ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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これまでのあらすじ

ドラゴンナイトは突如ニンジャになったヘッドハンターとの戦闘が始まる。
ヘッドハンターのボックス・カラテに苦戦するが辛くも倒した


第四話 ニンジャにご注意を♯4

「トロがうまい」と書かれている紫色のネオン看板が重金属酸性雨のせいで劣化し明滅する。それに反応するように看板の上にいたバイオカラスがゲェーゲェーと鳴き声をあげながら飛び立つがストリートの人間は誰ひとり気付かない。

 

キョウエイストリートはネオサイタマのメインストリートから少し外れた場所にあり、並ぶ店も非合法なものも多く、行きかう人もアウトローなアトモスフィアを醸し出している。そんなキョウエイストリートを男が歩いている。男の歳は10代後半から20代前半ぐらいでアフロヘアーにオールドファッション・サングラスを身に纏っている。

 

他の場所ならそのアフロヘアーは珍しさから目がとまるだろうがトリプルモヒカンなどのヘアースタイルの者もいるのでそこまで目立たない。男はそばで起こっているストリートファイトや裏ヘンタイポルノの路上販売に目もくれず黙々と歩き続ける。しばらくすると男はある建物の前に足を止めポケットにある紙の文字と看板の文字を見比べる。

 

「ここだな」文字が合致していることを確認し店の入り口に向かっていく。この店で待っている依頼人から話を聞き依頼をこなすのが今日のビズである。のり気ではないが仲間とのくじ引きでやることになった。なにより金は必要だ。「めんどくせえ」アフロヘアーをガシガシと掻き悪態をつきながら店内に入り顔をしかめた。

 

中には血だらけの死体が転がり壁や天井には返り血によりロールシャッハテストの模様めいたものが描かれていた。ナムサン!なんとツキジめいた光景か!ヤクザクランの抗争でもあったか?だがその考えはすぐに打ち消した。周りには弾丸がなく代わりに壁には薄汚れた白色のスリケンが刺さっていた。これはニンジャの仕業だ。

 

アフロの男はさらに顔を顰め、着ていた服が粒子状に消え上半身は裸になっていた。アフロの男もニンジャである。「めんどくせえ」アフロの男は舌打ちをした。この惨状では依頼者が生きている可能性はかなり低いだろう。そうなると依頼を受けられず金が得られない。懐事情が厳しいのでそれはそれで困る。

 

アフロの男は念のために依頼人捜索のために店の奥に向かった。するとニンジャ知覚力で店の中央に生存者がいるのを察知し向かう。そこには大の字になっているティーンエイジャーの男性が居た。「ドーモ、スーサイドです」「ドーモ、スーサイド=サン。ドラゴンナイトです……」ドラゴンナイトは重々しそうに体を起こしアイサツをおこなう。

 

「これはお前がやったのか?」「ヘッドハンター=サンというニンジャがやったことだよ。客を皆殺しにしようとして僕がそれを止めようと戦った」「そのヘッドハンター=サンはどこだ?」「爆発して跡方もなく無くなった」「そうか、それで生きている奴はいるか?」「あそこのテーブルの影に隠れている人は生きているはずだ……」

 

ドラゴンナイトは方角を指差す。「あの人しか守れなかった……クソッ!」ドラゴンナイト悔しさで歯を食いしばっているのをしり目にスーサイドは指し示された方向に向う。あのニンジャはニュービーだ。ニンジャになりたての奴が調子に乗って喧嘩を売って相手がニンジャだった。よくある話だ。死ななかっただけで充分に幸運だろう。

 

そこには黒シャツの中年の男性がいた。気絶しているが特に怪我はない。ニンジャの戦いを見てNRSで気絶したのだろう。するとスーサイドは徐にズボンのポケットから紙を取り出す。その紙には依頼人と落ち合う場所の他に依頼人の特徴が書かれている。年齢は40代で黒シャツ、左腕には「手加減を知らない」と刻み込まれたタトゥー。

 

左腕のシャツを引き裂き確認する。するとミンチョ体で「手加減を知らない」と書かれていた。スーサイドは依頼人を米俵めいて担ぎあげる。この惨状で依頼人が生きていたのはラッキーだ、マッポが来る前にさっさとズラかる。急ぎ足で出口に向かい中央にいるドラゴンナイトを数メートル追い越した後にふと足を停めた。だが数秒後に歩き出す。

 

ドラゴンナイトの言葉を察するに依頼人を守ったのだろう。食い扶持を守ってくれたことにはほんの僅かばかりの感謝はある。だができることは何もない。救急車を呼んでも何の意味もなく、闇医者を知っているがそこまで運んでやる義理は無い。入り口に着きドアノブに手をかけた瞬間スーサイドの手が止まった。

 

「ドラゴンナイトさん!しっかりして!」後ろを振り向くと少女がドラゴンナイトの抱き起し切羽詰まった様子で声をかけていた。いつの間に居た?自分のニンジャ知覚力では存在を感じ取れなかった。スーサイドは少女の野伏力を警戒、何より少女を見ていると心がひどくざわつく。スーサイドは少女から目を離せなかった。

 

「そうちゃん死なないで!」「落ち着けぽんスノーホワイト!」少女は誰と会話している?謎の声を訝しみスーサイドは引き続き注視する。「ドラゴンナイトはまだ生きているぽん。とりあえず医療機関に連絡するぽん」それは悪手だ。このようなニンジャ案件が起こった現場で生き残るモータルはほぼいない。そして生き残りが救急車が搬送されたならそれはニンジャしかありえない。

 

そしてアマクダリに捕捉される。そうなればドラゴンナイトの人生は恐らくオオテツミだ。だが少女は謎の声の助言に従う様に店の入り口に向かう。どこか違和感があるが彼女のアトモスフィアからしてたぶんニンジャだろう。スーサイドは少女に向かって引きとめるようにアイサツしていた。

 

「ドーモ、はじめまして。スーサイドです」「……どーも、スーサイドさん。スノーホワイトです」スノーホワイトは渋々とアイサツする。ニンジャではないのでアイサツをする必要はないがニンジャにアイサツを返さないことはとてもシツレイであり激昂する恐れがあることは体験から知っていた。

 

ここで激昂され襲われたら困る。スノーホワイトはそう判断した。「救急車を呼ぶのはやめとけ」「どうして?」「呼んだらドラゴンナイト=サンの人生はデッドエンドだ。システムに潰されるか、システムに使い潰されるか。自由は無い」スノーホワイトはスーサイドの言葉の真偽を確かめるように見定める。スーサイドは言葉を続ける。

 

「とりあえずこの場から離れてテキトウな場所でスシでも喰わせながら休ませろ。ニュービーは知らないだろうがスシはニンジャ回復力を高める。それでも怪我が治らなかったら、ここから離れた病院に行け。そのほうがまだマシだ。そしてアンタもそのガキもこれに懲りたら大人しくしておけ」

 

スーサイドは話を終わらすとスノーホワイトのアクションを見ること無く依頼人を担ぎながら店を出て行った。「少し痛いかもしれないけど、我慢してね」スノーホワイトはスーサイドに向けていた視線をドラゴンナイトに戻し優しく声をかけ、ドラゴンナイトは無言で頷く。首の後ろと両膝裏に手をかけドラゴンナイトを持ち上げ店を出た。

 

スノーホワイトはスーサイドの助言通りに行動することを選択する。格好は胡散臭かったが嘘をついていなければ罠もない。魔法でそう判断した。

 

―――――

 

「ウピピピー!連絡先ゲット!」「次はどいつをファックするかな!」人々が聞けば顔を顰める様な品性無き言葉を大声で喋りながら若者の三人がキョウエイストリートを我が物顔で歩いていく。身体を見ていくと体が大きく鍛えられているのが分かる。彼らは名門カレッジのアメフト部の部員でありジョックである。そして酒がまわり酩酊状態である。

 

彼らはゴウコンと呼ばれるネンゴロ関係を前提にした退廃的集まりに参加していた。ジョックということで多くの女性が言いより何人もの女性のIRC連絡先を聞いていたのだった。即座にファックしたかったのだがゴウコンにはいくつかのルールが存在し、ファックしていいのはゴウコンの後日と決められている。それを破ればムラハチは免れない。

 

「帰りはどうする」「この時間サッキョウラインは混んでるぜ」「テキトウな店で朝まで飲むか」「あれを見ろよ」若者の一人が指を指す、そこには黄緑色にカラーリングされた一台のバイクがあった。ライデン社製作のブシロードMK=2だ、安価で燃費が良く頑丈で中下層の人々に愛用されているロングセラーバイクである。

 

「あれに乗って帰ろうぜ」ブシロードMK-2は最大で二人乗りで三人で乗ることは法律で禁止され、彼らは飲酒している。さらに他人のバイクである。何という法律順守の精神を無視した提案か!「いいね!」「乗ろうぜ」他の二人も止めること無く便乗した。ゴウコンの成功による高揚感とアルコールにより通常の判断が出来ていないのだ!

 

三人は駆け足でバイクに近づきシートに座る。ジョックの一人がアクセルを回すが鍵がかかってないので当然動かない。「おいイディオット!鍵がねえじゃねえか、でもどうやって乗るんだ?」「俺は詳しいんだ!任せとけ。まずエンジンに蹴りを入れ……アバババー!」

 

突如ジョックたちの頭部や鼻や口から白い光の筋が出て、その光はスーサイドの右手に集まり収束していく。「人のバイクに手出すな」スーサイドはハンドルにうつぶせになり痙攣失神しているジョックを投げ飛ばし、左で依頼人を米俵めいて担ぎながらシートに座りエンジンに入れる。

 

スーサイドは依頼人を起こして話を聞こうと思ったが止めた。NRSで気絶している人間を無理やり起こしてもショックから回復できずまた気絶するだけだ。それにマッポが来る近くのところで悠長に話を聞いている暇もない。拠点の近くまで運び起きるのを待って改めて依頼内容を聞くのが最善と判断した。

 

ドゥルルン!ドゥルルン!市販のブシロードMK-2のエンジン音とは明らかに異なる重低音が響く。このバイクの見た目はノーマルだが中身は改造を施した高スペックバイクで有る。とある依頼を達成した報酬として貰ったものであり、持ち回りで使用している。エンジンが入ると左手で依頼人を担ぎ右手でハンドルを握る。

 

「運転手=サン。俺も乗せてくれよ」突如聞こえてくる謎の男性の声。辺りにはスーサイドと依頼人とジョック達、そしてネオサイタマに不釣り合いなフクロウがホバリングしていた。スーサイドはフクロウを見た後めんどくさそうな表情をしながら喋りかける。「何でここに居るんだよフィルギア=サン」

 

「野暮用。飛んで帰るのも疲れるし乗せてくれよ」フクロウが目を細め笑顔のような表情を作りながら喋っている!コワイ!フクロウはアスファルトに降り立つと姿が歪み何と人の姿になった!トテモコワイ!その容姿は痩せて端正な顔だ、目の周りには薬物中毒者めいたイメージの薄赤紫の隈どりがある。

 

名はフィルギア。読者の方々の想像通りニンジャである。スーサイドはフィルギアの姿をウンザリした表情で告げる。「乗せてやるから依頼人担いでろ」「ヒヒッ。わかったよ」フィルギアは依頼人を担ぎスーサイドの後ろに座る。それを確認するとスーサイドはアクセルを回し車道に入っていった。

 

―――――

 

「しかし良かったな依頼人が生きていて。あの少年に感謝しなきゃな」車の間を法定速度オーバーですり抜けながら走るなかフィルギアは笑みを浮かべながら話しかける。「アアッ?何で知ってるんだよ?」「それは見てたから」「ならお前が依頼人に会いに行けばよかったじゃねえか!」「依頼を通しての社会勉強。重要」「チッ」

 

スーサイドは大きな舌打ちをする。しばらく付き合っているがフィルギアの考えていることは未だに分からない。「しかしあの女の子にアドバイスするとは思わなかった。ああいう女の子が好き?カワイイヤッター」「違えよ。あれは……あのガキが依頼人を守ったから借りを返しただけだ」「借りか、義理固い」

 

嘘だ、フィルギアは背中越しで話していたがスーサイドが本当のことを言っていないと感じ取っていた。「おいフィルギア=サン。スノーホワイト=サンはニンジャだよな。何かアトモスフィアに違和感があったというか」スーサイドは話題を変えるように質問した。あの場ではニンジャと判断したがよくよく考えるとニューロンをチリチリさせる言語化できない違和感があった。

 

「ヒヒ鋭い。あれはニンジャじゃない。魂の形が微妙に違う」「またテキトウなこと言ってやがる。じゃあ何なんだよ」「宇宙人、神秘的」「カートゥーンかよ」真面目に答える気が無いと判断しスーサイドは話題を打ち切る。それから口を閉じるがスーサイドはスノーホワイトに想いを馳せていた。

 

何故スノーホワイトの姿を見て心がざわめいた?何故助言をした?その答えを自問自答していく中ある人物を思い浮かべる。ヤモト・コキ。自分の自殺に巻き込まれて人生を狂わされたニンジャの少女。自分とは違い彼女には友人が居た。ニンジャではなくヤモトの人間性で得た友人なのだろう。

 

だがニンジャになったことによりニンジャ組織ソウカイヤに追われ、友人との穏やかな日々を送る可能性は断たれた。一方スノーホワイトとドラゴンナイト。友人か恋人かは知らないがあの様子から親しい間柄だったのだろう。

 

そして、あのまま救急車に運ばれ病院で治療を受ければシステム、アマクダリの情報網に引っかかりドラゴンナイトはアマクダリのニンジャとして働かされる。もしくはスカウトを拒否して殺される。かつての自分のような二択を強いられる。

 

そしてスノーホワイトも芋づる式に発見されスカウトされるだろう。そこは安寧とは程遠い世界、穏やかな日々は存在しない。ニンジャになれば出迎えるのは碌でもないことばかりだ。だがニンジャと知られず力を使わず奥ゆかしく生活すれば穏やかな日々が訪れるかもしれない。

 

スノーホワイトをトラブルから避けることで過去の罪、ヤモトに犯した罪を贖罪しようというのか。「ヘッ」スーサイドは自嘲した。

 

♢スノーホワイト

 

 街を照らすネオンライトの光が漏れ薄暗い室内を僅かばかり照らし出す。広さは学校の教室ぐらいでデスクや椅子などしかなく少し味気ない、どこかのオフィスであることが予想される、室内は散らかってはいないがデスクや椅子には埃が溜まっていた。

 このオフィスには数カ月は誰も人が入っていないのだろう。このオフィスには企業ヤクザのシシマイヤクザクランで非合法営利活動をしていたがマッポに嗅ぎつけられ夜逃げ同然に後を引き払ったのだった。そんな部屋にスノーホワイトとドラゴンナイトは立ち寄っていた。

 

「ウッ!」

 

 スノーホワイトはドラゴンナイトの背中に刺さっている手裏剣を丁寧に抜いていく。その度に歯を食いしばり苦痛に耐え時にはうめき声をあげる姿に悲痛な顔を浮かべる。

 手裏剣を抜き終えると魔法の袋から包帯を取り出し衣服の上から負傷個所に巻いていく。この包帯は市販の物ではなく、魔法の国で作られたマジックアイテムであり効果としては鎮痛と自己治癒力増幅である。負傷個所に包帯を巻き終えると床に置いてある袋からスシパックを取り出す。

 

「食べると怪我の治りが早くなるみたい」

 

 スノーホワイトはドラゴンナイトに寿司を手渡すがその顔は渋い。

 ネタは卵やイクラやネギトロだと思われるがどのスシネタも記憶している物とは違い色が青だったり紫だったりと毒々しいものだった。まるでフィクションで出てくる典型的な毒キノコみたいな色だ、こんなものを食べさせて大丈夫なのか?

 ドラゴンナイトは一瞬顔をしかめるが受け取りゆっくりと手に取り咀嚼する。

 

 スノーホワイトはスーサイドの言葉を通りにバーのアラバマからすぐに離れた。

 その道中に利用できそうな廃ビルを見つけそこにドラゴンナイトを置き、道中で目に着いた場所でスシを購入しまた戻ってきたのだった。

 スシの代金は自分で払いたかったが、未だにネオサイタマの金銭は持っていなかったので心の中で謝りながらドラゴンナイトが持っている財布から金を借りていた。

 ドラゴンナイトは顔を顰めながら寿司を食べ続ける。やはりあの色の想像通り味が悪いのだろう。

 それに口の内を切っており食べるのも苦痛なはずだ。それでも寿司を食べているということはスーサイドが言った通り怪我を治すためにニンジャの体は寿司を欲しているのだろう。

 体がスシの栄養を欲しているのか黙々と食べ続ける。思ったより元気そうだ。スノーホワイトはその様子を見て胸をなでおろす。

 

 マウンテンストームを倒し謎の空間から脱出して最初に見たのは血だらけで倒れるドラゴンナイトの姿だった。

 その瞬間ある光景を思い出していた。血だらけになりながら自分を魔法少女であると肯定して息を引き取ったハードゴアアリス、そして告別式に参加した際に見た岸辺颯太の遺影。二つのイメージが結びつき想起したのはドラゴンナイトの死だった。

 魔法少女になれば身体もそうだが精神も人間と比べ強靭になる。だがあの時は頭が真っ白になり魔法少女になる前の自分のように慌てふためき混乱していた。

 ファルが声をかけなければ行動を起こすこともしていなかっただろう。自分の弱さに自己嫌悪する。

 

 スノーホワイトが平常心を失っていたのはマウンテンストームのジツのせいだった。

 キリングフィールドジツ、マウンテンストームに宿ったソウルが持っているジツである。相手のジツが使用不可になるキリンフィールドに引きずり込みカラテで殺す恐るべきジツ。     

 そしてキリングフィールドは引きずり込んだ相手そして自分の精神をも鑢がけのように削り取り摩耗させる。

 スノーホワイトの精神はダメージを負ったことで傷ついたドラゴンナイトを見て通常時では考えなれないほど狼狽してしまったのだった。

 

 ドラゴンナイトはスシを食べ終えると自然と目をつぶり胡坐を汲み深くゆっくりと深呼吸をつく。

 スノーホワイトは声をかけることなく黙って様子を見続ける。それが一時間経過した。するとドラゴンナイトは目を開き立ち上がり傷の具合を確かめるように身体を動かす。

 

「大丈夫?」

「所々身体が痛いけど普通のモータルぐらいには動けるかな」

 

 ドラゴンナイトのニンジャ回復力では短時間でここまで回復することはないが、マジックアイテムとスシが相乗効果を生み出しチャドーの呼吸ほどの回復能力を発揮させていた。

 状況を確認するように辺りを見渡しその際にスノーホワイトと目線が合い申し訳そうに言葉を発した。

 

「ごめんスノーホワイト=サン。色々と迷惑をかけたみたいで、それにその服も血で汚しちゃったみたいだし」

 

 その言葉でスノーホワイトは自分の服に目線を移す、抱えていた時についたのだろう白を基調にした服は血の色でべったりと染まっていた。

 今の服装を見たら白を基調にしたものではなく赤を基調にしたデザインなのだろうと思うほどに赤の比率のほうが高くなっていた。

 あれだけ怪我をして痛い思いをしたのに服を汚したことを心配している。ドラゴンナイトの人柄を垣間見た気がした。

 

「いいよ気にしなくて。それより私のほうこそごめんなさい。あそこに行ったばかりにニンジャにあってドラゴンナイトさんが怪我して……」

 

 声のトーンが低くなる。あの時あそこに向かわず一緒に帰っていればこうはならなかった。

 スノーホワイトは言葉を発するたびに自責の念で心が鑢がけにされたように痛む。キリングフィールドの影響はまだ完全に抜けきってはおらず自責の念を増幅させていた。

 

「それこそ気にしなくていいよ。スノーホワイト=サンとあそこに行かなければ客の全員が死んでいた。サイオーホース……」

 

 ドラゴンナイトはスノーホワイトに心配させまいと痛みで顔を引き攣らせながら笑みを浮かべる。だがその笑みは悲しみに変わりポロポロと涙を流していた。そんな姿を見たスノーホワイトは自分の手をそっと添え言葉を告げる。

 

「ドラゴンナイト=サンは頑張ったよ。自分を責めないで」

 

 心の困った声で自分を責め立てる声が聞こえてくる。自分の弱さに対する怒り、自分の至らなさに対する無力感、それは痛いほどわかる。慰めても気休めかもしれない。だがそれでも慰めずにはいられなかった

 

 

――――――

 

「何だか恥ずかしいところを見せちゃったな」

 

 一しきり泣き終えた後ドラゴンナイトは誤魔化すように笑みを浮かべる。その顔は友達に向ける様な年相応の笑顔だった。

 そして一呼吸すると笑みは真剣味に帯びた表情に変わる。ドラゴンナイトはスノーホワイトの目を見据えて告げる。

 

「スノーホワイト=サン。一緒に行動しようと言ったけどあれは無しにしよう」

 

 

◆ドラゴンナイト

 

 

 暴力衝動に身を任せ身勝手な理由であそこに居た客を皆殺しにしようとしたヘッドハンター。あれは紛れもなく邪悪なニンジャだった。

 それを阻止するために使命感と正義感も持って戦った、だがその正義感とは裏腹にカラテで相手にダメージを与え、相手を倒した際にどす黒い快感のようなものを感じていた。

 そして他の人を守るためとはいえニンジャの命を奪った。モータルの時で有れば自責の念で苦しむはずなのに罪悪感がさほどなかった。

 

 ニンジャになるとモータルの時に比べ暴力衝動が増し命の扱いが軽くなってしまうと考える。

 そして欲望のために簡単に人を傷つけ虐げる。自分は何とか耐えられるがヘッドハンターは暴力衝動のままにモータルを虐げた。そしてそんなニンジャは少なからずいるはずだ。

 ドラゴンナイトは戦いを経てニンジャに虐げられる人を守りたいと一層思うようになった。だがスノーホワイトはどうする。

 

 ニンジャになり自分は何でもできると思っていた。カートゥーンの正義の味方のように、いや彼らも時々悪の脅威に人々を守れなかったことがあった。だが自分は違う、カートゥーンの登場人物以上に上手くやれると思っていた。

 だが現実は違った。ヘッドハンターとの戦いは辛くも勝ったが、バーの客はたった一人しか守れずあとはみんな死んでしまった。

 想像とはまるで違う結果。ニンジャになってもカートゥーンの登場人物のようになれなかった。いやそれ以下だ。

 

 ニンジャになってからは全能感に浸っていた。ニンジャならなんでもできると。だが実際は違った。

 調子に乗っていただけなのだ!何て自分は無力なのだろう!過信した実力に対する羞恥、守れなかったことに対する無力感、涙が止めようと必死に歯を食いしばるがそれでも涙は止まらなかった。

 

 そんな自分がスノーホワイトと一緒に行動して彼女を守れるだろうか?

 きっと無理だ。一緒に行動すればスノーホワイトを巻き込み怪我をさせてしまうかもしれない。初めて知り合ったニンジャであり、カワイイ少女と一緒に居たいという願望はある。だが自分の願望の為に傷つけるということはあってはならない。

 

「私もドラゴンナイトさんと一緒だよ。私も魔…ニンジャが悪いことをするのは許せないし、人々を悪行から守りたいと思っている。だから一緒にやっていこう」

 

 ドラゴンナイトの鼓動はスノーホワイトの言葉を聞き跳ね上がる。まるで自分の考えを聞いたかのような言葉だ。

 

「ダメだよ。僕は凄く弱い……ニンジャは邪悪で、これからはそんなニンジャからモータルを守るために行動しようと思う。でもそんなニンジャに出くわしたら僕の弱さじゃスノーホワイト=サンを守れな……」

「大丈夫、私がドラゴンナイトさんを守るから」

 

 スノーホワイトはドラゴンナイトが喋り終える前に自分の言葉を言った。女性に守られるのは恥ずかしい、スノーホワイトはそこまで強いのか?様々な考えが頭に過るがそれはすべて打ち消される。

 その言葉にはそれらを上回る決断的な力強さと悲壮感が秘められていた。

 

 

♢スノーホワイト

 

「じゃあ、体調が戻ったら連絡するよ。スノーホワイト=サン、カラダニキヲツケテネ」

「うん。お休みなさい」

 

 深夜を回ったゴガネモチ・ディスクリクトエリアに二人の声が響く。スノーホワイトは窓から自室に入るドラゴンナイトの姿を確認すると踵を返し歩きはじめる。オフィスを後にした二人はドラゴンナイトの自宅に向かう。

 ドラゴンナイトは一人で帰れると主張し、スノーホワイトは怪我もしており何かが起こると危険だから一緒に着いていくと主張する。結果スノーホワイトが押し切りついていくことになった。

 

 道中に今後のことを話し合い、今後も二人でパトロールをすることとなった。次の活動日はドラゴンナイトの怪我が治ったらということになり、それを知らせる為プラス今後も連絡が取れたら便利ということでIRC通信機、携帯電話のようなものを渡されていた。

 

「ファルはスノーホワイトにドラゴンナイトと関わってほしくないぽん」

 

 深夜に徘徊している不審人物と間違われない様に辺りを注意しながら歩いているとファルの甲高い声が辺りに響く。声色に不機嫌と不安の感情が含まれていた。

 

「ドラゴンナイトはこれからニンジャの争いごとに首を突っ込むということだぽん。それはある意味魔法少女狩りの活動より危険だぽん」

 

 ファルはニンジャとの戦いに巻き込まれることを危惧している。確かにニンジャにはファルが持つ魔法少女のデータベースは役に立たず、魔法少女の存在を感知するレーダーも機能しない。そして魔法少女と同等の強さだ。

 現にコールドスカルとマウンテンストームの二人のニンジャと戦った。コールドスカルは体調が悪いこともあり落雷が無ければ敗れていたかもしれない。

 マウンテンストームも不可解な技で魔法が使えず追い詰められた。あの頸椎への危険な一撃も本意ではなかったがあの攻撃を繰り出さなければこちらが死んでいた。

 ニンジャ全体がそうだか分からないが、二回の戦いでは魔法少女との戦いより苦戦したのは確かだ。ファルの心配もわかる。だがドラゴンナイトとの行動を止めるつもりはない。

 

 

「私は止めないよ」

「そう言うと思ったぽん」

 

 ファルが予想していた回答だがせめてもの反抗と露骨にため息をついた。

 正直に言えばドラゴンナイトには大人しくしてもらいたかった。

 スノーホワイトの世界とは違い今日のようにパトロールをしているだけでもニンジャに襲われるリスクを伴う。できることならドラゴンナイトにはパトロールすら控えてほしいとすら思っていた。

 だが心の声を聞くと想像以上にニンジャが無辜な人々を傷つけ虐げることを憎み、その人々を守りたいと思っていることを知った。

 あの意志は固い。そのような人間は他人が言っても梃子でも動かず勝手に行動するだろう。思えば自分もそうだった。リップルに何と言われようが悪い魔法少女と戦う道を譲ろうとしなかった。

 今この時リップルの気持ちを理解できた。自分の頑固さに相当難儀しただろう。

 ならばリップルと同じように意志を尊重しよう。ドラゴンナイトに危険が降り注ぐというのなら自分が払いのける。

 以前はできなかった。弱かったばかりに多くの人を失った。今度はそうちゃんやアリスのようにこれ以上失わない。そのために強くなったのだから。スノーホワイトは新たに決意を秘め歩みを進める。

 だがスノーホワイトの脳内である言葉が気にかかっていた。

 

「ファル、天下りって何か分かる?」

「天下り?あの官僚が退職して民間企業に再就職するやつぽん」

 

――――アマクダリ

 

 スーサイドの心の困った声でアマクダリに嗅ぎつけられると困るという声が聞こえた。

 スノーホワイトもファルが言った通りのことをイメージした。だが二人がイメージした意味とは違う気がする。

 本来ではいい意味では使われないせいもあるが、この言葉を聞いた時ひどく胸がざわついた。杞憂であればいいのだけれど。

 

ニンジャにご注意を 終

 

 

 

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