HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
E×Eという壮絶な問題に対応する為には、俺たちは準備が必要だ。
時空管理局やフォード連盟という壮絶な後ろ盾が手に入ったとはいえ、念には念を入れておくということも必要だろう。
なにせ、フォンフたちが裏で暗躍し続けながら戦力を大きく拡大させているのだから。
挑発した側の組織の後継であるフォンフとE×Eが手を組む可能性は低いが、しかし混乱に乗じて動く可能性はある。
……第一、そのE×Eの勢力が挑発にのってケンカを仕掛けてくると決まったわけではないのだから。
ただ単に興味を持った悪党が、悪意をぶつけるために動きに来る可能性も十分にある。
そうなれば、次元世界は未曽有の大戦争に発展する可能性もあるのだ。
そんな非常時に対抗するためにも、俺たちも動かなければならない。
故に、俺たちは忙しい中いろいろと動きを見せているのだ。
故に、いま三大勢力では大規模な軍事演習が行われていた。
「まあ、俺たちはあくまで見学なのだが」
「俺たち参加しなくていいのかよ」
と、ゲストとして招かれた俺たちはぼやいていた。
「でもまあ、私達は一種の特殊部隊としての動きに慣れすぎてるもの。こういう組織行動には向いてない節はあるわね」
姫様いいこと言いますね。
俺達、こういった大規模軍事演習とかめったにないからなぁ。
基本的に敵が大規模だったことはあっても、味方が大人数だったことはごくわずかだ。
そういう意味では参加した方がいいかもしれないが、しかしそうもいかない。
「なにせ俺達アザゼル杯に参加してますからね。あまりこういうところで手札を見せたら見せすぎでしょう」
「そこがレーティングゲームの欠点ではあるわね。公共放送だから映像は入手しやすいし、手の内がフォンフにさらされるのは警戒するべきところかしら」
そう、それこそがレーティングゲームの最大の欠点。
こっちの手札が楽に入手出来てしまうのだ。
様々な状況を想定した戦闘訓練を行い、さらに致命的な失敗を致命じゃない失敗へと変えることで経験を積ませてくれるレーティングゲームだが、こういうところでデメリットがある。
無論、その情報を入手できるのはなにもフォンフたちばかりではない。
場合によっては他のチームに知られることもある。っていうか俺はアザゼル杯に参加しているチームのそれを見ることが目的で見学している。
イッセーや姫様に参加しないように言ったのもそれが理由だ。下手に手の内を知られるのは、できるだけ避けるべきだからだ。
「「相変わらず黒い」」
「ひどいなこの夫婦は」
反論の余地はかけらもないが、しかし当人の前でいうかオイ。
「まったく。こうなったらやけ食いだこの毒舌夫婦が」
「お前に口の悪さで勝てるわけねえだろ。あ、ついでにポテチ出してくれよ」
「貴方たちすっかり観戦ムードねぇ」
などとだべるが、しかしこれはこれで見所がある。
なにせ、こういうのもある意味で平和っていうかなんて言うか。
うん、こういう時間を過ごせるのも、俺たちが一生懸命頑張っているあかしだよなぁ。
そんなことを思いながら視線を別の場所に向けると、そこには悪魔祓いの一団があつまっていた。
あの大規模模擬戦が功を奏して、我慢しきれなかった悪魔祓いの不満もだいぶ沈静化した。
縮小傾向だった悪魔祓いもどんどん活動を続けるフォンフ対策として残されていることも理由だろう。
おかげでこっちの方はだいぶましだ。
とはいえ、後方の人物たちに関してはないがしろにしすぎていたがゆえにあの事件が起こってしまったわけだが。
行方不明になった信徒たちの足取りはつかめていない。
豪快に吹き飛ばすという荒業でやってのけられたせいで、どうにも突破できないという難関だ。
単純ゆえに隙が無いというかなんというか。どうしろというのだ。まったく。
跡形もないせいで残滓を探すことが不可能。もしかすれば爆発直後なら転移魔法か何かの残滓を把握できたのかもしれないが、大激戦でそれも不可能ときたもんだ。
人類側にも協力してもらって調べているが、航空機の残骸ぐらいしか発見できていないのが実情。これは非常に困ったもんだ。
ま、まあ。さすがにこんな大量に戦闘要員がいるところで襲撃を仕掛けてくるほど、フォンフの奴も馬鹿じゃないだろう。………ないよな?
「イッセー。俺、なんか今日も忙しくなりそうな気がしてきたんだが」
「宮白、疲れてるんだよ」
「そうよ兵夜。どこの世の中に、戦力が大量に集まっているところにわざわざ仕掛けてくる馬鹿がいるのよ」
いや、二人の言う通りではあるのだが。
「禍の団が壊滅的打撃を受けたこともあって、フォンフもそう簡単に戦力を拡充出来てはいないわ。それに、先手を打ったといえば聞こえはいいけど、そのせいで時空管理局もフォンフを敵視している。……うかつに攻撃ができないのはフォンフも同じよ」
うん、確かに姫様の言う通りだ。
「ですよね姫様。そんな簡単に桁違いの兵力を用意できるわけがないですよね」
「そういうこと。これまでは戦力が少なかったり襲撃する必要があったけれど、時空管理局も地球周辺の警戒網は大きくしているし、投入できる数には限度があるわ」
さすがは姫様だ。立派になられた。
戦略眼を見事に鍛えておられる。これは、俺の仕事も減ったかな?
「もしこの情勢下でこんな規模の演習に襲撃を仕掛けてくるのなら、それは地球にかつての禍の団に匹敵する規模の戦力が集まっていることだもの。それはないわよ」
なるほど、姫様もより深く考えられるようになったもんだ。王者の風格というものが出てきたな。
そして、実際問題演習そのものは何の問題もなく終わったのだった。
敵もまた、その裏で準備をしていることを、俺は本当の意味でよくはわかっていなかったが。