Fate/Rebellion~その男は筋肉(マッスル)だった 作:Chaikærel
第二話、スタートです。
槍は筋骨隆々の男の背を容易く貫通し、そこからは真紅の液体が溢れ出ていた
「チッ、召喚されちまったか。まあいい、俺の槍は一撃必殺。必ず心臓にブチ当たる。心臓を穿たれて生きているはずがねえ。少しは悪運が良かったみてえだがここまでだ。」
槍の男は槍を引き抜き、今にも俺を殺そうとしている。筋骨隆々の男は立ったまま動かない。今度こそ終わりだと、確信したその時。
「手厚い歓迎感謝する。どうやら君は圧政者らしい。さあ、叛逆の時だ。汝を抱擁せん」
筋骨隆々の男が胸と背中から血を流しながらニヤリの笑う。その笑顔はどう見ても心の底から湧き上がる正真正銘本物の笑顔であった。故に、不気味としか言いようがないものだった。
「なっ…どういうことだ…!確かに俺の朱槍が心臓を貫いたはず!」
槍の男は驚きと動揺、そして怒りを隠しきれない様子だった。それを意にも介さず、筋骨隆々の男は微笑みを崩さずに槍の男に剣を向けた。
「心臓の一つや二つ、貫かれたところで私は止まらない。そう、圧政者を滅ぼすその時までは」
口角を釣り上げ、一層不気味な笑顔を見せる。剣を振り上げ、力の限り襲いかかる。槍の男は素早く後ろへ下がり、間合いを取る。短剣と槍、間合いでは圧倒的に槍が有利であるが、一連のやり取りから、現状は筋骨隆々の男が有利であるという異様な状況が作り出されていた。
「ちくしょう、撤退だ!」
槍の男はそう言うと外へ駆け抜け、逃げようとする。筋骨隆々の男はそれを追いかけようとするが、すぐに足が止まり、膝を地についた。
「大丈夫か?助かったよ」
死の危険から何とか逃げ延びた安堵感からか、やけに冷静な対応ができた。少なくとも、この筋骨隆々の男のおかげで俺は今生きているのだ。
「君が私を召喚したのかな?」
男は微笑みを絶やさずに語りかけてきた。
「多分そういうことだと思う。」
「そうか、では、君は圧政者かな?」
男は、笑顔ではあるものの、こちらを鋭く見据えて、そう質問した。回答次第では死んでしまうのではないか、そんな恐怖に襲われた。
「いや、違う…と思う。少なくとも、お前の味方だ。」
恐る恐る返答をする。どうやら満足してくれたらしい。満面の笑みを浮かべて、返答した。
「よろしい、では君も私と共に圧政者に叛逆しようではないか。今日から君は私の友だ。」
助かった、二度目の安堵感に心を撫で下ろす。
「ところで、名前はなんて言うんだ?」
「スパルタクス、叛逆者である。」
ここから、俺とスパルタクスの運命(Fate)が動き出す。
すぐにセナから電話がかかってきた。
「召喚おめでとう。そいつは第三次奴隷戦争を引き起こした、叛逆の大英雄スパルタクス。色々と詳しい説明をするからアジトに来て 」
あっさりとした口調であったが、その端々からは、安堵の感情が感じ取れた。
「オーケー、動けるようになったらそちらへ向かう。」
そう返答して電話を切る。スパルタクスに目を向けると、まだ、地に膝をつけたままであった。
「スパルタクス、動けるか?」
そう言うと、スパルタクスは立ち上がり微笑みかけてきた
「当然である。圧政者を滅ぼす準備はできているとも」
若干話が通じてなさそうな気もするが、中々紳士的で良い奴な気がする。不気味な笑顔を浮かべてはいるが。スパルタクスが立ち上がったので、俺も立ち上がろうとするが、へたり混んでしまった。どうやら先の出来事で腰を抜かしてしまったらしい。
「君よ、どうしたかな?もしや動けないか?」
「そうみたいだ、すまん。回復するまで待って欲しい」
そう言って、また立ち上がろうとするが、やはり力が入らない。すると、スパルタクスはこちらへ歩いてきて、手を差し出した。それを掴むと、体が宙に浮いた。スパルタクスに軽々と肩に担がれ、唖然としていると
「さあ、どこへ向かうかな。教えたまえ」
スパルタクスはそう言って笑いかけてきた。こちらも笑い返し、場所を教えると、一層笑みを深めて歩き出した。そう言えばさっきセナがスパルタクスを大英雄だと言っていた。気になったのでこうやって担がれている間に、スパルタクスについて調べてみることにした。
スパルタクス。剣闘士であり、ローマ史に名を轟かす第三次奴隷戦争の指導者。
剣闘士の仲間と共に始まった反乱は、他の奴隷達も巻き込み、類を見ない規模の大軍となり、ローマへと叛逆した。
ローマ軍に連戦連勝した、そのカリスマ性や戦争指揮能力は卓越したものであったが、それ以上に彼が人望を集めた要因は"必ず逆転によって勝利する"英雄だったこと。
反乱軍の兵士にとって戦況が絶望的であればあるほど、その先にある勝利は確かなものだったと信じていた。
そんな彼に対し、ローマ広しと言えど、彼より優れた将はいないと評する者もいるほどであった。
しかし、その反乱も最終的には大軍を編成したローマ軍に鎮圧され、スパルタクスも討たてしまった。
だが、死ぬまで戦い続け、叛逆を止めなかった偉大なる戦士の名は虐げられた人間の希望として歴史に刻まれた。
なるほど、スパルタクスがどのような英雄なのか分かったような気がする。きっとあの場で、俺が完全に虐げられるものであったから手を貸してくれたのだろう。弱者に味方し、強者に反乱する大英雄、それがスパルタクスという存在らしい。
そうこうしていると、アジトにたどり着いた。
「君よ、着いたが、降りるかな?」
頷くと、スパルタクスは俺を肩から下ろした。俺は立ち上がって、ノックしてセナを呼んだ。すぐに扉は開いた。
「やってくれるって信じてた。さ、上がって。」
促されるままに上がろうとすると、スパルタクスが俺の肩を掴み、上がるのを阻んだ。
「出会ったばかりで悪いが、君は圧政者かな」
先程、俺に対して同様の質問をした時と同じように、スパルタクスは微笑みは絶やさずにセナの瞳を強く見詰めた。
「違う、私はそいつの仲間。つまり私もあなたと同じ叛逆者」
スパルタクスはその回答を聞き、素晴らしい、そう言って笑いながらセナの手を掴み寄せ、抱き上げる。
「ぐぁ…く、苦しい…」
セナは降参だと言わんばかりにスパルタクスの背中を叩くが、そんなことは気にも止めず、抱擁を続けた。
ようやくセナが解放されると、俺達はアジトへ入っていった。スパルタクスが階段を登れそうになかったので、玄関で話をすることになった。
「それじゃあ説明する。まず、私達が何をするのかについて…」
そうして、俺が介入したこと、聖杯戦争についての基本的なことを教わった。例えば、それが七人の魔術師が七騎の英霊を使役して、聖杯と呼ばれる何でも願いを叶えてくれるアイテムを手に入れるために戦う儀式であるということ、英霊にはクラスが割り当てられ俺が召喚したスパルタクスはバーサーカーであるということ、英霊は逸話が昇華した宝具という必殺技のようなものを持っているなどなどだ。命を落とす危険もあるということだったが、スパルタクスと一緒なら大丈夫だろうという気持ちが大きく、正直ワクワクが止まらなかった。さっき槍の男、ランサーに襲われたときもスパルタクスが何とかしてくれたしな。
「そうそう、スパルタクスのことはバーサーカーと呼んでね」
「ん、どうしてだ?」
「英霊の真名を知られることは大きなデメリットになるから。」
あまりピンと来ず首を捻っていると
「簡単な話、真名を知られることで弱点を知られる可能性があるから。例えばスパルタクスだと、暗示とかで私達が圧政者だと刷り込まれたらどうなる?」
「殺される?」
「その通り」
なるほど何とも分かりやすい。と、ここで槍の男、ランサーが言っていたことを思い出した。
「なあ、ランサーが言ってたゲイ・ボルクってのは多分宝具だよな。逸話が宝具になるってんならそこから真名とかって…」
「その通り」
セナは俺に人差し指を向け、俺の言うことを制止して話し始めた。
「あのランサーは恐らくケルト神話の大英雄、クー・フーリン。ケルト神話の英雄にはゲッシュっていうものがあるからきっと使えるよ。作戦は私が計画するから頑張って」
偶然とはいえ、聖杯戦争に有利になる情報を手に入れ、それが何とも嬉しかった。悦に浸りながら、どうやって勝ち抜こうか、そんなことを考えていると
「そうそう、バラバラに行動するのは危ないからこれから一緒に暮らすよ」
「え?」
唐突の同居宣言に驚かされることになった。
こうして、俺と少女と筋肉の、不思議な物語が始まるのだった。
どうも、チャイカレルです。
二話目にして、ようやくメインとなるサーヴァントが判明しました。
某槍の判定など、気になる部分もあると思いますので、彼のステータス等を見せたいと思います。
CLASS:バーサーカー
真名:スパルタクス
性別:男
身長・体重:221cm 165kg
属性:中立・中庸
【ステータス】
筋力:A 耐久:EX 敏捷:D 魔力:C 幸運:A 宝具:C
【クラススキル】
狂化:EX
【保有スキル】
被虐の誉れ:A+
魔術的な治療を施す場合、通常時は必要な魔力量が1/5に、彼が劣勢になっている時は1/10になる。また、放っておいても自然に回復していく。その回復能力は、心臓が潰されたり、半身が吹き飛んでも回復するほどである。
不屈の意志:A++
あらゆる苦痛、絶望、状況にも絶対に屈しないという極めて強固な意志。肉体的、精神的なダメージに耐性を持つ。このランクともなれば、消滅するその瞬間まで諦めない。
剣の凱旋:B
必ず凱旋を果たすという強い生存への執着。仕切り直しが戦闘からの離脱や状況のリセットによって生存しようとするのに対し、こちらは勝利することによって生存しようとする。ピンチになればなるほど、耐久と筋力が上昇する。
【宝具】
『疵獣の咆哮(クライング・ウォーモンガー)』
ダメージを魔力として蓄積し、ステータスや回復能力を向上させる常時発動型宝具、その効果は自分が劣勢であればあるほど効果を強くし、最終的には…
さて、このように一部がかなり強化されています。性格のせいでかなり扱いにくいですが中々チート臭いです。
話は変わりますが、更新頻度についてです。正直かなり遅いと思います。というのも、作者が少なくとも今年度中はかなり忙しいのです。この作品をお気に召していただけたのであれば、どうか優しい目で付き合っていただけますと幸いです。