汚い艦娘を見つけたので虐待することにした   作:konpeitou

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中破した山風を襲う恐怖!


第六話 山風と中破

「お帰りおめーら。ククク……」

 

「提督!?」

 

 母港に帰投してきた艦娘どもに、俺は手を挙げて近づく。

 まさか俺が来るとは思っても無かったような顔だなぁ。

 

「さぁて、戦果報告をしてもらおうじゃないか。加賀」

 

「……はい」

 

 加賀を含めた艦娘どもは、全員暗い表情をしている。

 そう、何か『嫌な事』でもあったみたいになぁ……。

 

「敵艦隊と遭遇、交戦の後、それを撃滅しました」

 

「戦闘終了後、近海哨戒を続け、帰投しました……」

 

「ほうほう……それで?」

 

 戦って、勝って、帰ってきた。

 それだけなら何の問題もねぇ。

 

 クク、だがなぁ……。

 

「……駆逐艦『山風』、敵潜水艦の雷撃により中破、です」

 

「……」

 

 俯き、今にも泣いちまいそうな顔で突っ立ってる山風。

 その服は破れ、艤装からは黒煙が上がっている。

 

 ふむ、潜水艦の雷撃ねぇ。

 

「こ、今回の被害は私の責任です! 対潜警戒を厳にしなかったから!」

 

「いいえ、部隊長である私の問題よ。彼女は悪くない」

 

 艦娘どもは好き勝手言って、山風を庇っていやがる。

 ククク、大方予想通りの展開だなぁ。

 

「おい山風。こっちに来なぁ!」

 

「ひっ……! ……はい」

 

 山風は身体を震わせ、俺の方へ恐る恐る歩いてくる。

 当たり前の反応だよなぁ?

 

「提督! 彼女は!」

 

「加賀、おめえは黙ってな」

 

 文句を言う加賀を黙らせる。

 俺の『虐待』の邪魔はさせねえぞ!

 

「さぁて、山風。俺が何を言いたいのか、分かるよなぁ?」

 

「……う、あ、……ご、ごめんなさいぃ……」

 

 ブルブル震えて、目に涙を溜めながら俺を見上げてくる。

 素晴らしいな、最高だ。

 

 これだから提督はやめられないぜぇ!!

 

「そう……被害状況の詳細確認だぁ!!」

 

「な、殴らないで……えっ?」

 

 艦娘、というものは、攻撃を受けても身体にあまり傷がつかない。

 艤装と衣服がダメージを肩代わりする為だ。

 

 よって、こいつらは被害を受けると服が破ける。

 兵器と言えども、中身はいっちょまえに見た目相応の女としての感性。

 

 これらから導き出される『虐待』への方程式は!

 

「ほら、両手を広げて、被害状況を俺に見せな!!」

 

 俺の様な凶悪を具現化した様な男に、身体をジロジロと観察される。

 こいつらにとって、これほどまでに苦痛な事はねぇだろうなぁ!!

 

「あ、え、ぶ、ぶたない、の?」

 

「あぁ!? 何言ってんだてめぇは!?」

 

 殴る?

 自分の道具を、自分で殴るだと?

 

 生憎、俺は物に当たる性格じゃあねえんだよ!

 

「……さっき、てめえらは『今回の件は自分のミスだ』、そう言ってたよな?」

 

「は、はい……」

 

 加賀達を見渡しながら、俺は言葉を発する。

 こいつらに、今一度俺の『道具』ということを分からせるために!

 

「道具や兵器が不良品だった時、その責任はどこへ行く?」

 

「ソレの製作者、管理人、持ち主……そうだろ?」

 

 道具、というものは、その所持者によって価値は変わる。

 同じ物でも、扱う者によってその性能は激変するんだ。

 

「よって今回の件、全責任は俺にある、当たり前だよなぁ?」

 

「て、提督……!」

 

 お前らは、俺の兵器。

 兵器が罪悪感なんぞ感じてんじゃねぇぜ!!

 

「だからよぉ……次はこんなミスをしねえよう、たっぷり『管理』させてもらうぜ!」

 

 ククク、これでこいつら、『俺の道具』という認識が強まっただろう。

 ……いや、もしかしたらこいつらのこの態度、俺を試していたのかもな。

 

 自分たちをいかに扱い、運用できるか、そういう腹積もりがあったのかもしれねぇ。

 まったく、食えねえ奴らだぜ。

 

「さぁ続きといこうか。山風、大人しくしてるんだなぁ!」

 

「……っ、うん!」

 

 ……? こいつ、さっきまでの表情は何処行った?

 まあいいか。

 

「提督、あの、ちゃんと、見てね……?」

 

「お? おう……」

 

 ちゃんと見ろ、だとぉ?

 俺の観察眼を疑って、そして試しているってことか!?

 こいつ、言ってくれるじゃあねえか!!

 

「ククク、時間がもったいねえ、歩きながら見るぞ!」

 

「え、きゃ、きゃあっ!?」

 

 俺は山風を抱きかかえると、そのまま入渠ドックへ向かって歩き出す。

 流石にここまでされると思ってなかっただろうな。

 

 俺みたいなのに触られ、身体を見られ。

 さらに道具の如く抱えられる。

 

 屈辱の極みだろうなぁ!!

 

「て、提督……♡」

 

 こいつ、大人しくなったな。

 恥辱のあまり声も出ず、顔も真っ赤にしてやがる。

 

「提督……あのね……」

 

「ああ?」

 

 山風の奴、俺の服をぎゅっと掴んできやがった。

 なんだ、せめてもの反抗に、俺の一張羅にシワでも作ってやろうってか?

 

「絶対、離さないでね……」

 

「……離すわけねぇだろうが」

 

 お前ら全員、俺の物なんだからなぁ。

 

 

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 山風ちゃんを抱えて歩いていく提督の背を見て、私は自然と笑っていた。

 冷静になって考えれば、彼女が酷い目に合う事はない、そう思う事が出来たのに。

 

 私達は、まだまだ過去に囚われていたようだった。

 

「よかったねぇ蒼龍。あの提督が来て」

 

 飛龍の言う事に、私は頷いて同意する。

 本当に、彼が居てくれてよかった。

 

 山風ちゃんが殴られなくて、本当によかったと思う。

 

 前任は、ありとあらゆる失敗を私達の責任にしてきた。

 補給不足からくる被弾も、全て。

 

 そして、ミスした娘は殴られ蹴られ、懲罰房行きだった。

 

「……今回の被弾は、私達に責任があるわ」

 

「加賀さん」

 

 そう、加賀さんの言う通り、今回は純粋なミスだ。

 

 万全な状態で出撃出来た事による、高揚感。

 そしてそれからもたらされる油断。

 

 全員が油断した、その結果が山風ちゃんの被弾。

 

 それでも、あの人は怒らなかった。

 それどころか『自分の責任』とまで言った。

 

「行きましょう皆。今日の出撃は終了よ」

 

「ああ、連続出撃しなくていいんだよね……」

 

 艤装を降ろして、鎮守府へ向かって行く。

 前は、このまま続けて出撃することが多かったなぁ……。

 

 昔は、前は、前任は……。

 過去と現在を比べるほど、今が光り輝いて見える。

 

 飛龍の笑顔も、山風ちゃんの嬉しそうな顔も、みんな。

 

「蒼龍ぅ~、今日の晩御飯なにかなぁ?」

 

「私はなんでもいいですね。なんでも美味しいです」

 

 楽しみ、美味しい、そういったものを、当たり前に感じられる。

 これが、私達の活力に、生きていく力になる。

 

「私、オムライスっていうのを食べてみたいな!」

 

「あら、いいわね」

 

 提督は、私達を道具だという。

 つまり、私達を『女』としてはみてないということ。

 

 ……。

 

 提督、結婚してるのかなぁ……。

 女の子の身体に、興味ないのかなぁ……。

 道具、としてでも、私の事を……。

 

「蒼龍、どしたの?」

 

「え!? いや、なんでもないよ、アハハ……」

 

 うーん、私ってこんなちょろかったっけ?

 でもまぁ、こんな事を考える事すら、今は心地いい。

 

 『提督』に好意を持てる、こんな今が私は大好きなのだから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……? なんか寒気がしやがるなぁ」

 

「提督、大丈夫?」

 

 ちっ、こいつに心配されるなんて情けねえ。

 ……後で妖精さん印の風邪薬でも飲んどくか。

 

「おらぁ! 今はてめえの身体を心配した方が身のためだぜ!」

 

「きゃーっ♡」

 

 山風め、とんだ強者だな。

 あの弱弱しい態度は、完全にフェイクだったってわけか?

 

 まぁ、こいつらの演技は一級品、それは前々から承知してたことだ。

 この態度ですら、俺を欺くためのものかもしれん。

 

「あんまり暴れるんじゃねぇ、落っこちるだろうが!」

 

「じゃあ、提督が、しっかりつかんで?」

 

 こいつ、舐めやがって……!

 俺の腕力を馬鹿にしてんじゃあねえぞ!

 

「絶対落さねえからな! オラ!」

 

「んっ♪」

 

 ……なんか周囲の艦娘どもが変な目で俺を見てやがる。

 フン、俺の蛮行にドン引きしてるんだろうなぁ。

 

 そして山風を助けられない己の無力さを思い知れ!!

  

 因みに今日の晩飯はオムライスだ!!

 

 




山風のみならず蒼龍までもが……!

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