汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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提督の趣味に走った施設(?)シリーズその4です。

霞が地下室で出会うものは……!


第十二話 霞と地下室の謎

 

 

「さぁて、楽しい模様替えの時間だぜ!」

 

 ついに注文していた畳が届いた。

 これでやっと俺の部屋を畳張りにすることが出来るぜ!

 

 俺は提督、なら自室を改装するくらいどうってことないよなぁ。

 

「さぁ妖精さん、頼むぜ!」

 

 妖精さんが部屋に散っていき、畳を敷く準備をする。

 ああ、あの独特な香りが楽しみだねぇ!

 

「……あ? どうした妖精さん」

 

 なんだ?

 部屋の一角、フローリングの上で、妖精さんが何かしている。

 なんだ、何かあるのか?

 

「オイオイ、なんだよコイツはよぉ?」

 

 何故、今まで気が付かなかったのか。

 部屋の隅、床に貼られた木板の色。

 ある一箇所だけ、色が微妙に違うぜ。

 

 こいつは、『匂う』なぁ!

 

 床をドンドンと拳で叩いていく。

 すると、まるで空間があるかのような、絶妙な音の変化。

 これは、予感的中かぁ?

 

「妖精さんッ!」

 

 無数の妖精さんが取り付き、床をバリバリと剥がしていく。

 どうせ畳にするんだ、好きにやっちまえ!

 

 ものの数秒で取り払われた床。

 そしてそこに現れた物は。

 

「……床下収納、って感じじゃねえよなぁ」

 

 人一人が簡単に入ることの出来る、地下へと続く階段への入口だった。

 

 

 ……。

 

 

「ジメジメしてやがるな……」

 

 俺は妖精さんを引き連れ、地下室を降りていく。

 想像以上に立派な造りの、隠し通路だ。

 

 こんなもの、どうやって造りやがったんだ?

 

 前任と艦娘が、協力して作ったのか。

 こんな事に金を無駄使いしやがってよぉ……。

 

 それほど長くない階段を降りきると、金属製の扉が現れた。

 この先に、何があるやら。

 

 ま、どうせ甘い前任のことだ。

 艦娘共との、秘密の遊び場かなんかだろう。

 

 秘密基地ってのは、誰もが憧れるモンだからなぁ!

 

 ノブに手をかける。

 幸いにも鍵はかかっていなく、簡単に扉は開いた。

 

 そして、中に広がる光景は。

 

「…………………マジかよ」

 

 ……どうやら俺の想像以上に、前任はふざけた奴だったらしい。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「もう! 昼食の時間が過ぎちゃうじゃない!」

 

 司令官は、最近秘書艦を取り始めた。

 

 前はいらないいらないと言っていたが、大淀さんが説得したらしい。

 実際につけてみれば、仕事の能率も上がってご機嫌だった。

 

 私はそんな司令官の、今日の秘書艦。

 初めてだけど、全然緊張はしなかった。

 

 ……前の奴だったら、そうはいかなかっただろうけどね。

 

 今の司令官は口と目つきこそ悪いが、私たちに優しい……と思う。

 仕事も出来るし、提督と認めるのも吝かではない。

 

 でも、昼食に遅れるのはダメ!

 そもそも自分で時間を決めたんだから、きちんと守りなさいな!

 

「ちょっとクズ司令官! いるんでしょ! 何してるの?」

 

 司令官の自室の扉をノックするが、返事は無い。

 ちょっと用事が、と言っていたので、此処にいると思うのだけど。

 

 ちなみに、司令官にクズを付けて呼ぶのは、結構前からだ。

 この前、つい口走ったら、面白がってそう呼ぶように言ってきた。

 マゾかと思ったわ。

 

 それに、いちいち私の事を子供扱いして馬鹿にしてくるし!

 『虐待』とか言って、司令官のほうが子供っぽいじゃない。

 

 まぁでも、本当のクズは……。

 

「返事しなさいったら! ……もう、開けるわよ?」

 

 幾ら待てども返事がないので、私はドアを開けて中に入った。

 

 床が剥がされている、室内。

 そして、剥がれた箇所には、謎の階段が見える。

 

「……司令官?」

 

 コレは一体何?

 こんなものが、この部屋にあったの?

 

 司令官は、この下に行ったの?

 

「行くしか、ないわよね」

 

 此処で待っていてもよかった。

 別の所を探してもよかった。

 いっそ、自分だけで昼食を食べに行ってしまってもよかった。

 

 しかし、何故か奇妙な好奇心が湧いてきてしまい。

 私は、恐る恐る階段を降りていくのだった。

 

 

 ……。

 

 

 暗くて、湿っている。

 何か不穏な空気を肌で感じ、ゾクリと寒気立つ。

 

 ここは一体、なんなのだろう。

 前任が、此処を作ったのだろうか。

 それとも司令官が、妖精さんの力を借りて?

 だとしたら、何の為に?

 

 私達に見せたくない、何かを隠しておく為に……?

 

 階段の終点へたどり着く。

 目の前にある扉は、少しだけ開いている。

 

 この先に、何があるの?

 

 私は、震える手で、ドアをそっと開けた……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「こいつぁ……ッ」

 

 流石の俺も、こいつはブルっちまったぜ。

 まさか自室の地下に、こんなやばい部屋が隠されているなんてなぁ。

 

 大量の、高速修復材。

 その原液が入った薬ビンが、所狭しと保存されているとは……。

 

 高速修復材とは。

 艦娘の艤装を修復する『入渠ドック』の働きを、飛躍的に増進する薬である。

 これを100ミリリットル程使用することで、艦娘一隻分の艤装が、どれだけ損傷していても一瞬で治る。

 

 結構な価値のあるその修復剤が、こんなに保管されている。

 これだけの貯蔵量、超大規模鎮守府くらいはあるぜ?

 

 しかし、なぜこんな所に隠していたんだ?

 前任の野郎は何が目的で……。

 

 ……ははぁ?

 ククク、読めてきたぞ、事の真相がなぁ?

 

 前任の野郎、勿体ないからって使わずにとっといたんだな!

 大本営にバレるのを恐れて、こうして隠していたんだ。

 

 こういう所を節約し、ぬるい出撃スケジュールを組んでいたんだろう。

 そしてダラダラと任務をやっていたから、更迭されちまったんだ!

 

 どうせ後からこれを売りさばいて艦娘共と豪遊する予定だったんだろうが……。

 クックック、バカなやつめ。

 

 こういうもんは使ってこそだろうがよぉ!!

 

 いやしかし、馬鹿には感謝だな。

 これで随分、海域攻略に余裕が出来たぜ。

 ま、シフトは変えないがな。

 

 艤装が治っても、艦娘共は治せねえ。

 俺の道具は、常に最高のコンディションで出撃させる!

 それが『賢い兵器の使い方』だよなぁ。

 

 ふーっ、ま、棚からぼた餅だったな。

 俺の完璧な推理と洞察力で、謎解明ってわけだ!

 

「し、司令官?」

 

 俺は背後から聞こえた声に振り向く。

 そこには今日の秘書艦、霞がいた。

 

 こいつ、俺を探しに来やがったのか。

 部屋を眺め回し、口をアホみたいに開けている。

 

 ……あぁ。

 こいつ、この部屋を見つけられて焦ってんな?

 前任と結託して隠した物が、見られちまったんだから。

 

「どうだぁ霞。すげえだろ?」

 

「こ、これ……司令官が?」

 

 そうだ、『俺が暴いた』んだ!

 

 ククク、焦燥が隠しきれてないぜ霞さんよぉ!

 

「……な、なんで!?」

 

 あ?

 『なんで見つけちまった』か。

 そうだなぁ……。

 

「お前達の『努力』を、無駄にしたくなかったから、かな」

 

 そう、卑怯でくだらねえ、過去の罪という名の努力をなぁ!

 妖精さんと俺の鼻は、誤魔化せなかったッ!

 

「……そ、そう」

 

 クク、霞め、どうにか平静を装っているが。

 耳が真っ赤になっているのを、見逃しはしねえぜぇ?

 

 今日はお前らの得意な嫌味を、俺の方から言わさせて貰ったぜ。

 

 あー、快感だ。

 悔しくてたまらないって表情して……クックック。

 

「は、早く行きましょ。もうお昼よ!」

 

「おーそうかそうか」

 

 俺を昼飯に迎えに来た、と。

 そういうことにしておいてやるぜぇ。

 

 ぐぅ~……。

 

 お?

 霞の腹から結構な音がしたなぁ。

 ガチで腹は空いてるみてえだな。

 

「クックック、随分かわいい腹の虫を飼ってるなぁ?」

 

「……っ、な、何よっ!」

 

 まぁ、俺も腹が空いてきた。

 ちょいと遅めの昼食と洒落込むか。

 

 更なる虐待のための、栄養補給させてもらうぜ!

 

「お子様ランチにするかぁ? クク……」

 

「しないわよっ! このクズ司令官!」

 

 霞め、あんなことがあった後にも関わらず俺をクズ呼ばわりとは……。

 

 流石、俺の見込んだ艦娘よ!

 それに、実際俺はクズだしなぁ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「だからちゃんと栄養のあるものも食べなさいな!」

 

「うるせー! 俺の勝手だろうが!」

 

 あーもう!

 高速修復材をあれだけ私達のために保管していたんだから、

司令官として認めてあげないことも無いのに!

 

 人間的にぜんぜんダメダメじゃない!

 

「栄養管理も出来ないようじゃ、まだまだ未熟って証拠よ? クズ司令官?」

 

「なんだてめえは! 俺のおばあちゃんか!!」

 

「おっ!? 言うにことかいてお婆ちゃん!? せめてお母さんって言いなさいよ!」

 

「霞ママーってか!? アホらしっ!」

 

 この司令官は、本当に……!

 絶対に人としては認めてあげないんだから!

 

 このバカっ!

 

 




霞にはやっぱりクズ司令官って言って欲しいものです。

視察の足音が迫ります。

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