汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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投稿ペースが空きすぎてるので初投稿です。
大変長らくお待たせしまして申し訳ありませんでした。

提督が遂に実家へ。
そこで起こる事件とは……!?


第四十二話 虐待提督の帰郷 前編

「天敵、ってのは誰にでもいるもんだろ?」

 

「ふむ」

 

 私の目の前にいる筋肉野郎は、ある鎮守府の提督だ。

 かつてこのサナトリウムに訪れ、私と時雨の関係を変えるきっかけを作ってくれた男。

 

 あの日以来友人となった私達は、たまにこうして話をするのだ。

 

「深海棲艦に対する艦娘、といった具合に?」

 

「そうだァ。そしてそれはしょうがねぇ話で、避けようのないモンだ……」

 

 私は先程から何か違和感を、提督に対して抱いていた。

 

 この男はこんなにも『覇気』が無かったか?

 もっと尊大で、何にも怯えず、アホヅラ晒して笑っていたような気がするのだが。

 

「つまり何が言いたいんだい?」

 

「……俺にも『天敵』はいるっつーことだ」

 

 驚いた。

 この男にそんなものが?

 元帥すら脅迫している(気になっている)男が恐れるもの?

 

「チッ、顔に出すぎだぜぇ先生さんよォ」

 

「あ、ああ悪い。だが、何故私にそんなことを?」

 

 弱みを見せるなんて、らしくない。

 

「まーなんつーか……決意表明って感じだなァ」

 

 決意、か。

 彼ほどの男がそこまで言うのであれば、私はそれを黙って聞き入れよう。

 カウンセラーとして。

 

「それにしても、なんで実家に帰るって話から天敵の話になるんだい?」

 

 席を立ち、ポットでお茶を淹れていた時雨が尋ねてくる。

 彼女はこのサナトリウムの患者の一人であり……。

 

 私の艦娘だったりする。

 

 彼女の精神的な回復は目覚ましく、外部の人間とも関わり合いがもてるようになってきた。

 最近では私の職務の補佐なども行ってくれている。

 

「それすなわち、彼の実家にその天敵がいるってことだろう」

 

「なるほど。流石僕の先生だね」

 

 私のすぐ隣に腰掛ける時雨。

 ……なんだか近すぎるような気がする。

 

「けっ、仲がよろしいようで大変結構でござんすねぇ!」

 

「それほどでもないよ、ふふふ……」

 

 時雨の成長を喜ぼう。

 それがいい。 

 たぶん。

 

「と、ところで話の続きだが、その天敵とやらの正体はなんだ?」

 

「あー、まぁー、なんつーか……俺のおばあちゃんなんだけどよォ」

 

 お、おばあちゃん?

 彼の祖母が、彼の天敵だというのか?

 

 しかし彼は祖母のことを誇っていた発言をしていたような気がするが。

 

「……理由を聞いても?」

 

「おばあちゃんのことはマジリスペクトしてるぜぇ? だけどよ」

 

 彼は茶を飲み、一呼吸置いた。

 

「俺の敵わねえ人でもある。だからこその『天敵』なんだよ」

 

「そうか」

 

 少しだけ、私は彼を『見直した』。

 絶対無敵の男ではないということを、感じられたからかもしれない。

 

 彼でも負けを認める、そんな人物がいることに、なんともいえない感情を抱いた。

 

「ふふ、僕は先生に堕とされちゃってるからそういう意味では先生が僕の天敵って言えるかな」

 

「時雨?」

 

 時雨の笑みにも、なんともいえない感情を抱いた。

 

 

「あー、まぁそろそろ行くわ。日が暮れないうちになぁ」

 

「見送るよ」

 

 彼は実家に帰る途中、ここを寄ったのだった。

 此処は彼のふるさとに近いらしい。

 

 彼の周囲を飛び回る妖精を眺める。

 今日は、なんだか数が多いような……?

 

 

「じゃあな先生&時雨!」

 

「ああ、気をつけて」

 

「バイバイ虐待の人」

 

 時雨曰く虐待の人、提督はバイクに跨がり去っていった。

 妖精を集めて疾走する姿は、アンバランスメルヘンだ。

 

 さて。

 

「彼に良き未来を祈って、今日も頑張ろうか」

 

「うん、先生」

 

 時雨に手を握られ、歩く。

 

 すっかりスキンシップが多くなって。

 最近はよく一緒に寝ようと誘ってくるし(悪夢でも見たんだろう)。

 こないだなんて一緒にお風呂に入りたがっていたし。

 

 まだまだ子供だな、ハハ……。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 よう、俺だ!!

 

 バイクに乗る時はヘルメットをしっかり着用、安全運転を心がけろよな!

 制限速度も守れよォ!!

 

 ハードラックとダンスっちまってもいいことねぇぜ!!

 

 そんな俺は現在山道を疾走中だぁ。

 思ったよりサナトリウムで話し込んじまったからな、焦るぜ。

 

 それでも夕方までにはつくがな!

 

 それにしても、まさか休日が出来るとは思ってなかったぜ。

 軍人って、休みなさそうなイメージだったんだが。

 

 てか、流石に休みでも鎮守府にいるもんだろ提督ってもんはよォ!

 艦娘共め、口を揃えて『ご家族と団欒してきてください』なんて。

 

 そんなに俺を追い出してぇかァ!?

 戻ったら覚悟しておけよ、艦娘よォ……。

 

 俺の村の特産品、浴びるほど持って帰って食らわしてやるぜぇ!!

 

 

 ……しかし、久々の実家だなァ。

 

 俺が提督と言う名の艦娘虐待マシーンになるために実家を出てから、全然帰ってねえからな。

 ……おばあちゃん元気かな。

 

 ま、あのおばあちゃんのことだ、やべえくらいピンピンしてんだろーけど!

 

 

 

 …………。

 

 

 

「そろそろかァ……」

 

 森を抜け、民家が見えてくる。

 変わらねえなあ、この村もよォ!?

 そして帰ってきたぞ、我が故郷よォ!!

 

 相変わらずの限界集落っぷり。

 穏やかな田舎町なんて言えば聞こえはいいがな。

 人口少ねえから静かってのは評価するぜ!

 

 こうも人が少ねえと、犯罪行為なんてのも滅多に起きねえ。

 ま、起きたところでこの俺がいる限り、何の問題もねえんだがなァ!

 

 

 さーて、俺んちは村の入り口近くだから……。

 

「着きましたーっとォ」

 

 瓦屋根。

 ムダに広い庭にはでけぇ木。

 玄関に置いてある謎の置物。

 

 実家に帰ってきたぜぇー!!

 

 バイクを車庫に入れて、玄関へ向かう。

 そして田舎特有の鍵なんてかかってねえ戸を開ける。

 

「おーいおばあちゃん! 帰ってきたぜぇー!!」

 

 ……。

 

 返事はない。

 

 おかしいな、おばあちゃんは耳が遠くなかったはずなんだが。

 返ってくるのは妖精さん達の熱い歓迎くらいだ。

 

 顔にまとわりついてくる妖精さんを引き剥がし、家にあがる。

 この匂い、まさに帰ってきたって感じなんだが。

 おばあちゃんはどこだ?

 

 電話で予め連絡しといたから出掛けてはねぇはず……。

 

 ……しゃーねぇ、やるか。

 

「妖精さん、頼むぜッ!!」

 

 我がふるさとには妖精さんが通常時より多くいる。

 そんな妖精さんによる、広範囲索敵!!

 

 どこにいても見つけ出せるぜぇ!!

 

 ほうら、早速反応アリ!

 

「こっちだな!」

 

 妖精さんに導かれ、おばあちゃんの自室へ行く。

 まったく、なんかに夢中で俺に気付かなかったのかァ?

 

 ついに耄碌したか、おばーちゃんさんよォ!?

 

 

「オラァ! 開けるぜおばあちゃん! 孫の帰還、だ、ぜ……」

 

 俺はドアを勢いよく開き、そして眼前に映し出された光景に絶句した。

 

 なんだ、これは。

 一体何なんだこれは。

 

 

 部屋は荒らされ、物が床に散乱している。

 開け放たれた窓。

 揺れるカーテン。

 

 そして、部屋の中央、床に倒れ伏しているのは……。

 

「……おばあちゃん?」

 

 白目を剥き、うつ伏せで倒れる白髪の老人は。

 

 俺の、おばあちゃんだった……。

 

 

 




ほのぼのギャグ勘違い小説だったはずでは。


最後の展開、最近プレイしたあるゲームに影響受けすぎてる事に書きながら気付きました。

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