臆病者の英雄 作:練乳
こんにちは、我武者羅に走って途中から記憶が無いけど何とか逃げ延びた転生者です。
もうアレから何度も彼女に襲撃を受けました。
まぁそれでも何とか逃げられてるんだけどね。
「待てやコラァ!」
「死ネェ!」
「ひゃあぁあぁぁーー!?」
そして現在何故か複数人の男性に血眼で追われていますアイェェナンデ? ナンデ!?
男どもは血眼になって森の中を駆け抜ける男を追い掛ける。
それはとある噂が理由だった。
そう、アタランテを速力で敗かした男がいると、それは飛んでも無い話だった。
何故なら徒競走で勝利すれば妻になろうと宣言したあのアタランテである。
そのアタランテが速力で敗けた。
それはつまりアタランテの婿候補となった事に他ならない。
そして、嫉妬に狂った者が男女問わずとんでも無い行動をするのはギリシャ神話等ではよくある出来事、トロイア戦争では一人の女を巡って起きたほどだ。
当然、彼女に恋慕を抱いていた男衆は何処の誰かも分からない男に、あろう事か怒りの矛先を向けたのだ。
そして、更に男衆の中でその噂は都合良く曲解される曰くその男を打ち倒した者はアタランテの婿になれると。
「「「ヤロエブッコロシタラァアァァーーッ!!」」」
そして欲望にかられた男衆は、ある者は剣を持ち、ある者は弓を持ち、またある者は神の加護を持って、名も知らない男をブッ殺さんと立ち上がったのである。
だが、彼らは男を捉える事は出来なかった。
男を森の中で追い掛けたが体力が尽き、次々と男衆は倒れて行った。
それでも彼らは限界まで駆け抜ける。体力の尽きた者は体力が回復次第再び探索しては森を駆け抜ける。
追い詰める為にある者は森の獣を狩ってでも追い詰めようと動いた。
凄まじきかな男衆の欲望と嫉妬、だが彼らは男を追い詰める事は出来なかった。
これ程までの騒ぎを森の守護者が許すであろうか?
そう⋯⋯ついに森の守護者は動き出したのである。
「ゼェハァ……何とか逃げ切れた」
僕は現在、何とか狂戦士と化した男衆から何とか逃げ延びた。
「えっと⋯⋯あ、あった?」
僕は何か食べられるものを探すと、丁度美味しそうな木の実を見つけたのでいただく事にする。
え? 肉とか食わないの? 嫌だよ狩るのに一々命かけるとか。
そして僕は木の実を取ろうとして何かの気配に気づき、慌てて気配の方を見る。そこには長い銀髪のお姉さんがいました。
「ふうんあの子を敗かしたと聞いて、どんな子かと思ったんだけど⋯⋯思ったより小動物見たいで可愛らしい子だなぁ」
「は、はひ! しょ、しょのなんのようでしょうか?」
もう僕は緊張の余りにカミカミまくりながらもお姉さんに何のようか訪ねる。
「あ、うん⋯⋯いやあ君のおかげで森の治安が大変な事になっちゃってね」
えっと途中から何かブツブツと言って聞き取れませんでしたが、どうも僕のせいで森の治安が宜しく無いようです。
「え、と⋯⋯何かごめんなさい」
「あ、良いよ良いよ気にしないで、本当なら解決の為に元凶を断つべき何だけど、君はあの子が狙ってるし、仕方がないから君がどう言う子か見に来たわけなんだよね」
なんか物騒な事を言われてる気がするが、とりあえず聞いておくとしよう。
「そ、それでどうなんでしょうか?」
「まぁ結果はギリギリ合格かな? 臆病なところは少しあれだけど、欲望丸出しのアイツらと違って大人しいし良い子ではあるみたいだしね」
お姉さんはそう言うと僕に背を向けて森の奥へと歩き始める。
だけど、少し歩いてから直ぐに僕の方に振り向く。
「ちなみに、私としてはあの子が君と結ばれる事をそれなりに期待してるよ♪」
そう僕に軽くウインクしてから、再び森の奥に歩いて行くのだった。