中尉のダンジョン攻略!   作:中尉好き

4 / 5
お気に入りが100件超えました。
ありがとうございます。作者のやる気が上がります。
中尉の人気にも感謝です。
急いで書いたので日本語ができてない可能性もありますので見つけたら指摘してください。



散歩

「へぇ~!で、そのまま十階層まで下りたってのかい!」

「うるせぇな。もっと静かにしてろ」

 

 ヴィルヘルムとアイシャはそこそこ賑わう飲食店にいた。ヴィルヘルムはダンジョンに移行していたが今は夜の時間で、普通の冒険者ならばダンジョンから帰る時間である。どこの飲食店も客は多くなる時間帯であろうから、そこそこの賑わいしかないこの店は、普段は閑散としていることだろう。

 通な奴しか来ないんだよ、とはアイシャの言だ。

 ヴィルヘルムはここで注文したトマト料理を一人楽しんでいた。料理を食えば、確かにここはいいところだとわかる。店の場所も、見た目も悪いが、出てくる料理は一級品だ。きっと素材もいいモノを使っているのだろう。ここでは野菜などを直接買うこともできるらしいから、あとで買って帰ることも視野に入れる。金は前回のダンジョン探索で割と余っている。ヴィルヘルムは徒手で戦うので武器を購入する必要がなく、また、傷なども相手からエネルギーを吸収すればいいので、他の人よりは溜まり易いといえるだろうから今後も減ることは少ないだろう。

 

「で、初めてのダンジョンはどうだった?楽しく遊べたかい?」

 

 アイシャは先ほどと同じように、ヴィルヘルムに笑いながらそう尋ねてくる。

 

「ああ、なかなかいいな、あそこは。最初は期待外れかと思ったが、下りれば降りるほど楽しい場所だった。これからもっと降りるのが楽しみだぜ」

 

 アイシャの質問にヴィルヘルムは素直に答える。うまい飯を食えば、ヴィルヘルムだって機嫌がよくなる。話をするぐらいいいだろうと思えるようになるのだ。

 ダンジョンについても、楽しくなっていったのは事実だ。最初はゴブリンやコボルトなど最弱モンスターだらけで満足いく相手はいなかったが、それでも集団でこられればそこそこ遊ぶことができた。それに階層を進むごとに相手の強さも上がっていった。五階層からは新しいモンスターも現れ、十階層からはまた雰囲気が変わる。なかなか退屈させられることはなさそうだった。

 今までダンジョンで遭遇したモンスターの中で、ヴィルヘルムが特に気にいているのがキラーアントだ。

 彼らは固い外骨格を持ち、ヴィルヘルムが殴っても一発程度では死ななかった。他のモンスターたちでは一、二発殴ってしまえば終わるレベルのモンスターが多かった故に、手ごたえを感じるという点で、ヴィルヘルムは気に入っていた。

 そして、もう一つ気に入っている点がある。それはキラーアントの性質の一つである、瀕死状態に陥ると仲間を呼ぶフェロモンを放出するという点だ。

 ヴィルヘルムは最初のダンジョン進出ということで、まず、戦いの数をこなすことを第一目標としていた。戦いにおいて最も重要なことは己を、そして相手を知ることである、というのがヴィルヘルムの心得だ。

 ダンジョンとは己にとっての未知。そして神の恩恵というよくわからないものを受け取った自分自身もまた未知であった。だからこその戦闘数を増やすという目的ができたわけだ。

 しかし、ダンジョンをひたすら歩き相手を見つけることのなんと非効率なことか。ヴィルヘルムは序盤、それを実行し、その面倒くささに発狂寸前であった。そこで出会ったのがキラーアントである。

 初邂逅時は普通に戦闘をした。確かにキラーアントは固かったが、倒せないほどではなかった。ステータスは、スキルによりこれまでの戦闘で強化されていたし、スキルそのもののステータス上昇効果で上がっていたため、外骨格を攻略することができたのだ。

 そして、戦闘は瞬く間に終了。二体ほどで現れたキラーアントはすぐに屍となった。

 そして、そこでヴィルヘルムはキラーアントのすぐ傍で(・・・・)休憩兼モンスターと出会うための対策案を練り出そうと奮闘を開始した。

 するとそう時間もたたないうちに、先ほどと同じように、数匹のキラーアントが現れる。そこでヴィルヘルムは即座にそのキラーアントたちを処理したのだが、一匹を誤って殺し損ねたまま放置してしまったのだ。普段ならありえないが、今のヴィルヘルムは、どうすればもっと戦えるか考えることに必死だった。そして、そこから始まったのが、アリ祭りだ。

 詳細は省略するが、その時の光景を他の低レベルの冒険者が目撃した際、あまりの壮絶さに気絶してしまうほどだったという。この時にヴィルヘルムはアリの有用性に気が付いた。

 

「…んで、結局のところ俺に何か用があるわけじゃねえのかよ?」

 

 ヴィルヘルムは食事が丁度終わったあたりでアイシャに問いかけた。ヴィルヘルムからすると正直なところアイシャは少し怪しかった。

 部屋の前で丁度団員と出会うというのならよく合うシチュエーションだが、今は夜中である。他の団員はそれぞれの部屋で人を(・・)待つか、それぞれで食事に向っているなりしているはずだ。事実、一部を除いて、他の団員がイシュタルの近くに居ないのを見計らって、ヴィルヘルムはイシュタルの部屋に赴いたのだ。

 なのに特にイシュタルに用事があるわけでもなく、イシュタルの部屋の前をうろちょろしている。そして、ヴィルヘルムが出てきた途端、急に話しかける。ヴィルヘルムが不審に思うのも自然な流れである。むしろ、警戒心が高いヴィルヘルムだからこそ不審に思っただけかもしれないが。

 

「いっただろ?新人の入団祝いだって」

 

 アイシャは最初と変わらずそう言って飲み物を気前よく飲み干した。

 

「……」

 

 それにヴィルヘルムが返すのは沈黙だ。本当にそれだけか?と再度促すように、ヴィルヘルムはじっとアイシャの目を眺めた。

 

「…わかったわかった!言うよ!」

 

 ずっと見つめ続けるヴィルヘルムに対し、遂にアイシャは白状することにした。

 

「別にそんな大層なことじゃないんだけど…一緒にダンジョンに行かないか?」

「なぜ?」

「気になるんだ、あんたのことが。…あ、別に男としてっとかじゃなくて冒険者として、だけどね?」

 

 勘違いするなよ?と笑いながらアイシャはそう言いくくる。

 一応これまでの疑問は解けたが、今度は、冒険者として気になる、とはどういうことだろうかとヴィルヘルムには新しい疑問が湧いてしまった。

 確かにいきなりスキルや魔法があるのは珍しいことらしいが、それはほかの冒険者にも違和感として残ってしまうほどのことなのかというと、そうではないはずだ。もしそうなら、イシュタルはもっと注意するよう言ってくるはずだろう。

 

「気になる、ねぇ」

 

 ヴィルヘルムとしては周りがどう感じようが特に気にはしない。しかし、他の多くの冒険者が何かを感じてしまっていることで、面倒なことに巻き込まれるのは御免だ。個人同士の喧嘩程度で済めばいいが、ファミリア同士の喧嘩となればただ事では済まないはずだから。

 そのあたりのことも考えヴィルヘルムはアイシャに尋ねる。

 

「それはどんな感覚だ?お前以外の冒険者も感じてるのか?それはどの程度まで感じることができる?その感覚はど―――」

「待った待った。もっとちゃんと話すからもっと落ち着けって」

 

 ヴィルヘルムの怒涛の質問攻めに、アイシャは若干面倒臭そうに待ったをかける。

 

「ダンジョンでも潜りながら話そう」

 

 立ち上がったアイシャはそう言った。

 ヴィルヘルムもおって立ち上がる。先にアイシャが会計を済ませた後に律儀に会計をすまし、しっかりと弁当用にトマトを買うヴィルヘルムであった。

 

 

 ダンジョンにはモンスターの断末魔が響いていた。

 切り裂かれ絶命するモンスターの最後の叫び声。殴打による痛みによって上がるモンスターの悲鳴。新米冒険者なら思わず失禁してしまいそうな光景がそこにはあった。

 

「はああああああああ‼」

「オラァァァ―――!」

 

 振り下ろされるのは大朴刀。大きな刀身は華麗に宙を舞い、迫りくるモンスターを片っ端から切り裂いていく。その光景を生み出すアイシャは美しく、そこらの男なら思わず見とれてしまうだろう。近くでそれを視界に入れるヴィルヘルムも、これがダンジョンでの戦闘最中でなく、見世物としての剣舞であるなら、大人しく楽しんでいただろう。それほどまでにその剣捌きは洗練されていた。

 その隣で振るわれる拳も見事なものだった。決まった型のない、ヴィルヘルムの我流の武法。微妙に緩められた体制から突き出される高速の拳は、的確にモンスターを屠っていた。中には防御姿勢をとる者もいたが、ステータスの上がったヴィルヘルムには到底追いつけない。

 二人の猛攻の前に、十を超える数のモンスターたちは瞬く間に殲滅されていった。

 

「お疲れさん、ヴィルヘルム」

「やっぱこの辺のじゃもうつまんねえな」

 

 ヴィルヘルムはアイシャの労いの言葉も意に介さず、何度目かわからない不満そうな声をため息とともに漏らした。

 

「やっぱあんた変わってるね。雰囲気がほかの奴らとは違うよ。それに戦闘中はなかなかテンション上げちゃってさ、目がやばいんだよ」

 

 前半は笑いながら、後半は呆れながらアイシャはそう言った。

 

「…とりあえず気になることってのが大したことじゃねえってことはわかったがよ、その変わってるっていうのを連呼するのはよせよ。変わってるやつなんざどこにでもいんだろ?」

 

 そう、ヴィルヘルムは既にアイシャのいう気になることについて聞き終えていた。ちなみに何がアイシャを気にならせていたかというと、それはスキルであった。

 ヴィルヘルムのスキル、【■■■■(クリフォト・バチカル)】は他者から様々な《力》を吸収するスキルである。吸収の仕方は攻撃をすることだが、それをする際にヴィルヘルムの体からは目に見えない何かが出てきていたのだ。その何かがダンジョンから帰還した際のヴィルヘルムから、本人の意思とは関係なく漏れだしていた。それをホームでたまたまアイシャが感じてしまったというだけの話だったのだ。

 なにかとんでもないミスをしてしまっていたかと少しだけ考えていたヴィルヘルムは、その事実に少し機嫌を悪くしてしまった。正に「あほくさ」である。

 

「おいアイシャ、今回はどこまで潜るつもりだったんだ?」

 

 ヴィルヘルムは今回潜ろうと誘ってきた側であるアイシャに問いを投げた。

 ヴィルヘルムは本来なら今回も自分一人で潜るつもりだった。その場合なら、前回が十階層まで潜ったこともあり、もう三階層ほど行こうと思っていた。しかし、今回は同行者付きである。ペースなんてものはもともとヴィルヘルムにはないが、あまり深く潜ろうという意思も今はなかった。

 したがって今回の探索の期間はアイシャに委ねられる。

 

「う~ん、そうさねえ…」

 

 問われた側のアイシャはこれからやることがまだあるか考える。

 はっきり言って、今回ヴィルヘルムを誘ったのは、少し感じた違和感を確かめることだ。確かにヴィルヘルムとダンジョンに潜ったことでそれは解消できたし、ヴィルヘルムがどんな男であるのか、今日付きまとったおかげである程度は知れた。目的は果たせたといっても過言ではない。ならばこれからまだダンジョンに行くことで何かメリットがあるか。アイシャは考える。そして―――

 

「帰ろうか」

 

 なかった。人まずの疑問が解消されたので問題はない。ヴィルヘルムの魔法にももちろん興味はあったが、それはまた今度でも問題はない。根を詰めるのは非常時では有効だが、こんな余裕のある日にはあまり褒められたものでもないし。

 

「おう」

 

 ヴィルヘルムは先ほどアイシャに合わせると決めていた。故に、その決定にも異議を挟まない。暴れたりないというのは勿論あったが、別にダンジョンは逃げない。それに今思えば睡眠をとっていなかった。気分転換としても一度戻ってしっかりとした休息をとることも必要なはずだと、ヴィルヘルムは考えた。

 そして二人は帰り道で会話ついでにモンスターを屠りながらダンジョンの入り口にまでたどり着いていた。

 

「じゃあね」

「はいよ」

 

 ヴィルヘルムの方を見ながら手を振るアイシャ。そちらには一瞥もくれずに、ヴィルヘルムは去っていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。