汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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ここがハーメルンかい…随分懐かしいじゃないの…。
というわけで現実世界の荒波にもがき苦しみながら久々の更新です。
またせてゆるして。



第四十三話 虐待提督の帰郷 後編

「おばあちゃん……」

 

 

 俺の目の前に倒れ伏す、一人の老婆。

 それは確かに、俺のおばあちゃんだった。

 

 白目を剥き、口は半開き。

 その顔は絶望色に染まったまま、停止している。

 口元からはヨダレが垂れ、床に落ちている。

 

 明らかな異常事態。

 妖精さんたちもニコニコ。

 傍から見れば、完全に俺が犯人の殺人現場そのものッ!

 

 だが、俺の心は穏やかだった。

 

 そう、これこそ実家に帰ってきたんだという風に。

 どこかノスタルジーな気分が、爽やかな風のように俺の心を駆け抜けた。

 

 この景色を、俺は知っている。

 

 そう、これは……ッ!!

 

 

 

 

「おばあちゃんまたなんか失くしたのかよ」

 

「おおお……あたしのお気に入りのメリケンサックが……」

 

 

 俺のおばあちゃん。 

 収集癖があり、いろんなグッズを集めるのが趣味なコレクター気質だ。

 しかしそのせいか、よく物をなくす。

 

 今回はお気に入りをなくしちまったらしく、ショックで倒れていたようだぜ。

 迫真の絶望フェイスだったなぁ。

 

「しっかりしろよォ。びびったぜ」

 

「はぁ、ま、諦めるかねぇ……」

 

 飛び上がるように立ち上がる。

 腰は若干曲がっているが、その風貌に衰えなし。

 さっすが、俺のおばあちゃんだな。

 

 

「さてさて。よく来たね我が孫よ。ヒッヒッヒ」

 

「ああ、ただいまおばあちゃん。クックック」

 

 

 

 …………。

 

 

 

「ま、座りねぇ」

 

「おう」

 

 居間にて、座布団へ腰を下ろす。

 ちゃぶ台の上の湯のみ茶碗に手を伸ばし、一服。

 

 何時来ても、我が家はいいねぇ!

 

「で、どうなんだい調子は」

 

「そりゃもう有頂天よォ。俺の虐待生活はな!」

 

 まったくどうして、俺の恐怖の鎮守府運営は絶好調だ。

 

 新入りの艦娘どももあっという間に馴染んでいくし(虐待されることに)。

 友達のあいつも最近俺の思想に染まってきている気がしないでもないし。

 先生のとこの時雨はやべー奴だし。

 

 兎に角右肩上がりな俺の虐待。

 おばあちゃんに報告しねえわけにはいかねえってもんだよなぁ!?

 クックック!

 

「フン、見た目では何も変わっちゃいないみたいだがねぇ?」

 

「ヘッ、『虐待ハート』が違うぜおばあちゃん!」

 

 俺は己の胸を親指で指しながら、これまでの鎮守府での生活を語って聞かせた。

 

 俺がいかにあいつらを虐めてきたのか、そしてどれだけあいつらが悲しんだか。

 俺の道具として洗脳されきった艦娘どもの醜態、それを止めることも出来ない大本営。

 

 そして、新たな友との出会い……。

 

 

 ……。

 

 

「……そうかいそうかい。ま、楽しそうでなによりさね」

 

「クックック、ああ。人生バラ色ハッピーだぜぇ!」

 

 随分と長い事語っちまった。

 すっかり日は沈んじまってる。

 

 腹の虫もご機嫌だぜ。

 

 

「さて、夕飯でも作るかね。手伝いな」

 

「あいよ任せなァ! 今日はなんだ!?」

 

「そりゃ……決まってんだろう我が孫よ。ヒッヒッヒ……」

 

 おばあちゃんのこの笑み、何度見てきたことやら。

 まったく、これだから実家は最高だな!

 

 

「今晩は特製カレーライスだよ!! ヒッーヒッヒ!!」

 

 

 

 …………。

 

 

 

「ふぅ……夜風もさすがにさみぃ時期だな……」 

 

 

 あの後カレーを死ぬほど喰った俺は五右衛門風呂に入った。

 そして火照った身体を冷ますため、縁側に出て庭を眺めてる(冬です)。

 

 月は雲に隠れ、田舎ならではの漆黒が村を覆っている。

 庭の池も、木も闇に溶けちまってる。

 だが……。

 

 暗闇の中に淡く光るもの。

 

 ありゃホタルでもなんでもない、ただの妖精さんだ。

 ここらには野良妖精さんがたくさん飛んでいる。

 我が村の風物詩……いや、年中飛んでんだから違うか。

 

 

「そういや妖精さんってなんなんだろうな。ま、どうでもいいけどよォ」

 

 肩に乗ってる妖精さんを指で突いてみる。

 ちっせえカップメンみてぇなのを持ってた妖精さんは、突かれて笑い転げてた。

 

 

 昔、ある神社、『秘密基地』で出会った妖精さんたち。

 以来、俺の周囲には常に居るし、呼べば増えるし。

 それにしたって、俺の実家……いや、この村には妖精さんが多過ぎな気がするぜ。

 

 居心地がいいんだろうな、うん!!

 

 

「さーてこの良い気分を誰かと共有でもしましょうかねぇ! 最近の若者みたく!!」

 

 

 早速黒電話にとりついてみる。

 俺がこういう時に連絡をとる相手なんて、数えるほどしかいねぇぜッ!!!

 

 

 

『もしもし司令官ですか!? 私です吹雪です!! 助けて下さい隼鷹さんがうわなにを』

 

『(大勢の悲鳴と笑い声がする……)』

 

 

 

『……貴様は何故私用で大本営に電話をするんだ……』

 

『(疲れ果てた老人の溜息が聴こえる……)』

 

 

 

『ハハ、天敵との接触はなかなか楽しいものになったようだねいやまて時雨違う女性じゃな』

 

『底冷えする少女の笑いと、男の焦る声が聴こえる……』

 

 

 

『成程、実家を満喫してるんだね。フフ、よかったね……』

 

『どこか中性的な、そして柔らかい女性の声が聴こえる……』

 

 

 

「ふぅーっ、長電話なんて久々にしちまったなァ。我ながらご機嫌だったな!」

 

 結局まともな会話になったのはアイツだけだったがな。

 かなしきかな。

 

「さてさて、そろっと部屋に戻りますかねーっと」

 

 廊下を歩き、居間を目指す。

 今日は特番『艦娘とはなにか?徹底討論!!』があるんだ。

 

 きっと『道具だ!兵器だ!』って感じの番組で、いかに使うか解説するんだろうな。

 楽しみだぜぇ!!

 

 ふと、窓の外を見た。

 ……庭で光る妖精さんたちが、少し減っていた気がした。

 

 

 

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 テレビ画面に、人のよさそうな笑顔を浮かべた男が映る。

 

 年は30代後半くらいだろうか。

 彼は若くして、海軍大将の一人に成り上がった男であった。

 

 ……ニコニコしながら、男は口を開いた。

 

 

「国民の皆さん、最初にこれだけは言っておかなければならない事があります……」

 

 男はにこやかなまま、しかし声色はどこか真剣に語り出す。

 聞きやすい声、憎めない表情。

 そして。

 

 

「『艦娘は兵器』です。なので人権なんていりませんよね?」

 

 

 なんてことのないように。

 まるで昼食の提案でもするかのように。

 これで当然、当たり前かの様に。

 

 

 一部の者にとっては、聞き捨てならない発言をしたのだった。

 

 

 




ついに動き出したガチのアレ。
実家で英気を養った虐待提督はどうするのか。
そして艦娘達の未来は!?


『汚い艦娘を見つけたので虐待することにした~最終章~』
ついに開幕ぅーッ!!!






作者が未完にしてたもう一つの幻の小説も続き書いてます。
気長にまってて。

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