HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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天使炎上編スタート!!


置き去りにされました!

 

 慌てて超高速艇で来た俺は、そのままの勢いで暁のところに殴り込んだ。

 

「暁! 今度は一体なんだ!!」

 

「宮白か! 来てくれたのか!」

 

 ああ、そろそろお前にも来てほしいしな。

 

 すなわちトラブルはさっさと終わらせるに限るということでもある。

 

「それで二人とも? いったいどういうトラブルなの?」

 

 シルシが冷静に二人に先を促す。

 

 ああ、俺も通信越しではトラブルが発生したということ以外は全くわかっていないから、状況が読めてないんだ。

 

 できる限り詳しく手早く教えてくれ。

 

「ああ、実は……」

 

 暁達の説明を簡潔に纏めるとこうなる。

 

 なんでも、暁が自分の正体を知っている攻魔師とかいう南宮菜月にこき使われて、つい最近起こっている魔族襲撃事件とやらの捜査……もとい討伐を頼まれた。

 

 相手の魔族は空中戦で大暴れしているので、暁の眷獣も問題なく使えると判断したらしい。

 

 だが、そうは問屋が卸さなかった。

 

 敵の魔獣と思われる少女は、あっさりと暁の眷獣や姫柊ちゃんの雪霞狼を捌いたらしい。

 

 そんな緊急事態に事態は逆に窮地に陥ったが、しかしここで事態は更に動く。

 

 その魔族と交戦中だった他の魔族が、その魔族を攻撃したことで難を逃れたらしい。

 

 その後、その魔族は倒した魔族の何かを食べるとそのまま離脱したのだが、その魔族の顔が問題だった。

 

「……その、叶瀬夏音ってのは人間のはずなんだな?」

 

「はい。少なくとも魔族登録証はつけておりません」

 

 なるほど。つまり未登録魔族、もしくは別口の異能力者と。

 

「それで、俺達はとりあえず叶瀬の家でその養父に会おうって話になったんだが―」

 

「気持ちはわかるけど、とりあえず落ち着け」

 

 暁の言いたいことはわかるが、しかし早計だ。

 

「話に聞く限り、その手の戦闘は何度も行われていたんだろう? 向こうの方も気が付いていて放置、もしくは何らかの形で監視している可能性がある。昨日その戦闘に介入したお前らが不用意に行くのは危険だ」

 

 ああ、俺なら間違いなく警戒する。

 

「とりあえず、先ずは最低限の情報収集が先だ。藍羽に連絡を取って、最低限の情報を集めてから対応に入るぞ」

 

 そう思って振り返った時には、既に不敵な笑みのシルシが藍羽と伴っていた。

 

「そういうと思って呼んでおいたわ」

 

「……呼ばれて来たわよ」

 

 ああ、俺の女は動きが早くて助かるぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そういうわけで調べてみたが、あまりにも怪しいにおいがプンプンする。

 

 叶瀬夏音の養父である叶瀬賢生だが、その来歴が非常に特殊だ。

 

 アルティギア公国とかいうところの宮廷魔術師みたいな職業についていたらしい。しかし、問題はメイガスクラフト社とかいう今の職業の立ち位置。

 

 なんでも、掃除用ロボットなどを中心とした工学企業だ。一言言おう、新規事業に走るにしても突拍子もなさすぎる。

 

 っていうか、王家とかなんか不思議な気がしたんで調べてみたが、これがまたドンピシャ。

 

 ……叶瀬夏音と王家の直系の顔が似通いすぎている。

 

「これ、どういうことでしょうか?」

 

「普通に考えれば血縁者だろう。王家レベルともなれば、戯れで下女とかに手を出して孕ませた……とか普通にありそうだ」

 

 俺と姫柊ちゃんはその叶瀬賢生の住んでいるところに向かいながら、そう会話する。

 

 藍羽に調べてもらった情報によれば、アルティギア王家というのは霊媒の素質があるらしい。

 

 其の辺りも踏まえて考えれば、可能性としては……。

 

「アルティギア王家の血を利用する為に養子にした……というのが一番の可能性だな」

 

「はい。その順序で間違いないでしょう」

 

 まあ、言っては何だがよくある話ではある。

 

 よくある話ではあるが、しかしあれな話だ。

 

 まあ、悪魔の業界でも珍しい話ではないし、深入りした考えはしないようにしよう。

 

 そして、俺達はメイガスクラフトの本社に到達する。

 

 叶瀬賢生はここに住み込んでいるらしい。それに叶瀬夏音も付き合っている形になる。

 

「さて、それじゃあ俺達のやることはわかってるな、姫柊ちゃん?」

 

「はい。囮ですね」

 

 そう、俺達の目的は囮だ。

 

 謎の未登録魔族を使った大規模被害を出す乱闘騒ぎを起こしているような連中だ。当然対魔道犯罪組織である獅子王機関の存在は把握しているだろう。

 

 その獅子王機関のエージェントがいきなりやってきたと知れば、必然的に何かしらのリアクションをとってくるはず。少なくとも無視はできないだろう。

 

 俺はそんな姫柊ちゃんの護衛だ。グランソードは冥界に残しているし、雪侶は藍羽の護衛を言いつけている。そしてシルシは暁と一緒に後方待機で、千里眼で俺達をモニター中。

 

 何かあれば、事前に潜り込ませておいたPMCのフロント企業を用意している連中を呼び出す準備も万端だ。

 

「でも、暁先輩を呼ばなくてよかったんでしょうか? 私は一応先輩の監視役なんですけど」

 

「万が一社内で戦闘になったら被害が甚大すぎる。この手の事業は知っているのはごく一部って相場が決まってるしな」

 

 そう、おそらく大半の社員は事情を何も知らないだろう。

 

 そして暁が戦闘をすればほぼ確実に桁違いの被害が発生する。

 

 無意味な犠牲者を出すわけにはいかないからな。それに暁の面倒を見ているとかいう攻魔師に知られるとやばそうだ。

 

「一応言っとくぞ。これ、本来ならその那月ちゃんってのに伝えた方がいいことなんだからな」

 

「はい。黙って協力してくれている宮白さんには本当に感謝してます」

 

 まあ、だからこそ姫柊ちゃんにもこの危険な役を引き受けてもらうわけだが。

 

「とりあえず、防毒用の礼装は渡しておくからつけておくように。応接室に見せかけたガス仕様の処刑部屋とかあったら面倒だからな」

 

「はい。相手は雪霞狼や真祖の眷獣を無効化した相手を保有する組織、油断は欠片もできません」

 

 うん、そういうわけで俺達は中に入る。

 

 相当に有名企業らしいメイガスクラフトの社内を見渡しながら、俺は魔力的な通話でシルシに確認をとる。

 

―トレースできているか?

 

『ええ、それと新情報よ』

 

 新情報か。流石は藍羽と言っておくべきか。

 

『メイガスクラフトは外国の軍に対してかなりの数のロボットを発注しているわ。……掃除用のロボットをね』

 

―十中八九名目だな。

 

 なるほど、意外と掃除用ロボットの業界は儲からないらしい。

 

 それで軍事転用を目論んでいると言ったところだろうが、この様子では失敗した可能性があるな。

 

 だが、その謎の未登録魔獣は話が別だ。

 

 龍王クラス以上の出力を持つ攻撃すらいなせる存在。しかもおそらく人体改造によるものだ。

 

 劣化品であろうと量産する術が確立すれば、間違いなく生物兵器として破格の性能を発揮することができるだろう。

 

 それに一発逆転を賭けている……といったところか?

 

「……宮白さん。どうもおかしなことが起こっているようです」

 

 と、姫柊ちゃんの言葉で俺は我に返る。

 

「ああ、藍羽も色々と情報を掴んでくれているようだ。……それでそっちのおかしなことって?」

 

「それが、私達はいきなり押しかけているはずなんですが、獅子王機関の名を出したら承っていると」

 

 ふむ。

 

 つまり、獅子王機関は既に状況を把握しているのか?

 

 それとも別件が偶然重なったのかわからないが、とにかく警戒はした方がいいな。

 

「後で獅子王機関に連絡した方がいいな。この後来る本命の機関の人間に迷惑がかかるし」

 

「そうですね。そうなると、南宮先生にも連絡が行きかねませんが……」

 

「つってもタイミング的に既に掴んでるみたいだしなぁ」

 

 これは遅かれ早かれ時間の問題か。

 

 ああ、少し早く動いた方がよさそうだが―

 

「お待たせいたしました」

 

 ふむ、もう来たか。

 

 そこにいるのはグラマラスな女性。おそらく秘書か何かだろうが……。

 

―シルシ、完璧に黒だ。この女からは血の匂いがする。

 

『わかったわ。兵員を動かすわよ』

 

 ああ、姫柊ちゃんは経験の少なさから気が付いていないが、これは裏関係の職業出身だ。

 

「私はベアトリス・バスターと申します。叶瀬賢生の、秘書のようなものを務めております」

 

「始めまして。こちら、獅子王機関の姫柊雪菜です。私は民間協力者の宮白兵夜です」

 

 表面上の挨拶をしてから、俺達はすぐに本題に入るがうんヤバイ。

 

 なんでも叶瀬賢生は娘と一緒に絃神島の外の研究施設にいるから、そこまで来たらどうかとか言ってきた。

 

 はっはっは。そんな島の外に態々設置するような施設に民間人をアポなしで入れるとかあるわけないだろ馬鹿野郎。

 

 うん、これは罠だ。

 

『一応船の用意はしておくわ。それと、孤島の置き去りとかされても姫柊ちゃんに手を出さないように』

 

―わかってて言ってるだろうが一応言うぞ。暁に悪いっつの。

 

 さて、虎穴に入らずんば虎子を得ず……か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜間の運用など考えられてない簡易な飛行場。

 

「俺はロウ・キリシマ。ベアトリスの使いっぱしりみたいなもんだ」

 

 何ていうかだらしなさそうな雰囲気の男の飛行機に乗せられて、俺達は運ばれているわけだが―

 

 ああ、いつこいつごと巻き込んで撃墜されてもおかしくないので、警戒は怠ってない。怠ってないけど―

 

「姫柊ちゃん? 大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫です! 私は獅子王機関の剣巫ですから!!」

 

 全然大丈夫に見えない。

 

 そういえば、ラージホークでエイエヌの本拠地に殴り込みをかけるときも目を閉じていたような気がする。

 

 とはいえ、これは俺がどうこうするべき問題ではないというか、いっそのこと暁も連れてくるべきだったかと思うような気もするというかなんというか。

 

 うん、頑張れ姫柊ちゃん。

 

―それで、詳しい情報はわかったか?

 

『それについては現在調べている真っ最中ね。そっちこそ、まさかこの窮地にかこつけて暁くんから姫柊ちゃんを寝取ろうなんて思ってないでしょうね?』

 

―その手のジョークは聞き飽きたよ。

 

 シルシはいい女なんだが、この手のジョークが好きなのが困りものだ。

 

 人の女を寝取るほど俺は悪趣味じゃないっての。

 

『ああ、それとアルティギアの件なんだけど、その暁くんが興味深い話を聞いたそうよ?』

 

 なんだ? 暁はそういうのに詳しくなさそうな気がしたが。

 

『なんでも、ちょっと前のテロリスト事件で関わった煌坂紗矢華って人が、アルディギアの要人を護衛するって任務を受けたけど合流前に行方不明になったと、暁くんが電話で聞いてたらしいのよ』

 

―なあ、その煌坂ってやつ、まさかと思うが……

 

『可能性はありそうね』

 

 獅子王機関は、暁にどれだけ嫁を提供する気なんだ?

 

 いやいや、問題はそこじゃない。

 

 アルディギアってことは、つまり叶瀬ちゃんの関係者の可能性がでかいということだろ?

 

 それってつまり、今回の件と繋がってる可能性だってある。

 

―シルシ、スマンがその煌坂とかいうのに確認を取るように暁に行ってくれ。……あ、その前にそろそろ到着するっぽいからトレースよろしく。

 

 思ったより時間が経っていたらしく、何時の間にか島が見えていた。

 

「……あれが、その研究施設か?」

 

「ああ、俺達は金魚鉢って呼んでる」

 

 ……研究施設に金魚鉢?

 

 これは、既に待ち構えていて戦闘が行われるパターンとかか?

 

「姫柊ちゃん、そろそろ気合を入れなおした方が……」

 

 あ、駄目だ。魂抜けてる。

 

 これ、もしかして死んだんじゃないか?

 

 いやいやいやいや。いかにこの業界もインフレ高いとはいえ、俺も仮にも神だ。

 

 なんとしても生き残らなければならないだろう。まだアザゼル杯も序盤の序盤なんだぞ?

 

 そんなことを考えながら、俺達は島に降り立った。

 

 すぐに魔術を使いながら周囲を精査するが、研究施設らしきものは近くにはないぞ?

 

「姫柊ちゃん、悪いけど警戒フルで。これ間違いなく罠だ」

 

「そ、そうですね、大丈夫です、私は獅子王機関の剣巫ですから……」

 

 あ、駄目だ。これ俺がフォローしないと。

 

 おっと、もしかしたらあのロウとかいうのも使い捨てにされてるかもしれないから、一応声をかけておくか。

 

「ああ、アンタも危ないから逃げた方が―」

 

 ……あれ? 飛行機がない。

 

 視線を横に向けると、そこには飛び立った飛行機が。

 

「まさか、こう来るか」

 

 ああ、まさか捨てるとかいい度胸だ。

 

 だがそれは俺には通用しないのだよ、哀れな。




普通なら緊急事態にもほどがありますが、ここにいるのは兵夜(千里眼トレース中)ですので……。

え? 模造天使の余剰次元薄膜とかあれ使えば余裕? はっはっは。そんな原作通りのままにするなんてあるわけないじゃないですか
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