ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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これまでのあらすじ

スノーホワイトは先日会った岸辺颯太によく似たニンジャのドラゴンナイト。そのドラゴンナイト共にラ・ピュセルとしたようにネオサイタマの街をパトロールしていた。その最中にニンジャの虐げれている若者二人を助けるために酒場にエントリーする。
エントリーした二人だがそのニンジャは若者二人の手によって爆発四散!若者二人はニンジャになったのだ


第四話 ニンジャにご注意を♯2

「ドーモ、ヘッドハンター=サン、マウンテンストーム=サン。ドラゴンナイトです」「どーも、スノーホワイトです」スノーホワイトは困惑しながらもアイサツをおこなう。何気なくドラゴンナイトに視線を向けると同じように困惑していた。完全に予想外なことだったのだろう。

 

若者二人が過剰請求された金を取り返そうと乗り込みスコッチに返り討ちにされた。そしてドゲザさせられ、それでも飽き足らず全裸ドゲザさせようとしている。それが店に入った時の状況だった。「全裸でのドゲザは困る」「これ以上の恥辱は困る」という声も外から聞こえてきたものと変わらなかった。

 

そしてスコッチと会話している瞬間突然二人の困った声が消えた。その直後あの二人がニンジャ装束とメンポを生成し身に纏いスコッチの後ろから攻撃して殺害しスノーホワイト達にアイサツをした。ドラゴンナイトに向ってアイサツしたということはニンジャだろう。しかしいつニンジャになった?

 

スノーホワイトが状況の変化に困惑しているのも無理は無かった。ニンジャには大きく分けて二つの種類がある。リアルニンジャとディセイションニンジャである。リアルニンジャは厳しい修行を経て体を人間からニンジャへと変化させた者である。

 

そしてディセイションニンジャ。リアルニンジャが死亡する際にニンジャソウルと言われる魂のようなものが、キンカクテンプルと呼ばれる場所に保管される。そしてそのニンジャソウルが人間に憑依しニンジャになったものをディセイションニンジャと呼ぶ。

 

ソウルが憑依する例としては瀕死の状態のものにニンジャソウルが憑依することが多いと言われているが基本的にはランダムである。タダノとイシイはスコッチに嬲られ衣服をはぎ取られるまでは人間だった。だがスコッチとスノーホワイト達が会話している最中にニンジャソウルが憑依。ニンジャとなったそして衝動に従ってスコッチを爆発四散させたのだ。

 

「アイエエエ!!」客の一人が叫び声をあげる。スコッチの壮絶な死、圧倒的な暴力にNRSを起こしたのだ。それを切っ掛けに客たちは失禁や嘔吐などのNRSの症状を引き起こしバタバタと倒れていく。その光景は悲惨そのものだった。「ドラゴンナイトさん。あの二人から目を逸らさないで」

 

ドラゴンナイトはスコッチがグロテスクに死に客が次々と倒れていく異様な光景を目の当たりにし目が泳いでいる。一方スノーホワイトは二人から目線を外さない。ニンジャにはついては何も分からないが二人のような雰囲気を纏っている魔法少女は見てきた。あれは暴力を行使し我を何としても通そうとする人種だ。

 

腕が僅かばかり動く、それに呼応するようにスノーホワイトも動いた。「イヤーッ!」マウンテンストームはスリケンを生成し投擲動作に入る、目標はNRSで倒れている客たちの頭だ。その瞬間スノーホワイトは魔法の袋からルーラを取り出し二人に向かって弾丸めいて突進した。

 

不意を突かれ反射的にスノーホワイトにスリケンを投げるがスリケンはルーラによってすべて叩き落とされる。ワザマエ!間合いに入ったスノーホワイトは突進の勢いを乗せた突きをマウンテンストームに繰り出す「グワーッ!」マウンテンストームは避けきれず腹部を裂傷!

 

「イヤーッ!」ヘッドハンターは攻撃の隙を狙ってストレートを打ち込む。スノーホワイトはルーラから片手を離し頭部に向かってくるパンチをサークルガードで受け流し腹部にヤリめいたサイドキックを蹴り込む。「グワーッ!」ヘッドハンターはワイヤーアクションめいて後方に吹き飛び壁に叩きつけられる!

 

スノーホワイトはルーラを両手で持ち再びマウンテンストームに攻撃を仕掛ける。「グワッ!グワッ!グワッ!」ルーラによる突き、薙ぎが身体を切り裂いていく。傷は比較的に浅いが攻撃に対応できていない。攻撃を阻止しようとルーラを掴もうとするがまるで見透かされたように避けられ逆に掴みに行った手が切り裂かれる。

 

戦況は圧倒的にスノーホワイトが有利だ。するとマウンテンストームは突如両手を高く掲げた!これはバンザイの姿勢、降伏のサインか?スノーホワイトは一瞬躊躇するが戦意が衰えた声は聞こえてこない。

 

「サップーケイ!」スノーホワイトは真白い閃光が目を覆い一瞬ひるむ。おお!見よ!スノーホワイトとマウンテンストームの姿が忽然と消えているではないか!?何が起こったというのか!?

 

 

 

♢スノーホワイト

 

 ここはどこだ?先ほどまではバーに居たはずだったが今は全く別の場所にいた。

 床一面には畳が敷かれており所々色が変色し年季を感じさせる。壁には「克己」「忍耐」「不如帰」等の文言が書かれた掛け軸が飾られていた。ここは柔道場?何故バーから柔道場に移動した。これもニンジャのジツの一種なのか?

 スノーホワイトは困惑しながらも警戒心を強める。すると窓もなく完全な密室である空間に風が吹き胸を吹き抜けていく。その瞬間スノーホワイトの胸がざらついた。まるで魂を爪で引っ掻かれたような感覚だった。

 そしてマウンテンストームはこの異常な状況に身を置きながらもどこか懐かしそうに笑みを浮かべていた。

 

「ずいぶんと懐かしいな、畳や壁の傷み具合なんかあの時のままだ」

「ここがどこか知っているの?」

「幼少期にジュドーを習ったドージョーだ」

「貴方が私をこの道場に移動させたの?」

「いや違う。このドージョーはすでに潰れてオイランショップだ。このドージョーは俺のジツが作ったようだな」

 

 スノーホワイトはマウンテンストームの答えを聞き相手のジツを推理する。

 この場所は作り上げられた場所で自分たちが実在の場所に移動したわけではない、以前検挙した魔法少女キークの魔法のように別の空間を作り引きずり込んだのか、状況把握に努めているとある違和感に気付く。

 自分の魔法「困った声が聞こえるよ」が上手く作動しない。声を聞こうにもチューニングが合わないラジオのようにノイズが酷い。ネオサイタマに来て体調不良になった際にも同じようなことが起こった。だが今回は体の不調はない、魔法だけが変調をきたしている。

 

 マウンテンストームに宿ったソウルはコロス・ニンジャクラン、その代表的なジツがキリングフィール・ドジツである。相手をジツが使えない特殊な空間に引きずり込みカラテで殺す。それがキリングフィールド・ジツである。その効果は魔法少女のスノーホワイトにも及んだ。

 するとマウンテンストームはしゃがみ込み畳の感触を確かめるように手のひらで撫でる。

 

「あの時はシンプルな考えだったよ、強さがすべて、強ければ思い通りになる。ドージョーでもそうだった。だが現実はネンコや金や地位などが優先される。そしてジュドーですらそうだ」

 

 マウンテンストームは憤怒の表情を浮かべる。全国選手権の準決勝、試合には完全なイポンで勝ったはずだった。だが試合後の礼節が欠けているとモノイイがあり反則負けとなった。

 その相手は大会に優勝し、世界選手権でも好成績を収めた。それを看板にTVショーに出演し今では完全なカチグミだ。後で知ったことだがその相手はメガコーポの息子だった。最初から結果は決まっていたのだ。

 

「だがニンジャになって元に戻った。すべて思い通りだ!お前を殺し、ドゲザさせられているのを黙って見ていた客たちを全員殺し、ジュドー協会の奴も殺す!」

 

 マウンテンストームを自分が抱えていた想いを吐露しながら殺気をみなぎらせてスノーホワイトに近づいてくる。スノーホワイトは構え戦闘態勢をとると同時に自分の魔法を解除した。

 ノイズが酷くなり耳障りで戦いに集中できない、これならば使わないほうがマシだ。相手の様子を観察しながら1つ深呼吸をする。

 

『困った声が聞こえるよ』

 

 戦闘力が超一流ではないスノーホワイトにとってこの魔法こそが最大の長所であり、この魔法を使う事で相手の弱点を突き攻撃を予測し不意打ちに対処する。

 この魔法があったからこそ魔法少女狩りと呼ばれるほどに活躍できた。これが無ければ魔法少女狩りと呼ばれる事もなく何かしらの戦いに敗れて死んでいただろう。

 コールドスカルの時も魔法の調子は悪かったがそれでも最低限は機能した。

 だが今はその最低限すら機能していない。今まで魔法が有る事を前提に戦っていたがそれが無くなってしまった。

 まるでライトの光を頼りに暗闇の道を歩いている最中にライトが切れ何も見えない状況になってしまったような心境だ。不安と恐怖からかルーラを握る力が無意識に強まる。

 

 マウンテンストームはスノーホワイトまで10Mというところで足を止めた。それを見越していたかのようにスノーホワイトは攻撃を仕掛ける。

 刺突の連撃、鍛えられた魔法少女の攻撃はニンジャになりたてのマウンテンストームが対応できるものではなく、致命傷は負わないものも防御に徹してなお攻撃を回避することはできず体を傷つける。

 ジリジリと後退するマウンテンストームを追撃する、先程と同様魔法が封じられていても戦闘能力の差でスノーホワイトの有利は変わらない。だがその表情は険しい。

 ドラゴンナイトの近くにいるであろうヘッドハンターというニンジャ、ここに連れて込まれる前の様子からして攻撃的で力に酔っており、店に居た客に危害を加える可能性が高い。

 そうなるとドラゴンナイトの性格からして必然的に衝突するだろう。

 人間相手なら何の問題もないが相手は魔法少女に匹敵する戦闘力を持つニンジャだ。ドラゴンナイトとヘッドハンターの力量差がどれほどまでか分からず、もしかするとドラゴンナイトが殺されていてもおかしくはない。事態は予想以上に切迫している。

 そしてこの空間、風が吹き抜けるたびに虚無感や喪失感などのネガティブな感情が膨れ上がり精神を蝕み荒廃されていくようだ。それは魔法少女になり強靭となった精神でさえ非常に不快なものだった。

 

 魔法が使えない恐怖、ドラゴンナイトの身の安全への不安。焦燥、虚無感がスノーホワイトの心を乱し、その乱れた心は技と体を乱す。

 マウンテンストームの態勢が崩れたのを見るやいなや力を込めて勝負を決める一撃を放つ。だがその一撃はいつもの攻撃と比べると粗雑で鈍重で隙があった。

 マウンテンストームは穂先に手を添えて軌道を反らし回避すると一気に間合いを詰め、スノーホワイトの懐に潜り込んだ。

 隙が有ったと判断したスノーホワイトだが実のところマウンテンストームは勝負の一撃が決まるほど隙があったわけでもなく、ダメージも負ってはいなかった。これはスノーホワイトの完全な判断ミスである。

 

 懐に入ったマウンテンストームは迷いなく動作に移る。マウンテンストームはスノーホワイトが戦った相手の中で最強でもなかった。

 もっと力がある相手もいれば、もっと打撃が強い相手もいた。だが投げ技に関しては最高の使い手であった。 

 人間の時に鍛えた技術とニンジャの身体能力が合わさり爆発的な化学反応を起こし、その技は魔法を使えず相手の行動を読めない今のスノーホワイトでは防げるものではなかった。

 一瞬でスノーホワイトの右袖を掴み態勢を崩しスノーホワイトの腹を腰に載せた。ジュドー技イポン背負い、マウンテンストームの得意技である。

 

「イヤーッ!」

 

 マウンテンストームはイポン背負いの態勢のまま跳躍し二人の体は空中で二回転する。

 通常のイポン背負いは地面に相手の背中を叩きつける技である。だがマウンテンストームは投げのタイミングをずらしスノーホワイトの頭に叩きつけるつもりだった。

 もしこの技が決まれば魔法少女の耐久力といえど頭蓋骨はひび割れたクッキーのように簡単に砕け絶命するだろう。

 スノーホワイトの体は叩きつけられ、爆撃のような衝撃音と共に白黒の畳に蜘蛛の巣状のひびが入った。畳が破壊されその残骸が二人の姿の姿を覆い隠す。

 数秒後空中に俟っていた畳の残骸が地面に落ちると視界が晴れる。すると重々しい動作でスノーホワイトは立ち上がり起き上る。

 

「アバ……バカな……」

 

 一方マウンテンストームの驚きで目を見開き大の字になりながらスノーホワイトを見上げていた。

 スノーホワイトは超高速回転するなか、視界に映る映像と回転数から相手の狙いを悟る。

 その瞬間反射的に掴まれていない左腕を使い無防備な頸椎に全力でヒジを叩き込んだ。

 ダメージを受け掴む手が緩み拘束から逃れたスノーホワイトは自ら体を回転させ、頭ではなく背中から受ける事に成功する。

 

「俺の投げが破れただと……」

 

 

 頸椎に重度なダメージを受けて体が全く動かないマウンテンストームは恨めしく見上げ続ける。

 イポン背負いの最中で頸椎への攻撃をまるで予想していなかった。頸椎への攻撃を禁止というジュドーのルールで戦い続けた癖がルール無用の戦いでも出てしまった。

 そして二回転してのイポン背負い。あの技を出す必要はなかった。

 通常のイポン背負いで頭を叩きつければ即死はしないが反撃する暇を与えずかつ十分にダメージを与られ、そこから寝技に移行するなどしていれば十分に勝機は有った。

 だが状況判断を誤り勢い余って二回転のイポン背負いをしてしまう。その回転分のわずかな時間がスノーホワイトに反撃のアイディアを浮かび実行に移す時間を与えてしまったのだ。

 一瞬の隙を作ってしまったマウンテンストームと一瞬の隙をついたスノーホワイト。この一瞬の差が二人の実力差であり、その一瞬はあまりにも大きかった。

 

「ゴホッ……早くこれを解いて元の場所に戻して」

 

 スノーホワイトは咳き込みよろめきながらルーラを拾い上げ喉元に突き立てる。ジツを解かなければ殺すという無言のメッセージだ。

 

「俺の負け……ジュドーの負けであらず……覚えておけ」

「早く元の場所に戻して!」

「サヨナラ!」

 

 スノーホワイトの焦りに対しマウンテンストームはヤバレカバレな笑みを見せてハイクを読み爆発四散、スノーホワイトは爆発のダメージを受けないように後ろに跳んだ。

 いきなり爆発した?自爆か?自爆しなければならない理由があったのか?

 ニンジャは死亡するとその内なるニンジャソウルが暴走し爆発する。だがスノーホワイトはそれを知る由もなく畳に残る爆発跡を茫然と見つめていた。

 スノーホワイトの頸椎の一撃はマウンテンストームにとって致命傷であったのだ。

 するとジュドー場はボールが当たった鏡のようにひび割れていく。ジツが解けた事を悟った。これで元の場所に戻れるだろう。

 

(ドラゴンナイトさん)

 

 スノーホワイトはドラゴンナイトの無事を祈りながら崩壊する白黒の空間を眺める。

 

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