HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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賢者の霊血

 

 暁はなぜか姫柊ちゃんに黙っていてほしいといってきたので、俺たちはとりあえず絃神島における拠点であるPMCの事務所として運用している輸送船に移動していた。

 

 ちなみにこの輸送船。割と異形技術を投入しており、そこにS×Bを今後の交流のモデルケースとして見ている義兄たちの協力を得ていることからかなりの金が投入されている。

 

 いざとなれば飛んで逃げることもできる特注品だ。しかも所属メンバーはグランソードの舎弟たちという、間違いなく異形たちの戦闘能力の平均値を引き上げる側の存在。

 

 絃神島の上に待機させていた場合、いざという時の暁の隔離先に使うと絃神島が結局滅びかねないという失態を反省して、フォリりんの協力の元突貫工事で完成させた特注品だ。

 

 おかげでこちら側の技術をだいぶ取られたが、まあ国家の規模が小規模であることを覗いても許容範囲内だろう。

 

 さて、それはともかく。

 

「……で? それで何がどうしたんだ?」

 

『ああ、何処から話したらいいのかわからないんだが―』

 

 そう言いかけた暁のスマホが何者かに分捕られたらしい。

 

『細かいことは(ワシ)が話した方がいいだろう。……お主が第四真祖の言っていた異世界のものじゃな?』

 

 この声は藍羽か。……だが―

 

「……つまり、藍羽の体にとりついているその亡霊か何かを除霊すればいいのか? それならそれこそ姫柊ちゃんの出番な気が―」

 

『人を亡霊扱いするでない。確かに(ワシ)ははるか昔の人間だが、別に幽霊というわけではないぞ?』

 

 む? 違うのか? てっきり何かにとりつかれたか何かだと思ったんだが。

 

 とりあえずよくわからなかったので状況を把握すると、なんともややこしいことになっていた。

 

「話を整理しよう。暁たちの通っている私立彩海学園中等部三年生は、修学旅行と似て異なる何かに参加することとなり、そのための買い物に付き合っていたお前は、叶瀬夏音という少女を狙う錬金術師と自称する男に襲われた」

 

 そう、アルサムがかみ砕いた内容を口に出す。

 

 こういうのは割と重要だ。いろいろと思い違いを補足することができるからな。

 

「この世界の錬金術師は個人戦力としても強力だな。フィフスは戦闘向きじゃないといっていたが、瞬間的に生物を金属に作り替える原子変換など、必殺の攻撃といってもいいだろうに」

 

「まあ、それはセンスの問題もあるということだろう」

 

 ヴァーリによりこの世界の錬金術師の戦闘技術方面に脱線しかけたが、すぐにアルサムが方向を修正する。

 

「その輩は叶瀬夏音がいた修道院を襲撃した犯人と同一人物であり、叶瀬夏音の安全を確認するためにも、彼女がその修道院跡地に猫を再びおいていないか確認するために行ってみたら、藍羽浅葱がついてきて南宮那月に説教されて補習を受けた」

 

『三倍はひどいと思わねえか?』

 

 俺の言葉に、暁がため息交じりにここにはいない女に文句を言った。

 

 確かにひどいが、ちょっと今回は考えなしだったな。

 

 そのせいで大変なことになってるんだから。

 

「……話を戻すが、その後姫柊とともに調整のために雪霞狼を預けに行っている間に、その修道院跡地にいた警備隊を皆殺しにした錬金術師がそこにいるニーナ・アデラードを暴走させ、その結果藍羽浅葱が致命傷を負ったが、正気に戻ったニーナ・アデラードが無断で体を借りる手間賃もかねて治療した。……そして、(くだん)の錬金術師はまだ生きているということだな?」

 

『かいつまんで纏めるとそうなるな』

 

 藍羽の体を借りたニーナ・アデラードがそう言った。

 

 しかも残念なことに、肝心のニーナも長い間眠っていたり無理やり起こされたせいで記憶があいまい。その錬金術師である天塚の目的はわからない。

 

 ……しかもどうやら南宮那月との連絡も取れてないと来ている。ややこしいな。

 

『正直宮白が来てくれて助かった。できれば姫柊には宿泊研修を楽しんでもらいたくて、言い出せなかったんだよ』

 

「確かに、雪霞狼が使えない以上姫柊ちゃんの戦闘能力も大幅に落ちているからな。それにまあ、あの子はまだ中学生だしなぁ」

 

 いかに七式があるとはいえ、あれには制限時間もある。

 

 そういうことを考えれば、暁の言うことも一理以上ある。

 

 あるのだが……。

 

「知ったら絶対後で怒られるな」

 

『そ、それはそれだろ!! だいたいアイツは今監視役の仕事解かれてるんだから、俺のことを気にかけてるよりも友達の渚や叶瀬と一緒にいた方がいいだろうが!!』

 

 暁はそうおれの言葉に反論するが、しかし姫柊ちゃんだぞ、相手は?

 

「暁、これは俺の経験論だが、一つ言っておく」

 

『何だよ?』

 

 ふむ、まあこれは男ならやってしまいやすいことではある。

 

 そしてある程度はやっておかないとそれはそれで女に愛想をつかされることでもある。

 

 だからややこしいんだが、それでも一応言っておこう。

 

「女の側からしてみると、男の意地で無理して男が死にかける方がたまったもんじゃないって意見は結構ある。適度な頼りどころを探っておいた方が後でもめなくて得だぞ」

 

『そ、そうか? 姫柊としちゃ、俺の監視何て面倒なまねしなくて楽できると思うんだが……』

 

「「……はあ」」

 

 俺とアルサムは同時にため息をついた。

 

 だめだ。下手なトラウマがない分イッセーよりはるかに質が悪い。

 

「ふむ、しかし自分にできないところを人に頼るのは当然だ。できることとできないことをしっかり把握しておかなければ、本当の意味で強くはなれないぞ、暁古城」

 

『うっせえよ。俺は普通に高校生ができればそれでいいんだよ。っていうか宮白とアルサムさんはわかるけど、あんた、誰だ?』

 

「白龍皇ヴァーリ・ルシファー。くしくも君の名と縁がある。よろしく頼むよ」

 

 と、ヴァーリと暁で会話が進んでいくが今はそんなことはどうでもいい。

 

「……ニーナ・アデラード。それで天塚何某を探す当てはあるのか?」

 

『うむ。探知の術を張っておけば、奴が行動を起こしさえすれば場所はわかる。問題はいつどこで何をするかがまったくわからんことだがな』

 

 なるほど、アクティブに探知することは無理でも、パッシブに探知することは可能だということか。

 

 となれば、先ずは宿泊研修に行くまでの間の叶瀬夏音の安全確保が第一。

 

 この絃神島でも最高クラスの戦力である南宮那月がいる以上、その辺に関しては外周部に戦力をある程度用意する程度で十分だろう。

 

 その間に天塚が業を煮やして行動を起こせばしめたもの。発見次第暁の眷獣で跡形もなく消滅させるか、くだんの賢者の霊血を原初の塵に戻して終わらせればいい。

 

 そういう意味では暁の眷獣ってチートの極みすぎる。全部対処できる奴って、ゲオルグが全部見たうえで時間をかけて結界装置の開発を行うぐらいしないと無理ではないだろうか。

 

 上位神滅具の禁手ですら重労働ってどんな代物だよ。割と本気でチートだろう。

 

「まあいい。どうせその調子ではぼろが出るだろう? ニーナ・アデラードは俺が預かっておくから、お前は有事に備えて早めに寝とけ」

 

『いいのか? 正直助かるが―』

 

 まあ、俺たちの世界には何の関係もない事柄だから、暁が気にするのも分かる。

 

 だが、ここまで来て見捨てるのも後味が悪い。

 

 何より―

 

「ここで絃神島(ここ)を見捨てたら、イッセーに胸を張れない。それは俺にとって何より避けるべき事柄だからな」

 

「まったく、ブレないな、君は」

 

「ある意味わかりやすい男だ」

 

 後ろのヴァーリとアルサムはうるさい。

 

「それにただ働きにするつもりはない。もしアザゼル杯が今後も続くようならば、お前は今後も参加してもらうからそのつもりで」

 

『ちゃっかりしてるよな、あんたは!!』

 

 それ位の役得はあっていいと思うぞ暁。

 

 第一お前レベルの戦力に対するファイトマネーを払う俺の身にもなれ。金かかりまくりなんだよこれでも。

 

「お前レベルの逸材に対するファイトマネーがいくらすると思ってるんだ。いかに俺が金持ちとはいえ、金には限りがあるんだから文句は言わせんぞ」

 

『……ただ働きじゃないのかよ。それってなんか意味あんのか?』

 

 暁が不思議そうに聞き返すが、お前は何を言ってるのやら。

 

「いや、アザゼル杯はチームの二重登録は禁止ゆえに、これだけでもだいぶ変わる。なにより、あれだけの戦闘能力をもった眷獣を一体でも確保できると考えれば値千金だな」

 

「俺と戦う時は、使い魔の制限がないルールであることを切に願うよ」

 

 後ろでアルサムとヴァーリがうんうんとうなづいている。

 

「とにかく、今のうちに「絃神島にハッキングを仕掛けた馬鹿がいるから藍羽の力を借りに来た」とか言って使いを送るから、お前は何とかごまかしてニーナを送り出せ。あとは俺たちが基本的に何とかする」

 

『わかった。マジで恩に着る』

 

 そして通信が切れて、俺たちはため息をついた。

 

「……話に聞いているディミトリエ・ヴァトラーが動く可能性はあるか?」

 

「どうだろうな。単純な戦闘能力では暁がかかわった連中の中では下位の部類だからな。……戦闘狂としての意見を聞きたい」

 

 アルサムの疑念は俺も同感なので、個々は比較的同類の意見を求めてみよう。

 

「おそらく大丈夫だろう。俺たちのような輩は、ただサンドバッグをたたきつけるのに満足はしない。そのディミトリエ・ヴァトラーが真に戦いを楽しむものならば、ただ死ににくいだけの雑魚をわざわざ相手にする気にはならないだろう」

 

 なるほど、それは確かに。

 

 ……となれば、警戒するべきは―

 

「―フォンフが、最大のネックだよなぁ」

 

 さて、あいつ今回動きそうだよなぁ。

 

 不死を実現する賢者の霊血(ワイズマンズ・ブラッド)とか、真面目な話相当価値がありそうだ。

 

「とはいえフォンフも即座に動くとは思えんぞ? 話に聞く限り、費用対効果が悪すぎるし、単純に寿命を延ばすだけなら悪魔の駒のベースマテリアルを生成する方が何十倍も楽だろう」

 

 アルサムの意見ももっともだ。俺もそっちを選択するだろう。

 

 だが、フォンフは俺達とはまた別の価値観で動いているからな。

 

 なにか別の思惑を持って動いていたとすれば、ちょっと厄介だ。

 

「……仕方がない。こうなれば最終手段を取ろう」

 

 俺は、携帯を取り出した。

 

 

 

 




兵夜「ファイトマネー? そりゃ払うにきまってんだろ」

やはり兵夜は人がよろしい。 必要とあれば遠慮なくこき使うので性格は悪いが。
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