HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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雷鎚と白龍

 

 その男は小柄だと俺は言った。

 

 だが、少年だとは言っていない。

 

 割と髭が濃いので、成人を超えていることはわかる。しかし高齢ではなさそうだ。

 

 とはいえ異形なら年齢と若さが全く比例していないことも珍しくも何ともないのでそこのところは断言できない。

 

 なによりも、その雰囲気が子供という表現を捨て去るほかない。

 

 まるでこの世の地獄を何度も見てきたかのようなその目は、むしろどんよりとした老人のようなものを感じさせる。

 

 ………断言できる。こいつは、修羅場を何度もくぐったやつだ。

 

 自然体に見えるが、しかし隙が無い。

 

 俺達が戦闘行動に移ったその瞬間に、奴は俺たちに攻撃を加えられるだろう。

 

 そんな絶妙な力加減を、奴は常態で維持している。

 

「……これをしたのは、お前か?」

 

 俺は、わかりきっている質問をあえて尋ねる。

 

 馬鹿馬鹿しい質問だといわれてもおかしくない。

 

 これだけの破壊のなか、無傷で平然と立っている男。

 

 そんなもの、十中八九どころか百中九十九ぐらいで確定だろう。

 

 だが、念のために聞いておかなければならない。

 

 これで実は違いましただといろいろ問題になりそうだ。

 

 そして、その返答は気配で来た。

 

 ……明確な戦意だった。

 

「行くぞ、ヴァーリ・ルシファー!!」

 

 その男はメイスを構えると、速攻でヴァーリの懐へと飛び込んだ。

 

 そして何の躊躇も遠慮もなく一気に振るう。

 

 できる! 速度もタイミングも動きのブレのなさもすべてが高水準だ。

 

 ゆえに、完膚なきまでに顔面にメイスが激突した。

 

 顔面にぶつかったとは思えないような轟音が鳴り響く。

 

 俺とグランソードは、それを冷静に見ていた。

 

「なあ、これが名無しってことあり得るのか?」

 

「見た感じ人間っぽいな。転生者って可能性も考えた方がいいんじゃねえか?」

 

 俺の疑問にはグランソードも同感らしい。

 

 うん、前回の犯罪組織壊滅作戦で出てきた奴もそうだが、なんか最近無銘なのに強い連中が結構出てきてるよな。

 

 いまだにアイツの素性がつかめないんだよ。これ、一体どういうことだ?

 

 などと考えながら俺はヴァーリに視線を向ける。

 

「……で? 楽しめそうか?」

 

「ああ、暇つぶしにはちょうどよさそうだ」

 

 すでに、ヴァーリは白龍皇の鎧を展開し終えていた。

 

 流石に、これで殺せるなら俺がヴァーリを殺している。

 

 真正面から怪しさ満々の奴が、瞬動もなしにこいつを不意打ちできると考えない方がいい。

 

 ゆえに普通のメイスの一撃などこいつには効くわけが―

 

「唸りを上げろ、ノイエミョルニール」

 

 その瞬間、俺はグランソードにラリアットを喰らわされていた。

 

 厳密には首に負担がかかるような抱きかかえられ方で移動させられたのだが、神格による防御準備は万端だったが偽聖剣は発動してなかったので首がGで激痛だ。

 

「なにを―」

 

「大将伏せろ!!」

 

 その瞬間、さっきと同レベルのプラズマが放出された。

 

 ……プラズマと電気は結構似ているものだ。

 

 そう、ゆえにミョルニル何て名前を付けられているあのメイスがそんな芸当をおこなえるのは驚くほどではないのだが―

 

「あの出力、イッセーがミョルニルを使った時と同等だと!?」

 

 っていうか凌いでないか!? 一撃で神クラスすらKOできるレベルだぞ!! それ凌ぐとかどういうことだ!!

 

「……奴もエイエヌ関係か!!」

 

 そうとしか考えられない。っていうか、これヴァーリ死んだんじゃないか?

 

 いや、個人的には死んでもそこまで心が痛むような奴じゃないんだが、しかし死なれるとルシファーの血統が絶えるという、冥界的にかなりショッキングなニュースが流れることに―

 

「―安心してもらおうか、宮白兵夜」

 

 だが、ヴァーリは耐えていた。

 

 あれは、極覇龍!!

 

「言っておくが、まだ一対一をさせてもらうからな? 白銀の天龍相手にどこまで戦えるか、見せてもらおうか?」

 

 そう兜のしたで微笑んでいるであろうヴァーリは、無言のままのメイス使いに殴り掛かった。

 

 そして次の瞬間、その小柄な男は歯を食いしばってそれを受けきる。

 

 もろに顔面に叩き込まれるが、しかしそれを耐えきった。

 

「……な…めるな屑が!!」

 

 そして、そのまま腕をつかむと上空に分投げる。

 

「これはいい! 少なくともプルートよりは楽しめそうだ!!」

 

 心底楽しそうにヴァーリは吠えると、其のまま真下に魔力弾をぶちかます。

 

 全部かなりの密度を持っている大火力だ。一発一発が並の上級悪魔ではフルチャージしても一蹴される程度の火力を込められている。

 

 ……これが、史上最強の白龍皇。

 

 現在。過去。未来。それらすべてにおいて最強になるといわれし白龍皇。

 

 正当たるルシファーの末裔。明けの明星を継ぐもの。

 

 これが、明星の白龍皇か!!

 

 しかし、その次の瞬間にその驚愕はそれに匹敵する驚愕によって塗りつぶされる。

 

「舐めるなぁ!!」

 

 メイスを構えたその男は、まるで多砲身機関砲のように荷電粒子砲をぶっ放した。

 

 その弾幕は、極覇龍の魔力砲撃すら相殺する。

 

 さらに撃ちまくりながら男は移動し、ヴァーリもそれに合わせて移動する。

 

 ……はっきり言おう。俺の目の前で神話の闘争が繰り広げられている。

 

 神々の中でもマイナークラスではこの戦闘に割って入っただけで余波により死亡するだろう。

 

「グランソード。勝てるか?」

 

「大将、俺はまだ魔王クラスには到達してないぜ?」

 

 だよなぁ。

 

 ああ、ヴァーリが強大な存在なのは知っていたが、まさかここまでとは。ちょっとシャレになってないぞ。

 

 こんなもん、個人戦になったら俺のチームじゃ誰もかなわない。

 

 間違いなくこの時点で戦闘能力なら主神クラス。しかも戦闘継続時間が格段に上昇している。

 

 対城宝具の真名開放にも匹敵する能力を、こうも長時間発動し続けるとかどっちも化け物か!!

 

「……死ぬがいい、北欧の飼い犬!!」

 

 その言葉とともに、小柄な男がメイスを振るう。

 

 そして、その言葉とともに地面がめくれ上がった。

 

 いや、厳密に言えば地面から大量の砂鉄が引きはがされて集まっていく。

 

 それは雷撃による光熱で溶解し、さらに魔法によって弾丸として固体化。

 

 そしてそれを電磁投射砲としてぶっ放した。

 

 ちなみに、放たれたのは直径一メートルはあるであろうスーパーサイズ。

 

 ……地形変わるぞ。なんでオカルトの極致でSF兵器ぶちかましてるんだ。

 

「面白いが、それではな」

 

 次の瞬間、ヴァーリもまた本気を出した。

 

 悪魔の翼が展開され、それを全力で受け止める。

 

 そして衝撃波が俺たちにたたきつけられ、俺は割と痛かった。

 

 そして、受け止め切ったヴァーリは残骸を投げつける。

 

 普通に音速を超過してぶっ放された鋼鉄の塊を、これまた小柄な男は即座にメイスで跳ね飛ばす。

 

 ……俺の方に。

 

「あぶねえな」

 

 グランソードが割って入り、右手で止める。

 

 グランソードの学園都市式の能力は右掌で止めた物体を問答無用で止めるというもの。

 

 この能力の前に、移動速度によって攻撃を行うものは何の意味も持たない。平行世界とは言え赤龍帝兵藤一誠の砲撃すら受け止めた力なのだから。

 

「チッ! フォンフの奴が言っていた通りか!!」

 

 そいつはそう吐き捨てると、しかし一瞬動きを止める。

 

「……残念だが、時間稼ぎは終了だ。これでもうお前たちは探せない」

 

 探せない?

 

 何をだ?

 

 疑問に思う俺たちだが、しかし誰一人としてそれを問いただす者はいなかった。

 

 いや、これは語弊がある。

 

 問いただす暇はなかったというのが正しい。

 

 一瞬だけ、一瞬だけ影が差した。

 

 その瞬間、男は飛び乗りワイヤーをつかむ。

 

「……できれば殺したかったが、それはまた後の機会だ!!」

 

 そして、その後に音が響いた。

 

「……航空機だと!?」

 

 そのまま高速で離脱する小柄な男に、俺たちは即座に砲撃を放とうとする。

 

 だが、その航空機は一瞬で大量のミサイルを展開すると、一斉に爆発させた。

 

 ……これは、もうどうしようもないな。

 

 あまり派手に動けば、それこそ人類に俺たちの存在が知れ渡る。

 

 いや、知れ渡っても別にいいが、しかしタイミングを計っている段階でこれはまずい。

 

 まだ混乱を全部抜けたわけではない以上、できれば人類に存在を公表するのは待っておきたいんだ。

 

 ……しかし、まさか高速飛行可能な航空機に引っ張られてもらって脱出するとはとんでもない方法を取ったもんだ。

 

 これじゃあ転移魔法などの残滓で場所を索敵するのも困難だ。そして奴との戦闘で時間を稼がれて、さらにこっちはこっちで逃げられたようなもんだ。

 

 最初から、残滓を感知させられないようにするための時間稼ぎか。

 

 ……なるほど、つまり―

 

「―どうやら、フォンフは再びこの世界に禍の団を作り上げることも考えているようだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 あるところで、総理大臣と大統領の2人が密談を交わしていた。

 

 別件での会合に合わせての会話であるがゆえに、異形たちは一切それを想定していなかった。

 

「……と、今頃思っていることだろう、総理」

 

「でしょうな、大統領。フォンフたちの存在は割と何でもありなので、におわせるだけでフォンフが主軸だと勘違いしてくれる」

 

「我々にフォンフとのつながりがあるのは事実だが、しかしもうすでにお互いに停戦条約を結んでいるようなものだからね。あとはお互い示し合わせて、共通の敵に仕掛けるだけだよ」

 

「メーデイアの件で完全に勘違いしているようですからね。これならどうとでもできるでしょう。……それで、匿った信徒たちに事情は説明しましたか?」

 

「ああ。さすがにまだ信じているものはほとんどいないが、オリュンポスに三大勢力が伝えた情報があるからな。信じるのは時間の問題だろう」

 

「まあ、中には枢機卿候補クラスのものもいたようですからな。彼らクラスなら熾天使ミカエルと会ったこともあるでしょうし、彼らから順に信じるでしょう」

 

「そして、その事実を知った衝撃を怒りの方向に誘導すれば―」

 

「頭数は増えますな。あとはウッドフィールド博士達の提唱した学習装置(テスタメント)さえ完成されれば―」

 

「―技術や知識、経験をある程度なら習得可能とのことだ。技術大国日本の意地を見せてもらうよ?」

 

「世界超大国のアメリカの技術力あってのことですよ。しかし臨床試験がまだなのですが、大丈夫ですか?」

 

「だからこそ、異能の知識をもつ彼ら信徒たちが必要なのだよ。そして、彼らは信仰を裏切られた怒りをぶつけたいだろうが、非戦闘員の研究者である彼等では戦闘能力の技量を手にすることができない。暴走して自らの体で実験する者がいるかもしれないな」

 

「それは残酷な話ですな。我々も暴走しないように監視する必要がありますが、しかし手が足りずに手を染めてしまうものも多いかもしれません」

 

「それは仕方がない。ならば我々にできることは、その犠牲を基に二度とそんな失敗を起こさないことだけでしょう。そして、それらすべてが明るみに出れば我々の失職は免れない」

 

「そうだ。だが、それでもやらねばならないことはある」

 

「……あの第三次世界大戦で、どこの国も目が覚めたでしょう。……我々はいがみ合っている場合ではない。パイの取り合いをすることは必要ですが、それは人類が真の意味で自立してこそです」

 

「その通りだ。もっとも技術を総取りするべきは我らがアメリカだが、あいつ等にもおこぼれなどというようなちゃちな量しか与えないなんて意地はない。そんなことでは人類は自立できない」

 

 2人の表情には、死すら覚悟する者たち特有の決意があった。

 

 奇しくも、彼らは政治家として第三次世界大戦及び五の動乱により成長していた。

 

 すなわち、人間の政治家として人間が正しい意味で自治をなすこと。その方法として異形たちに対抗することができるようになること。

 

 むろん、そのうえで国力を増大させることはきちんと考えている。できれば利益という名のパイを多く取り分けたいという欲もある。

 

 落としどころとなる次善(ベター)は見えており、そして狙っておきたい最高(ベスト)もまた見えている。

 

 彼らは成長しているのだ。

 

 そして、それゆえに彼らは異形たちと対立することをいとわない。

 

 何より、それゆえにその栄光を投げ捨てるような真似をしてでも行うべきことを行うための清濁併せ呑む覚悟を手にしてしまった。

 

 その決戦の日は、間違いなく近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……同時期に同様の事件がいくつも出ていただと?」

 

 事態終了後、俺たちは一息入れながらその情報を耳にする。

 

「はい。非戦闘員による立てこもり事件が発生。その後手段や状況は異なりますが、全員が姿を消すということだけは共通している事態が、今日この日に同時に何十件も起きております」

 

 その情報をうけとったその神父は、冷や汗を流しながらそう告げる。

 

「……そんで? ハーデスのジジイが動いた可能性はあるか?」

 

「あいまいです。一応のアリバイはあるのですが、しかし偽造が不可能かといわれるとそうでないレベルです」

 

 グランソードの質問に、神父はそう答える。

 

 ハーデスのジジイがかかわっている可能性は十分にあったが、しかし今回に関しては直接の関与はしてなさそうだな。

 

 アリバイが完璧でないところが逆に安心できる。あのジジイならこの速攻で疑いの余地が出るような工作はしないだろう。

 

 ゆえに逆に安牌。協力者が動いている可能性はあるが、死神勢力が直接動いた可能性はないな。

 

「逃亡した奴の足取りは?」

 

「それも困難です。すでに航空機の残骸が発見されていますが、転移の痕跡も追跡困難なほどにしか残っていませんでした」

 

 再戦したくてたまらないヴァーリが聞いてくるが、これに関してもそうはいかなかった。

 

 なるほど、あれは逃げるためではなく逃げる時間を稼ぐための手段か。

 

「あれだけの航空機が接近していたのに、この国の連中は気づかなかったのか?」

 

「はい。どうやら電子戦を仕掛けていたらしく、多少の混乱があるようです」

 

 ……やはりフォンフか。

 

 学園都市技術を多数確保しているフォンフでなければできないだろう。

 

 奴自身フォンフとのかかわりを白状している。おそらくフォンフに縁のある連中なんだろう。

 

 さらに、大量の反時空管理局組織に大量の技術を提供しているフォンフなら、その見返りとして相当の資金提供を受けているはず。

 

 この国の連中も大変だな。あとで菓子折りでも送っておくとしようか。

 

「しかし不完全燃焼だ。まだ向こうも本気を出していないだろうし、残念だ」

 

 ヴァーリは心底残念そうにしていた。

 

 まあ、確かに向こうも残念そうにしていたがすぐに離脱したからな。

 

 ただの戦闘狂でも戦士でもない。奴はまるで仕事人のような動きだった。

 

 こりゃ、禍の団の幹部連中よりも強敵だと判断した方がよさそうだぞ。

 

「……この不完全燃焼を燃やしたいが、どうしたものか。アザゼル杯の試合は当分先なんだけどね」

 

 そうため息をつくヴァーリ。

 

 ふむ、とはいえ俺は模擬戦したくないんだが。敵に手札をあまり見せたくない。

 

 しかし、少しぐらい恩を売っておいた方が後々楽だからな。何かしらの手を打っておいた方がいいような気もするが―

 

「……そうだ、いいことを思いついた」

 

 どうせなら、顔合わせぐらいさせてやってもいいだろう。

 




ちなみに全開の重力使いと同じく、この男も全力は出しても本気は出してないです。


人類、黒い。

何が黒いかって、自分たちから人体実験に協力してくれなんて言ってないところが黒い。あくまで勝手に暴走した信徒が自主的に人体実験を行った形に持って行ってるところが黒い。

さて、オリジナル展開もいったん終わって、次からはストブラに戻っていきます。

………そのあとはVSヴァーリチームです。 勝てるか、兵夜!?
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