汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

26 / 44
何処か遠くの、何かの記憶。

ちょっとセンチな長門さんにも、提督は容赦無く虐待を加える!



後書きにて少しご報告。


第二十六話 長門といつか見た光

 

 

 眩しい。

 

 あの光は何だ。

 何故あんなに、煌々と輝いているのだ。

 

 見たこともない。

 そして聞いたこともない音を轟かせながら、私の身体に衝撃が走る。

 

 この記憶はなんだ。

 何故こんなに、ハッキリとしているのだ。

 

 これは私の見ている夢なのだろうか。

 それすらも、よくわからない。

 

 ……私は一体何者なんだ。

 分からない。

 

 漠然としているが一つだけ確かな想いがある。

 

 沈みたくない。

 生きていたい。

 

 あんな光に包まれて死ぬのではなく。

 また、戦場で戦い、そして暖かな命の傍で死んでいきたい……。

 

 視界が暗くなる。

 何も見えなくなっていく。

 

 ……そうだ、そうだった。

 私が何者かなんて、分かりきっていた事ではないか。

 

 私は……。

 

 ……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おい長門ォ! 暇かー!?」

 

「む……ああ、大丈夫だ提督」

 

 食堂でぼーっとしていた長門に声をかける。

 なんだ、腹一杯になって眠くなったのかぁ?

 

 随分余裕かましてるじゃねえか!

 そして、そんな余裕綽々な戦艦様にお仕事だ!

 

「ちょいとついて来てもらおうか」

 

「? ……わかった」

 

 クク、何をされるのか全く分かってねえ顔だなぁ。

 しかし、その端整な顔立ちが悲痛に歪むのは時間の問題だ。

 

 俺の『虐待』でなぁ?

 

「提督、一体どこに向かってるんだ?」

 

「まぁまぁ。お仲間が待ってる所さ」

 

「お仲間……?」

 

 とぼけやがって。

 最近お前があいつらとつるんでるのは知ってるんだよ。

 

 兵器同士の交流関係の把握も、司令官の努めだからな!

 

 

 鎮守府本館を出て、運動場脇を歩く。

 今日も太陽ギラギラ、いい天気だぜマジで!

 

 そして……。

 

「おーい、連れて来たぜぇ!」

 

「あ、長門ー!」

 

「ナガート!」

 

 クク、逃げ出しはしなかったみてえだなァ。

 ま、これから命令される恐怖の指令を聞いちまえば、

その笑顔も、もう見れなくなるんだろうがな!

 

 プリンツ、サラトガ、酒匂、そして長門。

 

 こいつら、何故か仲がいい。

 艦種、国籍すら異なるのにもかかわらず、だ。

 

 理由はさっぱりだが、仲良きことは美しきかな。

 そしてその美しい仲の良さを、虐待に利用してやるぜ……!

 

「皆……どうしたんだ?」

 

「さぁ? Admiralさんが集まれって言うから」

 

「何なんだろうねぇ」

 

 呑気してやがるな。

 仲良し同士集まって、余裕そうじゃねえか。

 それじゃ、ぶちかましてやるとするかなぁ!

 

「さて、お前らを集めたのには理由がある」

 

「お前らを『特殊任務遂行員』に任命する!」

 

「特殊任務? 新しい海域ですか?」

 

 クックック!

 生憎だが艦娘としての仕事じゃあねえ。

 

 もっと低俗で、めんどくさい、誰もが嫌がる汚れ仕事さ!

 

「いいや、出撃する必要のない業務だ」

 

「どういうことなんだ?」

 

 こいつらに押し付ける仕事、それは……!

 

「お前らには、この鎮守府の『花壇』を管理してもらうぜぇ!!」

 

「ぴゃぁー……『花壇』?」

 

 そう!

 この鎮守府には、花とかそういうものが一切なかった。

 食堂に花瓶が置いてあるくらいで、何もねえ。

 

 外にも、一切咲いてなく、しょぼい植え込みと木が生えてるだけ。

 なんだこのつまんなさは!

 

 俺は花を見るのは好きだ。

 綺麗だし、色々種類があって楽しいし、実家の自然を思い出すからなぁ。

 

 だが、しっかり管理したりすんのはめんどくせえ!

 俺の仕事は兵器共の管理でいっぱいなんだよなぁ!

 

 だから、その兵器共に管理させる。

 それなら俺は手間なく花を鑑賞でき、そして艦娘には負担をかけ虐待できる。

 一石二鳥の素晴らしい作戦ってわけだ!

 

「しかし提督、そもそも此処には花壇なんて」

 

「あるんだよなぁ」

 

 もう妖精さんに頼んで、ガーデニングの下地は整えているんだよ!

 あとは此処に花を咲かせまくるのみ!

 

 結構な面積、花壇に変わったぜ!

 まあデッドスペースだったからな、無問題だ。

 

「わ、私達がやるんですか?」

 

「花を育てたことなんてないぞ」

 

 クク、言い訳して逃げようとしてるなぁ。

 だが、もうそんな事無駄だって学ばねえのか?

 

 俺が、そんな簡単に逃がすとでも思ってんのかよぉ!!

 

「最初は俺が監督してやるし、妖精さんだって補助してくれるぜ?」

 

「そ、そうなんですか?」

 

「ぴゃあ! それならやってみたいかも!」

 

 逃げ場なし!

 とっとと堕ちな、地獄になぁ!

 

「でしたら……」

 

「ビスマルク姉様もお花好きだし……」

 

「……まぁ提督の命令には従うさ」

 

 よっしゃぁ!!

 ハイ終わったー!

 

 お前ら全員、終了ッ!

 もう助からねえぜぇ?

 

「そうと決まれば早速行くぞ!」

 

「行くって、どこへですかぁ?」

 

「座学だよ! ガーデニングについてみっちり教えてやらぁ!」

 

 やるからには半端は許さん。

 至高のお花畑を完成させてもらうぜ!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 眩しい。

 

 私の頭上で煌々と輝く光。

 地上に降り注ぐ、力強い光。

 

 何かを思い出す気がする。

 昔、遠い昔の記憶。

 

 私が『艦娘』になるより前の、記憶。

 

 艦娘の殆どは、船だった頃の記憶を持っていない。

 たとえあったとしても、薄っすらとした儚いものだけだ。

 

 私のこれも、そういうものなのだろうか。

 

 しかし、記憶の中の光と、今見えている光は違う。

 こんなにもエネルギーにあふれていて、暖かい。

 

 これは……この光は……。

 私の望んだものだった。

 

 生命に溢れ、暖かで。

 安らぎをもたらしてくれる、これは……。

 

 

「ナガート、もう水やり終わったの?」

 

「……ん、ああ、こっちはな」

 

 サラに声をかけられ、意識を戻す。

 土の匂いと、植物の青臭さ。

 

 頭上には、輝く『太陽』。

 

「最近雨が降らないから、大変だよね」

 

「でもお花さん、こんなに元気だよ! ぴゃ!」

 

 足元を見る。

 沢山の、色々な種類の花が一面に咲いていた。

 

 命が、たくさんあった。

 

「あっと言う間だったような、そうでもなかったような」

 

「植える時が一番きつかったよね」

 

「でも頑張ったかいがあったね! 阿賀野姉も喜んでたし!」

 

 皆の顔を見る。

 理由はよくわからないが、彼女達とは馬が合う。

 

 それも、『あの光』の記憶と関係しているのだろうか。

 

「今日は午後から視察官さんが来るんですって」

 

「『元』だけどね」

 

「なら丁度いいな。私達の成果を見てもらおうじゃないか」

 

 過去というものは、決してなくならない。

 艦だった頃も、あの男に虐げられていた頃も。

 

 ずっと一緒に、これからも歩んでいくものなのだろう。

 

「ユージンの植えたシクラメン、綺麗ね」

 

「サラさんのリコリスだって」

 

 花壇の脇を、並んで歩いて行く。

 仲間と、花、そして提督。

 

 私はこんなに色々な命に……。

 

「長門さん! ほら見て!」

 

「ああ、見えているさ。私の植えた彼岸花だな」

 

「ぴゅぅ~……綺麗だねぇ……」

 

 真っ赤に咲き誇る彼岸の花。

 ……どうやら私は、まだまだ生きていたいらしい。

 

 この鎮守府で、ずっと。

 

「おーいお前らぁ! もう昼飯の時間だぞー!」

 

 提督の声がする。

 

 今日の昼食はなんだろう。

 また提督は、虐待でも思いついているのだろうか。

 

 そういう事を考えられる今こそが、私の大切な『光』だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「凄い! こんなに綺麗に咲かせるなんて!」

 

「どうだぁ? これが俺の艦娘の実力だ!」

 

 クク、視察官め驚いてやがるな!

 

 思った以上に綺麗に咲きやがった。

 あいつらに任せて正解だったな!

 

 勿論、それを見出した俺も凄いがな!

 

「僕の所でも色々植えてみようかな」

 

「へぇ、じゃああいつら貸し出してやろうか?」

 

「何を?」

 

 長門、酒匂、プリンツ、サラトガ。

 あいつらに俺は特殊任務としてガーデニングを命じた。

 

 特殊任務遂行部隊という、格好いい役割だからなぁ。

 当然、それに見合ったカッケエ『名前』が必要だと思ったんだよ!

 

 俺の溢れるセンスに任せた、超絶怒涛のネーミング。

 艦種、国籍問わずの、仲良し四隻が交わった部隊。

 

 その名は!

 

「『クロスロード組』に決まってんだろ!」

 

「『十字路』って。なんだいそのネーミング」

 

「あいつらが交差するからだろ! んなことも分かんねえのか!」

 

「センス無い。中二病。ダサいねぇ」

 

「んだとコラァ!!」

 

 今俺のネーミングになんつった!?

 

 




夏が終わり、新たな季節が訪れるようです。


ご報告。
毎日更新を続けていました本作品ですが、
艦隊これくしょんイベント期間突入並びに、
ストック不足等の理由により、不定期更新とさせて頂きます。
今後は週に一度、最悪でも月に一度くらいの更新予定です。

提督が着任したのは『梅雨明け』でした。
そして暑い夏を過ごし、今度は秋編に突入する予定です。

このままダラダラとゆるーい虐待日常話を続けていくつもりですので、
どうぞこれからもよろしくお願い致します。

貴方の艦娘にも、良き虐待を。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。