HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ 作:グレン×グレン
最近感じていた嫌な予感がひしひしと強化される。
まず間違いなく、フォンフ達は地球に新たな協力者を獲得している。
彼らは俺達が知らない技術を手にして、そして新たな力を手に入れた。
その戦闘能力は、本来の装備じゃないと言っていたあの女ですらフル装備の俺やイッセーとまともに戦えるほど。
加えて、これ以上ないほど完璧な乳技封じをなしとげたという事実が、各勢力の警戒心を煽っている。
兵藤一誠の代名詞といえ、これまで幾度となく対策を素通りしてきた
それが、完膚なきまで無効化された。
これだけでも、まず間違いなく強敵であることの証明だ。そうなってしまうのが涙出てくるが。
故に、本格的な対策チームが作られることとなったのは言うまでもない。
「……とりあえず、敵の能力の出所の一つは判明した」
その言葉に、俺は僅かに目を開いた。
グリゴリの研究所に呼び出された俺達は、アザゼルからその説明を受けた。
「アザゼル先生。出所がわかったってことは、これから叩き潰しに行くんですか?」
先のリベンジをせんと息巻いているイッセーだったが、しかしアザゼルは静かに首を横に振った。
「残念だが無理だ。これは、
「ここから漏れ出たのですか?」
朱乃さんがそう怪訝な表情を浮かべるなか、アザゼルは画像を展開する。
そこには、数年ほど年齢を若くしたかのようなヴァーリや幾瀬鳶雄の姿があり、そしていくつかの化け物があった。
目の前の残骸と比べるとより生物っぽいが、同時に首が二つあったりする者があるなど化け物っぷりもでかい。
「今映っている化け物の名はウツセミ。……かつて
その言葉に、俺達は少なからず動揺する。
幾瀬鳶雄が何故堕天使に与していたのかは気になっていたが、そんなことが起きていたのか。
「当時奴らがその実験体に選んだのが、鳶雄の通っていた高校の生徒たち。鳶雄の持つ
神滅具って本当にいろんな能力があるな。どっから突っ込んでいいのかわからねえよ。
「……で、虚蝉機関の連中は、その学校の生徒が修学旅行で乗り込んでいたフェリーを沈没させて死んだことにし、実験体として運用。運良く逃れたごく僅かな神器を持っているメンバーと、ヴァーリ含めたごく少数がメインになったが一応事件は解決した。あの時はコカビエルも動かしたんだよなぁ」
なるほど、事件そのものは解決されているということか。
「アザゼル? 人造神器のデッドコピーということは、性能はそれほどでもないはずじゃないのかしら? 割と強力だったわよ?」
姫様が当然の疑問を放つ。
確かに、当時未発達だった人造神器の技術をさらにデットコピーしたものでは、出せる性能なんて大したことがないはずだ。
しかも事件発生が禍の団がことを起こす何年も前なら、流石にキャスターが召喚されていたことも考えにくい。
それがどうしてあんな高性能に?
「……あの残骸から採集したデータを見る限り、ウツセミ機関が研究していた頃よりはるかに洗練されている。それも―」
その言葉とともにアザゼルが見せたのは、解体されているウツセミから摘出られる、何かしらの機械的物質だった。
「何だあれは? モーターのように見えるが……」
「どちらかといえば発電機だね。……あれが一体?」
ゼノヴィアと木場が怪訝な表情を浮かべる中、アザゼルは静かに告げる。
「発電機ってのは言いえて妙だが、そんなちゃちな代物じゃねえ」
アザゼルは、なんか凄くマジな表情をしていた。
「あの機械は、電力と演算装置で疑似的に魔法を発動させていた。……奴らは、機械的に魔法を発動させてウツセミを強化してたんだよ」
その言葉に、俺達全員が目を見開く
魔法を科学で再現するのではなく、科学で魔法を発動させる。
これは中々斬新な発想だ。
この中で最も魔法に詳しいロスヴァイセさんに視線が集まり、イリナが代表して質問する。
「ロスヴァイセさん、そんな事ってできるのかしら?」
「……理屈の上では不可能ではありません。魔法とはすなわち計算によって発動するものですから、言われてみればそういう発想は確かにありです」
だが、これはまた非常に厄介なことでもある。
そのことに気づいている者もいるだろう。
これはすなわち、研究が進めば高水準の魔法を使うことが金と資材があればだれでもできるようになるということだ。
また一つ、科学は鍛錬という時間を削除することに成功した。
……そして、もしウツセミの開発技術を持っていると思われるフォンフが大金持ちのスポンサーを得ることができれば―
「……アザゼル先生。これ、俺達も研究しとかないとまずいんじゃないですか?」
イッセーが冷や汗をかきながらそういうのも当然だ。
学園都市技術によって、人類の戦闘能力は大幅に向上することだろう。
さらに魔法理論の武装化など、この戦闘能力差を大幅に埋めることとなるはずだ。
まずい、まずすぎる。
下手をすれば、このウツセミが軍事兵器の主力を担うことがあるかもしれない。
俺はその可能性をひしひしと感じて、状況がまた混沌に近づいていることを切に痛感した。
そして、俺達がいないうちに暁は暁で問題が発生していたらしい。
「……絃神島にきた理由からして、偽造されていたものだった?」
『はい。詳細はわからないのですが、どうも先輩はその頃から第四真祖に関わっていた可能性がありまして』
そう告げる姫柊ちゃんの表情は、困惑の色が強かった。
「まあ、俺も獅子王機関に睨まれたくないからこれ以上の深入りは避けた方がいいんだが……。とりあえず、MARや獅子王機関は、何かをお前達に隠してるわけだな?」
まあ、当然といえば当然のことだろう。
現場で動くレベルでしかないうえに、基本的には新米を通り越して見習いである姫柊ちゃんに深いところまで情報を教えるわけがない。
そもそも俺は外様の極みだ。情報を伝えられてないからって文句が言える立場でもない。
だがまあ、警戒するべきは―
「その凪紗ちゃんのこと、気にするべきはそれだな」
『はい。先輩に伝えることも考えたんですが、なんていうか機を逸してしまいまして』
ああ、これまでの情報を調べた結果、大体把握できた。
……暁の妹さん、何かに憑かれてるな。
いや、意図的に憑霊させているといった方が近いようだ。
おそらく件の数年前の事故……ということにした一件が関わっているとするべきだろう。
そして、そう考えるのなら―
「話は分かった。俺も気にさせてもらう」
『ありがとうございます。では、私は先輩のテスト勉強を見張りに行きますので』
「できれば赤点だけは阻止してくれ」
そういって通信を切り、俺はため息をついた。
……間違いない、俺のかつての予想は正しかった。
姫柊ちゃんは監視役としては間違いなく囮だ。マジで妾の可能性があるし、そうでないにしても護衛といった方が近いだろう。
おそらく獅子王機関はその一件があったときから暁に目をつけていたはずだ。監視役がいるのなら、その頃からだろう。
それを姫柊ちゃんにも隠している以上、隠密能力に非常に長けているか、姫柊ちゃんの能力では感知できないような特殊技能もしくは能力の持ち主。
……俺も少し警戒心を強めた方がいいか。
獅子王機関は決して完全な味方じゃない。あくまで国益を考慮して俺達と交流してるのだ。手を切った方が得だと判断されたら、容赦なく動いてくるはず。
さて、これはどうしたものかねぇ。
「そういうわけでさぁ、俺としてはマジで苦労してるわけなんだよ」
「そりゃ、大変だな」
ヴィヴィ達の今後の予定を組む為にミッドチルダに来た時、俺は思わずそう愚痴をこぼしてしまった。
「悪魔になってからの一年は死に物狂いの激戦続き。その後の一年は戦後処理に奔走。落ち着いたと思ったらアザゼル杯を潜り抜けながらこれだ。……俺、過労死するかも」
まだメニューが来てないことをいいことに、俺はテーブルに突っ伏した。
「わ、ワーカーホリックの気がある兄上がここまで突っ伏すとは!?」
「いや、兵夜さん何気に休息はきちんと取ってるわよ?」
雪侶にシルシがツッコミを入れるが、それに返答するのもなんかおっくうになってきた。
「でも、そんなに不満を持ってる人がいるんですか?」
ヴィヴィがそう首を傾げるが、しかしそれは当然ともいえる。
「そりゃぁ、これまで事実上の冷戦状態だったのが、いきなり和平だからな。急激すぎる方針転換について行けない連中は数多い。……上はともかく、下や中堅どころは今でも他の勢力を出し抜いて自分達が異形達のトップに立ちたいと考えているものは多いだろうからな」
そう、それが現実だ。
幸か不幸か上がどいつもこいつもリベラル路線で行ってくれるから安全だが、それはあくまで上がリベラルなだけだ。
ハーデスはおそらく氷山の一角。不満分子は大量に存在するはずだ。
おそらくE×Eが来るまでの30年間は、そう言った事を処理しながら準備を進める事になるのだろう。
……もしくは、どでかい戦乱と引き換えに早期決着がなされるか。
どちらに転んでも頭が痛い。流石に注目が集まりすぎて民衆の人気を高めているアザゼル杯のど真ん中でやったりはしないだろうが、しかし終わった後が危険だ。
「……ヴィヴィもハイディも、アザゼル杯が終わったら、当分地球には近づかない方がいい。たぶん、その辺りの隙を狙って仕掛けてくるはずだ」
「でも、今は三大勢力は時空管理局とも交流を行っているんですよね? 規模で圧倒的に劣っているのに、そう簡単に動こうとするんですか?」
ヴィヴィの意見は確かにその通りだ。
だがしかし、だからこそなのだ。
「だからだ。だからこそ、本格的にフォード連盟や時空管理局との条約締結がされる前に動かなければならない。それならこれはあくまで管理外世界の内乱だと言い張れるから、時空管理局も動きずらい。……ハーデスのジジイなら間違いなく考えるな」
流石に展開が展開だから、交流そのものの規模はそこまででかくないんだよなぁ。
巻き返しを図るには、むしろそれが本格的になる前に動かなければならない。
最悪の場合、ハーデスは本格的にフォンフと組むことすら考えられる。
……そういう時の為の、準備もきちんと考えないとな。
「ま、流石にまだ先の話さ。そういう可能性があると心にとめておいてくれればそれでいい」
俺はそう安心させるように告げる。
「万が一の場合、それでも君達の安全は可能な限り考慮する。それがアザゼル杯に参加を打診した俺の責務だ」
そう、だからこそ、安全をこれからは考慮しなければならない。
できる限り腕利きの防衛戦力がいるところだけに関わらせる。そして、今後は護衛戦力もある程度引き連れて行動しよう。
俺はその辺をしっかり決意して、ヴィヴィの頭をなでる。
「安心しろとは言わないが、それでもそこはきちんと気を遣うよ」
「……でも、力になれる時は言ってくださいね?」
ふぅ。この子はやっぱりいい子だよ。
良い子過ぎて自分の汚れっぷりが自覚できてしまって心が痛む。
さて、湿っぽい話もここまでだ。
「さて、それではそろそろ本題に行こう」
「なんだよ。これが本題じゃなかったのか?」
ノーヴェにはそう言われるが、しかし勘違いしてもらっては困る。
「こんな湿っぽい話の後で食事をしたって美味しく感じませんもの。兄上はその辺り気を使いますのよ」
「それはすいません。気を使っていただいて」
「子どもが謙遜しない。周りが積極的に守ってくれる立場は得なんだから、少しぐらい味わっておきなさい」
そんな会話を聞きながら、俺はカバンからチケットを取り出した。
「ガモリーズセキュリティを経由して、絃神島のアミューズメント施設のチケットを手に入れることに成功したんだ。どうも暁達も行くみたいだし、サプライズで行って一緒にはしゃごうぜ?」
実は裏でこっそり獅子王機関が手をまわしていたことに気づくのはこの数日後。
後悔するのはそれに気づいた数日前である。
俺は、俺自身やイッセーに匹敵する暁のトラブル遭遇率を舐めていた。
流石にアザゼルたちは深くかかわっているのでウツセミについては理解しました。もっとも誰がそこまで発展させたのかまではわかっていませんが。
機械を媒介にする魔法運用。これに関しては発展形も計画しております。……おのれ新型神滅具め、貴様のせいでいろいろ面倒なことになったではないか。
そんでもって次回からは黒の剣巫編に突入します。
活動報告でもすでに連絡していますが、新型神滅具がこちらの人類側の戦力に致命的な特攻作用を持っている可能性が激高などの理由により、真D×Dがでるまでは、黒の剣巫編までで更新をストップする予定です。
エイプリルフールに出したから嘘だと思った? 残念、事実だよ!!