいくらでも生産できる。これは裏を返せば、生産する為の金と資材がなければ用意することができないということだ。
それは、必然的に国家の経済力と戦闘能力が比例することを意味している。
個人の戦闘技術が兵器を前提とするものな限り、どれだけ個人が鍛え上げても大きな争いなんて起こせないからだ。
だが、異形技術は違う。
個人の才能や努力で、兵器を超える戦闘能力を生身の人間が保有できる。これがどれほど恐ろしいことか世界は痛感しているだろう。
『本日日本時間午前5時にアメリカで起きた無差別通り魔事件ですが、死傷者百人を超える被害を出したうえ、ビルを一つ倒壊させるという大惨事でしたね』
『被害もそうですけど、何より酷いのはこれを起こしたのが生身の麻薬中毒者だってことですよ』
アナウンサーの言葉に、解説の識者がコメントを述べる。
その表情は引きつっており、冷や汗すらにじんでいた。
『高熱のプラズマ火球を生成して投げつける能力なんて、個人の自由で持っていい能力じゃありません。一発の破壊力がRPGと同程度ですよ? こんな連中が第三世界のキッチンで作れる麻薬で生まれるかもしれないなんて、世界の終わりですよ』
『死傷者の内三割は、鎮圧にあたった警察や陸軍の人達だそうですしね。戦車が一両破壊されたとか、最悪でしょう』
……今でもこんな事件が月に三回ぐらい起きるんだから、世も末だ。
俺はスタバでコーヒーを飲みながら、ため息をついた。
『しかも能力者ってのは、能力がすごい奴ほど変な性格の可能性が高いっていうんでしょう? 気の概念を使った兵員育成はどうなっているんですか?』
『それも難しいですね。現在育成は進んでいますが、鍛錬や研究で磨かれる気や魔法は、どうしても育成に時間がかかります』
『ムラがあるとはいえ、才能があればすぐに強力な力を使えるとか反則でしょう。突然こんな力に目覚めたら、暴走する奴がいてもおかしくないですって』
テレビではそういう議論が巻き起こっている。
まったく、本当に嫌な世の中になったもんだ。
「人間世界も大変よね。……異形社会がフィフスをどうにかできなかったのが原因である以上、将来的に相当の支援をする必要はあるのよね」
憂鬱そうにシルシもため息をついた。
ああ、まったくもってその通りだ。
まさにこう言った暴走する連中が出てくることを警戒したがゆえに、異形社会は人間世界に異能を知らしめることを避けていた。
まさに、その嫌な予感が的中してしまったわけだ。
しかも公開したら公開したで更に混乱が生まれるから、即座に存在を公表するのも難しいと来ている。
それを考えると、本当に警戒しないといけないわけなんだが―
「とはいえ、必要なことだよな」
俺は、朝食として注文したサンドイッチをぱくつきながらそうぼやく。
ああ、フィフスの奴が大量にばらまいてしまった以上、こちらも公開する他ない。
そうしなければ対応しきれない。そしていらん被害が大量に生まれてしまう。
そしてそれが人類の異形に対する反発感情を招き、紛争を生み出しかねない。
そしてその戦乱で疲弊したところをE×Eに仕掛けられるというオチすら見える。
しかもフォンフの奴、紫炎祭主の磔台を保有している可能性がある。
おそらくはエイエヌが持ってきたものだろうが、しかしなんでランサーに持たせてるのか。
まあ、それはそれとして脅威度が非常に高いので倒すのだが。
とはいえ、とにもかくにもこの異形に対する不快な感情を抑えるための策も必要不可欠だ。
その為、こっちも色々と動く必要がある。
そのうちの一つといて、あるプランも出てきていた。
具体的には「今のうちに異形よりのテロ組織を潰しておいて、それも公表してイメージアップしたらよくね?」的な作戦だ。
幸か不幸か、この混乱に乗じてはぐれ悪魔や禍の団の残党などが犯罪組織やテロ組織に協力して小銭を稼いでいることが発覚した。
このちょうど中間点にいる連中を今のうちに積極的に狩る。そして人類に存在を公表する時に「できるだけ頑張ってケツ拭きました!」とアピールすることで心証を上げるという作戦だ。
無論、俺達も消耗が大きいので中々できることではない。
しかしフォード連盟や時空管理局との交流によりE×Eに対抗するあてができたこともあり、こちらに戦力が少しずつ回されるようになった。
もちろん時空管理局やフォード連盟も同様のことが起きる可能性がある以上避ける戦力はそこまで多くないが、しかしこういう小規模なものなら対応できる。
そして、俺としても魔術師の暴走を防ぐ為にも治安の良化は必須なので、少しは協力しておきたい。
と、言うわけで―
「よ、宮白」
「待たせたわね、兵夜」
そこに、イッセーと姫様が姿を現す。
そう、今回の作戦には、イッセーと姫様も参加するのだ。
禍の団は、大きな被害を受けて散り散りになった。
なにせ、一年足らずででかい勢力はどいつもこいつも頭を失って崩壊するというありさまだ。挙句とオーフィスとリリスにいたってはこちらのマスコットと化している。端的に言って残った勢力の大半が崩壊しているだろう。
アザゼルは本格的な開戦そのものが何年も先になると思っていたが、どこもかしこもアホが多かったというかなんというか。
そして、それによって散り散りになった勢力は元の目的を忘れ犯罪による金稼ぎを行っている。
それを助長するのが、フィフスによってばらまかれた様々な異能技術。
それらのアドバイザーとして禍の団の残党は犯罪組織と根付き、技術提供などを行っている。
ぶっちゃけできる限り潰しておきたい案件でしかない。
それによって犯罪組織の戦闘能力が強化されれば治安はまたどんどん悪化していく。こと国家とかの大組織ではなく小規模のテロ・犯罪組織が増えると、どうしても政府側は対応が後手に回る。
治安維持組織というのは、基本的に発生した事件の解決が仕事。そしてその結果をもって犯罪を抑止することが基本なのだ。ぶっちゃけ所属人数と対応する範囲的に発生を事前に予期して殲滅なんてそう簡単にはできない。
こと異形が人間世界で活動する時が大きいだろう。
少し考えればわかるだろう。人類に比べて圧倒的に少ない異形達が、更に地球より陸地が広大な冥界などに住んだ上で、派遣された者達だけで担当区域を完全にカバーなどできるわけがない。
世界的に優秀といわれる日本の警察ですら困難なのだ。数が足りていない異形達でそんなことができるわけがない。
ゆえに、テロ組織との世界的ゲリラ戦は非常に難易度が高いのだ。少なくとも、そんな戦法を取られたら後手に回るほかない。
……ゆえに、今のうちに芽を詰んでおきたい。
今はある意味でチャンスなのだ。どこの世界も混乱していて、人間側は異能に対するノウハウも少ない。この時期ならば割と狩りやすい。
その為、禍の団との戦績がいいグレモリー眷属はアドバイザーとして引く手数多だ。
四大魔王様やアザゼル達の意向としては、まだ二十歳になるかならないかの俺達若手を後始末に借り出すことは本意ではないだろうが、俺としては今後のもめ事を避ける為にも協力はしておきたい。
ゆえに、大事になりそうな時は自分から嗅ぎつけて参加することにしていた。
そんなこんなで久しぶりに人間界に顔を出して、俺はイッセーと姫様に合流したわけだ。
今回の仕事は、元から日本である程度の犯罪ネットワークを敷いていた連中の排除。
元から五大宗家のはぐれ者や、妖怪と接触があったらしいが、五の動乱の混乱で更に技術を手に入れて少し混乱状態にあるらしい。
それが理由で拠点の多くが把握できたので、この機に殲滅して人間世界に恩を売っておこうってわけだ。
こと日本は治安や被害の観点から言って地位を高くしている。その日本の後ろ盾が得られれば存在を公表する時にも有利のはずだしな。
で、俺たちグレモリー眷属はそのオブザーバーとして参加。仕掛ける施設は発見した施設を同時に始末する予定。俺たちも各施設に分散して事に当たる。
そういうわけで、俺はシルシを連れてイッセー及び姫様と合流したわけだ。
俺達が担当する箇所が一番でかい。しかもそれなりの船を異形技術で戦闘艦に改装している施設らしく、難易度も高い。
ゆえに、グレモリー眷属最強戦力であるイッセーが派遣されたわけだ。そこに、士気向上もかねて姫様が参加し、潜入工作に長けている俺も参加ということになる。
そんなわけで、俺達は作戦前に朝食を食べているわけだが、そこで姫様が口を開いた。
「……それにしても、最近貴方人間界に来てないじゃない。普通なら大学に行っている歳でしょうに」
「しゃーないでしょう姫様。今はメーデイアと魔術師組合が優先。そのうえでS×Bやアザゼル杯まであるんだから、大学行ってる余裕なんてないですって」
姫様の非難めいた視線に、俺は片手を振って応じる。
いや、俺割と多忙だからね? 大学とか追加は勘弁してほしいからね?
なにもいかないとは言ってない。メーデイアと魔術師組合もあと一年あれば機能は安定する。そのころにはアザゼル杯も終わってインターバルだ。
大学に行くのはその時だ。その頃には少しは落ち着いているだろうし、ゆっくりキャンパスライフを満喫するさ。
「できれば悪魔としての業務もこなしてほしいのよ? アザゼルもその為の事務所を用意しようとしてたのに、冥界に篭りっきりなんてもったいないわ」
「まあまあリアスさま。夫は色々と業務が多いので、手心を加えてください」
シルシがそうフォローを入れるが、しかし姫様も冗談半分だろう。
いや、何足も草鞋を履いてこその異形社会出身の姫様なら半分ぐらいは本気だろう。だが、無理強いする気はないはずだ。
「まあいいじゃんか、リアス。宮白は禍の団との戦いでも忙しかったんだし、当分は冥界の担当ってことで」
「イッセーが言うなら仕方ないわね。でも、落ち着いたらちゃんとやるのよ?」
「了解、姫様」
うっへー。冥界は仕事が多すぎるなオイ。
まあ、今のうちに下地を気づいておけば後々楽か。
俺の将来の安定の為にも、余裕を持った生活を送るとしますか。
割とフィフスの遺した人間社会の悪影響はシャレになってない件。
学園都市式の能力者はその特性上素質が高い≒人格的に癖が強いですので、こういうことにもなるでしょう。それもいきなりとなれば被害密度はさらにでかくなります。
そして、それに目をつけるのが発足一年足らずで壊滅寸前にまでなった禍の団。起死回生というかなんというか、残党が犯罪組織と癒着するのも当然の流れといえます。
そして実は人間世界にはあまり言ってなかった兵夜。このあたりも性格が出てきますね。