HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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模造天使、舞う

 

 揚陸艇に対して警告も兼ねた威嚇射撃が放たれ、そして揚陸艇は離れた所に上陸。

 

 そして、機械人形(オートマタ)が、現れて分隊と戦闘する中、俺達は回り込んで強襲を仕掛ける。

 

 速攻で考える辺りではまあ普通の作戦だから、当然それも読まれていたようだ。

 

 そこにいたのは服装を変えて性格の悪さを堂々とさらけ出す格好になったベアトリス・バスラ―と、棺桶らしきものを抱えているロウ・キリシマ。そして、白衣の男だった。

 

 流れから考えればその正体は簡単に想定できる。

 

「久しぶりですね、賢生」

 

 フォリりんが鋭い視線でその男を見据える。

 

 ああ、やっぱりあいつが叶瀬賢生か。間違いないとは思ったよ。

 

「殿下におかれましてはご機嫌麗しく。……七年ぶりでございましょうか。お美しくなられた」

 

 恭しく胸に手を当てて一礼する賢生だが、しかし嫌味にしか見えないな。

 

 メイガスクラフトが態々襲ったってことは、質の悪いことを目論んでいただろうに。

 

 それ位のことは皆わかっているのか、全員表情が鋭い。

 

 特に護衛役だった煌坂は機嫌が悪く、躊躇なく持っていた剣の切っ先を突き付ける。

 

「よく言ってくれるわね。その王女を襲ったのはあなた達でしょう」

 

「それはメイガスクラフトの連中が勝手にやったこと。その件について私は一切関与していない」

 

「まあそれは認めるぜ。協力関係といったって、このオッサンも模造天使(エンジェル・フォウ)が爆弾代わりにしかならねえってことを言ってなかったしな」

 

 ロウ・キリシマがそう告げるが、しかしそれにしたって論外だ。

 

「どちらにせよ、実験台にしている少女の姪に対してやる態度じゃないとは思わないか? 叶瀬賢生」

 

「君が誰かは知らないが、私は夏音をないがしろにしたことはない。夏音は私にとっても姪だからな」

 

 ……なんだと?

 

「フォリりん、それ本当?」

 

「その通りです。夏音の母親は賢生の親族。それはすでに調べがついてます」

 

 シルシがすぐに聞いてくれたおかげでそれはわかったが、しかしそれにしたってこれはないだろう。

 

「善意とは押し付けるものという言葉があるし、それについて一理あるのは認めよう。だが非常時でもないのに当人の意志を確認せずの人体実験はいきすぎだ。……勝手に改造される人の気持ちを全く考えてない。背中に勝手にGを入れられたものの気持ちがお前にわかるか?」

 

「……なんか、勝手に改造されたことがあるような口ぶりなんだけど」

 

「いや、こいつは自発的に改造している奴のはずなんだが」

 

「二人とも、気持ちはわかりますが脱線してます」

 

 姫柊ちゃん、俺の所為で脱線してごめん。

 

 あと煌坂。お前はアザゼルの問題人っぷりを知らないから言えるんだ。それと暁、確かにそうだが今は余計だ。

 

 それはともかく!!

 

「一応言っておくが、既にメイガスクラフトの裏帳簿は善意の密告者があらゆるところにばらまいている。もうメイガスクラフトは終わりだと思うから投降しろ。今なら引き渡す前に美味い飯ぐらいは用意してやろう。弁護士代も払ってやるぞ?」

 

 ああ、これは一応本気だ。

 

 藍羽によってありとあらゆる情報をすっぱ抜かれたメイガスクラフトはもう終わりだ。幸運に恵まれようと事業の縮小は免れないだろう。

 

 使いっパシリはその恩恵には与れない。ここで切り捨てられるだけだ。

 

「このクソガキぃ……っ! 下手な攻魔師よりできる戦力をあっさり用意していたり、明らかに場慣れしてる雰囲気ってのはどういうことだよ! あんたみたいな奴がいるなんて聞いてないよ!!」

 

 バスラーは心底むかついているのは歯ぎしりしながらこっちを睨みつける。

 

 ああ、流石に想定外だろう俺達の存在は。そうでなければもうちょっと苦戦してたかもしれないな

 

「甘いわね。私の夫は第四真祖もびっくりの化け物達相手に死線を十は潜り抜けているの。たかが落ち目の会社相手にやられる人じゃないわ」

 

「ああ、シルシもっと褒めて。でも泣きたい」

 

 ホントなんで学生がそんなことしなけりゃならないんだよ。

 

 後半ほぼ神話の闘争だよ? なんで俺がそんな目に……っ。

 

 まあ、それはともかくこいつらは既に詰んでいる。

 

 しかし、ロウ・キリシマは余裕の表情を浮かべていた

 

「泣いてるところ悪いんだけどよ。そっちについてもあてがあるんで、模造天使(こいつ)さえ完成してりゃぁ逃げるあてはあるんだ。……ってわけで、最後のテストといこうや」

 

 チッ! つまりは真祖を相手にテストしようって腹か!

 

「なるほど。真祖を倒すだけの生体兵器の作り方さえあれば、様々な組織が拾ってくれるというわけですか。……賢生、つまり夏音を連れてきてますね」

 

「その通りです殿下。我々が用意した模造天使の素体は七人。夏音はこれらの内三人を自ら倒して霊的中枢を取り込みました」

 

 チッ! 例の戦闘とやらはそれが目的か!

 

「おい、つまりどういうことだよ?」

 

「簡単に言えば蟲毒の応用よ、暁古城」

 

 煌坂、たぶんそれだけだと暁はわからない。

 

 仕方ないので、俺はざっくり説明する。

 

「蟲毒っていうのは、毒を持った生物同士を殺し合わせると最後に生き残った生物が最も強い毒を持つという呪術の一つだ。この場合、戦わせる壺は絃神島だな」

 

「……模造天使を毒虫扱いされるのは心外だが、その説明で大体あっているといっておこう」

 

 賢生は静かにそれを認める。

 

「直接倒した三人と、それまでに敗北した三人を含めて六つの霊的中枢を夏音はその身に宿している。そして夏音本人が生まれ持つ七つの霊的中枢を合わせて合計十三。それらを結びつける小径(パス)は三十。それだけあれば、人間が持つ己の霊格を一段階引き上げるのには十分だ」

 

「その為に、叶瀬さんは自分の同類を……!」

 

 無感情に告げる賢生の言葉に、姫柊ちゃんには怒りの表情が浮かぶ。

 

 ああ、俺も人のことは言えないが外法といって差し支えないだろうな。

 

「まあいい。とりあえず無力化すればそれでいいだけの話だ」

 

 面倒だからすぐに終わらせよう。そして終わったら無人島でバカンスだ。後始末は絃神島の連中に任せる。

 

 ああ、夏音って子は何とかしないといけないな。最悪フォリりんに頼んで亡命させるか。

 

「だがなぜフォリりんを国際問題覚悟で狙う? 実験台は七人も確保してるんだから、そこからデータが取れるだろうに」

 

「そう言いたいんだけど、改造済みの叶瀬夏音からは細胞が抽出できないのよねぇ。そんなときにちょうど親族が来てくれたから、殺してでも持って帰って細胞を取り出したいってワケ」

 

「企業の走狗如きが、身の程をわきまえなさい」

 

 ふむ、流石は王族。なんていうかオーラが違う。

 

 だがバスラーも負ける気がないのか、歯を剥いて笑みを浮かべる。

 

「世間知らずな雌豚ねぇ。あとで死んだ方がマシってぐらい気持ちいい思いさせてあげる」

 

 その言葉に反応するかのように、賢生は端末を起動させる。

 

 そして、後ろのコンテナが開いた。

 

 そこにいたのは一人の少女。フォリりんそっくりのその少女の顔は、既に顔写真で確認している。

 

「叶瀬!!」

 

 古城の叫びに応えるかの様に、叶瀬夏音は目を覚ます。

 

 だが、その表情は明らかに無表情。

 

 これは、まずいな……。

 

「シルシ! 戦闘準備!! 取り押さえるぞ!!」

 

「仕方がないわね。やっぱりグランソードを連れてくるべきだったかしら」

 

 まさか最強の吸血鬼を実戦テストに使うとは。

 

 あほというか度胸があるというか。勝算はちゃんと考えてるとは思うけどな。

 

 とはいえ叶瀬夏音……否、模造天使は不揃いの化け物な翼を展開して、空を飛ぶ。

 

 ああ、これはマジで疲れる展開になりそうだ。

 

「貴女はそれでいいのですか、賢生」

 

 フォリりんの言葉に、賢生は何も答えない。

 

 ただ、端末を操作して戦闘開始の言葉を告げる。

 

「機動しろ、『XDA-7』。最期の儀式だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闘うしかない状況に対して、真っ先に動くのは宮白兵夜と煌坂紗矢華。

 

 戦闘経験がそこそこあるが故の即座の反応で、牽制も兼ねた攻撃を放つ。

 

 光の槍と呪術を纏う矢は躱そうと思えば簡単に躱せる程度の速度だが、しかし模造天使は一切動かない。

 

 動かないまま、しかし光を放ちあっさりと受け流した。

 

「……この波動、雪菜の神格振動波駆動術式と同じ!?」

 

「一緒にしてもらっては困るな」

 

 驚愕する紗矢華を不出来な生徒として扱うかのように、賢生は無表情で告げる。

 

「同じ人の手から作り出されたものでも、人間という不純物の一切を取り除いた模造天使が放つのは真の神の波動だ。神格振動波駆動術式とは格が違う」

 

「ならなおさら負けられないな」

 

 兵夜は更に追加で攻撃を放つ。

 

 展開するのは高密度の呪詛。死亡するような類ではないが、喰らえば当分は寝たきりになりそうな威力の呪術だ。

 

 神の権能すら使った呪術を前に、しかし模造天使は躊躇せず波動を高める。

 

 一瞬の拮抗の後に、呪術は霧散した。

 

「……殺さないように加減はしたが、まがい物の天使如きに弾かれるとは流石にショックだな」

 

「……一瞬だが模造天使の『余剰次元薄膜(EDM)』を突破するとは。確認されているどれとも違う異能といい、貴様はA案件の産物か」

 

 その言葉に、兵夜は眉をしかめる。

 

 よくわからないが、しかし推測はできた。

 

 そして、その推測を裏付けるように雪菜が走りながら声を飛ばす。

 

「獅子王機関がエイエヌ事変につけたコードネームです! ですが、異世界からの存在であることは最重要機密だったはずですが……」

 

 そう言いながら雪菜は賢生を狙う。

 

 一流の戦士達の攻撃すら通らないのなら、敵を制御する者達を抑えるだけ。

 

 だが、そんなことは向こうも承知の上だった。

 

「ま、賢生レベルの空間術式の使い手が見ればわかるってことよ。確かにそれなら納得だしねぇ!!」

 

 そう言いながら、バスラ―は一振りの槍を呼び出すと即座に雪菜に襲い掛かる。

 

 馬鹿正直にまっすぐ突き出された槍を雪菜はあっさりと弾き飛ばす。

 

 そしてその一瞬で雪菜は相手の力量を理解する。

 

 典型的なスペック便り。特に武術を習得しているわけではない。

 

 ならば雪菜が負ける道理がない相手であり、しかし相手もまた剣巫を相手にして勝てると自負する相手。

 

 弾き飛ばしたその隙を突いての一撃を前に、バスラ―は余裕の哄笑を上げる。

 

蛇紅羅(ジャグラ)!! 串刺しにしてやんな!!」

 

 次の瞬間、まるで蛇のように槍が勝手に動いた。

 

 槍が襲い掛かったのは雪菜の真後ろ。それは、真正面からバスラ―を相手にしている雪菜にとっての不意打ちだった。

 

 未来視ができるゆえにかろうじて回避できたが、しかしその在りえない光景に動きに乱れる。

 

「先輩と同じ、意志を持つ武器(インテリジェンス・ウェポン)!?」

 

「第四真祖も持ってるの? それは光栄だねぇ!!」

 

 バスラ―は哄笑を上げながら雪菜を攻め立てる。

 

 槍というにはあまりにも自由すぎるその軌道に、雪菜もまた苦戦していた。

 

「雪菜! あの年増よくも私の雪菜に!!」

 

「言ってる場合か、来た来た来た来た!!」

 

 そして兵夜達も大絶賛模造天使に苦戦中。

 

 しかし、実力が高いのか攻撃そのものは一切あたっていない。

 

 事実上の膠着状態に、バスラ―は雪菜を翻弄しながら舌打ちすると、こちらも端末を取り出した。

 

「まだるっこしいねぇ。だったらこいつも出してやるよ!!」

 

 その言葉と共に、遠く離れたところにある輸送船から高速で何かが飛来してくる。

 

 その姿を確認して、古城が目を剥いた。

 

「あいつらは、あの時の……っ!!」

 

 そこにあるのは、まぎれもなく模造天使。

 

 夏音に比べればその波動は大したことがないが、しかしこの状況はあまりにも危険だった。

 

「どういうことだ? 私が作ったのは七体だけだが」

 

「それじゃあ商品にならないのよ。そういうわけで、こっそりクローン使って作らせてもらったわけ」

 

 不満げな表情を浮かべる賢生にさらりと答えながら、バスラ―はにやりと酷薄な笑みを浮かべる。

 

「さて、これで詰みってところね」

 

 確かに状況はまさにその通り。

 

 既に古城も眷獣を出しているが、余剰次元薄膜を突破することができず焼け石に水。

 

 状況はまさに詰んでおり、それにラ・フォリアとシルシも苦戦していた。

 

「意外と早いわね、この男……っ!」

 

「まあな。これでも騎士団の連中は俺がぶち殺してるんだぜ?」

 

 銃撃とエストックを軽々とかわしながら、獣人としての本性を見せたロウ・キリシマもまた優位に立ている笑みを浮かべてた。

 

「お姫様の呪式弾も弾切れだろ? そろそろしまいにしようか!」

 

「ロウ! 殺すんじゃないよ!! 生かしておいた方が細胞取りやすいんだからね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだな。そろそろおしまいにしよう」

 

 そして、そこで兵夜は笑みを浮かべる。

 

 それは、追い詰められたものが浮かべるヤケクソの笑みなどではない。

 

 明確に勝利を確信したものだけが浮かべる、圧倒的強者の笑み。

 

「大体今ので手札は知れた。そのクローンが切り札だというのならば、あとは全部潰すのみだ」

 

「……はぁ?」

 

 その言葉に、バスラ―は怪訝な表情を浮かべる。

 

 さっきから通用しない攻撃を放ち続けている兵夜のその言葉の裏付けが全く想定できていない。

 

 しかし、それに対して明確に警戒心を抱いた男が一人いた。

 

「……今すぐクローンの標的をその男に変えろ!!」

 

「おいおい賢生。そんなことしなくても頭がいかれただけ―」

 

「馬鹿者!!」

 

 ロウの言葉を、賢生は一蹴する。

 

「この手の輩は例え死ぬ直前でも冷静な思考をやめん! それが勝てると断言したならば、何かしらの手段を持っている!!」

 

「その通り」

 

 いうが早いが、兵夜は躊躇することなく二つの装備を取り出した。

 

 それは、赤い籠手と紫の指輪。

 

 指輪には弓の紋章が刻印されていて、更に莫大な魔力が込められているのが誰でもわかるほどの代物だった。

 

「早くしろ! あれが発動する前に押し切らねば、負け―」

 

「七式、起動」

 

 これにて蹂躙劇はひとまず閉幕。

 

 これより始まるのは、神喰いの神魔による逆転劇。

 

 恐れるがいい模造天使よ。

 

 たかが天使のまがい物如きが、神に喧嘩を売ることの恐ろしさを。

 




公式レギュレーションが存在するレーティングゲームはともかく、実践において兵夜が弱体化したままでいることなどありえない。

ついに出します、新たな切り札!!
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