君と紡いだ世界の歌 作:あーさー
「特別講師?」
渡された資料に書かれていた文字を見て、オレは呟いた。
「そうだ。お前には、4月から一年間早乙女学園の特別講師をやってもらいたい」
「なんでまた急に。4月なんて、あと一週間もないじゃん」
「あー・・・それはオレも悪かったと思ってる。でもこっちも色々忙しかったんだよ」
盛大にため息をつくリューさん――日向龍也さんは本当にお疲れのご様子。
アイドルやって学校の先生もやってっての大変そうだもんね、お疲れさまー。
「まぁいいけど。で、特別講師ってどういうこと?去年までなかったよね」
「ああ、今年試しにやってみて、上手くいったら次もまたって感じたな。今年ちょっと面倒くせぇヤツが入ってくるから、ソイツの監視ついでに生徒を鍛えてほしい」
「ふぅん。で?別にやってもいいけど、オレだってアイドルの仕事あるから忙しいのはパスだよ?」
「午後一時半から二時半までの週四だ。これくらい、お前ならいけんだろ」
「おーおーもしかしてオレ信用されてる?」
「信用も信頼もしている」
「ひゃー嬉しいこと言ってくれんじゃん。いいよ、引き受けてあげる」
「本当か!?助かるぜ」
信頼してくれてるらしいからね、期待には応えたい。
それにオレの従妹も早乙女学園に合格したらしいし、なんだか面白そうだ。
時間調節は大変そうだけど、なんとかしてみせようじゃないか。
それより、お疲れのリューさんは今日はもう休めば?
アイドルの仕事はオフなのに学校の仕事までやるとか、大変でしょ。
休めるときに休んどかなきゃ身体壊すよ。
そう伝えると、リューさんは苦笑した。
「そうだな。じゃあ、残りの仕事、任せてもいいか?」
もちろん。
完璧にこなしてみせるよ。
◇◆◇
「へぇ。じゃあ、ユツキは来月から先生になるんだ」
「そーなんだよ。また忙しくなるなー」
「ユツキが忙しいのは何時ものことじゃん。今更でしょ」
「悲しくなること言わないで」
リューさんの残りの仕事を早々に終わらせ、オレは親友の部屋に来ていた。
コイツもオレと同じアイドルだが、今日の仕事は夜からって知ってたからな。
この親友のそばは騒がしくならないで、気まずくもならない程よい静かさが堪らなく居心地がいいんだよね。
まぁ親友って言ってもオレがそう思ってるだけなんだけどな。
コイツはオレのことどう思ってんだろ・・・単なる仕事仲間かな、やっぱ。
「学校、ね・・・」
「お?藍、もしかして学校が気になる?」
「そう、だね。気にならないと言ったら嘘になるかな。ボクは学校についてデータでしか知らないから」
「ああそっか、藍はロボだもんな。学校通ったことないのか」
この友人、美風藍は人間ではない。
ソングロボとかいう、所謂ロボットだ。
なんでもシャイニーさんこと社長が理想のアイドルを創るためにとかなんとかかんとかで、自ら出資して造ったってことになってる。・・・・・・表向きは。
事実はオレもよく知らない。
でも知らなくてもいいかなって思ってる。
結構重そうな内容の予感がするし、知ったところでオレと藍の関係が変わるわけでもないしね。
え?なんで藍がロボットであることを知ってるかって?
そんなの声聞けば一発でしょ。
初めて会って声聞いたとき直ぐにわかったよ、「あ、これ人間の出す音じゃねぇわ」って。
指摘してみたら凄くびっくりされたけどね。藍にもシャイニーさんにも。
因みに藍がロボットであることを知ってるのはオレとシャイニーさんだけ。
なんと同じグループのレイちゃん達すら知らないという。
今のところは話すつもりも無いらしい。
いいのかそれでとは思うけど、オレもシャイニーさんに口止めされてるし、仕事に支障は出てないからいいかってことで。
「じゃあ、藍もやってみる?特別講師」
「は?なんで?」
「興味あるんだろ?もう既にアイドルとして成功してるオレ達が今更生徒ってのは無理だけど、教師っていうちょっと変わったポジションから見てみるのも面白いかもよ。データよりも、やっぱ本物を感じたほうが演技とかにも活かしやすいだろうし」
「ボク、まだ教師なんて年齢じゃないよ」
「それ言ったらオレだってそうじゃん。オレまだ18だよ?」
「・・・それもそうだね」
その後も他愛ない会話をしながらのんびりしているオレ達。
藍はパソコンを弄り、オレは特別講師の資料を読み進める。
そして、リューさんの言っていた「面倒くせぇヤツ」の情報が載っているページを見て
「ぶっふぉ!?」
思わず吹き出した。
「ちょっとユツキ、汚いんだけど」
「ごめん悪気はなかった・・・・・・マジかよ、一体何がどうなったらこんなことになるんだ」
「なにかあったの?」
「・・・あったっちゃあ、あったかなぁ」
えー・・・シャイニーさん、なんでこんなヤツ生徒にしちゃったんだよ。
コイツ、既にアイドルだし、そもそも早乙女事務所所属じゃないじゃん。
相手方にバレたらどうする気なんだ。
なんかとんでもない面倒事に巻き込まれた気がする。
「HAYATO」、なのだがそうではなく双子の弟という設定らしい「一之瀬トキヤ」の無表情な顔写真を見て、オレはタメ息をついた。