HSDD 転生生徒のケイオスワールド2 卒業生のアザゼルカップ   作:グレン×グレン

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本格的に行動開始。さて、これからどうなることやら。


何事も過激すぎると反発が強いから気を付けよう

 

 その夜、俺はブルーエリジウムを調べていた。

 

 もとより、このブルーエリジウムはただのアミューズメント施設ではない。

 

 同時にこのメガフロートは魔獣の研究施設でもあるのだ。

 

 クスキエリゼという魔獣で飯を食っている企業がスポンサーなだけあって、魔獣の研究など色々な事を行っている。

 

 ……魔族と魔獣の違いは、意思疎通ができるかどうかで判断すればいいだろう。

 

 聖域条約が締結したのは、魔族と人間との間に意思疎通が可能だったというのが非常に大きい。と、いうより前提だというべきだろう。

 

 だが魔獣は違う。強力な野生動物である魔獣は、意思疎通ができないがゆえに聖域条約を締結した国家ですら危険視している。

 

 その所為で密漁や虐殺などが絶えないというのが実情で、それを克服する為にもこういった施設は必要ではある。

 

 あるのだが―

 

「……で? D×D(こっち)のシーシェ〇ードみたいな過激派に出資してるって? そのクスキエリゼのトップが?」

 

 念話でシルシが調べてくれた情報を聞いて、俺はため息をつきたくなった。

 

 またか。またトラブルか。

 

 しかもヴィヴィやハイディを連れてきている状況で裏がある施設に関わるとか、できるだけ避けたい状況だった。

 

 が、調べてみればこの有様だ。泣きたい。

 

『ええ。それでなんだけど、どうも色々と動いているみたいよ? 例の如くフォンフが関わっている可能性も考慮した方がいいわね』

 

「だとしたらフットワーク軽すぎだろ」

 

 何処までフットワークを軽く動かしていたら気が済むんだ? いい加減にしてほしい。

 

 しかも、どうやらその過激派はここに女の子を拉致監禁していたらしい。しかもその女の子を

 

『大将、ビンゴだ。ブルエリの連中、過激派連中を抱きかかえてやがる』

 

 さらにグランソードが追加情報を展開。

 

 どうやら、これは本当にややこしいことになりそうだった。

 

 とはいえ即座に行動を起せるかといえばそうでもない。

 

 なにせ俺達はPSC。依頼を受けていないのに独断で戦闘行動をとるのには色々と難しいところがある。

 

 先に問題が起きている状況下でボランティアで民間人の安全確保を行うという名目で動かすこともできるが、それにしたって後手に回る。

 

 奴らが動いた瞬間に行動を起こすにしても、なんでそれを発見できたのかという言い訳が必要だ。

 

 だからこそ、獅子王機関という後ろ盾が必要なのだが、今回の件に関しては動きずらい。

 

 なにせ、江口結瞳に関しては詳細が分かっていないのだ。

 

 うかつに突っついて、獅子王機関の汚れ仕事にまで関わるのはよろしくない。

 

「……とりあえず警戒だけしておくか。それで、ヴィヴィとハイディは?」

 

『疲れて寝てるよ。アタシは今から合流する』

 

『その分護衛はこっちでするよっ! ほら、私なら吸血鬼だから比較的暴れてもいいわけ効くしっ?』

 

 と、ノーヴェとトマリで役割分担は完了。

 

 さて、それじゃあとりあえず―

 

「今日のところは様子見だ。相手側のアプローチを見てから、場合によっては獅子王機関に問いただしを―」

 

 そう言いかけた瞬間、俺は身を翻して防御障壁を展開する。

 

 直後、拳が勢いよく叩き付けられた。

 

「……後ろからの強襲すら反応するってどういうことよ」

 

「悪いな、生体レーダーを汲みこんでるんだよ、越智」

 

 またか、またお前か。

 

 もういい加減、この腐れ縁も断ち切りたいな。

 

「なあ、本当に俺が恨んでいる理由を説明してくれないか? 納得できる理由なら、金銭的賠償ぐらいはするんだが」

 

「ああ。たぶん納得できないだろうから気にしなくていいわよ? 死んでくれればそれでいいから!!」

 

 そうかい、だったらこっちも遠慮はしない。

 

 つまり八つ当たり同然だって自分で言ったんだな? ならこちらも加減をする必要はないわけだ。

 

 八つ当たりには罰が当たるべし慈悲はない。

 

 ………覚悟しろ。

 

 次の瞬間、俺は偽聖剣を展開して全力で殴り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ、古城達は古城達で緊急事態に巻き込まれていた。

 

 ノーヴェとトマリが入れ替わるタイミングで起きた不意打ちだったが、しかしこれでノーヴェを責めるのは筋違いだろう。

 

 間違いなく、ノーヴェでもトマリでも対応できない事態なのだから。

 

「あれっ? なにこれ!? どういうこと!?」

 

 交代タイミングで戦闘が勃発しているという事実に慌てたトマリが駆けつけた時には、既に暁が敵と向かい合っていた。

 

 問題は、その敵が写真でとはいえ見たことのある人物だということだ。

 

「トマリさんか! ちょうどいいところに!!」

 

 古城が攻撃を一生懸命回避しながら、増援の姿に歓喜する。

 

 それをカバーするように動きながら、トマリは古城を襲っている相手の姿を確認する。

 

「確か……雪菜ちゃんのお友達の煌坂ちゃんだっけっ? なんで襲ってきてるの? 修羅場っ?」

 

「違うわ!! どうも精神干渉されてるみたいでな。……俺はあいつに嫌われてるからなおさら遠慮がないんだよ」

 

 その言葉に、トマリは何故か半目を向けたくなったがすぐに気持ちを切り替える。

 

 とりあえず、精神干渉なら吸血鬼の出番だ。

 

 なにせ、この世界の魔術はその殆どが高位の吸血鬼の前には無力と言ってもいい。

 

 如何に高位の精神干渉を受けていようと、氏族クラス以上の吸血鬼が血を吸って干渉すれば解ける可能性は十分にある。

 

 トマリはギリギリ行けるレベル。そして古城に至っては真祖だ。確実に行ける。

 

「囮になるから後ろからガブっといっちゃえば? あんな格好なら吸血衝動もちょっとぐらい出てるでしょっ?」

 

「無茶言うな!!」

 

 古城の渾身のツッコミが出る。

 

 なにせこの世界の吸血鬼の吸血衝動は食欲ではなく性欲だ。

 

 殺されかけている状態で性的に興奮しろとかどんな趣味だとツッコミを入れたい古城の気持ちもわからないではない。

 

 だが、そんな漫才をしている余裕は欠片もなかった。

 

「纏めて倒してあげるわ」

 

 明らかに操られていると理解できる目で切りかかる紗矢華の攻撃をかわすが、遠慮なく煌華麟の能力が発揮される。

 

 その能力は二種類。

 

 一つは弓としての運用。鳴鏑矢を利用した人間では不可能な詠唱による、高位の眷獣に匹敵する瞬間高出力呪術の発動。

 

 一つは剣としての運用。疑似的な空間切断の再現による、桁違いの威力と防御力の発現。

 

 遠近両用の優れた装備出あり、はっきり言って戦闘技量に乏しい暁や、氏族クラスでしかないトマリでは一対一だと苦戦必須の実力者だ。

 

 なにせ、彼女はあのディミトリエ・ヴァトラーの監視役に迄任じられたもの。……万が一の為のセーフティになるほどの技量があると見込まれていたに等しい。

 

 加えて動きにも隙が無い上、どうも全身に呪術を仕込んでいる。

 

 下手に触れたらその時点で死にかけ、さらにそれを行うのが困難だ。

 

 となれば、より生命力と対呪術能力の高い古城をメインに運用するのが得策である。

 

 そこまでしっかりと判断して、トマリはとりあえず自分から接近した。

 

 しっかり眷獣を出して相手の視界から古城を隠しつつ、囮らしくあからさまに体当たりを仕掛けようとする。

 

「あ、バカ下がれ!! そいつ姫柊でも五回に一回しか勝てないとか」

 

「うえぇええええ!?」

 

 慌ててバックステップした瞬間、空間切断の刃が人薙ぎされた。

 

 頬に切り傷をつけながら、トマリはかろうじてそれを回避した。

 

 回避したが、これはまずい。

 

 ……この女、全身を呪術で強化している。

 

 その気になれば下手な獣人を超える身体能力を発揮できるだろう。

 

 しかし、そんなものを行うなど正気の沙汰ではない。

 

 自殺行為といっても過言ではない。並みに術者なら暴発して自滅する。

 

 しかし、紗矢華の動きにためらいはない。

 

 これは操られているという次元ではない。間違いなく、彼女はこれをもとから行使できる。

 

「うっわぁっ! ちょ、この子すごいねっ!!」

 

「……まさかこんなに強かったとは思わなかった」

 

 唖然とする古城の方に一瞬だけ視線を向けたトマリだが、その視界がやばいものを映した。

 

 あ、これやばい。

 

 思ったその瞬間にはタックルをぶちかまして古城を弾き飛ばす。

 

「ザ・クラッシャー!!」

 

 そして眷獣を出して盾にして、その攻撃を受け止めた。

 

 そして、斬撃が轟音を放ってザ・クラッシャーに大きな裂傷を刻み込む。

 

「眷獣だと!?」

 

「伏兵だねっ!!」

 

 その言葉と共に、さらに新たな人影が現れる。

 

「……スポンサーに些事を報告するわけにはいかないが、しかし手を抜いたな、妃埼め」

 

 舌打ちしながら現れたのは、意志を持つ武器(インテリジェンス・ウェポン)の剣を持った吸血鬼。

 

 こちらもまた、古き世代と思わしき者達だった。

 

 それも、武装した獣人と思わしき兵士達が何人も付いて来ている。

 

「吸血鬼と獣人が共闘っ? あれ? これってもしかして夜の帝国とか本腰入れて動いてるっ?」

 

「思った以上に大ごとってことかよ!?」

 

 流石にこれは想定外だ。

 

 とはいえ、向こうから友人に仕掛けてきている以上緊急避難は適用されるはず。

 

 そこまで考えて、トマリはすぐに状況を変えることを考慮した。

 

「……古城くんは煌坂ちゃんのことお願い。……向こうはこっちで何とかするよっ」

 

「え? いいのか?」

 

 古城が一瞬躊躇の感情を浮かべるが、その鼻先に指を押し当てると、トマリはニコリと笑顔を浮かべる。

 

「大丈夫っ! トマリお姉さんはこれでもすっごく強いからねっ!! ……優先順位を間違えちゃ駄目だよっ!!」

 

 いうが早いか、ザ・クラッシャーが地面を削り、トマリと古城の間に断絶を作る。

 

 獣人でも楽には飛び越えられない規模の断絶を壁として、トマリはいつもとは違う微笑を浮かべる。

 

 それは、いつも浮かべているニコニコとした笑顔ではなく、弱者に対して向ける冷笑だった。

 

「……じゃあ、久しぶりに吸血鬼(化物)らしく暴れようかなっ?」

 

 その瞬間、地獄が顕現した。

 




なぜか戦力が万端になっているブルーエリジウム。

……まあ、絃神島で起こるトラブルに奴が動いていないわけがないのですが。
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