HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
「……辛勝だった。ギリギリだった」
「お疲れさん」
珍しく、イッセーと空いた時間がかぶったので一緒に飯を食う中、俺は心底疲れた声を出した。
なにせ一時間フェンリルに弄ばれ続ける戦いだった。良く持ちこたえたと褒めてやりたい。
まあ、ヴァトラーの底が見えたのはいい収穫だったと思う。おそらくあれが奴の最強クラスの手札だろう。
とはいえ、それを引き出すためにここまでひどい目に遭うとは思わなかった。
まったく。ひどい目にあった。
「しっかし宮白も粘ったな。なんだかんだで時間終了まであのフェンリルに持ちこたえたんだぜ?」
「だよなぁ。俺も俺を褒めるぜ、これは」
ああ、なにせかつては赤龍帝の鎧を身に纏ったイッセーが一撃で死にかけたからな。
それをよくもまあ、噛み付かれたまま凌ぎ切った。
「俺の親友もどんどん強くなってるんだなって実感したからな、マジで」
「そりゃ改造しまくってるからな。お前には負けるさ」
おっぱい一つで化ける乳乳帝とは比べようがないだろう。
……いや、言われてみればこいつも悪魔の駒のリミッター解除とかいろいろ弄ってるけどな。しかしそれにしたって急成長だ。
おっぱい一つでどこまで化ける気だ、オイ。
「っかしこれでヴァーリの奴一敗か、決勝トーナメントに出れるか心配になってきたな」
「まあ、この大神クラスが何チームも出てるからなぁ。帝釈天とか遠慮がなさすぎるだろ」
これ、絶対次からチームの戦力関係にしても制限が入るぞ。
特に帝釈天は大人げが無さすぎる。さらにアースガルズとオリュンポスの次期主神がタッグ組むとか反則だ。
どいつもこいつももうちょっとパワーバランスを考えろというか遠慮しろというか………。
「あの神共、何かあったら第四真祖と聖槍のコンボ叩き込んでやる」
「宮白のチームも割と遠慮がないと思うぞ」
失礼な!! 若手の未熟な戦士たち中心なので問題ないです!!
「……そういえば、姫様のチームも連戦連勝だよな」
「確かに。リント・セルゼン……だっけ。かなり強いよな、あの子」
うん、セルゼン……ねぇ?
「嫌でもフリードの奴を思い出すな」
「そういや、宮白って再戦したんだっけ?」
ああ、あの野郎むちゃくちゃパワーアップしてやがったからな。
異世界技術の改造恐るべし。糞耐久力が上昇している超能力と、古きを蹂躙する英霊の合わせ技は大変だった。
あいつ自身のセンスも高いから、最終決戦の時は想定外だったしな。ヴィヴィに任せたのは失礼だったか。
「まあ、リアスがスカウトしたんなら性格とかは問題ねえだろ。その辺は大丈夫だと思うけどな」
「そこは同感。あれで姫様の人を見る目は確かだしな」
まあ、兄弟があれだから反面教師にするというのは珍しくもない話だしなぁ。そういう方向で期待しよう。
「そういえば、暁だっけ? なんか補習で今回駄目になったって話だけど」
「ああ。学業優先で契約してるからな。……吸血鬼になったのを家族に隠してるせいで、いろいろと難儀な奴でなぁ」
「ああ、俺も隠してたからちょっと気持ちわかるなぁ」
ああ、イッセーも俺も、最初は家族に事情隠してたからな。
……最も、俺の場合は隠す必要があまりなかったわけだが。
妹がそもそも異能側ってどういうこっちゃねん。
「でも、なんだかんだで家族だったら受け入れてくれるんじゃないか? 特にそっちの世界、魔族とかが当然の存在として認識されてんだろ? 共存してる町なんだろ?」
まあ、当然そういう発想には至るだろう。
なにせ存在を秘匿してるこっちとは違い、向こうはまがいなりにも存在が公表されてるのだ。
それに伴う問題も頻発しているが、それでも共存している場所はいくつもある。
だが、暁の場合は問題がある。
「……それが、暁の妹は魔族恐怖症らしいんだよ。それも相当ひどいPTSDみたいでな」
「マジかよ。其れじゃあもし知ったら―」
「一緒にいるのは難しいだろうな。こういうのはショック療法は避けるべきだし」
妹さんがそんな症状では、事情を話すわけにはいかないだろう。
基本的にそれ以外の存在が正しい意味で吸血鬼になるなんてことはないらしい。そういう意味でも悪い意味でインパクトがでかすぎる。
なので隠さなければならないわけだが、そのせいで体質的な都合で学業が大変だというわけだ。
しかも―
「俺たちが悪魔になった初年度に匹敵するトラブル遭遇率。……俺たちがいかに学業において優秀だったかわかる状況だ」
「俺達、勉強できたんだなぁ」
しみじみとうなづいてしまう。
トラブルに巻き込まれる頻度が後半戦並みである上に、完全夜型と化しているのに昼型生活を送っている暁の方が大変なのは事実だが、しかし駒王学園が名門校であることを考慮すれば、イーブンといっても差し支えないだろう。
そんな状況で補習とは無縁だった俺たちは優秀だということか。
「……だけど、俺たちは基本的に禍の団との連戦だったけど、暁って敵組織に喧嘩売られたりとかしてるの?」
「それが基本的に別々の組織でな。禍の団の派閥違いとかそういうの通り越して、完璧に別々の犯罪組織が絃神島に狙いを定めてんだよ」
「……俺達より不幸じゃね?」
うん、おれもそう思う。
「これは俺の予想何だが、そもそも絃神島は設計段階から黒いからな。……何かしらの陰謀のために作られたといわれても驚かんぞ」
「怖いよ!! なんだよそのヤバイ予想は!! いや、悪魔の業界もちょっと前まで真っ黒だったけど!!」
いや、競技の八百長何てまれにあるだろ。
そんなもんじゃないと俺は踏んでいる。
なにせ、それなりに規模のでかい宗教の聖人の遺体を、教義的に敵と定めている連中が暮らす人工島の要として強奪して使用するという質の悪い展開だ。
組織的でなく個人で奪還に動いただけというのが奇跡的だろう。いや、普通に島が沈みかけたが。
そんなことをしでかしたことを考えると、絃神島にはさらに黒い真実が秘められていることも考えられる。
そして、ヴァトラーたちはそれについてうすうす知っているんじゃないだろうか?
「……はあ、ようやく人心地つけるかと思ったら、気になるポイントが増えてしまう。これだから俺はワーカーホリックとか言われるんだ」
「だよなぁ。お前、なんだかんだで人が良すぎだろ」
ついぼやいたら、イッセーにそんなことを言われた。
……反論できんが、お前に胸張れる自分でいるには見捨てるわけにもいかんからな。
「まあ、一つの世界の最強の吸血鬼といわれる第四真祖と友誼を交わすことができれば、生来的には値千金だ。最低でもファイトマネーさえ用意できれば常時チームに引き入れられるのは得だろう? ただ働きはしてないぞ」
「そこでファイトマネーをケチらないのが人がいい証拠だって」
ふむ、等価交換という魔術師の基本にのっとっているだけなんだがな。
まあ、正しい意味での等価交換は客観的な視点が必要不可欠だから厳密には難しいんだろうが。
まあ、それはそれとしてだ。
「一応言っとくが、暁と話す時は気をつけろよ? あいつシスコンの気があるから、
「だって、そこに女の裸があるんだもん」
駄目だこりゃ。
そんなこんなで飯が出てきたので喰いながら世間話をしていると、さらに新しい客が出てきた。
「おや、兵藤一誠に宮白兵夜じゃないか」
「よう、ヴァーリ。今回は残念だったな」
イッセーがなんか気安げにあいさつするが、お前ら一応宿敵だよな?
まあ、今回に関しては俺が勝たせてもらった。
とはいえヴァーリが追い込まれるというサプライズがあったからこその勝利であり、そうでなければ押し切られていたかもしれんがな。
「それで、ヴァトラーとのケンカは楽しめたか? 向こうは不完全燃焼みたいだったが」
「残念だが振られたよ。命がけじゃない戦いでは燃え切れないらしい」
俺の質問に、そう肩をすくめるヴァーリだが仕方がない。
やはり戦闘狂としてのタイプが違ったということだろう。想定の範囲内だが、これでは今後奴を呼ぶことは難しいな。
だが、これでこちらも行動の指針を確立できる。
「今後、ガモリーズセキュリティには金をまわしておこう。……来るべき真祖に最も近い男と史上最強の吸血鬼の決戦に備えてな」
「面白い。チャンスがあれば俺も一枚かませてもらおう」
速攻でヴァトラーとの再戦を望むあたり、こいつもやはり戦闘狂だ。
「それ、避けれそうにないのか? そのヴァトラーってのにも上司がいるんだろ?」
イッセーの意見ももっともだが、あいにくそれもどこまで行けるかどうか。
「望み薄だ。ヴァトラーの奴、自分とこのボス殺すための兵器のテストに協力してるからな。最悪なことに外交官特権でのらりくらりとかわしてるから追求しきれんが」
「……耳が痛いな」
うん、お前は反省しろ、ヴァーリ。
「しかも、どうもヴァトラーは俺たち以上に第四真祖の事情に詳しい節がある。おまけに第四真祖の覚醒に関してはその国のトップから支援を受けている可能性もあってな」
そこが厄介だ。
いったい何を考えている、第一真祖は。
それに、どうも獅子王機関も何か隠している節がある。おそらく絃神島と第四真祖の両方でだ。
まったく。外様はこういう時深入りできないから困る。
暁? お前、マジで大変だけど俺がいないときにまでトラブルに巻き込まれるなよな?