ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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第六話 ある日ある時ある場所で#1

◇カワベ・ソウスケ

 

「う~ん、どうするか」

 

 カワベ・ソウスケは自宅の洗面所の前で服を着ては何か違うと首を捻りながら、服を脱ぎ捨て新しい服を着るという行為を何度も繰り返す。結果洗面台の床は十数着の服で埋め尽くされていた。

 どれを着るのが正解なのか?普段なら全くと言っていいほど悩まない行為なのだが、ある状況が加わると人生でも十指に入るほど頭を悩ませる事態になる。

 

◇◇◇

 

「ねえ、スノーホワイト=サン、日曜日暇?」

「特に用事は無いけど」

「あの……えっと……ここの谷渋ってクレープショップに一緒に行くのに着いて来て欲しいんだ。ここのクレープを食べたいんだけど、客層があれというか……一人で行くのが恥ずかしいというか……」

 

 日課のパトロールと組み手を終えての休憩時間、ドラゴンナイト改めカワベ・ソウスケはソワソワさせながら言葉を紡ぐ。

 ソウスケはスノーホワイトと出会ってからパトロール等を通して、様々な体験を共有してきた。それに関しては初めて出会った時に想像した理想とほぼ同じ通りになり満足している。だがある一点で理想どおりではなかった。

 

 スノーホワイトはあまり自身のプライベートについては話さない。会話も自分が喋ることが多くそれに相槌を打つのが二人の会話の流れだ。ベラベラと喋らず奥ゆかしく相槌を打つ姿勢は好きではあるが、その結果スノーホワイトのプライベート情報はほぼ得られていない。同じ志を持ちネオサイタマをパトロールして二人で善行を成していく関係性も心地良いが、ソウスケとしてはもっと関係性を深め親密になりたかった。

 ミヤモト・マサシのコトワザに【座っているだけでは死んでいると同じ】というものがある。このままでは関係性の心地良さに浸ってしまう、自身から行動を起こさなければ望む関係になれない。その為の一歩としてソウスケはこの提案をする。

 

 まずはスノーホワイトとパトロール以外のプライベートな時間を共にする。パトロールとは違った時間を共にすれば、いつもと違った会話やプライベートな情報を得て関係が発展するかもしれない。だがこれは見方によっては男女のデートになってしまう、それは奥ゆかしくなく、スノーホワイトも警戒してしまうかもしれない。故に建前を作る。

 

 自分はただ単純にクレープを食べたい、だが一人で店に入るのは恥ずかしい、なので手助けとして一緒にクレープを食べて欲しい。スノーホワイトは心優しい人物だ。だから自分の心境を察してくれて手助けしてくれるはずだ。

 谷渋は日々の過剰なまでの宣伝により今ネオサイタマのティーンエイジの女性に人気で、食べていないものはムラハチされるまでになっている。実際にクラスの女子が食べないことで話題についていけずムラハチになりかけているのを目撃している。ソウスケはクレープが好きでも嫌いでもない程度で、態々休みの日に食べに行くような物ではないが、そういった背景を知るが故にクレープを食べに行こうと提案した。

 結果、スノーホワイトは誘いに快く応じる。ソウスケは喜びで踊りだしたい気分を抑えながら家路に着き日曜日に向けて計画を練り始める。

 

 第一目標はスノーホワイトとクレープを食べること、だがそれに満足せずもっと積極的に行動すべきだ。クレープショップの近くには映画館があり、そこでティーンエイジ女性に話題の恋愛映画【ワールドラブ】を上映している。第二目標がこれだ。

 ソウスケにとって好きな異性と映画を見るのはデートのようなものでハードルが高い行動であった。だが単純に誘ってはスノーホワイトに警戒され、今後気まずくなってしまうかもしれないので、これも建前を作っておく。

 

 親から偶然チケットをもらい期限が日曜日なので勿体無いから見に行こうというものだ。これなら下心を隠しながら自然に誘える。

 しかしチケットは親からもらっていないので予め購入しておく、当日の流れで第二目標に移行できない可能性もあり、カートゥーンコミック5冊分の金を無駄にするのは中学生にとって痛い出費だが必要経費として割り切る。

 そしてIRCチャット等で映画のストーリーやネタバレ感想を読み、内容について語れるようにしておく。ソウスケはスノーホワイトに恋心を抱いているが恋愛映画というエンターテイメントとして全く興味が無く、ジーザスシリーズ等のアクション映画が好きだった。

 

 当日は恐らく内容が入ってこないだろう。そんな状態で映画について聞かれテキトウに答えてしまっては幻滅される、そうならないよう全く内容を知らなくても自分の意見の如く言えるように頭に叩き込んでおく。これは苦手な数学を勉強するように苦痛だが、必要な事であると割り切り学力試験のように懸命に覚えていく。

 こうして日曜日に向けて着々と準備を進めていくが当日の朝になって重大な事に気付く。それは服装についてだった。

 

 人は見た目で8割決まると言われ、容姿はもちろん服装も重大な要素で容姿が悪くても服装でカバーできる。また逆に然りでもある。

 時々友人と遊びに行く際には服装は気にしなかった。ジョック時代もとりあえずブランド物を着ていけば何も言われることもなかったので問題なかった。だが今回は状況がまるで違う。

 普段のパトロールの時は動きやすさを重視した服装を着ており、仮にスノーホワイトにダサいと思われてもまだ言い訳が出来る。だが今回は完全にプライベートでありファッションセンスが試されてしまう。スノーホワイトが好むファッションを選ばなければならない。

 

 どれが!どれがスノーホワイトに好まれる服装なんだ!?

 

 こうしてソウスケは洗面所で延々と服のコーディネートを悩んでいた。腕時計に目を向けると出発まで残り10分に迫ると焦燥感が募り思考能力を削られていく。

 

「あ~もう!こうなればブッダ任せだ!」

 

 大声で叫びながら散乱していた衣服をシャツ、上着、パンツと分類し目を瞑りながらそれぞれをシャッフルするようにかき混ぜ無造作に手にとった。自分で決められないならブッダに決めてもらう、ソウスケは完全に運に任せた。

 

 その結果、赤色のTシャツに紺色のジーンズにドラゴンのイラストが入った黒のジャージになった。それを着て鏡に映った自分を見てみると予想以上にしっくりくる。

 運に任せたがこれがベストの組み合わせのように思えていた。特にジャージのドラゴンが良い、ドラゴンは自身のニンジャネームに入っている縁が深いホーリーアニマルだ。それを纏うことでパワーが漲る。スノーホワイトとプライベートで出かけるという事は非常に重要な事であり、ある意味イクサだ。ドラゴンという守り神が付いていればイクサを乗り切れそうに思えてくる。

 ソウスケは家を出て目的地に向かう。その足取りや動作からエネルギーが漲っていた。

 

◇◇◇

 

 サッキョー・ライン鉄道ヨノ駅前広場、ソウスケはベンチに座りながら辺りを見渡すと多くの若者やカップルで溢れていた。ヨノ駅には若者向けのショップ等が多く存在しており、「凄い売れている」「買わないとムラハチ」「流行っている」など店ごとに購買意欲を過剰に煽るサイン看板が立っている。ヨノはネオサイタマのティーンエイジカルチャーの発信地でもあった。

 腕時計で時間を確認すると10時を回るところで集合時間まで残り1時間、早く来すぎた。サッキョー・ライン鉄道は分刻みで運行しているが、出世に失敗したサラリマン達による人身事故で度々遅延が発生するのでそれを想定して出発したが、幸か不幸か特に遅延も無くスムーズに到着した。

 

 友人との約束なら辺りの店を回って時間を潰すのだが、今日はそうはいかない。いずれ到着するスノーホワイトを出迎えなければならない、それが出来る男であるとコミックの最新刊を買う金を犠牲にして勝った若者向け情報誌に書かれており、その教えを実行する。

 

 ソウスケはやることがないので周りの人々を観察する。やはりティーンエイジカルチャーの発信地だけあって、よくは分からないがオシャレそうな服装の若者が多かった。

 すると必要以上にキョロキョロと周りが見渡す。自分の服装はダサく悪目立ちしていないだろうか?ティーンエイジカルチャーに疎いソウスケにとってここはアウェーの地であり、家に出たときに溢れていたエネルギーは弱まり他人が嘲笑しているかもしれないと怯えていた。

 

 ソウスケは目を閉じてゆっくり深く息を吸って吐く。他人の視線を恐れたソウスケは目線が気にならない世界、イマジナリーカラテの世界に逃げ込んだ。こうなれば相手を想像しカラテすることにニューロンのリソースを費やされ、他人の目線を気にすることは無い。ひたすらイマジナリーカラテトレーニングに没頭する。

 

 

 

 イマジナリースノーホワイトのチョップが鎖骨に直撃する。だがおかしい、今の体勢ではボトルネックカットチョップで首を切断できたはずだ。何故鎖骨にチョップを打ち込む?そして肩に衝撃が伝わってくる。それに誰かの声が聞こえてくる。

 これはイメージで作り上げた声ではない、現実の声だ。ソウスケはイマジナリーカラテの世界から現実に帰還する。そこには見知った顔があった。

 

「スノーホワイト=サン?」

「ごめんね。凄く集中してイメージトレーニングしていたから暫く待っていたけど、クレープは人気みたいで売り切れても困るし声をかけちゃった」

「いつからそこに居たの?」

「30分ぐらい前かな」

 

 ソウスケは慌てて時計を見ると時刻は11時を回っていた。いつの間にそんなに経ったのか。イマジナリーカラテトレーニングに没頭するあまりスノーホワイトを出迎えるどころか気を使わせてしまった。

 何たる失態!今にでもケジメしたい気分だった。その感情を察知したのかスノーホワイトはドラゴンナイトをフォローする。

 

「待たせたと思っているなら気にしないで、丁度読みかけの本があって読んでいたから。電車で読んでいたら続きが気になるところで駅に着いちゃって、このままお店に行ったら続きが気になってソワソワするところだったから読み終えてよかった」

 失態を犯した事で混乱したソウスケだがスノーホワイトのいつも通りの対応で平静を取り戻し始めていた。しかし別の事で鼓動が再び跳ね上がり動揺してしまう。服装がいつものものとは違っていた。

「それにしてもこんな場所でもイメージトレーニングなんて凄いね。私も見習わないと」

「そ……そんなことないよ。予想外に早く着いてやることが無かったから……」

 

 失態を犯し混乱したソウスケだがスノーホワイトのいつも通りの対応で平静を取り戻し始めていたが、別の事で鼓動が再び跳ね上がり動揺してしまう。服装がいつものものとは違っていた。

 白のシャツに水色のカーディガンに花柄のロングスカート、これがスノーホワイトの私服なのだろう。

 ティーンエイジカルチャーの発信地にしては地味で目立たない服装で、流行りじゃないと周りの者は笑うかもしれない。

 だがこの服装のスノーホワイトは誰よりも綺麗で可愛かった。恐らく芸能界のスカウトが大量に声をかけてくるだろう。寧ろ声をかけなかったら目をくり抜いて指を全部ケジメすべきだ。それ程までにソウスケにとってスノーホワイトの姿は心をときめかせる。

 

「じゃあ……店はあっちだから行こうか」

 

 ソウスケは先導するように歩き始めスノーホワイトはその後ろをついていく。次第にスピードを緩めスノーホワイトの横に並ぶように歩き、スノーホワイトに勘付かれないように私服姿をニューロンに刻み付ける。するとスノーホワイトは突如立ち止まった。

 

「ソウスケさん、ちょっと寄り道してもいい?」

「いいよ。店もまだそんなに混まないと思うし」

 

 スノーホワイトは進行方向から反転し歩き始めソウスケも着いていく。どこか行きつけの店に連れてってくれるかと期待したが、すぐに自分の考えを否定する。

 あれはパトロールの時によく見せる表情だ。あの表情を見せた後のスノーホワイトが移動した先には酔い潰れているサラリマンやヤンクに絡まれている人等誰かしら困っている人がいる。

 今回もスノーホワイトも行く先には困っている人がいるだろう。プライベートでも善行を行う精神に改めて感心すると同時にスノーホワイトと出かけることに浮かれていた自分を叱咤した。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「うわ~マジか!マジか!マジか!」黒革のテックジャケットを羽織ったショートボブのパンク風の女性が立ち止まるとしゃがみ込み声を上げる。その様子をヨノ駅前広場にいる人々は一瞥するが、すぐに足早に歩き始める。そして隣のいるコートとハンチング帽を被った男性はショートの女性を見下ろす。

 

「何があった?」「サイフを掏られた!チェーンでくっつけてたのに!マジかよ信じらんねえ!いつ!?どうやって!?」女性は混乱しながら上着やジーンズのポケットを探す。きっとサイフをチェーンから外してどこかのポケットに入れたんだ。そうであってくれ!だが女性の祈りは虚しく財布は見つからない。

 

「財布はいつまであった?」「電車に乗るまではあったのは覚えている。それでヨノ駅に着いて何か変だと思ったらチェーンが切れて財布が無くなっていた」「やられたな。電車内で掏られたのだろう」「あの満員電車で!?」女性は驚き声を荒らげる。あの人を圧殺しようとしか思えないほどの混み具合、身動き一つ取れなかった。あの状態で掏るのは不可能だ。

 

「何かしらの方法でチェーンを切ったのだろう。昔同僚がチェーンを切られ財布を擦られた」「マジかよ……そんなのありかよ……何なんだよネオサイタマ……」男性の言葉に女性は膝をつきがっくりと項垂れた。以前に居たキョートでは考えられないことだった。まさかチェーンを切断してくるとは。

 

だがネオサイタマにおいてこれはチャメシインシデントであり、通勤するサラリマン達はスリから財布を盗まれないように財布に触った瞬間電気ショックが流れるギミックをつけるなど何重にもプロテクトを施し、スリ達もそのプロテクトを突破する為に技術を磨きアイディアを考える。そんな攻防が常日頃行われている。

 

「財布には何が入っていた?」「金とかポイントカードとか。クソッ!金も下ろしたばっかで結構入っていたし、ポイントも結構溜まってたのに!」キャッシュカードが入っていなかったのが幸いだった。もし入っていればハッカーに預金残高を下ろされて、さらにヤクザクランから借金を背負わされていただろう。

 

しかしこの損失は厳しい。女性はタイルを踏みつけやり場のない怒りをぶつける。「今日は私が会計を持とう。このまま帰っても仕方がない」「悪いな次は必ず俺が奢るから。クレープじゃなくてスシでもいいぜ」「気長に待っておく」女性は空元気に男性は静かに頷く。

 

「すみません」すると二人の背後からティーンエイジャーの男女二人が声をかけてくる。二人は振り向き正対する。「えっと何の用?」「もしかしてこの財布を落としませんでしたか?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

ソウスケはスノーホワイトの後に着いていく。駅前から離れていき道も徐々に細くなっていく。辺は駅前の表通りとは違いゴミが散乱しており、怪しげな店が並んでいる。壁には「少し悪い」「でもかっこいい」とスプレーで書かれている。駅前とは明らかにアトモスフィアが攻撃的で退廃的である

 

ここはウラヨノの通り、一般的なティーンエイジカルチャーの発信地がオモテヨノであり、アンダーグランドオインランロイドアイドルやパンクスやヒップホップのカルチャーが発信されるのがウラヨノである。スノーホワイトは迷いなく進んでいく。その姿をストリートの住人はニタニタと笑っている。二人はウラヨノでは明らかに異分子だった。

 

普通のティーンエイジャーならウラヨノのアトモスフィアを恐れバイオネズミのように引返すが二人は意に介することなく進んでいく。二人は普段のパトロールでもっと危険で治安が悪い場所にも訪れている、ウラヨノ程度では全く怖がることはない。

 

暫く早足で歩くとスキンヘッドに刺青を入れた黒人二人組が二人の視界に入る。スノーホワイトは黒人二人がライブハウスのような建物に入る前に声をかけた。「すみません、財布を拾いませんでしたか?」その言葉と黒人二人の眉が僅かにひめたのを見て、ソウスケはスノーホワイトの行動の意味を確信する。

 

「ナンガキコラ!」「イチャモンカコラ!」黒人たちは顔を近づけるとヤクザスラングのような言葉で威圧的に捲し立てる。スノーホワイトは動じることなく再び尋ねる。「友達が財布を落としたみたいですが、拾いませんで……」「シラネエ!」黒人はスノーホワイトが喋り終わる前に被せるように大声を出す。

 

「折角いい気分でライブに行こうと思ったのにイチャモンつけられて萎えたな」「ああ、これはそこの自動販売機でセルフバリキパーティーしてテンション上げねえとな」演劇めいたトーンで喋り始めて睨みを効かせる。これは明らかにスノーホワイトに迷惑料という名目で金をせびっているのだ!

 

「金がねえか?何なら前後させてくれるなら勘弁してやる」「体は平坦気味だが顔は良い」何という卑猥な言動!黒人達の下品な言葉にソウスケは目を開きキリングオーラが膨れ上がる。だがスノーホワイトは手で制して怒りを抑えるように促し、ソウスケはキリングオーラを押さえ込む。

 

「友人が財布を落として困っています。心当たりはありませんか?」スノーホワイトは深々と頭を下げる。何という奥ゆかしさ!下劣な言葉を投げかけられながらも頭を下げるその姿は聖母マリアのようだ!

 

「前後で済ませてやるって言うのにまだ疑うかコラー!ナメンテンカコラー!」「俺たちを舐めるっていうのはフレンドのキルモンキークランを舐めるってことだよ。とりあえず事務所行こうか」だが黒人二人にはスノーホワイトの奥ゆかしさは伝わらず、事務所に連れて行こうと肩に手を回す。

 

「イヤーッ!」突如響き渡るカラテシャウト!二人は声の方を振り向くとそこには左手にバリキドリンクの空き瓶を持ったソウスケ、瓶のボトルネックは切断されている!「イヤーッ!」「イヤーッ!」ソウスケは片手で瓶を持ちながらボトルネックカットチョップを繰り返していく。

 

黒人二人の顔が一気に青ざめる。仲間内の余興でボトルネックカットチョップチャレンジを行ったが誰ひとり成功しなかった。成功できるのはカラテ10段以上のブラックベルトの持ち主である。だがソウスケはあっさりと成功させている。目の前の少年は何者なんだ?

 

「スノーホワイト=サンが嘘つくわけない、早く盗んだ財布を出して!それとも首をボトルネックカットされたいの?」ソウスケは語気を強めながら通告する。「アイエエエ……」黒人二人は声を震わせながら懐から財布を差し出す。その股間は僅かに湿っている。ソウスケのキリングオーラとカラテを目の当たりにして軽いNRSを起こしていた。

 

ソウスケはスノーホワイトに財布を渡す。「ありがとうございます」スノーホワイトは黒人二人に礼を奥ゆかしくオジギをして踵を返し歩いていく。ソウスケも黒人達を睨みつけ後を追う。「何てシツレイな奴らだ!もう少し痛めつけてやればよかった!」ソウスケは怒りを隠すことなく呟く。

 

スノーホワイトは卑猥な言葉を投げかけられながらも、怒ることなく財布を盗んだことを知りながらも財布を差し出す機会を与えた。それを全く理解しようとしなかった。骨の2本や3本でも折っておけばよかった。

 

 

「そんなのダメだよ。相手も痛いのは嫌だろうし」「でもスノーホワイト=サンだってあんな言葉言われてムカつくでしょ」「別に気にしてないよ。それより私のことに怒ってくれてありがとう」「いや……家族や知り合いが言われたら誰でもそうするというか……人として当然というか……」ソウスケは照れ臭そうにしながら視線を逸らす。

 

スノーホワイトはその姿を見て笑みをこぼす。もしラ・ピュセルが同じような場面に出くわしたらソウスケと同じように怒っていただろう。「それで財布は届けるの?何かネコババしそう」ソウスケは話題を変えるように言った。パトロール等でマッポが賄賂を受け取っている所を何回か目撃している。マッポは基本的に信用していない。

 

スノーホワイトは頷く、フォーリナーXを探す中で警察の腐敗を度々目撃しており、ソウスケと同じように警察を信頼していなかった。ならば自分で直接渡したほうが確実である。声を聴けば財布の落とし主がすぐ分かる。すると一人該当する声が聞こえてくる。二人はその声の元へ向かった

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

少女は懐から財布を出すとショートボブの女性は目を大きく見開いた。「俺の財布だ!どこに落ちてた!?」「駅の改札を出たすぐのところに」少女から財布を受け取ると中身を確認する。金の総額は記憶している額と誤差はない。それにカード類もすべて有った。「ありがとう!マジでありがとう!ネオサイタマにもブッダは居るんだな!」

 

ショートボブの女性は少女の手を取り90°の角度でお辞儀する。その姿を見て少女と少年は嬉しそうに笑った。「いや~本当に助かった!えっと……」「カワベ・ソウスケです」「ユキノ・ユキコです」「カワベ=サンにユキノ=サンありがとう!ところで二人は甘いものは好きか?」「好きでも嫌いでもないです」「私も同じです」

 

「そうか、じゃあ近くに有るクレープ谷渋は知っている?二人ぐらいの世代で人気の」「はい、丁度ボクとスノー……ユキノ=サンと一緒に行く予定です」「マジか!俺達も行くつもりだったんだ。礼として二人の分も奢らせてくれよ」「お気遣いありがとうございます」ショートボブの女性の提案をスノーホワイトは奥ゆかしく拒否する。

 

魔法少女として人助けを行い他人から報酬を貰うことはならない。それがスノーホワイトのポリシーだった。「まあ硬いこと言わずに」「いえ、当然の事をしたまでです」「ブッダも怒るぞ」「ではお言葉に甘えて」ソウスケがスノーホワイトの間に割って入り提案を承諾した。

 

「よし決まりだ。好きなだけ食べてくれ」ショートボブの女性は意気揚々と歩き始め、ハンチング帽の男性は二人を一瞥し後についていく。「ソウスケさん、どうして誘いに受けたの?」スノーホワイトは小声で問い詰める。

 

「二回断られて三回目でブッダも怒るって言うのは、キョートでは是が非でも誘いたい時に言う言葉で、それを断ると凄くシツレイって授業で習ったんだよ」ショートボブとスノーホワイトの間で行われたやり取り、これはエド様式の作法が時を経て変化したものがキョートで伝わったものである。

 

もしキョートでこのやり取りが行われスノーホワイトが断れば、相手側のオナーは大いに傷つけられただろう。「そうなんだ」スノーホワイトはシツレイという言葉を聞いて渋々納得する。己のポリシーよりこの世界の文化を尊重した。その行動は奇しくもミヤモトマサシの「他人の家に入ったら言うことを聞こう」に則していた。

 

「あ、そういえば」ショートボブの女性は振り返る。「俺はエーリアス・ディクタス。こっちがイチロー・モリタ=サンだ」「ドーモ、カワベ=サン、ユキノ=サン。イチロー・モリタです」エーリアスとモリタ改めフジキド・ケンジは二人にアイサツした。

 




◆忍殺◆
ニンジャ魔法少女名鑑#7
【コバヤシ・チャコ】
非ニンジャ。ネオサイタマに住む女性大学生、キッズアニメのニンポ少女シリーズのマニア、幼少期からシリーズは欠かさず見ており、一番好きなニンポ少女はシノビ、バリキでトリップし、ネオサイタマに来たスノーホワイトとファルをニンポ少女とそのマスコットと勘違いし、家に招き入れる
◆魔狩◆

◆忍殺◆
ニンジャ魔法少女名鑑#8
【コールドスカル】
元サラリマン。仕事のミスで右手の指をすべてケジメした時にニンジャソウルが憑依。アカシ・ニンジャクランのレッサー。アマクダリの傘下ではなく、フリーランスで活動している。アクシデントで重要な記憶端子をコバヤシに回収され、奪い返す為に家に乗り込む
◆魔狩◆
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