HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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史上最強の白龍皇とあり得ざる偽聖剣

 

 ヴァーリ・ルシファーは音速を超える速度で海上を進んでいた。

 

 彼が思考することは大きく分けて二つ。

 

 一つは|”賢者”の戦闘能力。

 

 荷電粒子砲の火力は、正直言って自分なら耐えられるレベルだ。不死というのは興味があるが、しかしそれもこちらを倒せる能力がなければただのサンドバッグだ。

 

 組成を変換する能力は脅威といえるが、しかしそれでも魔法による結界で直接接触を防げばそれで十分しのげる。はっきりいって攻略法が分かり易い。

 

 とはいえ、もう一つの考えていることがある以上、のんびりというわけにもいかないだろう。

 

 そう、一般人の被害である。

 

 兵夜辺りがそれを知れば「和平会談妨害しておいて何を今更」と鼻で笑うのだろうが、気になってしまったものは仕方がない。

 

 どうも兵夜達はフォンフの妨害を受けているようだし、こうなれば選択肢はそう多くない。

 

 さっさと行って片付けるのもありだろう。そう認識すると同時に、視界にフェリーが映った。

 

 そして、思ったよりも状況が悪いことを把握する。

 

 道化師のような風貌をした、くだんの天塚と思しき者と、それとよく似た体形をした、金属質の物体が少女二人を追い詰めている。

 

 色々と大変なようだ。これは即座に行動するべきだろう。

 

「アルビオン。すぐに終わらせるぞ」

 

『そうだな。間接的に宮白兵夜に恩も売っておくことにしよう。仕掛けるぞ』

 

 その両者の言葉と共に、ヴァーリは攻撃を開始する。

 

 魔王の直系と白龍皇の魂に由来する圧倒的出力を、学習した様々な系統の魔法により精密に制御。必要最小限の火力と速度で斉射。

 

 狙いは違わず、遠慮なく天塚本人を除いて貫いた。

 

「……思ったよりも遥かに簡単にカタが付いたな。これは肩透かしか?」

 

「あ、貴方はいったい!?」

 

 突然現れた謎の存在に、雪菜は呆気にとられる。

 

 当然といえば当然だろう。いきなり空から見知らぬ存在が出てきたのだ。第三勢力を疑ったとしてもおかしくない。

 

「安心しろ。俺は宮白兵夜に連れられてここに来た」

 

「宮白さんのお友達ですか?」

 

『ただの知り合いだ。あの男、いまだに我々に対して警戒心を持っているからな』

 

 ため息交じりアルビオンが漏らすが、まあ警戒されてもおかしくはないだろう。

 

 一人や二人そういう手合いがいてもいい。第一その程度のことを気にするようなら、テロリストになどなっていない。

 

 そして、それだけのことをしたのは良いが中々についていない状況ではあった。

 

「さて、偽核(ダミーコア)とやらはもう品切れか? それならそれでつまらないんだが」

 

「なんだ、何なんだ貴様は!!」

 

 天塚は明らかに危険度の高いその存在に警戒していた。

 

 火力は第四真祖の眷獣以上、更にはそれを正確に使用できるという反則技。難易度は遥かに高い強敵といえるだろう。

 

「くそ! 僕は、人間に戻りたいだけなのに……っ!なんでどいつもこいつも邪魔ばかり!!」

 

「悪いが、俺はそういうのに興味がないんでな。君には悪いがどうでもいい」

 

 ヴァーリとしてはあまりそこは気にするところではない。

 

 相手にも事情はあるのだろうが、それはそれ。殺さない程度に手加減をしておけばそれでいい。

 

 それよりも気にするべきは―

 

”賢者”(ワイズマン)は何処にいる? できれば、ただのサンドバックで終わってほしくはないんだけどね?」

 

「ワイズマン?」

 

 事情を把握していない雪菜が尋ねるが、それより早く動くものがいた。

 

『カカカカカッ! 不完全なモノが完全たる我を遊具扱いするか!』

 

 その声は、天塚の持っていた杖から響く、

 

 ヴァーリは一瞬それが”賢者”だと思ったが、すぐに違うと判断した。

 

 理由は単純だ。

 

 それよりもっと強大な気配が、海から近づいてきているからだ。

 

「……そういえば聞いたことがあるな。海水には貴金属が大量に溶け込んでいると」

 

『なるほど、それを力技で無理やりかき集めたということか』

 

 それを裏付けるように、それは会場から現れた。

 

 液体とも個体ともつかぬ金属でできたスライムとでも形容するべき巨体。

 

 黄金を思わせる輝きを放つそれは、ある種の神の気配を宿していると思わせた。

 

『カカカッ! 不完全なモノよ、完全足る我の贄となるがいい!!』

 

「……なるほど、これが”賢者”(ワイズマン)か」

 

 その威容を目にしながら、ヴァーリは多少評価を修正した。

 

 完全な存在と名乗るだけあり、流石に自分でも殺すのはてこずりそうだ。

 

「……姫柊雪菜とか言われてたな。君は後ろの子を連れて離れていろ。コイツは俺がやろう」

 

「大丈夫ですか? あの気配、真祖の眷獣クラスにも匹敵しますが」

 

 それに関しては否定はしない。

 

 もとより相手が不滅の存在であることは聞いている。壊れないサンドバッグ程度の認識はしていた。

 

 とはいえ流石にそれは認識が甘かったと判断する他ない。奇跡的なことに、目の前の存在は自分を殺しうる牙を持っている。

 

 おそらく港湾地区での戦闘は羽虫を追い払う程度の感覚で行っていたのだろう。少なくとも火力には上がある。

 

 下等な存在相手に本気を出すまでもないという判断だったのだろう。少なくとも、龍王クラスの火力を放つことはできそうだ。

 

 だがしかし。

 

「気にするほどのことではない。しょせんはまがい物の神。真なる神滅具の担い手を相手にするには―」

 

『―不足にもほどがある』

 

 次の瞬間、白龍皇の神髄が顕現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『宮白兵夜、聞こえているか』

 

 余人には手が出せない規模の剣戟が繰り広げられている中、ヴァーリから通信が来た。

 

「………あれ? もう倒した?」

 

『流石に殺すのは骨が折れたので封印した。それで、まだ時間はかかるのならこちらから向かうが?』

 

 俺はとりあえず、フォンフに視線を向ける。

 

「だ、そうだが?」

 

「なんでヴァーリまで連れてきてんだ、これが」

 

 フォンフ・セイバーが心底嫌そうな顔をしながら告げるが、そんなこと言われてもな。

 

「そもそもヴァーリをヴァトラーと模擬戦させるのが目的だったからな。結果トラブルに巻き込まれたが」

 

「そっちが目的か。……聞いてねえぞあの野郎」

 

 後半よく聞こえなかったが、しかしまあ大体予測はつく。

 

 ここで把握されていたら内通してるのばれると踏んだな、ヴァトラーの奴。まあいい。奴は後でじっくりゆっくり調べ尽くしてやる。

 

「で。とりあえずそちらの目的はご破算なわけだが……続きするか?」

 

 とりあえずヴァーリが”賢者”(ワイズマン)をどうにかしてしまった以上、これ以上フォンフの目的は達成しようがないと思おうんだが。

 

 とはいえ、フォンフはこちらの動きを少しは読んだうえで戦力を送り込んでいるはず。

 

 つまりは―

 

「―仕方がない。だったらここで邪魔な奴の首を一つぐらい取っておくか!! 野郎ども、本気で動け!!」

 

 だろうな!!

 

 その声と同時に、越智が正面から俺に突っ込んでくる。

 

 この女、遠慮が欠片も見えないなほんと!!

 

「なあ! 本当になんで恨んでるのか教えてくれないか!?」

 

「分かってないのが余計に腹立たしいのよ!! 逆恨みと断言してくれた方が、まだましだってのに!!」

 

 そんなこと言われても分からないんだから仕方がないだろう!!

 

 いや、正当性があると判断したなら半殺し位なら黙して受けるぞ? 全殺しはあいつらに悪いので流石にパスだが、それにしたって金持ってるから賠償金だって払う。

 

 しかし、それが逆恨みなら話は別だ。俺は正当性のない報復には不寛容だ。

 

 しかし、その判断も恨んでいる理由が分からなければどうしようもない。

 

 俺に対して逆恨み含めて恨みを持ってそうな輩は全部調べたと言ってもいい。あとは本当に些細なことが原因の取りこぼしぐらいだ。

 

 だが、そんなことが理由でここまでするか、普通?

 

 放たれる拳を何とか迎撃しながら、俺は本気で思考する。

 

 全く想定していない逆恨みなのか、それとも俺の認識が違うだけで正当性のある恨み言なのか。

 

 それが分からなければ、どう対処していいのか分からない。

 

 いや、十中八九逆恨みな自信はあるんだよ? 俺、堅気に迷惑かけないようにしてるし。

 

 とはいえ俺はうっかり癖があるから、万が一の可能性は充分ある。そこはきちんと考慮しないといけない。

 

 ゆえに、半殺しと金銭的賠償までなら了承する覚悟はある。ホントだぞ?

 

 だからきちんと説明してくれれば、少しぐらい痛い目見たって文句は言わないんだが!?

 

 それで言わないってことは、当人の八つ当たりの自覚はあるということか? ならこちらも遠慮はしないんだが―

 

 仕方がない。とりあえず半殺しにして確保してからゆっくりイッセーに乳語翻訳(尋問)してもらえばそれでいい。

 

 とにかく、さっさとことを終わらせる。

 

「話す気がないなら強引に調べるのみだ!!」

 

 俺は遠慮なく距離を詰めると、義足の出力を上昇させる。

 

 心当たりのないことで襲われている以上、両足が吹き飛ぶ程度の怪我は覚悟してもらう。万一俺に原因があったらその時は義足ぐらいは用意しよう。

 

 詳しく教えないそっちの落ち度だ。悪いが痛い目を見てもらう!!

 

「いい加減にしてもらおうか!!」

 

 反撃の為に一歩を踏み込んだその瞬間―

 

「―甘いわよ」

 

 その瞬間、莫大な雷撃が俺に襲い掛かった。

 

「危っ!?」

 

 とっさに雷撃誘導用の礼装を展開してそらすが、出力が絶大すぎて何割かこっちに来た。

 

 偽聖剣を展開してなければ戦闘不能すらあり得る火力。これは間違いなく龍王クラスの攻撃力。いや、暁の眷獣のあれだ。

 

「忘れてない? さっきそこには第四真祖が攻撃を加えていた。そして私は過去を再現できる」

 

「異能力の類なら可能ってわけか……っ」

 

 チッ! そういえば模造天使(エンゼル・フォウ)の時も復活させてたな。

 

 ……って待て? いま、声が後ろから聞こえて―

 

「これで、終わりよ」

 

 あ、ヤバイ。

 

 振り返らずに全力で後ろに向かって光魔力の槍を乱射。これしかない。

 

 間に合うか―

 

「―それはさっせるかぁああああああああ!!!!!」

 

 その時、越智を真横から殴りつける姿があった。

 

 それをなしたのは一人の少女。俺より少し年上に見えるその姿は、どこか越智に似ていた。

 

 そして、その身に纏うのは聖魔剣の鎧。

 

 まるで俺の偽聖剣のように全身鎧として身に纏っている鎧は、間違いなく剣の類で構成されていた。

 

 そして、その身から放たれるのはまごうことなき神気。

 

 間違いない。この女、神だ。

 

「……想定外のイレギュラーか。これ以上の戦闘は危険だな」

 

 フォンフ・ランサーが忌々し気に舌打ちをしながら、後ろに飛び退る。

 

 それと同時に他のメンバーも後退しながら黒い霧を展開し始める。

 

 どうやら、想定外のイレギュラーを警戒しているということだろう。

 

 ああ、確かにこれは度肝を抜かれる。

 

 擬態の聖剣と同様の能力を持つ聖魔剣が開発されたなんて話、俺は聞いてないぞ?

 

 そして、それをなした少女は鋭い視線をフォンフたちに向けると同時、悲しげな表情を後退する越智へとむける。

 

「……ま………」

 

 その言葉は小さくてよく聞こえなかったが、しかし相当に強い感情が篭っていた。

 

「今日のところはいったん退こう。なに、決着はいずれ付けるさ」

 

「姫柊雪菜に伝えておいてくれ。もっとカルナを使うようにとな」

 

「歴代最強とも言われたデュランダル使いとの切り合いは堪能できた。次やる時は本気を出そうか」

 

「……次は殺すわよ、宮白兵夜」

 

 思い思いに言葉を告げながら四人が撤退する中、俺達はあえて追撃しない。

 

 ここで万が一にでも転移に巻き込まれれば、おそらく出てくるのはフォンフ達の本拠地だ。

 

 そんなことになれば間違いなく死ぬ。おそらくフォンフも相当規模の戦力を確保しているはずなのだから。

 

 しかし、俺を助けた少女だけは違った。

 

「逃がさない。……ビエカルとその人についてだけは、全部吐いてもらうんだから!!」

 

 鋭い敵意を向けながら、その少女は全力で追撃する。

 

「あ、オイ待て!!」

 

 思わず止めようとするが、しかし聖魔剣の鎧の能力が高いのか追いつくことができず―

 

「漸く掴んだ手掛かりなんだから、逃がさないんだからね!!」

 

 その怒りにまみれた言葉と共に、その女は姿を消していった。

 




”賢者”、一蹴。

いや、今の状態のヴァーリの戦闘能力で、あれに苦戦する姿が予想できんかったんや。すまんな自称完全。







それはそれとして新キャラ登場、および別の新キャラの名前も登場。

双方ともに装備込みでなら割と強キャラなので、今後の展開をぜひお楽しみください。
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