汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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今回は少し暗いお話です。

夜を怖がる、この艦娘は誰でしょう。


第十三話 夜とトラウマ

「……ちっ、化け物の癖にこんな事もできんのか。使えない」

 

「申し訳、ございません」

 

 目の前の男に、黙って頭を下げる。

 なんで、こんな事をしなくちゃいけないんだろう。

 なんで私が、こんな目に合わなくちゃいけないんだろう。

 

「本当に、お前らは、ゴミクズだな、ええっ!?」

 

「うっ……!」

 

 下げていた頭を、思い切り殴られる。

 ふらつきながら、何とか倒れ込むのを我慢した。

 

 倒れてしまったら、もっと蹴られてしまうから。

 

「この化け物め! 抵抗してみろ! そら!」

 

「……っ! ぐっ、うぁ」

 

 私にできることは、ただ黙って耐えるだけ。

 飽きて、開放してくれるのを待つだけ。

 

 人間に、刃向かうことは出来ないから。

 

「何耐えているんだ……おらぁっ!」

 

「あぐぅッ!?」

 

 今日は、運が悪かった。

 腹を殴られて、つい倒れてしまった。

 

 待ってましたと言わんばかりに、足が振り上げられる。

 そして、私の全身を蹴り回してくる。

 

 痛い。

 痛いよ……。

 

(助けて……誰か……提督っ!)

 

 這いずって、暗闇から抜け出そうともがいて。

 唯一見える光の中に、提督が居た。

 

 優しくて、ちょっとかわいい、私達の提督……。

 

「ククク、お前なんていらねぇんだよ」

 

「え……?」

 

 提督?

 なんで?

 なんでそんなこと言うの?

 

「使えねぇ道具はいらねえ。じゃあな……」

 

「待って、待ってよ提督っ!」

 

 やめて。

 置いて行かないで。

 

 貴方の道具でいい。

 貴方の物でいたい。

 

 だから、傍に居させて……。

 

 私を、地獄に戻さないで……!

 

「ひっ!………………あ、ああ……」

 

 私は汗だくで目を覚ました。

 下着まで、嫌な汗でびっしょりだ。

 

 夢。

 またあの夢だ。

 

 もう、あいつはいなくなったのに。

 提督は、私を捨てたりしないのに。

 

 今もまだ、私は苦しめられている。

 窓の外を見ると、もう夜明けだ。

 

 ほっと息をつく。

 夜が、終わった……。

 

 

 私は、夜が怖い。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「いただきますだぁ!」

 

「いただきまーす!!」

 

 今日のこいつら朝食はサンドイッチだ。

 ハム、タマゴ、レタス、トマト……。

 当番の最上型どもが必死こいて作ったモンだ。

 

 新鮮な食材に塩と胡椒、そしてハーブの風味が鼻に香る。

 ま、こいつらにはお似合いだなぁ。

 

 だが俺の飯は、ホッカホカの焼きそばパンだぁ!

 羨ましいだろう艦娘どもよ!

 

 さぁて、今日は何するかなぁ?

 午前中は書類仕事として、午後の予定がねぇ。

 最近大規模任務を成功させたからなぁ。

 

 まあ適当にそこらにいる艦娘でもイジメて遊ぶかぁ? クックック。

 

 ……そういえば大本営から『視察予定』みたいなもんが来てたなぁ。

 まだ先の話らしいが、ちっ、面倒くせえ。

 

「……んー?」

 

 これからの予定を考えながら、飯にありつく艦娘どもを眺めていると、

少し気になるやつがいた。

 

 あいつ、目の下にくまが出来ていやがる。

 それになんだか覇気もねえみたいだし、どういうことだぁ?

 

 まさか。

 あいつ、俺の決めた就寝時間を守っていねえのか!?

 11時には部屋に入って、12時には完全消灯だって言ってんのによぉ!

 

 これは兵器共の主として、一言言ってやらなきゃなぁ。

 

「オイ」

 

「あ……提督」

 

 ふーむ、目も若干虚ろだし、やはり眠たげだなぁ。

 

「お前、夜ちゃんと寝られてんのか」

 

「えっ!? あ、えっと……」

 

 やっぱりな。

 こいつのこの動揺した反応から、疑念は確信に変わったぜ。

 

 こいつ、夜更かししてやがるなぁ!

 どうせ部屋で本読んだりなんかしてんだろ!

 

 俺の命令に背くとは、中々の反抗心じゃねえか。

 しかし、それが見た目に現れちまうとはなぁ。

 

 お前は、俺の道具だ。

 そんな状態でいられたら、迷惑なんだよ!

 

 ……いや、そうだな。

 思いついたぜ、『虐待』をよぉ。

 

 夜更かしする悪い道具に対する、最高の対応をなぁ!!

 

「今日の夜、俺の部屋に来な」

 

「……えっ?」

 

 さて、図らずも虐待チャンスが生まれたな。

 ああ、夜が待ち遠しくてたまらねえぜ!

 

 命令違反、という大義名分の元にやる虐待行為はさぞ清々しい気分になれるだろう。

 あいつの苦しむ顔が目に浮かぶぜぇ?

 

 さぁ、『虐待』タイムだぜ、妖精さん!!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 夜が来た。

  

 何時もだったら、寝るのが怖くてテンションが下がってしまうけど。

 今日は、それどころじゃなかった。

 

 提督の自室に、呼び出されているからだ。

 

 朝食の時間に、私の寝不足がバレてしまった。

 しかし提督は何も言わず、ただ部屋に来るようにと。

 

 ……何されるのかな。

 

 あの提督の事だから、大丈夫だとは思うけど。

 

 そう、『夢みたいなこと』は起こらないんだ……。

 

「し、失礼しまーす」

 

 頭ではそう分かっていても、身体は怯えてしまっている。

 震える足を励まして、私は扉を開けた。

 

「よぉ、よく来たなぁ」

 

「う、うん」

 

 時刻は夜11時。

 いつもなら部屋に居る時間。

 

 こんな時間に提督の所にいるなんて、新鮮な気持ちだ。

 そして、提督の格好も新鮮だった。

 

 いつもの軍服を脱ぎ、紺色の甚平を来ている。

 そういえば部屋も和室になってるし、和風が趣味なのかな。

 

「て、提督。なんで、私を呼んだの?」

 

「あー?」

 

 寝不足だけど、何も怒られるような事はしていないはず。

 任務も訓練も、真面目にできている。

 

 捨てられたりなんか、しないはず……。

 

「クックック、まだ、分かんねえかぁ?」

 

 提督はそういいながら、部屋に布団を敷き始めた。

 ……二人分の、布団を。

 

「え、ちょ、何やって」

 

「お前最近寝不足なんだろう? なら、俺が寝かしつけてやるよ!」

 

 ……はい?

 提督は一体、何を言っているのだろう。

 

 確かに寝不足だけど、それでなんで一緒に寝る事になる?

 ていうか、寝かしつけるって、子供みたいに……。

 

 多分この提督のことだ。

 どうせいつもの『虐待』のつもりなんだろう。

 ウキウキしながら枕を用意している顔を見れば、何となく分かる。

 

「ほら準備が出来たぜ! さっさと寝ろ!」

 

「はぁ……分かったよ」

 

 付き合ってあげよう。

 それに、提督と一緒に寝るのも、別に悪い気はしない。

 ちょっとだけ、ドキドキするけど。

 

 でも、電気を消せば見えないはずだ。

 私の、赤く染まった顔は。

 

 

 …………。

 

 …………。

 

 真っ暗な部屋。

 時計の音だけが、静寂の中に聞こえる。

 

 暗闇の中に、私の大嫌いなあいつの顔が映る、気がする。

 

 怖い。

 眠れない。

 でも、何時も気が付くと眠ってしまい、夢の中なんだ。

 

 嫌だ。

 もうあんな夢見たくないのに。

 折角助けてもらったのに。

 

 提督……。

 怖いよ……。

 

 

 ぎゅっ。

 

(えっ?)

 

 布団の中で握りこぶしを作っていた私の右手に、暖かい物が触れる。

 そして、力強く握りしめてくれた。

 

 この手は、提督?

 

 恐る恐る拳を開き、その手を確かめるように触る。

 固い、男の人の手のひらだ。

 

 自然と、私からも提督の手を握った。

 なんとなく、気持ちが安らぐ様な気がした。

 

 なんだか、安心するな……。

 理由はわからないけど……。

 

 なんだか、これなら、眠られるかも……。

 

 

 …………。

 

 …………。

 

 

「……ちっ、化け物の癖にこんな事もできんのか。使えない」

 

「申し訳、ございません」

 

 まただ。

 もう嫌なのに。

 

 もう、こんな地獄……。

 

「本当に、お前らは、ゴミクズだな、ええっ!?」

 

「っ!」

 

 来るであろう衝撃に、私は目を閉じて身を庇った。

 

 しかし、待てども痛みはやってこない。

 

 その代わり、右手に『あの』感触。

 これは確か……。

 

 恐る恐る、目を開けると。

 

「ていと、く?」

 

「よう。迎えに来たぜ」

 

 提督が、私の右手をしっかりと握ってくれていた。

 

 助けに、来てくれたの?

 私を、この悪夢から救い出してくれるの?

 

 私を、捨てない?

 

「お前は俺の物だからなぁ。こんな所に何時までもいられちゃ困るんだよ」

 

 提督が私の手を引っ張っていく。

 暗闇から、明るい光の指す方へと。

 

 大嫌いなあいつが、どんどん遠ざかっていって。

 そして、遂に見えなくなっていった。

 

 真っ白な場所に残されたのは、私と提督だけ。

 私は左手を提督の右手に絡ませながら、彼に抱きつく。

 

「提督っ! 提督ぅっ!!」

 

「クックック、おやすみなさいだ。もう、悪夢は終わりだぜ……」

 

 まばゆい、そして明るい光が、提督を飲み込んでいく。

 そして、私も……。

 

 

 私はこの日を境に、あの夢を見ることはなくなった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「クソッタレが! 何てザマだ!」

 

「んぅー……あ、提督。おはよ~」

 

 ああ、おはよう……じゃねえ!

 俺としたことが、大失態だ。

 

 昨日の晩、こいつを部屋に入れて一緒に寝た、まではいい。

 予定通りだったし、流れも完璧だった。

 

 だが、その後だ。

 

 横に寝かして一晩中監視することで、夜更かしを防止し。

 更には間抜けな寝顔を撮影して晒し上げちまおうと考えていたのに!

 

 その為にわざわざ青葉からカメラまで借りたってのによぉ!!

 

 俺、大爆睡しちまったじゃねえか!!

 

「あー、久しぶりによく眠れたよ」 

 

「ク、クク、よかったなぁ」

 

 クソが!

 俺が寝た後何してやがったのか知らねえが。

 ……そういやなんか左手に違和感が。

 

 まさかこいつ俺が寝ている間になにか悪戯を!?

 

「ふふっ! 私、夜が好きになっちゃったかも♪」

 

「は、はぁ? おいてめえ」

 

 堂々と夜更かし続行宣言か?

 完全に舐められちまったじゃねえか!!

 

 はぁ……。

 まあしかし。

 そもそも『夜』にコイツとタイマン張ろうとしたのが間違いだったか。

 

 軍学校では要注意艦娘として、あげられていたからな。

 そう考えると、こいつが寝不足になってたのにも納得がいくぜ。

 

 『夜戦主義』の艦娘め。

 

「ほら、ぼけっとしてないで早く行こ提督! あ、もしかして今夜も私と……」

 

「寝ねえよ! さっさと食堂行くぜ『川内』よぉ!!」

 

 今回は俺の負けを認めてやろう。

 だが、次回は必ず『虐待』してやるからな!

 

 




正解は川内でした。

提督初の虐待失敗!
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