汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

29 / 44
ドロップした艦娘にも嬉々として虐待していく提督。

彼の悪行を止められる者など、この鎮守府には居ないのであった……。


第二十九話 神威と着任

「給油艦、神威と申します。 出来る限り、頑張ります!」

 

「おぉ。俺が此処の提督だ」

 

 つい先日、私、神威は『浮上』しました。

 艦娘の皆さんに保護され、回復して。

 

 そしていよいよ、鎮守府着任の時。

 

 初めての提督にご挨拶です。

 ちょっと顔が怖い人だけど、大丈夫でしょうか……。

 

「神威。おめえに俺の信念、ここの方針みてえなもんを言っておくぜぇ?」

 

「は、はい」

 

 事前にお聞きしましたが、ここの鎮守府は凄い所だそうです。

 戦果を挙げつつ、艦娘の皆さんも活気に満ち溢れる。

 

 きっとこの神威には思いつきもしないような素敵な方針が……!

 

「お前ら艦娘は兵器! 俺に扱われる道具だぁ!!」

 

「……え!?」

 

 私は提督が仰ったことの意味を、理解する事が出来ませんでした。

 しかし、一つだけ分かった事は……。

 

 私はとんでもない鎮守府に来てしまった、ということでした。

 

 

 …………。

 

 

「この俺が直々に案内してやろう。惨劇の処刑場へ!!」

 

「惨劇の処刑場!?」

 

 着任あいさつの後、提督自ら鎮守府案内をしてくれることになりました。

 恐ろしい目、凶悪な笑い方。

 

 まさかここは、悪魔の住まう鎮守府だったのでしょうか!?

 

 抵抗することも出来ず、恐る恐る提督についていきます。

 まさか、輝かしい戦果の裏には秘密が……。

 

 優しくしてくれた艦娘の方々も、脅されて無理やり!? 

 そんなことが……。

 

「今向かっているのは『原初の虐待』があった場所だぜ」

 

「虐待……!」

 

 やっぱり!

 この提督は艦娘を酷い目にあわせて喜ぶ精神異常者なんですね。

 そして、私と言う新たな犠牲に歓喜している……!

 

 被害に遭っている艦娘、そしてその現場を見せて私を脅そうとしているのでしょうか。

 なんて悪逆非道な!

 

「ここが全ての始まり……食堂だ」

 

「……っ」

 

 食堂のドアを開ける提督。

 まさか艦娘の食べ物に何かを混入させたり!?

 いいや、もはや食べ物すら与えられていないのかもしれません。

 

 意を決して中に入ります。

 そこに広がっている凄惨な光景に、私は思わず目を背け……。

 

「あれ?」

 

「クク、もう昼飯時だったなぁ」

 

 艦娘の皆さんが楽しそうに談話しながら、ご飯をとりに並んでいます。

 美味しそうな匂いが漂う、普通の、幸せそうな食堂。

 

「あ、司令官! と、神威さんでしたよね!」

 

「こ、こんにちは」

 

「おう吹雪。ちょうどいい、空いてる席あるか?」

 

「はい! こちらへどうぞ!」

 

 吹雪さんにつれられ、空いていた食堂の椅子に座ります。

 

「神威さんの分取ってきましょうか?」

 

「いいや、俺が行くぜ。クックック!」

 

 提督はそういうと歩いていってしまいました。

 吹雪さんは私の隣に座ります。

 

「あの、吹雪さん……その……」

 

「はい? なんですか?」

 

 私は疑問で頭がいっぱいでした。

 処刑場は? 虐待は?

 

 あの提督は一体何を考えているの?

 

 そんな疑問を彼女に問おうか、迷っている時でした。

 

「およ? 吹雪ちゃんが新人さんとお話してる!」

 

「さっそく仲良しさんっぽい?」

 

 近くの席にお盆を持って座ったのは、睦月さんと夕立さん。

 尋ねるタイミングを逃してしまいました。

 

「あ、こんにちは。神威と申します」

 

「こんにちはっぽい! 神威さんもお昼?」

 

「そうなんだよ夕立ちゃん。司令官が取ってきてくれてるんだ」

 

 確かに、提督自ら艦娘のご飯を持ってくるなんて。

 一体彼は何を考えて……。

 

 はっ!?

 ま、まさか!

 

 私の食べるお昼に何かしらの薬品を混ぜ込むつもりじゃあ!?

 吹雪さんたちはその為の囮!?

 

 そんな、彼女達まで利用するなんて!!

 

「お待たせしましたァ! パスタランチでござーい!!」

 

「ひゃっ!?」

 

 背後からの声に、思わず悲鳴をあげてしまいました。

 振り返ると、お盆を持った提督が。

 

「美味しい美味しいペペロンチーノだぜ?」

 

「今日はローマさん達が当番なんですよね」

 

 目の前に置かれた、パスタ。

 ホカホカで、美味しそうな匂いがして。

 思わず生唾を飲み込んでしまいました。

 

「さあ、食いな!」

 

「神威さん、食べましょ!」

 

「ん~、美味しいっぽい!」

 

 本当に幸せそうに頬張る皆さんを見て、私もフォークを手にします。

 もうそのころには、薬品云々なんて考え吹っ飛んでしまっていて。

 

 気がつけば、夢中でパスタを頂いていました……。

 

 

(クク、アスパラをメインとしたなんてことないパスタだぜ)

 

(ローマ達もなかなかどうして、兵器の在り方を学んできたようだなぁ)

 

「ちなみに俺は冷凍のチャーハンだぜ!」

 

「司令官……」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 飯を終え、次の地獄へ神威をつれていく。

 クク、上手くねえ飯に絶望したのか、表情が変わってきてるなぁ?

 

「ここは談話室。堕落と強欲のるつぼだ」

 

「だ、堕落……!?」

 

 俺が設置、改装を加えていっているこの部屋。

 日に日にそのパワーはアップしているんだぜ!

 

 ゲームは数種類のハードを用意!

 RPG、パズル、アクションなど多種多様なソフトラインナップ!

 コントローラーも複数用意、対戦を加速させるぜ!

 

 ちなみにゲームは一日2時間まで。

 待ってるやつがいたら代わってやれよな!

 

 漫画も様々な物を置いた。

 ただし、完結してるやつだけなぁ!

 打ち切りで短いやつも、面白ければオールオーケー。

 

 小説もバランスの取れたラインナップ!

 ただし、官能系はNGな!

 

 ビデオコーナーも充実!

 毎週木曜日夜八時、鎮守府食堂にて特別劇場公開!

 ちなみに今週の映画は『シャーク・コレクション』だぜぇ!

 

 俺の趣味に走りまくったこの談話室。

 どうだぁ神威よ。

 

 俺の権力、自己中な考えがよーくわかっただろうなぁ!!

 

「わぁ……」

 

 ククク、あまりのヤバさに目をキラキラさせやがって。

 お前も魅力に取りつかれ、そして堕ちていくんだよ。

 

 俺の信念!

 仕事をするときはきっちり、そして休む時はしっかり休む!

 仕事は仕事、趣味は趣味。

 

 うちの兵器共はそれを守っているからな!

 

「ヘイ提督! カムイの案内ですカー?」

 

「神威さんですよお姉さま」

 

 格ゲーやってる金剛どもが声をかけてきた。

 神威、あれはおまえの未来の姿だぜ……。

 

「ふふーん、カモイも一緒に遊ぶネ!」

 

「今日は無しだ。また明日にしとけ」

 

 まだ地獄巡りが終わってねえんだよ!

 ていうかお前、自分より弱い奴をひきこみたいだけだろ!

 

 

 …………。

 

 

「間宮だ。まぁ俺は利用しねえがな」

 

「ふふふ。神威さん、アイス美味しい?」

 

「はい! 甘くて冷たくて素敵です!」

 

 間宮め、ワザと見せつけやがって……。

 神威のやつもあんまりうまそうに食うな、ちくしょう!

 

 

 …………。

 

 

「鳳翔だ。俺のベストプレイスだな」

 

「居酒屋もあるんですね……」

 

「神威さんも是非、ご利用下さいね」

 

 そういえば神威は吞める方なんだろうか。

 もしいける口だったら、今度一緒に吞むのもいいなぁ。

 

 俺の崇高な虐待理念を語りながらな!!

 

 

 …………。

 

 

「大浴場だ。最近増築計画を考えているぜ」

 

「提督、神威さん……こんにちは」

 

「山風さんですね。こんにちは」

 

 風呂掃除していた山風が神威となんか話してやがる。

 俺はそこらにいた建築妖精さんを集めて、今後について話し合うぜ。

 

 サウナ、電気風呂、砂風呂なんかを追加してえな。

 いっそ入浴施設専用の建物をこさえるか……?

 

 

「山風さん。提督って……」

 

「優しくて、暖かい手の人」

 

「……なんだか彼の人となりが解ってきました」

 

 

 …………。

 

 

「ま、こんなもんだな。どうだ神威、怖かったか?」

 

「ふふ♪ はい、とっても怖い鎮守府でした」

 

 だろォ~?

 来たばっかのこいつには、ちょいと刺激が強すぎたかもな。

 だが、時間をかけていけば、じきに慣れるさ。

 

 虐待されるという狂った日常にな!

 

「提督? では、これからも神威をよろしくお願いしますね」

 

「ああ。じっくり兵器運用して、たっぷり虐待してやるよォ!」

 

 新たな犠牲者が、ウチに加わった。

 恐怖に支配され、怯える日々を送ることになる。

 

 歓迎しよう、給油艦神威よ!

 ようこそ虐待主義の鎮守府へ!!

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「おい……なんだぁこれはよォ」

 

「ワカメのお味噌汁とアジの開きです。簡単な物ですけど」

 

 私が着任して数日が経ちました。

 それで分かったことですが、提督の食生活はお体に悪すぎます!

 運動はしているようですが、まったくバランスを考えられていません。

 

 せめて私が秘書艦の日は、普通の物を食べてもらいます!

 

「そして白米、ご飯は大盛りです♪」

 

「おぉ……なるほどねぇ……受けて立つぜ神威ぃ!!」

 

 提督は不思議な人でした。

 虐待と言いつつも、とっても優しい、いい人だったのです。

 

 私がここに来て、確かに言えることがあります……。

 

 

「お残しはしねぇ! 兵器共の手本となる姿を見せてやんよォ!」

 

「おかわりもありますよ」

 

 此処に着任できて、本当に良かった、と。

 

 




来て早々に反逆していく艦娘の鑑。



※月末、月初記念ということで、明日も投稿します。
 次回、お久しぶりの大本営回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。