ifの短編集   作:人型(改)

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一発ネタ
緑谷出久は才能がある


とある中学校。

 

地域のなかで一番の進学校というわけでもなく、何かしらのスポーツの強豪校というわけでもない。平凡で普通な学校のとある教室で、授業中であるにもかかわらずカタカタというキーボードの音が鳴り響く。

 

 

「ふふふ…。もう少しだ。もう少しで完成する…!」

 

 

机に堂々と教科書ではなくノートパソコンを広げている生徒。緑谷出久は怪しげな笑みを浮かべてブツブツと独り言を呟きながらもその両手を止めず、忙しなく動かし続けている。

 

当然そんな生徒を見逃す教師などいない。黒板に数式を書いていた教師はその手を止め、出久の元へ近づいて話しかけた。

 

 

「おい、緑谷。もう授業時間半分過ぎたぞ。休み時間はとっくにすぎてるんだ。そろそろちゃんと授業を受けないか。いくら毎回全国模試一位とはいっても、受験も近いんd「黙れ!」

 

 

ここは普通の学校。平凡で普通な教師達が勤務する普通の中学校だ。だがしかし、生徒達まで普通であるとは限らない。

 

そう、突き抜けたものがいた。主に二人ほど。

 

一人は性格は悪いが成績優秀で強力な個性を持ち、難関の雄英高校ヒーロー科に確実に合格するだろうと言われている少年。爆豪勝己。

 

そしてもう一人は二つの理由で有名な少年だ。一つは入学以来定期テストでも全国模試でも満点を取り続ける天才でありながら、『個性』を持たない『無個性』であること。

 

もう一つは―――

 

 

「神の才能を持つこの僕のクリエイティブな時間の邪魔をするなァ!!」

 

 

普段はおとなしく心優しい性格であるのに、開発中や勝負事になるといろんな意味で突き抜けた性格に豹変すること。

 

そんな少年が、緑谷出久(やべーやつ)が、ここにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はかなり進んで、雄英高校体育祭。

 

第一種目の障害物競争のスタートゲートの前では生徒たちが位置についていた。

 

 

「うわぁ…。みんなすごい気迫だな」

 

「おや、出久さん!相変わらず弱気な顔してますね」

 

「そういう発目さんは…フル装備だね」

 

 

出久に話しかけてきたのは同じサポート科の発目明だった。彼女は身体中に自身の発明したサポートアイテムを装備しており、鎧でこそ無いもののその様はまるで重装兵のようだ。

 

 

「当然です!今日は私のドッ可愛いベイビーたちのお披露目会とも言えますからね。心が踊ります!!」

 

「そっか。まあ僕もまだヒーローになるのを諦めた訳じゃないし、この体育祭でアレのテストもしておきたいからね」

 

「話に聞いていたライダーシステムですね!!」

 

「うん。あっ、もう始まるみたいだよ。よし!オールマイトも見てるし、僕も本気で取りに行く…!」

 

目が赤く光り、出久の雰囲気が変わった。そして不敵な笑みを浮かべる。

 

 

(おっ、スイッチが入りましたね)

 

「それでは…テストプレイを始めるとしようかァ…!」

 

 

スタートの合図と同時にヒーロー科の轟焦凍が個性を発動させ、背後の生徒達の足元を凍らせる。同じクラスであるA組の生徒たちは軽々と回避したが、他の生徒はそのほとんどが動きを止められていた。

 

しかしA組以外であっても、轟の妨害をよんでいた生徒がいる。そう、例えば…緑谷出久とか。

 

 

「やはり轟焦凍の氷が来たか。初見殺しの技としては優秀だが、この学園にいる人間は教師も含めて全員データを収集済みだァ…。僕の才能にかかればこの程度の妨害を予測するなど容易い!」

 

((いや、なら先に進めよ…))

 

 

出久は轟の妨害を回避しながらも、先に進まず取り憑かれたように一人で喋っている。

 

周囲のちょっと引いた視線を一身に受けながらも、出久は気にせずに懐からピンクとライトグリーンの色をした機械のゲーマドライバーを取り出して腰に当てる。すると自動でベルトが飛び出して出久に巻き付いた。そしてそのまま紫のグリップのついた薄いカード状の機械であるガシャットを取り出して右手に持ち、親指でスイッチを押す。

 

 

「僕の発明を世間に見せつけるときが来た!この僕の神の才能の前では、個性の有無など…もはやあってないようなものだァ!!」

 

《MIGHTY ACTION X!!》

 

 

音声と音楽が流れ、出久の背後にゲームのスタート画面のようなウインドウが出現し、複数のブロックがばらまかれる。周囲の引き気味だった視線が驚きと興味の視線に変わった。出久はガシャットを半回転させてゲーマドライバーに差し込む。

 

 

「変身」

 

《レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム? アイム ア 仮面ライダー!!》

 

「仮面ライダーゲンムLv1」

 

 

音声が鳴り終わると出久は言葉通り変身していた。

 

…ちょっとずんぐりむっくりした、二頭身の風貌に。

 

 

((……ゆるキャラ?))

 

((ちょっとかわいい))

 

 

高度な技術力が窺い知れる変身アイテムに皆が驚き、その期待が高まっていただけに、周囲の生徒たち(とくに男子)も残念感漂うこれには脱力ものである。女子達のなかには和んでいるものもいたが。

 

だがゲンムは気にしない。フゥ!という掛け声と共に右手を振り上げながらジャンプする。それと同時にゲンムの頭上にブロックが出現し、振り上げた右手に破壊された。するとそこから円形の板のようなものが出現し、ゲンムに吸い込まれていく。

 

 

『高速化!』

 

「ハッハァ!アイテムゲットだァ!!」

 

 

アイテムの名前の通り、空中に生み出したブロックの上をとてつもない速度で走り去っていくゲンム。

 

聞き覚えのある掛け声、ジャンプ時に振り上げられた右腕、壊れたブロックから出てくる強化アイテム。目の前で起きた光景に人々は頭を悩ませる。

 

具体的には、あれ?なんか見たことあるぞ?という感じに。

 

脳内でゲンムの白と黒のカラーリングを赤と青に、円形のアイテムをキノコ型に変えてみる。

 

うん。これ、あれだ。

 

 

((マ○オだ!!))

 

 

観客も含めた全員の思考が一致した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一関門のロボ・インフェルノを7.7tのパンチ力と11.5tのキック力を見せつけながらあっという間に駆け抜けたゲンムLv1は、第二関門のザ・フォールにやって来た。

 

そこでは多くの生徒が立ち尽くすなか、ちょうど発目が自身のサポートアイテムを使って障害をクリアしようとしているところだった。

 

 

「さあ見ててできるだけデカイ企業ー!!私のドッ可愛いぃベイビーを!!」

 

「すごい。負けな…っ!?何あれ!?」

 

「ほう。さすがは発目さん。僕ほどではないとはいえ素晴らしい才能だ」

 

 

突然頭上に現れたブロックとそれに乗るゆるキャラに驚く麗日お茶子。

 

 

「このままLv1で行くつもりでいたが、それでは面白味がないか。ならば少し本気を出すとしよう」

 

 

ゲンムはそう言うと、おもむろにゲーマドライバーのレバーを開いた。

 

 

「グレード2」

 

《レベルアップ! マイティジャンプ! マイティキック! マイティアクションX!!》

 

((やせた!そして伸びた!!))

 

 

もはや歌といってもいい音声と共にゲンムはLv1からLv2へとレベルアップした。姿も大きく変わっている。ずんぐりむっくりした感じの姿から、シュッとした感じの姿に。

 

 

「まだまだこれでは終わらないさ。次はこれだ。グレード3」

 

 

ゲンムは新たなガシャットを取りだし、スイッチを押した。観客も周囲の生徒たちも皆、ゲンムの次なる変身に期待を募らせ夢中になっている。

 

 

《JET COMBAT ! ! 》

 

 

背後にゲームのウィンドウが表示されると、ゲンムはゲーマドライバーのレバーを閉じ、手に持ったガシャットを二つ目の差し込み口に差し込んでから再びレバーを開いた。

 

 

《レベルアップ!》

 

《ジェット! ジェット! イン ザ スカイ! ジェット! ジェット! ジェットコンバット! 》

 

 

ウィンドウからロケットような形をしたコンバットゲーマが出現し、変形しながらゲンムLv2に装着された。ゲンムの胸部には戦闘機のような形のアーマーがつき、腰の両側にはガトリング砲のガトリングコンバットが装備されている。

 

 

「それじゃあ先に行かせてもらうよ」

 

「ずるい!くやしー!!」

 

「だぁははははは!神の才能にィ…不可能は無い!!」

 

 

芦戸三奈の叫びに対して、恐らく後々聞いたら黒歴史物の返答をしながら、ゲンムLv3は背中のジェットを使って空を飛び、先に進んでいった。

 

 

「む、あれは出久さんですか。あの洗練された装備と大胆な発想!さすが出久さんです!!あとでお話を聞かなければなりませんね。ですがそれはそれとして、私のベイビーたちも負けていられません!!」

 

 

発目は飛んでいくゲンムを見て悔しさと尊敬を同時に感じながら、自らを奮い立たせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてゲンムは第三関門である怒りのアフガンにたどり着いたのだが、正直地雷源など空を飛んでいる今の彼には関係ない。地雷に四苦八苦しながらゆっくりめに進む地上の生徒たちを尻目に、ゲンムは一人悠々と上空を行く。そしてゴールが近くなったところで再び視線を落とすと……。

 

 

「…あれは……」

 

 

眼下には首位を争っている轟と爆豪がいた。

 

ゲンムは考える。彼らはお互いの対処に必死で自分の存在に気づいておらず、彼らの進行方向にはまだ大量の地雷が埋まっている。そして自分の両腰にあるのはガトリング。

 

 

「アハァ…!」

 

 

仮面の下で怪しげな笑みを浮かべながらゲンムはすぐにその考えを思い付く。

 

やることはもう、決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猛烈な勢いで追い付いてきた爆豪との首位争いに必死になっていた轟は突然の事態に反応できなかった。しかし実際のところ、銃声がしたと思ったら前方の地雷が突如爆発したのだから、反応できなくて当然である。

 

土煙にまみれながらも足を止めずに走りながら、轟は状況把握に努める。爆豪は…まだ右側にいる。巻き込まれたようだ。ということは爆豪の妨害ではない。では一体誰の妨害なのか。

 

そんな轟の疑問の答えは二度目の銃声や爆発と共に降りてきた。文字通り降りてきたのである。ジェットで。

 

 

(なんっだありゃ!?)

 

 

後続に道を作るのを覚悟で地面を凍らせて進み始めた轟は土煙のなかで確かに見た。背中にジェットをつけた人影が高笑いしながらゴールへ飛んでいくのを。

 

 

 

『まさかまさかの大番狂わせ!序盤でいったい誰が予想できた!?』

 

『ヒーロー科の連中すら押し退けて一番最初にスタジアムに還ってきたサポート科のその男!』

 

『緑谷出久の存在を!!』

 

 

See you Next game ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

嘘予告

 

次回の『緑谷出久は才能がある』は…。

 

 

「緑谷少年!久しぶりだね!!」

 

「無個性のまま強くならなきゃ意味がないんだ…!」

 

「俺は右だけで一番になる…」

 

 

明かされる過去と唐突な宣戦布告。

 

 

「何でサポート科なんかに行きやがった!!」

 

「か、かっちゃん…」

 

「やめないか爆豪くん!」

 

「こんのクソデk「緑谷出久だァ!!」

 

 

幼馴染みの抱えてきた想い。

 

 

「虐げられている人々に安全と安心を与える……それがヒーローという職業の使命だ!」

 

「全力…?なんのつもりだ…!」

 

「どうせなったところで…クズみたいなヒーローだろうなぁ!!」

 

 

そしてゲンムの力は――

 

 

「感謝するよ…轟焦凍ォ!」

 

「俺は…親父を―」

 

「ブゥン!!!」

 

 

次のステージへ!

 

日曜朝8時!(大嘘)

 

 




第五弾は仮面ライダーエグゼイドより、檀黎斗/新檀黎斗/檀黎斗神の神の才能でした。

私の社長愛の暴走した結果です。ネタキャラ最高。

この出久君は素で天才な設定です。騎馬戦から先とか細かな設定とかはあまりよく考えてません。ですから本当に一発ネタでした。

でもエグゼイド終わって書きたくなっちゃってつい…。

許されない事をしたのはわかっている…けど……。

仕方がなかったんだよ!社長愛を静めるためには…書かないわけにはいかなかったからねぇ!

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