ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター 作:ヘッズ
前回の投稿から三カ月以上経ってしまいました。
次回から投稿スピードを速められるように頑張ります
♢ドラゴンナイト
ネオサイタマの夜空をマグロツェッペリンが泳ぎながらいつも通りメガコーポの商品のCMを流し、いつも通り重金属酸性雨が降り注ぎ、いつも通りネオン看板が夜を照らす。
大半の人間にとってはいつも通りの日でありドラゴンナイトにとってもいつも通りの自主的なパトロールをするはずだった。だがそれは昨日までのことである。
時計をしきりに確認しビルの屋上から辺りをキョロキョロと見渡す。その様子はひどく落ち着きがなかった。
昨晩出会った少女スノーホワイト、あれはまさに一目惚れだった。
容姿、醸し出されるアトモスフィア、すべてが自分の好みである。そんな彼女と一緒にパトロールをする約束をし、今居るビルの屋上で集合するはずだった。だが指定された時刻に迫っていると言うのにまだ姿を現さない。
もしかして来ないかもしれない、むしろあの出来事自体幻だったのかもしれない。仮に来たとしても上手く会話できるだろうか?
胸中に様々な不安が押し寄せてくる。ドラゴンナイトはその不安を振り払うかの如く深く息を吸い吐く。二回三回と繰り返し深呼吸を繰り返す。
中学での学力テスト、野球の試合前、大きな出来事の前には常に不安が押し寄せてきた。そのたびに深く深呼吸をして気持ちを落ち着かせその度に何とかなった。だから今日も大丈夫だ。
己の頭のなかでスノーホワイトが来て良い雰囲気でいられるイメージを思い描く。スノーホワイトがすぐに到着する、和やかな雰囲気弾む会話。パトロールの最中に出くわした悪いニンジャ、スノーホワイトのピンチ、それをカラテで撃退する自分……
「お待たせしました」
「アイエ!?スノーホワイト=サン!?」
すると突如後ろから声をかけられ振り返ってみるとそこにはスノーホワイトがいた。ドラゴンナイトは不意の出来事に素っ頓狂な声をあげてしまう。
ニンジャは常人より感覚が鋭く、見なくとも後ろから来る人物の気配は察知できる。だがまるで気づかず、それだけポジティブなイメージを思い描くことに没頭していたのだった。
「ドドドーモ、僕も今来たばかりだから大丈夫」
ドラゴンナイトは平静を装うが声色から十人中十人が動揺しているのと察することができるほどだった。
その様子が可笑しかったのか見てスノーホワイトは僅かばかり笑みを浮かべている。
出会ってから初めて見せた笑み。出会った時から表情を崩すことなく冷ややかな印象を持っており、それだけに今見せている笑顔とのギャップが産まれドラゴンナイトをときめかせていた。
「これからどうしますか?」
「……あっ、えっと。とりあえず僕のあとについてきてもらえる」
スノーホワイトの笑顔に見惚れていたせいか数秒ほど間をおいてから問いに答えた。
パトロールをしていれば自然ともめ事が多い箇所や見回るべき場所がわかってくる。すると自然と最適化されたルートが出来あがる。
普段ならそこを回るのだがそのルートはヨタモノやヤンクなどが多く治安が悪い。ニンジャであればそのような者に後れを取ることはないと思うが、スノーホワイトは女の子であり万が一の可能性がある。今日は比較的安全なルートを巡回しよう。
ドラゴンナイトはビルの屋上の淵に立ちパルクール移動しようと脚に力を込める瞬間、ふとあることが気になりスノーホワイトの方へ振り向き問いかけた。
「あとスノーホワイト=サンは何歳ですか?僕は14歳です」
ネオサイタマは完全な縦社会である。下位の者が上位の者にシツレイを働ければ恐ろしい制裁が待ち受けている。ムラハチ、ケジメ、セプクどれだけ上位の者にシツレイしたか、犯したシツレイによって度合いが決まる。
上の者が下の者のブレイコウを許すという稀なことはあるが、世間の風潮がそれを許さないので結局は制裁を受ける。
そして何が上位と下位を分けるかは様々な要素で決まる。家柄、役職、そしてネンコである。
ネンコとは年齢や組織に属している年数などであり、会社などで役職が同じ場合は組織属している年月が長いほうが上となるケースもあれば、年齢が高いほうが上となるケースも状況に応じて変わる。
そしてスノーホワイトとドラゴンナイトの間にある上下関係を決めるのは年齢である。
ここで上下関係は明確にしておいたほうがよい。
知らないまま自分が下なのにスノーホワイトに上のような態度を取ればそれはスゴイ級のシツレイに値する。
「16歳です」
「シツレイシマシター!スノーホワイト=サン!」
ドラゴンナイトはスノーホワイトの答えを聞いた刹那、90°のお辞儀し顔を青くする。
相手は年上だった。今思い返せばタメ口をきいていたことが多々あった。相当堪忍袋を温めているに違いない。
すべてが終わってしまった、焼いたスシに水をかけても戻らない……仲良くなることは不可能だ、きっとオーガのような顔で怒っているだろう、恐ろしくて顔をあげることができない。
それから十数秒ドラゴンナイトは90°のお辞儀の姿勢を維持をし続ける。するとスノーホワイトはゆっくりとした足取りで近づき告げる。
「顔をあげてください。私は全然気にしていませんから」
声に怒気が籠っていない。それに安堵したのか恐る恐る顔をあげるとスノーホワイトはやわらかな笑みを浮かべていた。
一瞬安堵したが、今まで体験してきた縦社会の習性が何か裏が有るのではと疑いの心を抱かせる。
「本当ですか?本当に怒っていませんか?」
「はい。あと私達はこれから一緒に行動する仲間だから丁寧語じゃなくて同級生や友達に話すような言葉づかいでいいよ。私も同じように喋るから。それでいい?」
「ハイヨロコンデー!じゃあ……えっとスノーホワイト=サン……、改めてよろしく」
ドラゴンナイトは右手を差し出し、スノーホワイトはその手を握る。その手はとても柔らかかった。
♢ファル
表通りかの喧騒や明るさとは一転し薄暗く静かで不気味だった。ビルの壁面には「お礼参り」「明日がこない」「金を返せ」などの文言が白や赤色のスプレーで書かれており、それだけでこの場所の治安の悪さを物語っていた。
「ここらへんはヤンクが多いから気をつけたほうがいいよ」
「アリガトウゴザイマス!」
高校生ぐらいの少女はスノーホワイトとドラゴンナイトに頭を下げながら礼を述べる。
少女はストリートの裏路地の方に迷い込んでしまったようで案の定ガラが悪い連中に絡まれていた。そこにスノーホワイトとドラゴンナイトがやってきて連中を追い払っていた。
「あとこの人を見たこと無い?」
少女は画像に顔を近づけ凝視した後首を横に振る。スノーホワイトは予想通りといわんばかりに表情を崩さず少女に礼を述べ、少女は期待にこたえられなかったことを申し訳そうにしながら人通りの多い路地に向かっていく。
「ごめんね。私があっちこっち向かうせいでドラゴンナイトさんのルートから外れてばっかりで」
「気にしなくていいよ。それで困っている人を助けられるなら問題ない」
ドラゴンナイトはスノーホワイトを気遣うように笑顔を見せた。
パトロールの方法は決められたルートを廻り困っている人を助けもめ事を対処していくものだった。
経験から最適なルートを選び巡回する方法は一般的な魔法少女のパトロールの方法と似ていた。普通ならばこの方法が一番効率的なのだが『困った声が聞こえるよ』の魔法を使えるスノーホワイトにとっては非効率的だった。
開始当初はルート通りパトロールしていたが、しばらくするとスノーホワイトがルートから外れ、あちらこちらに向かってもめ事に対処していく。向かう先々でもめ事や困っている人に遭遇する様子を見たドラゴンナイトは次第にパトロールの主導権をスノーホワイトに預けていく。
ドラゴンナイトとスノーホワイトのパトロールをしながらお互いのことを話していた。自身のことや学校での生活や趣味について。スノーホワイトは必要最低限のことをしゃべり聞き手に徹し、ドラゴンナイトが多くの事を語っていた。
そして会話している表情はいつもより少しだけ明るい気がした。その明るさは魔法少女の友人であるリップルと行動を伴にしている時とはまた別のものだった。ドラゴンナイトの存在がそうさせているのか?感情の機微に疎い電子妖精であるファルにはスノーホワイトの心中は図れない。
「画像の人の手掛かりはなかなか見つからないね」
ドラゴンナイトは路地裏のビルを駆けあがり屋上から辺りを見渡しながら呟く。スノーホワイトがさきほど少女に見せたのはフォーリナーXが写っている画像を撮ったものだった。
最初は自分の端末で画像を見せ尋ねようとしていたが、この世界にないものを見せられたら怪しまれる可能性があることを危惧していたがそれは杞憂で有った。
この世界では3Dホロで画像を映せるような高性能端末が存在するらしく、ちょっとデザインが変わった携帯端末程度の認識だった。
「うん、でもこれしか方法がないし地道にやっていくしかないと思う」
スノーホワイトは現状を再確認するように返事をする。そしてファル自身もこの現状が歯がゆかった。
元の世界ならネットに繋がりそこから画像を検索し所在を発見できるのだが、この世界のネットに繋がれない現状ではこのようにローテクな聞き込みでしか探す方法がなかった。
「ところで画像の人とはどういう関係?姉妹というには顔は似てないし」
「どうしても会わないといけない人」
スノーホワイトは感情を込めず質問に答えるその表情が少しだけ険しい。この異世界に自らを送りこんだ人間だ、良い感情を持つわけがない。
ドラゴンナイトはスノーホワイトから漂う雰囲気からこの話題に踏み込まない方がいいと察したのか露骨に話題を変え、行く先々で何故困っている人を見つけられるのか?それはジツなのかと問いかける。
ジツとは魔法少女でいう固有の魔法だろう。だがこの話題も魔法少女としては触れられたくない問題だった。魔法少女にとって自分の魔法を知られているか否かは生死にかかわる問題である。
戦闘において実力差が有っても魔法によって実力差を覆らせるケースは多い。それだけに魔法については極力話さない魔法少女が殆どである。
「私にもよくわからないけど、勘に従ってそこに行くと困っている人やもめ事に遭遇するの。ドラゴンナイトさんもジツを持っている?」
スノーホワイトは淀みなく自分の魔法についてごまかす。よくわからないと枕詞にし感覚的なことと言われれば深くは追及できない。さらに質問をすることで追及の矛先を逃した。
「まあ持っているけど……そんな使えるものではないし見せられる機会があれば見せるよ」
「うん」
それ以上スノーホワイトは追及しなかった。それから数秒ほど沈黙が訪れそれを破るようにドラゴンナイトが話をきりだす。
「そういえばスノーホワイト=サンは門限とか大丈夫?」
ドラゴンナイトはふと時計を見た後尋ね、スノーホワイトも端末を見て時刻を確認する。時刻は22時30分をまわっている。
話の流れでスノーホワイトはネオサイタマの女子高生ということになっている。魔法少女は睡眠も食事も必要もなく現時点で無職と言う何にも社会的にしがらみがないスノーホワイトならば24時間無休で人助け及びフォーリナーXの捜索はできる。
だがニンジャがそうとは限らない、何より自分に付き合わせてドラゴンナイトの学校生活に悪影響を与えるのは望まないだろう。
「じゃあ……今近くで困っている人がいるみたいだから、その人を助けたら帰る」
「わかった。僕もそれが終わったら帰るよ」
スノーホワイトはビル伝いに地上に降りドラゴンナイトもその後についていった。
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室内はボンボリライトにうっすらと照らされ全体的に薄暗い。床も天井も木張りでどこかサルーンめいたアトモスフィアを醸し出している。ここはバー「アラバマ」キノコストリートにあるバーだ。「イッキ、イッキ、イッキ」扇情的な衣装の女性達が囃し立てるようにコールする。するとそれに応える様に若者二人はケモビールを飲みほしジョッキを机に叩きつけた。
ボウズ頭にスカジャンを着ているのがイシイ、ドレッドヘアーにジャージ姿のがタダノである。店内ではイシイとタダノと女性達、他に10人ほどの客が居た。「ワースゴイ!アタシいま体温何度あるのかなーッ!?」マイコ店員は服をはだけ豊満な胸を押し付ける。だがイシイとタダノの表情は厳しい。
一時間後。「そろそろ出るかイシイ=サン」「そうだな」二人は徐に腰を上げそれに反応するように店員が伝票を持って二人の前に立った。「こちらがお会計になります」店員は笑顔を見せながら物腰柔らかく対応する。店員の肉体は服越しでもわかるほど鍛えられ屈強だった。
「ケモビールジョッキ5杯にオーガスレイのショットグラス5杯で1、10、100、49000円か、けっこう飲んだな」「お客様申し訳ございません。もう一度ご確認ください」イシイとタダノは伝票をもう一度確認する。490000円!桁が一つ多い!「エッ?ケモビールなんてそんなにしないですよ。店員=サンの間違いじゃないですか」
タダノが訝しむように視線を向ける。ケモビールは一般層でも気軽に買えるものであり、瓶100本買ったとしても10万円を超えることはない、オーガスレイも同様に高額なものである。どう考えても計算は合わないのである。「テメエ!イチャモンつけてんのかコラーッ!」すると笑顔だった店員が顔を強張らせイシイの服の襟を掴んだ!
すると奥から店員が出てき二人を囲むように取り囲む。皆屈強な体の持ち主だった。「金払えコラーッ!」「借金センター行くぞコラーッ!」店員たちが次々と恐喝めいた言葉をなげつける。コワイ!気弱な方なら失禁してしまうだろう。
察しのいい方ならお気づきだろう。このバー「アラバマ」は典型的なぼったくりバーである!二人はぼったくりに引っかかってしまったのだ!「テメエドッスンダコ……」「イヤーッ!」イシイは襟を掴まれた手を強引に振りほどきイポン背負いでテーブルに叩きつける。CRASSH!グラスとテーブルは砕けた。
なんという切れ味鋭いイポン背負い!イシイはジュドーのブラックベルトだ。「ナニシテクレ……「シューッ!」「グワーッ!」店員がイシイに襲い掛かるがそれをインターラプトするようにタダノがストレートパンチを顔面に叩き込み店員は後方に吹き飛んだ。何というパンチ!それもそのはず。イシイとタダノはジュドーとボクシングにおいてカレッジの全国大会でベスト8に入った猛者である!
「テメエらこそよくもコウハイ達からボッタくってくれたなコラーッ!金は返してもらうぞコラーッ!」タダノは威嚇するようにシャドーボクシングを見せつける。イシイとタダノはぼったくりに引っかかったのではない。すべて承知の上でこの店に入ったのだ。二人はコウハイがぼったくりに引っかかったと聞き金を取り返すべくヤクザのカチコミめいて乗り込んで来たのだ。
「「「「ナメッジャネッゾコラー!」」」」残りの店員が二人に襲い掛かる。店員は全員185センチ以上に対してイシイとタダノは175センチ程度の体格。それに数の差、この乱闘は店員達が二人を袋叩きにするものかと思われた。だが結果は違っていた。
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」タダノのパンチが相手を打倒し、イシイの投げで店員は叩きつけられ悶絶する。二人のワザマエは体格差と人数差を覆すほどのものだった。「俺たちが飲んだ酒はコウハイが飲んだのと同じものなんだよ。相場としてはよくて5万円ぐらいだから残りの44万円返してくれませんかねえ!」
イシイは倒れている店員の一人の襟首を掴み吊るしあげながらインタビューする。何と言う筋力!店員は苦しそうにしながら答える「わ……わかりました……金を……」「ずいぶんと騒がしいな」イシイとタダノは反射的に声がする方向に向く、声の主の年齢は30代ほどの白いスーツに身をまとった男だった。
「アンタは?」「この店のオーナーです」「じゃあ、オーナー=サン。コウハイと俺たちがボッタくりにあった分を返してくれるかな。あと慰謝料も」「ボッタくり?何のことですか?」オーナーは首を傾げながら聞き返す。「ケモビールジョッキ5杯にオーガスレイのショットグラス5杯で49万なんてどう考えてもボッタくりだろう!」タダノは声を荒げるがオーナーは臆することなく平然としていた。
「サービス料も含めれば適正な価格だと思われますが?」「イヤーッ!」タダノはスッテプインからのストレートを繰り出す。オーナーがみせた嘲笑、それをみた瞬間に身体が動いていた。人を完全に見下しぼったくり分の金を返す気はサラサラないということは分かった。ならば払いたくなるまでパンチを見舞うだけだ
「グワーッ!」ストレートがさく裂…していない!オーナーは微動だにしておらず逆にタダノが吹き飛びダウンしていた。「ウォー!」イシイは叫び声をあげながらオーナーに向っていく。襟を掴みイポン背負いの態勢に入る。「グワーッ!」だが気づけばイシイは強烈な衝撃とともに地面に伏していた。
何をされた?技が決まったと思ったら自分が倒れていた。長い間武術をしているが初めての感覚にイシイとタダノは頭の中は混乱している。その二人にオーナーはツカツカと近づき嘲笑を浮かべながら見下ろす「今のイポンですか?カラテマン=サンにボクシングマン=サン?」「「テメエ!ナメンナコラーッ!」」二人は起き上がりオーナーに飛びかかった。
―――――
「テメエ……まだ……」タダノとイシイはふらついた足取りで近づく、その顔は血だらけで顔半分は腫れで変形している。オーナーのカラテは二人のカラテを遥かに凌駕していた。イシイは組んだ瞬間投げ飛ばされ、タダノは技を繰り出した瞬間に攻撃を喰らってしまう。実力差は明らかだった。
だが二人は常に嘲笑を浮かべ完全に見下している目の前の男が気にくわない、ただその反骨心で何度も立ち上がり立ち向かう。だがその反骨心もロウソク・ビフォア・ザ・ウィンドだった。「イヤーッ!」「グワーッ!」オーナーは心を挫くようにタダノにはボクシングの技、イシイにはジュドーの技を喰らわせた。
「「スミマセンデシタ」」そして二人の反骨心は完全に挫かれた。ほぼ同時にオーナーに赦しを乞うた。反骨心より生命への危機に対する回避を優先させたのだ。「そうですか。とりあえずドゲザしてください」二人は歯を食いしばり屈辱で体を震わせながらドゲザの姿勢を作る。
ドゲザとは母親とのファックを強いられ記憶素子に保存されるのと同程度の凄まじい屈辱である!「「スミマセンデシタ」」二人の声は恥辱で震えていた。オーナーは薄ら笑いを浮かべながら言った。「それでは誠意が足りません。全裸でドゲザしてください」。オオ!何と言う非情なる提案!彼は血の通った人間なのだろうか?
「……ふざげるな」イシイとタダノに完全に消えたはずの反骨心が僅かに蘇る。全裸でドゲザをしてしまったらそれこそセプクしなければならない。それほどまでの恥辱なのである!二人は頭を上げ憤怒の目をオーナーに向ける。そこには二人の頭を掴むオーナーの姿があった。「なんですかその目は」「グワーッ!」頭部が床に叩きつけられる!
「なんですかその目は」「グワーッ!」「なんですかその目は」「グワーッ!」貝を石で割るラッコめいた規則性で二人の頭部を床に叩きつける。「アバッ……ふざけるな……」十数回ほど叩きつけられるが二人の目から反骨心はきえていない。「やりたくないというなら手伝ってあげましょう」オーナーは二人に近づき衣服を切り裂いていた。
「アイエエエ!」必死に抵抗するが怪我とオーナーの圧倒的な力により衣服はワラバン紙めいて切り裂かれていく(((チクショウ……助けてくれよブッダ、誰でもいいから助けてくれよ)))イシイとタダノは衣服を剥がれながらブッタや周りにいる客に声なき助けを求めた。だが客たちは目を逸らし、あるいは全裸ドゲザという珍しいものが見られると好奇の目を向け助けることはなかった。
チリーン!すると鈴の音とともに少年と少女が店内にエントリーする。その容姿は高校生、いや中学生に見える幼さであり明らかに場違いである。少年はオーナーを見た途端に目を見開き手を合わせた「ドーモ、初めまして。ドラゴンナイトです」「どーも、初めまして。スノーホワイトです」少女も少年にならいアイサツする。
「ドーモ、ドラゴンナイト=サン。スノーホワイト=サン。スコッチです」オーナー改めスコッチは顔を顰めながらアイサツした。ニンジャが関わると碌なことがおこらない。過去数度ニンジャと遭遇したがすべて不利益を被ることばかりおこっていた。スコッチは耳打ちで話をする二人を注意深く観察する。
すると二人は近づきドラゴンナイトが言った「裸ドゲザはやめない。もうドゲザしたし充分じゃない?」スコッチは眉がわずかに動く。「あとぼったくり営業はもう辞めてください」スノーホワイトが無表情のまま言う。スコッチの眉が再び僅かに動いた。「この店は健全な経営をモットーにしていますが」スコッチは笑顔を作る。
何故あの二人がドゲザしていたことを知っている?ぼったくりをしているのを知っている?笑顔の裏では猜疑心と警戒心が渦巻いていた。「それに二人は未成年でしょう。今日のところはお引き取り……アバッ」スコッチの口から血が吹きでる。胸元に視線を移すと胸から手が生えていた。
視線を後ろに向けるとメンポと黒色の道着と赤色のベルトを纏った者がいた。ニンジャ?だがニンジャは自分含めて三人なはず?すると赤と白の斑模様のシノビ装束の者が手刀でスコッチの首を切り落とした。「サヨナラ!」胴体は爆発四散し、首は壁に叩きつけられシミとなった。
黒色の道着がアイサツする。「ドーモ、ドラゴンナイト=サン、スノーホワイト=サン。マウンテンストームです」赤白の斑模様がアイサツする。「ドーモ、ドラゴンナイト=サン、スノーホワイト=サン。ヘッドハンターです」