HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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戦闘狂にもいろんな種類がいる。

 

 

『手合わせかい?』

 

 通信越しに、ディミトリエ・ヴァトラーがそう聞き返した。

 

「ああ、前に言っていた超強い男が不完全燃焼でな。ガス抜きもかねてちょっとぐらい模擬戦をした方がいいと思ったんだよ」

 

 ヴァーリとヴァトラーは割と同種類の戦闘狂だ。厳密には()()()

 

 かつてヴァーリは三大勢力の和平会談を台無しにするというテロを、アースガルズと戦ってみるという目的のために引き起こして禍の団に参加した。

 

 ヴァトラーも、自分を殺しうるものとの戦いを行うために、自分のところのトップを狙うテロリストが確保した超兵器を自分の船に乗せ、外交官特権を逆手にとってかくまっていた。

 

 どちらも非常に危険人物だ。ヴァーリはあれで人格的に善良な側面もあるが、ヴァトラーはあまり安心できない。っていうか利用はしても信頼はしない方向でいっている。

 

 ……ゆえに、ヴァトラーのターゲットである暁や姫柊ちゃんの安全を図る意味でも、俺は割と気を使っている。

 

 獅子王機関の協力の元、PMCをはじめとするいくつかの企業をでっちあげて絃神島に誘致。それにより、火急の事態が起きたときには動けるように準備は整えている。格納庫の中に次元航行艦艇を用意し、事前にサーゼクス様達にも話は通しているのでいざとなれば亡命も可能。さすがにこの規模の外交問題に発展すれば戦王領域とやらもストップを入れるだろう。

 

 さらにフォリりんの協力の元、獅子王機関にも伝えていない戦力を送り込んでいる。念には念を入れているから動かない限り発覚する恐れはないだろう。

 

 加えてメンバーは全員まとめてグランソードの舎弟で構成されている。信用に値する人物たちだ。

 

 そして、それ以外にも様々な対策を取っている。

 

 なにせ、暁の戦闘は基本が眷獣中心。ノーヴェからストライクアーツを教わってはいるが、それだってまだまだ素人に毛が生えた程度。本気で戦うとなれば、どうしても眷獣が必要になる。

 

 ……ちょっと暴発しただけで魔王クラスがキレたかのような大被害を生み出すようなものをだ。

 

 其のため、万が一に備えた準備はいくつも用意している。

 

 そのうちの一つは―

 

「―絃神島の近くの無人島の一つを買っておいた。もしよければ、そこで手合わせをしてもらおうかと思ってな」

 

「ちなみに、俺がヴァーリ・ルシファーだ。よろしく頼む」

 

 そういってヴァーリが顔を出すなか、通信越しのヴァトラーは面白そうな表情を浮かべた。

 

『……いいね。見ただけでわかる。これは楽しめそうだ』

 

「ああ、強者でなければ放てないものを放っている。俺が禍の団にいた時なら、躊躇なく先制攻撃を仕掛けていただろう」

 

 ものすごい楽しそうな表情を浮かべる二人を見て、俺はやっぱり戦闘狂同士は話が合うのだと思い知った。

 

 まあ、それはともかくだ。

 

「あくまで手合わせだ。それと、問題が発生しないようにする結界の準備もあるから、すぐに戦闘開始したりしないように」

 

『わかってるよ。君を怒らせて古城たちと決着をつけるのも面白そうだけど、それをするには時期尚早だしネ』

 

 わかっているならいいが、こいつの場合下手すると本気で俺たちと戦争しかねないところがあるからな。

 

 そういう意味でもヴァーリに近い。

 

 ……だが。

 

「一応断っておくぞ。……もしお前とヴァーリが本気でもめたときは、俺は躊躇なくヴァーリの側に立つ」

 

 そう。それは断言できる。

 

 確かにヴァーリは危険な男だが、少なくとも今の段階はだいぶ丸くなっている。

 

 そしてヴァトラーは、以前の危険な段階のヴァーリよりもやばい。

 

 ……揉めたらどっちを選ぶのかは自明の理だ。

 

『それはそれで面白いといいたいけど、辞めておくよ。今そんなことをしたら、さすがのあの爺さんに怒られそうだ』

 

「わかってくれるならいい。……ああ、一応リザーブ枠で登録しておいたから、暇なときがあったら伝えてくれ。暁と入れ替える」

 

『わかったよ。じゃ、僕もたまには仕事をしないといけないから、これで』

 

 そういって通信が切れ、俺はため息をついた。

 

 暁も面倒な奴に目をつけられたもんだ。もしかしたらイッセーと気が合うかもしれん。

 

「確かに危険な男のようだな。かつての曹操のような手段の選ばなさがある」

 

「まったくだ」

 

 ヴァーリにすら言われるとは危険な連中だ。

 

「しかし異形の存在を人類がすでに知っているどころか共存しているとは、なかなか面白い世界のようだね」

 

「まあ、実際のところはそう簡単な話ではないようだがな」

 

 本格的な意味で魔族と人類が共存しているような国は夜の帝国を含めたごく一部。

 

 聖域条約加盟国は基本的に魔族との共存を認めているが、それでも魔族特区など一部に限られている。非加盟国の多くは魔族を敵と認識しているほどだ。

 

 だが、それでも存在が公になっていて、共存することができているというのは大きいだろう。

 

「俺としては、この魔族特区制度と似たようなものを実施するのがいいと思ってるんだ」

 

「情報公開そのものは一斉にやる。しかし、交流そのものは限定的に行うというわけか」

 

 ヴァーリは頭もいいから理解が速くて助かる。

 

 そう、間違いなく人類に異形の存在を公開すれば揉めることが確定だ。まず間違いなく紛争レベルの激突が何度か起きるだろう。

 

 それを最小限にするためには、ゆっくりと少しずつ交流していくことが必要不可欠だ。

 

 この魔族特区制度を応用するのは有効だろう。明確に成果が出ている制度を参考にすれば、かなり有効だ。

 

 それによって異形になれた人々が特区の外に出て情報を広めれば、さらに理解は進むはず。少なくともE×Eとの遭遇するときに内輪もめを起こす可能性は低いはずだ。

 

 しかし、それを提唱するのは俺ではだめだ。

 

 それでは俺の名を上げる結果にしかならない。そしてそうなれば俺の権力はどんどん跳ね上がり、忙しくなってしまう。

 

 ワーカーホリックといわれることはあるが、それにしたって限度がある。俺は将来的に魔術師の監視と聖杯戦争の阻止に集中したい。

 

 ゆえに、これを提唱して評価されるのは俺じゃない。

 

「……そういうわけで、ぜひ見ていってくれ、アルサム」

 

「暇を作ってくれと言っていたのはそういうことか。……まあ、確かにある程度政治的に貢献するのは九大罪王になるには必要だが」

 

 この小型艇において、客といわれるほどのものは二人しかいない。

 

 ヴァーリとアルサムだ。

 

「こうして顔を合わせるのは初めてだな。ヴァーリ・ルシファーだ」

 

「真なる明の明星の末裔か。グラシャラボラスを暫定的にまとめている、アルサム・カークリノラース・グラシャラボラスだ」

 

 そういって握手を交わす二人は、視線を交わすとにやりと笑う。

 

「スマンが、先に赤龍帝との戦いをしてしまった。とはいえ恨むのなら運営を恨んでほしいものだが」

 

「気にしていないさ。兵藤一誠ならあの敗北をばねにより強くなってくれるだろう。むしろ感謝しないとな」

 

 そう言葉を交わし合う二人は、しかしお互いの実力を肌で感じている。

 

 歴代最強の白龍皇になるとアザゼルに断言されるヴァーリと、初代四大魔王で作られた魔王剣ルレアベの今代の持ち主であるアルサム。

 

 間違いなく若手悪魔の中でも最高峰。それも、お互いに覇を制御する猛者だ。

 

 片や、覇をこえた極覇の領域へと高めた者。

 

 片や、覇を分け与える奇跡を生み出した者。

 

 お互いに、覇に到達するという最高峰に到達するどころか、それを発展させるという前人未到の領域へと至った存在。

 

 断言しよう。将来の悪魔において、俺の目の前にいる二人は間違いなく最強の一角に選ばれる。

 

 そんな奴らの会話。非常に気になるだろう。

 

 実はこっそり録音して、小遣い稼ぎに利用するつもりだ。なので政治的な話とかは避けてください。

 

「覇を安全に分け与え、共有するとは思ってもみなかったアプローチだ。しかも、今後キミと戦う機会が出たときは間違いなくその上を見せてくれると来たものだ」

 

「いや、私としては一人で覇を凌駕したその力を素直に評価しよう。禍の団に所属していたことに関しては不満があるが、一介の戦士としてはすでに極みの域に達しているだろう」

 

「そんなことはない。なにせ、俺もまだ伏札は隠しているからな」

 

「そうか。ならこちらも新たな手札の使い方を覚えておかなくては」

 

 ……まず間違いなくすごすぎる会話を聞いている。

 

 かたや、テロリストの一員となりテロの手引きをしたという汚点こそあれど、正当な魔王の後継者にして北欧の主神の養子。

 

 かたや、テロリストが参加している禁止予定の儀式に参加したとはいえ、ある意味初代四大魔王に認められ、そして多世界連盟の共同体の支援を取り付けた破格の存在。

 

 九大罪王候補同士の会話とは、本来こうでなくてはならないだろう。

 

「……しかし、暁古城とは話がしてみたかったんだ。史上最強の吸血鬼とはどんなものなのか」

 

 と、ヴァーリは話を変える。

 

 まあ、最強と言われるだけの存在をみて、ヴァーリが気にならないわけがないか。

 

「胆力はある。火力もある。そして未熟であるがゆえに将来性もある。できればついたら話をしてみたいところだ」

 

「気持ちはわかるが、それは気にしすぎだ。彼は人より少しだけ強い心を持った、ただの普通の人間でいたい男だよ。あまり負担をかけさせないでくれ」

 

 興味津々のヴァーリに、アルサムは苦笑交じりにくぎを刺す。

 

 まあ、確かにそうなんだよなぁ。

 

 ………なんだろう。俺はいますごくうっかりをしている気になってきたぞ?

 

 あ、そういえばまだ暁に話してなかったな。

 

 今回は暁には関係ないことだが、最近アイツが補習であってなかったし、余裕があったら茶でも奢るか。

 

 と、言うわけで暁にも通信をつなぐ。

 

『……宮白か!? ちょうどよかった!!』

 

 と、なんかすごくうれしそうというか、窮地に追い込まれて苦労しているときに予想外の増援を見つけた人の顔が映った。

 

 ああ、そういえば言ってなかった。

 

「ヴァーリ。実は暁はイッセーとよく似ているところがいくつかあるが、そのうちの一つは何だと思う?」

 

「産まれも含めて平凡な高校生が、最強格の力を手にしたことか?」

 

 残念だが違う。

 

 っていうか、少なくとも暁の母親は間違いなくただものじゃない。

 

「正しい意味での悪運が強いんだ。そう、赤龍帝の力に目覚めたときのイッセーのごときトラブル遭遇率と強者遭遇率だ」

 

 そりゃもう本気で重ねてみてしまうほど大変だ。

 

 火力だけなら最初からインフレ上げまくり側だからか、割と本気でコカビエルクラスの強敵と何度も激突してるんだよなぁ。

 

「……何があった暁。今度は誰が敵だ?」

 

『錬金術師だとよ』

 

 ……フォンフがちょっかいでもかけに来たのか?

 




アルサムを盛り立てるついでに今後の布石も打っておく男、宮白兵夜。

実際いろいろとややこしいところのあるストブラの世界観ですが、魔族特区制度は今の段階のD×D世界では有効だと判断しました。

存在を公表したうえで全面的に交流すれば揉めますが、徐々に開放する方向で限定的にすればまだまし。人員が圧倒的に少ないので不意打ちのトラブルに対応しきれないのが異形たちの難点ですが、規模を縮小すれば人員のフォローが間に合うので有効だと思うのですよ。




そういうわけでストライク・ザ・ブラッドの錬金術師の遺産編スタート。
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