HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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”賢者”とはすなわち何なのか

 

 ……急いで暁と合流してきてみれば、なんだこの大惨事は。

 

 港湾区画は壊滅状態。まるで戦略爆撃機が集中爆撃を起こしたかのような地獄絵図だ。

 

 これによる被害額は億じゃ効かないだろう。下手をすれば、この経済損失でどっかの会社が三つか四つはつぶれるだろう。

 

 そんな大被害を間接的にとはいえ引き起こした都市警備隊は大目玉だろうな。しかも事実上の暴走ともいえる事態である以上、これは指揮官レベルの連中の首が飛ぶだろう。

 

「で? これは何の錬金術だよ。焔か紅蓮の錬金術か? 反物質でも錬成したのか?」

 

 俺は眉をしかめながら、この破壊跡を見渡す。

 

 大規模被害により火災なども生まれているが、その本質は切断とか熔解が近い。

 

 熱線とかでも放出されたのか?

 

「……何を言うておるのかわからんが、これはおそらく重金属粒子砲じゃな」

 

「なんだそれは? 科学的なモノなのはわかるのだが」

 

 ニーナ・アデラードの言葉にヴァーリが首をかしげる。

 

 まあ、そんなもん知ってるのはアニオタとか研究者ぐらいだろう。

 

「いわゆるビーム兵器だ。まあ錬金術は科学の前身ともいえるし、できてもおかしくない……フォンフが使ったら手が付けられんな」

 

「ビーム兵器ってマジかよ!?」

 

 俺が補足説明すると、暁が驚愕する。

 

 ……ああ、ヴァーリはロボットアニメの類にはあまり興味がなさそうだな。説明が間違ってたか。

 

「……木原エデンが禍の団に提供した、マウンテンイレイザーのあれをイメージしろ。厳密には全然違うが、まあぱっと見にてる」

 

「そうか。だとすると意外と大したことがなさそうだな」

 

 ヴァーリは破壊跡を見てそう言い切った。

 

 いや、これ普通に大被害なんだけどね? お前ちょっとインフレ激しすぎて感覚が狂ってるぞ?

 

 まあ、港湾地区位消滅させるぐらいでなければこいつは殺せないから当然だが。

 

「何処がだ!!」

 

「そう驚かんでもよい。大気圏内ではせいぜい半径数キロ以内で直撃したものを原子単位で粉砕するのが関の山じゃ」

 

 暁のツッコミにニーナがフォローを入れるが、それは充分シャレにならんからな?

 

 インフレが加速しすぎているが、普通に超能力(レベル5)クラスだろう。

 

「史上最強の白龍皇にとっては大したことがなくとも、常人にとっては天災と同様の災害だ。……少なくとも、都市警備隊の戦力では対抗しきれんよ」

 

 その言葉とともに現れるのは、負傷したアルサムだった。

 

 天塚との戦闘で負傷したのか。意外とできる奴のようだな。ヴァトラーが興味を示しそうだ。

 

「アルサムさん。大丈夫か?」

 

「直撃したら危険だったがな。都市警備隊を避難させるときにかすり傷を負っただけだ。……現状重体の者はいるが今死んでいる者はいない」

 

 お前、本当に仕事するよな。

 

「それは重畳。”賢者”(ワイズマン)の手で死人が増えることは看過できんからな。礼を言うぞ、アルサム」

 

 そのニーナの感謝の言葉に、俺たちは違和感を覚えた。

 

「わいずまん? それ、天塚のあだ名か何かか?」

 

 暁が速攻で連想した名前を言うが、しかしニーナは首を振る。

 

「主らは奇妙に思わんかったのか?」

 

 奇妙? いったい何が―

 

 その瞬間、俺は脳裏に閃いたものがあった。

 

賢者の霊血(ワイズマンズ・ブラッド)……! まさか文字通り血液だったのか、その”賢者”《ワイズマン》とかいうやつの!!」

 

 確かに、名前には由来というものが存在する。

 

 つまり、ワイズマン”ズ”ブラッドなんてつけられているならば、その本体であるワイズマンと称される奴がいるということだ。

 

 そして、この世界の錬金術の目的は完全な存在としての”神”の創造。

 

 つまり、その”賢者”こそが―

 

「錬金術師にとっての神。その肉体の一部が賢者の霊血なのか!!」

 

「そうだ。錬金術の究極目的、神に迫る存在として生み出された完璧な存在。……そして、奴は完璧すぎた」

 

 ニーナは頭痛をこらえるかのようにそう漏らす。

 

 ん? どういうことだ?

 

「よくわからんが、完璧すぎると何かまずいのか?」

 

「簡単なことだ。完璧とは個として足りないものがないということ。ゆえに、他《●》者《●》の《●》存《●》在《●》を《●》必《●》要《●》と《●》し《●》な《●》い《●》」

 

 すさまじい皮肉な欠点があったってことだな。

 

 つまり、その”賢者”は―

 

「そいつの目的は、人類滅亡だとでもいうのか?」

 

「人類どころかあらゆる生命体の滅亡をもくろんでおる。奴にとって唯一恐れるのは、自分以上の完璧な存在が誕生することだからな」

 

 俺の質問に、そのはるか上を行く最悪な事実をニーナは告げた。

 

 なるほど、個体で完膚なきまでに完結している存在は、ほかの存在など余分でしかないのだろう。

 

 そして万が一にでも自分より上の存在が出てくれば不快だから殺す。なんてもんを作ってくれたんだよ錬金術師共は!!

 

「最悪なことに完璧であるがゆえに殺すことができなくてな。霊血を抜き取って封印。そして監視役として(ワシ)が意識を移して監視しておったのだが、五年前に天塚が持ってきた偽核(ダミーコア)に誘惑されたせいでこの様だ」

 

 ………人の潜在的な欲求に付け込んで、やってくれる。

 

 人間をやめるということに生理的嫌悪感などのストレスを感じる者は多い。ニーナにとっても相当の精神的負担があったのだろう。

 

 ”賢者”はそこに付け込み、偽核という毒入りの餌を用意し、復活しようとしたってことか。

 

 とはいえ、天塚とやらの行動には何か違和感があったがそれなら納得だ。

 

 ”賢者”の都合で無理やり動かされているというのなら、違和感もあるだろう。

 

 何が完璧な人間だ。そんな邪悪が人間の完璧な姿だというのなら、不完全な方がいいに決まっている。

 

 俺たちは周囲を確認しながらあたりを移動するが、その視界に大量の白骨を見つける。

 

 一人の男性を除いて、全員が結構年月を過ぎているな。

 

「劣化具合から見て、五年ぐらいか」

 

「おそらくは。修道院にいたシスターや子供たちだ。(ワシ)が面倒を見ていたが、霊血の暴走に巻き込まれて命を落としたのだ」

 

 白骨を見て、ニーナがさらに沈むように表情を曇らせる。

 

「なあ、なんでアンタは修道院何て立てたんだ? 別にそれは賢者の霊血の監視には不必要だろう?」

 

「阿呆な錬金術師どもに贄にされる子供たちは何人も見てきたからな。……そ奴らから守るのにも都合がよかったのだ」

 

 ……人のいい女性だ。もっと世間をうらんでもおかしくない境遇だろうに。

 

 あるいは、そんな人物だということもまた監視役に選ばれた理由なのかもしれない。

 

 だが、そんな善意すら”賢者”は踏みにじったということか。

 

「結局、(ワシ)は何もできんかった。どうにかしたのはその修道院にいた夏音と、陰ながら夏音を見守った叶瀬賢生だ」

 

「それで、天塚は真っ先に叶瀬と叶瀬の親父を狙ったのか……!」

 

 大体すべてはつながった。とりあえず、後ですることは一つだけだ。

 

「暁、眷獣の準備をしろ。お前の今使える奴の中に、前にも言ったが二つも不死すら滅する奴がいるだろう。……俺たちで終わらせるぞ」

 

「ああ、わかってる!! だからまず探さねえとな!!」

 

 ついてなかったな”賢者”《ワイズマン》。貴様は確かに不死かもしれないが、対抗策はゴロゴロある。

 

 殺せないなら殺さずに無力化すればいい。殺しても復活する連中対策に迫られていた俺たちは、必然的にその方法を保有している。

 

 また、暁の眷獣なら、殺せない存在だろうと消滅させれるし、産まれる前があるならそこまで戻すこともできる。

 

 お前の不運はこの絃神島に封印されていたことだ。寄りにもよって天敵が存在するこの島にいる以上、お前は伏して黙するほかなかった。

 

 第四真祖の存在を計算に入れてなかったのがお前の敗因だ。コアだけえぐり取って霊血は研究材料にしてくれるわ!!

 

 そういうわけで気合もさらには言ったので、俺はニーナに視線を向ける。

 

「ニーナ・アデラード!! ”賢者”の場所を探して―」

 

 その時、ちょうどニーナ・アデラードは服をはだけていた。

 

 ………沈黙は五秒ほど続いた。

 

「まて、藍羽の裸はノンケの同性か暁だけに見せろ!!」

 

「余計な気をまわさなくていい!! っていうかニーナもなんで脱いでんだ!!」

 

 慌てる俺に、暁の渾身のツッコミが響き渡った。

 

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