Fate/Rebellion~その男は筋肉(マッスル)だった   作:Chaikærel

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 決まらない槍、笑う筋肉、そして始まる聖杯戦争。ニート、魔術使い、筋肉というアンバランスな三人組の行く末やいかに!

 第三話、始まります。


アッセイマスターインペラトルガール

 あれから一週間、これといった事件もなく、ギターをかき鳴らして過ごしていた。ベルリンに住むことを決めたときの、夢と希望に満ちていた頃に作ったしょうもない曲だったのだが、スパルタクスはそれを聴いて、素晴らしい叛逆の心を感じる、そう言ってえらく気に入った様子だった。生活に関してだが、あばら家と言っても電気ガス水道はちゃんと通っているらしく、特に困ることは無かった。食事も基本デリバリーだったとはいえ、自分の貧乏暮らしからすれば十分すぎるほどだった。それにしても、前金のとんでもない額にしろ、働いている様子もないこんな少女が毎日デリバリーを頼めるだけのお金を持っていることはいささか不思議ではあったが。

 スパルタクスはと言うと、どうやら風呂が好きらしく、日がな一日湯に浸かっていた。風呂に入っている時のスパルタクスは、普段の不気味な笑みとは違う、緩やかな笑顔を見せていた。この時ばかりは、英雄スパルタクスの人間的な一面が見て取れた。しかし、風呂を独占されてしまったのだからセナは不満を口にしており、何と風呂に入るために毎日わざわざスパルタクスを召喚したあの建物まで行っている程だった。

 そんなセナだが、一日することと言えばPCか宝石とのにらめっこだった。PCは分かるのだが、宝石と睨み合って何になるのかと問いてみると、転換というらしいのだが、なんでも魔力を宝石に付与しているとのことだった。やってみる?と言われたので、暇だった俺はやり方を教わったが中々どうして難しい。失敗するたびに鼻で笑われるもんだから、悔しくてセナの目を盗んで宝石を使って時々練習をしていた。そうしてセナが風呂に行っている間に練習をしている時だった。

 

「何やってんの」

 

 背の方からセナの声がした。驚いて思いっきり失敗してしまい、宝石が砕け散る。やっちまったと思い恐る恐る振り返ると、セナが呆れ返った様子で立っていた。

 

「あー、いや、これは違うんだ…」

 

 何が違うのか、俺にも分からなかったがこれしか口に出てこなかった。ボロクソに怒られるものだと思っていたのだが

 

「最近宝石が少なくなってきたと思ったら…もしかして練習?練習するんだったら言ってくれればもうちょっとちゃんと教えたのに」

 

 返ってきたのは意外な返答だった。それにちょっと安心したのもあって軽い皮肉を返してしまった。

 

「いやいや、お前が俺のことを鼻で笑うからだろ」

 

 そんなことを言うと、セナの表情が笑顔に、目だけは笑ってないような、そんな表情に変貌した

 

「せっかく許してあげようとしたのに…宝石代、弁償してもらおうか?」

 

 厳しい言葉を返されてしまい、萎縮した俺は日本では定番の謝罪だというDOGEZAなるものをしてその場を抑えようとした。すると、ふふっ、という小さな笑い声と共に

 

「何それ、ドイツにも土下座とあるの?聞いたことなかった」

 

 そんな声がした。ゆっくりと顔を上げると、若干顔をほころばせたセナがいたわけで、ホッと胸をなでおろし、体勢を戻すと

 

「別に許したわけじゃないよ」

 

 セナは唐突に無表情に変え、冷たくそう言った。その声に俺は冷や汗を垂らしたのだが

 

「まあ、できるようになったらこき使うから。それで許すよ」

 

 俺はまたも安堵し、胸をなでおろした。これがツンデレというものか、そんなことを思いながら、ふと疑問が浮かんだ。

 

「そう言えば、これって練習すれば誰でもできるようになるのか?」

 

 魔術というものが練習すれば誰でもできるものなのか、それとも特定の人間にだけ与えられた特権的能力なのか。別にそれほど気になる疑問でもなかったのだが、何となく聞いてみた。

 

「そんなわけないじゃん?もしそうだとしたら魔術師が溢れかえるよ」

 

 まるでそんなことすら思いつかないの?と言わんばかりに鋭く言われたのだが、まあ確かにハ〇ー〇ッターとか魔法を扱うファンタジー作品は数多くあり、全員が練習すればできるというのであれば、真似をしてできるようになった人間が出てきて話題になっててもおかしくないなと納得した。そして、ここで俺がそんな能力を使える少数の人間であることに気づいた。

 

「ってことは、俺は選ばれし魔法使いってことか!?」

 

 興奮しながらそう言うと、セナは鼻で笑い、まるで馬鹿を見るかのような憐れみのこもった目をした。せっかく、自分でダメな人間だと思っていた俺ながそんな特権的能力持ちだと分かって自身を手に入れかけていたのに、そう思って、若干憤りを感じた

 

「なんだよ、そういうことじゃないのかよ」

 

「まあ若干、いや全然違うんだけどさ、とはいえ別に魔術使える人間が有象無象にいるわけではないから、ちょっとは誇りを持ってもいいと思うよ。実際かなりレアだし」

 

 何ともまあ微妙な励まし方をされてしまい、モヤモヤは一層増すことになってしまった

 

「じゃあどういうことなんだよ。よくわかんねえんだけど」

 

「単純に魔法使いっていう表現が違うだけ。というか、そんなことより…」

 

 魔法使いが違う?魔術師と魔法使いの違いが何なのか、そう言えばセナは最初魔術使いって名乗ってたな、それでこれらは何が違うのかなど疑問を覚えたのだが、それを口にする間もなく

 

「これを見て」

 

 そう言ってタブレットの画面を見せられた。それはWebニュースのサイトであり、そこには最近起こった様々なニュースが載っていた。

 

「なになに、ベルリンでネオナチが大勢摘発…移民反対デモ過去最大規模に…テロ画策か、大学生グループ逮捕…何だか物騒だな」

 

 実際、今のドイツは東ヨーロッパやイスラム圏からの移民、イギリスのEU離脱によるEUへの不安視などから若干雰囲気が悪くなっているような節はあるのだが…で、これが何の関係があるのかと思っていると。

 

「違う違う、こっちこっち」

 

 と言ってセナは記事をタップした。その記事には"真昼の騒音事件、ゲリラライブか"そんな大して面白くもなさそうな見出しがつけられていた。

 

「んー、何だこれ。なにか関係あるのか?」

 

「ちゃんと記事を読みなさい」

 

 セナにそう言われ、ちゃんと内容を見てみると、

"ベルンボルク公園で昨日午後4時頃、ゲリラライブと思われる騒音が発生近隣住民や公園にいた人々からの通報を受け警察が出動するも、犯人と思われる女は逃亡した。公園にいた人々によると女は剣のような造形のものを持ち、赤いドレスを着て、皇帝を自称していたという。その歌は聴けたものではなく、体調不良者も出るほどだったという。警察は現在調査を進めているという。"

といった記事と、公園にいた人が撮ったという写真が添付されていた。写真には本当に剣のようなものを持ち、赤いドレスを着た少女が写っていた。

 

「で、これがどうしたんだ?」

 

 変な事件ではあったが、正直何の関係があるのかよくわからなかったので質問をすると

 

「恐らくこの女はサーヴァント。何でサーヴァントがこんなことをしでかしたのかはわからないけど、この剣からしてセイバーだと思う」

 

「んー、ただの変人って可能性もあるんじゃないか?」

 

 と、そんなことを言っていると、徐々に視界が暗くなった。何事かと思って上を見ると、スパルタクスがタブレットの画面を覗き込んでたのだった。

 

「スパルタクスか、どうしたんだ?」

 

 スパルタクスはそんな質問を聞いたか聞いてないか、それは分からないがニッタリと笑顔を零し

 

「おお、この姿正しく圧政者。さあ君よ、行くぞ!圧政者に叛逆するときだ!」

 

 そう言って、返答も聞かずに俺を掴んで走り出した。あばら家の状態も意に介さず、叛逆の英雄は自称皇帝を求めて外へ飛び出したのだった。まずそもそもその女に出会えるのか?そんな疑問を思いながらも、口に出さずに肩に担がれているのであった。

 

 

 

 

 

 人気のない夜闇を筋肉が走り抜ける。標的はただ一人、圧政者に叛逆すべく、圧政者を滅ぼすべく、ただひたすらに走る。その身と小剣一つを持って、常に笑顔を絶やさずに、ただなりふり構わずに走る。ああ、誰が止めることができようか、この不屈の男を。ああ、誰が打ち倒すことができようか、この紛うことなき大英雄を!

 駆け続けること幾分、まるで圧政者の臭いがわかるかのように迷うことなく公園に辿り着いた。すると、セナから電話がかかってきた。

 

「そこ、人払いの結界があるよ。ビンゴだ」

 

 つまり?そう言葉を返すまでもなく、それが目の前に現れた。

 

「やはり来たか!だから言ったであろう、マスターよ、ああすればきっと余の歌につられて他のサーヴァントが来るとな!」

 

 さっきタブレットで見た少女であった。その真紅のドレスと剣は燃え盛る炎、あるいは咲き誇る薔薇を彷彿とさせ、圧倒的な貴人のオーラがひしひしと感じ取れた。

 

「ぬぅ、そう言われてしまうと返す言葉がない…しかし、結果的には良かったであろう?」

 

 マスターからの返答は聞こえなかったが、どうやら会話をしているらしい、少なくともサーヴァントからの声は丸聞こえなのだがいいのだろうか…?

 

「よし、では戦おう!余はセイバー、皇帝である!」

 

 セイバーは剣を掲げ、高らかに宣言する。それを聞いたスパルタクスは俺を地に下ろし、笑みを益々深め叫ぶ。

 

「皇帝!それ即ち圧政者である!おお!今こそ正に叛逆の時だ!汝を討ち滅ぼさん!」

 

 スパルタクスもまた小剣を高く掲げる。

 

 気高き皇帝と、気高き叛逆者がここに集う。今、戦いの幕が開く。




どうも、チャイカレルです。早くも三人目のサーヴァントが登場です。それにしても真紅のドレスを身にまとった自称皇帝のセイバー…一体何者なんでしょうか?

さて、今回はあまりパッとしない主人公エルフォルグ君についてです。彼は20歳の歌手を目指す青年で、田舎からベルリンに出てくるものの、一切上手くいかず、怪しいバイトに乗ったら聖杯戦争に参加することになったちょっと可哀想な人です。さて、聖杯戦争に参加しているということは彼は偶然にも魔術回路を持った一般人ということです。それにしては二話後書きで見せたスパルタクスのステータスやスキルのランクが上がりすぎでは?と思われるでしょう。別に彼がチート魔術師とかいうわけではないですよ?ある一点を除けば、例え彼が今後魔術師としての道を選び魔術の腕を鍛えたとしても、せいぜい中の下程度の魔術師にしかなれません。では何故スパルタクスの性能がああも上昇していたのか、その理由はちゃんとあるのですが、物語の最中に語られることになるので今回は語りません。容姿についてですが、髪は黒、瞳は褐色、背は172cmと低く、体重は56kgと痩せぎみ。名前であるエルフォルグは成功という意味なのだが、これは母親が彼を身篭ってから、唐突に父親の仕事が上向きはじめたため、それにあやかったもの。しかし、彼の人生において彼は成功とはかけ離れており、スポーツも勉強も芽が出ず、どんどんと成功していく友人達を尻目に歌手という夢を捨てきれずに今に至るのです。
彼がスパルタクスと出会いどう成長するのか。是非楽しんでください。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
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