ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター 作:ヘッズ
時系列とかは特に考えていません。
ファ~、ファファファ~。タタミ50枚ほどの大部屋にエレクトリック尺八の音が流れる。その調べは聞いた者は思わず足を止め、チルアウトしてしまうだろう。だが部屋の様子はチルアウトには程遠く、殺伐としていた。敷かれている50枚のタタミは黒く焼け焦げ、マシンガンすら耐える剛性フスマは槍状のバイオバンブーが刺さり、キリタンポめいた状態だ。
「トラップは終了です。オツカレサマドスエ」尺八の音をBGMに電子マイコのアナウンスが流れる。その部屋の中央に1人の男性が座っている。男はタタミ色の装束を着てメンポを着けている。読者の方々ならお気づきだろう。この男はニンジャである!名前はエンプティーネスト、エンプティーネストは座り込み深く息を吐いた。
恐ろしいトラップの数々だった。尺八の音で心身を落ち着かせて、その直後に襲い掛かるトラップの数々、トラバサミ、火炎放射、スタンガン攻撃、スタングレネード、バイオバンブー、即死の毒を持つバイオ生物の数々、モータルなら数々のトラップで10回、サンシタニンジャでも数回死亡していた。だが即死級のトラップをすべて回避したのだった。
この部屋のトラップはすべて回避した。残る部屋はあと1つ、そこを突破すればきっと有るはずだ。エンプティーネストは興奮を抑え込むように深く息を吐く、この屋敷の持ち主はエンプティーネストの親戚のカチグミである。そのカチグミは突如この屋敷を作り始めた。親戚一同は別荘の一つと思っていたが、カチグミは別荘には全く訪れなかった。
暫くして親戚一同にある噂が流れた。この屋敷は何か高額な品を守るセキュリティハウスなのではないか?だが親戚はカチグミに真意を聞くことなく月日は流れ、カチグミは死んだ。そして親戚一同は噂の真意を確かめるべく屋敷に訪れ侵入を試みた。エンプティーネストもその中の一人だった。中に入ろうと玄関のドアノブに触れた瞬間意識を失った。
半年後、エンプティーネストは病室のベッドの上で意識を取り戻した。ドアノブに毒が仕込まれており、その毒で生死の境を彷徨っていた。そしてニンジャになった。エンプティーネストは退院後暫くして、その後に起こった出来事を知る。
親戚一同は二つの意見に割れ、一方は恐ろしいトラップに慄き屋敷に入る事を断念し、一方は危険なトラップを仕込んでいるという事は重要な物を隠し持っているはずと侵入を試みた。侵入派は非公式にハック&スラッシュのチームを雇い侵入を試みたが、雇ったチームは全て全滅し、最終的に侵入派も侵入を断念し屋敷には誰も訪れなかった。
そしてエンプティーネストは侵入するために屋敷に訪れる。侵入派と同じように屋敷には金目の物が何かあると考えていた。寧ろ信じるしか道は無かった。ニンジャになる前はサラリマンとして働いていたが半年の病院生活により会社をクビにされ、休んでいた間プロジェクトの進行を滞らせた責任として慰謝料を請求され、入院費も高額だった。
多額な借金を抱え、ヤクザクランが借金を取り立てに来るが、全く恐れていなかった。借金取りは全てカラテで撃退し黙らせた。さらに別の場所から金を借りて、取り立ててくるヤクザを撃退する。多重債務者になっているが生活には苦労せず、ニンジャとしての人生を謳歌していた。
だが相手側のヤクザもニンジャを雇い、そのニンジャによって完膚なきまでに叩きのめされ返済を催促された。金を返すか死ぬかの二択、だが金を返す当ては全くない。しかし金を返さなければ死ぬ。まさにオーテツミ。そんな時カチグミの屋敷の事を思い出し、何とか返済期限を延ばしてもらったのだった。
ここで金目の物を得られなければ死ぬ。エンプティーネストはネガティブマインドを打ち消すように頬を叩きキアイを入れ屋敷に侵入した。結果金目の物を得られず、右目と右腕を失い屋敷から脱出した。これで金を払えず死ぬ。だがエンプティーネストは諦めず近くにあったカチグミの家にハック&スラッシュを試み、金目の物を奪取し何とか生き延びた。
それからはハック&スラッシュで生計を立てるようになった。収入の大半は利息分で取られたが少しずつ元本を返済し、ハッカードージョーに通い生体LAN端子を植え付け、ハックとスラッシュの役割を一人で行えるパラディンとなり、ハック&スラッシュ界隈では有名な凄腕に成長した。
そして再びカチグミの屋敷に訪れた。金目の物を入手し借金を完済したいという目論見はある。だがこの屋敷をどうしても自らの手でハック&スラッシュしたかった。この屋敷に訪れた事で人生は大きく変わり転落した。そのケジメは自らつけなければならない!その為にスキルを身に着けパラディンになったのだ。
あと一息で最奥の部屋にたどり着き保管されている金目の物を奪う。その瞬間第二の人生が始まる。エンプティーネストは噛みしめるように一歩ずつ部屋の出口に向かっていく。出口までタタミ2枚分、その場所で足を止めた。「小癪な、イヤーッ!」腰に装着していた鞭をタタミに向けて振りぬいた。
鞭がタタミを薙ぎ払うと金属音が響く、ナムサン!辺り一面に敷かれていたのは非人道兵器マキビシだ!さらにタタミにカモフラージュするようにタタミを絞った着色料が塗られ、致死量の毒も塗られている。トラップを回避し電子マイコのアナウンスで油断させた上での非人道兵器マキビシ!何たる狡猾かつ卑劣なトラップだろうか!
だがエンプティーネストは油断せず見事に即死トラップを回避したのだ!ワザマエ!エンプティーネストはフスマを開ける。ターン!部屋を出るとコンクリートで作られた殺風景な一本道、そしてその先にはゴールと書かれた鋼鉄フスマがある。だがここで精神的疲労と緊張感から耐えかねて駆けつけるのは3流のスラッシャー。
最大限にニンジャ警戒を高め、すり足で牛歩めいた速度で移動する。その姿は匍匐前進で地雷除去をしながら進む兵士のようだ。50メートルの道を十数分かけて抜ける。トラップは何もなかった。何もない場所を警戒し疲弊させながら進ませ、徒労感を味あわせる。これもまた一つのトラップである。
扉につくとドアノブの横にはテンキーがついている。暗証番号式の電子ロックだ。エンプティーネストは首裏の生体LAN端子にケーブルをつけ、テンキーに備わっているLAN端子につけハッキングによるロック解除を試みる。失敗すればニューロンが焼かれ即死。ハッキングにニンジャの暴力は通用しない。必要なのはハッキングスキルのみだ。
暫くするとバチバチという音ともに鋼鉄フスマが開いていく。ハッキングは成功した。LANケーブルを仕舞い部屋に入る。そこは薄暗い和室だった。「風林火山」「不如帰」の力強いショドー掛け軸が飾られている、それ以外は高さタタミ5枚、横タタミ10枚分の普通の和室だった。ここに金目の物があるのかエンプティーネストは訝しむ。
ニンジャ暗視力で扉から入る僅かな光である程度見えるが見づらいことには変わらない。エンプティーネストは明かりをつけようとスイッチを探すと電子音が聞こえてきた。そこにはオイランドロイドがいた。高級品の着物を着て目を閉じながら正座をしている。
エンプティーネストは親戚達がこの屋敷の持ち主はオイランドロイドに傾倒し、身の回りの世話をオイランドロイドにさせていたと噂話をしていたのを思い出す。このオイランドロイドが金目の物なのか?質は高そうだが借金の元本を返済できるほどではない。それに苦労して侵入して、オイランドロイド一体では割に合わないし納得できない。肩透かしだ。
「侵入者認定、排除するドスエ」BLAMN!BLAMN!BLAMN!オイランドロイドの目が開き腕に内蔵されている35口径ピストルを発砲!「イヤーッ!」エンプティーネストはブリッジでアンブッシュ発砲を回避!「これが宝ではなく、ガーディアンか」エンプティーネストはカラテを構える。
BLAMN!BLAMN!オイランドロイドは両手を掲げ発砲!エンプティーネストは鞭を振りぬき弾丸を叩き落とす!ワザマエ!そのまま手首で鞭を操作しオイランドロイドに叩きつける。パン!パン!空気の破裂する音が響きオイランドロイドに命中!だがオイランドロイドは意に介さない!
エンプティーネストは舌打ちする。モータルなら痛みで気絶もしくは死亡。ニンジャでも怯み行動が遅れるが、痛覚が存在しないオイランドロイドには効果がない。生物には有効だが無機物には不利だ。状況判断し鞭から素手のカラテに切り替える。
BLAMN! BLAMN! オイランドロイドは発砲するがエンプティーネストは高速前転で回避し、素手の間合いに飛び込んだ。「カラテ!」オイランドロイドは上半身を180°に回転させ振りかぶりパンチを打つ。何たる人間の体では不可能な柔軟性!これがオイランドロイドのテクノカラテ!パンチが当たれば人間の頭部は潰れたトマトめいて破裂するだろう!
「イヤーッ!」「ピガーッ!」エンプティーネストは恐るべきテクノカラテを躱し、わき腹にボディーブローを叩きこむ!そしてすぐさま間合いを取る。「そのカラテ、予想以上に高性能だな。高値で売れるだろうがお前は俺が望む金目の物ではない」エンプティーネストは恐るべき速度で間合いを詰めカラテを見舞う。「イヤーッ!」「ピガーッ!」
戦いは一方的だった。いくら高性能のオイランドロイドといえどニンジャにカラテで勝つのは無謀だった。エンプティーネストはその気になれば数十秒でスクラップにできたが手加減し、素手のカラテのプラクティスと言わんばかりにカウンターや技の練習台にされていた。
人間やニンジャなら屈辱に打ち震えていただろう。だが機械のオイランドロイドは屈辱を感じることなく、命令を実行すべくひたすらカラテをふるった。「イヤーッ!」「ピガーッ!」「カラテ!」「イヤーッ!」「ピガーッ!」「カラテ!」「イヤーッ!」「ピガーッ!」「カラテ!」「イヤーッ!」「ピガーッ!」「イヤーッ!」「ピガーッ!」「イヤーッ!」「ピガーッ!」
「ピガガガ、排ピガガガ」オイランドロイドは糸が切れたジョルリめいて崩れ落ちる。五指、肘、肩、足首、膝関節は有らぬ方向に曲がり接合部から細かく放電を繰り返す。ボディは打撃によりクレーターめいた跡が出来き、体中から煙が噴き出る。目は目突きにより両目ともくり抜かれた。美しかったオイランドロイドは無残にもスクラップにされた。
「金目の物を探すとするか」エンプティーネストは崩れたオイランドロイドを一瞥すらせず、部屋を物色する。「ピガガガ、ピガガガ」オイランドロイドはエンプティーネストを見上げる、その姿はノイズまみれでぼやけていた。そして映像はエンプティーネストから老人の姿に変わる。
生前まで身の回りの世話をしていた老人だ。自分のメンテナンスを業者ではなく自分でやろうとして、もたついている映像が記憶装置から再生される。そして映像が変わる。「最後の頼みだ……これを奪いに家に来る者がいるはずだ……そいつらから守ってくれ……」
「ピガガガ、排除します……守ります……ピガガガ……」オイランドロイドは折れた手足をフル稼働させエンプティーネストに向かって移動する。そのスピードはバイオカタツムリより遅いが確実に近づいていた。「ピガピガうるさい!イヤーッ!」エンプティーネストは振り向くとオイランドロイドの頭を全力で蹴る!
頭部が首から離れ部屋を抜け一本道に向かっていく。そしてその頭部は一本道にいたピンク髪の少女にキャッチされた。
◇スノーホワイト
(((守れないと困るドスエ)))
聞こえてきたのは奇妙な声だった。魔法で聞こえる困った声はどれも感情がこもっている、だが今聞こえてくる声は感情がなく平坦な非人間的な電子音で語尾も奇妙だ。人間ではない電子妖精のファルですら声にもう少し抑揚が有った。その奇妙な声に興味を持ったのか、スノーホワイトは声がする方向に向かっていく。
そこに有ったのは大きな屋敷だった。ドアは開いており不用心と思いながら扉をノックするが反応ない、留守だろうか。家主から許可を得ずに家に入るのは気が引けるが、何かが起こっていては遅く、困った声の主のことも気になる。ドアノブに手をかけようとした瞬間スノーホワイトの手が止まる。
「どうしたぽん?」
「ドアノブに棘みたいなものがついている。それに変な匂いがする」
顔をドアノブに近づけ匂いを嗅ぐ、するとドアノブからは僅かだが今まで嗅いだことのない刺激臭が嗅覚を刺激する。この匂いは毒物の匂いである。魔法少女の卓越した五感がドアノブに仕掛けられているトラップを感知した。
只でさえ異様な声にドアノブの仕掛け、これは何かが起こっている。スノーホワイトは扉を観察しトラップが無いのを確認すると、ドアノブに触らず足で開けて屋敷に入っていく。
「凄いトラップの数だぽん。作った人は何考えているぽん?」
ドアノブにトラップが仕掛けられていたからには中にもトラップが有るとは予想していたが、それはスノーホワイトの想定を超えていた。
ピアノ線、鉄球、地雷、トラバサミ、動物の死骸、振り子の刃
実際に有るものからアクション映画の遺跡探索で出てきそうなトラップの数々、どれもこれも子供の悪戯程度ではなく、引っかかれば死亡、良くて重体だろう。さらに屋敷の部屋は地下に作られており想像以上に広く、どこも意図的に似たような内装にされ、方向感覚を狂わし、帰還するのを妨害している。
侵入を拒み生きて返さないという意志と殺意に満ち溢れたトラップの数々、よくこれだけのトラップを設置したものだ。少しばかり感心する。
このトラップの数々は魔法少女でも苦労するだろう、スノーホワイトもトラップの攻撃を受けたが、ほんのわずかばかり肝を冷やした物もあった。困った声が聞こえない人の意志が入らない攻撃はスノーホワイト攻略法の一つであり、ある意味魔法少女の攻撃より厄介だった。
幸いにも先に侵入したものがトラップを解除しており、対処したものは残り物のトラップだけであり、手間取ることなく奥に進んでいく。すると同じ内装の和室を抜けコンクリートで作られた殺風景な一本道に出る。
何かがスノーホワイトの元に飛び込んできた。ボーリング球ぐらいの大きさで反射的にキャッチする。それはマネキン人形のような首だった。顔中に殴打による罅が入り両目はくり抜かれ、そこから黒いオイルのような液体が流れており涙のようだった。
困っている声はもう聞こえない。ということはこのマネキンが困っていた声を出していたのか?声を出すということはこのマネキンには意思があったのか?物質に意志が宿るのか?
疑問を抱くが物体である電子妖精のファルにはAIが有り困った声が聞こえる。ならば同じようにAIがあり意志が宿ったのかもしれない。その意思が宿ったマネキンは何かを守れず、スクラップにされた。
スノーホワイトは手で瞳を閉じ頭部を静かに床に置き手を合わせた。そして魔法の袋からルーラを取り出し、エンプティーネストがいる和室に向かって歩を進めた。コツコツと床を叩く無機質な音が響き渡る。
「噂を聞いてここまで来た同業か?だが分け前は無い。トラップを突破し部屋に最初にたどり着いたのは俺だ。宝は俺の物だ。何しに来たハイエナ」
エンプティーネストは歩く音でスノーホワイトに気づき部屋に入る瞬間鞭を振るった。碌にハック&スラッシュの技術を持たず、トラップを自分に解除させ美味しいところだけ頂こうとするカス、それがスノーホワイトへの印象だった。
ハック&スラッシュに対するプロ意識を持っているエンプティーネストにとってスノーホワイトは万死に値する。目撃者は殺すつもりだがこいつは甚振って殺す。
「ここには何をしに?」
「ハック&スラッシュに決まっているだろう。お前もハック&スラッシュしに来たんじゃないのか?まあお前みたいなニュービーには無理な仕掛けだったがな。俺みたいなヤバイ級のパラディンじゃなきゃ攻略できなかった」
エンプティーネストは攻略したトラップと今までのハック&スラッシュについて自慢げに語るなか、スノーホワイトは部屋の様子を確認する。
今まで通ってきたような内装の和室に掛け軸と大きな金庫、そして着物を着た首のない人型の物体、あれが首だけのマネキンの体だろう。五指、肘、肩、足首、膝関節は有らぬ方向に曲がり接合部から細かく放電を繰り返す。ボディは打撃によりクレーターのような跡が出来き、体中から煙が噴き出て着物の所々は放電より焼けている。
あれは甚振って破壊したものだ。エンプティーネストは即破壊し機能停止できるはずなのに無駄にダメージを与えた。
弱者を甚振り犯罪行為を自慢げに語る。魔法少女なら即捕まえて監獄所に送り込むほどの悪者だ。
エンプティーネストは自慢げに語っている最中に鞭を振るう。風切り音を鳴らしながら鞭がスノーホワイトに向かっていくがルーラの柄で難なく防ぎ、パンという破裂音が部屋に響く。
この瞬間スノーホワイトはエンプティーネストをニンジャと、エンプティーネストはスノーホワイトをニンジャと勘違いし戦闘が始まった。
ヒュン、ヒュン、ヒュン。
風切り音が鳴るともに鞭がスノーホワイトに向かっていく。そのスピードは音速に匹敵する。だがエンプティーネストは鞭を振るった様子はなく、直立不動のように見える。だがそのように見えるだけであってしっかりと鞭を振るっていた。
鞭を振りかぶって振るうのでなく手首の返しの力のみで振るっていた。そんな振るい方では普通ならスピードも威力も出ない。特殊素材で作られた鞭とニンジャの非凡な手首の力が可能にさせる。
鞭は予備動作なく右頬、左肩、右手首、左太もも、右足首と様々な部位に正確に向かっていく。だがスノーホワイトは頭を下げ、半身になり、ルーラから手を放し、柄を立て、足を上げて鞭を回避していく。
エンプティーネストは驚きで目を見開く。この振り方は威力が少ないが動作の起こりが少なく躱しにくい。しかし目の前の少女は平然と対処していく。
スノーホワイトとしても確かに避けにくかった。だが心の声で攻撃する部位を察知している状態であれば予備動作が無くとも避けるのは難しくはない。攻撃を捌きながら間合いを詰めていく。
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
エンプティーネストの叫び声をあげながら鞭を振るう。攻撃方法が変わり手首の力ではなく腕や肩の力を使い大振りで振るっていく。
鞭という武器の特徴は痛みだ。鞭に当たったものは壮絶な痛みに襲われる。その痛みは攻撃する意思を根こそぎ削ぎ、痛みのあまり外聞を気にする余裕すらなく転んで膝を怪我した幼子のように泣き叫び地べたを転げまわる。
それはいくら筋肉を鍛えていても防げるものではなく、防ぐとしたら鎧でも着るしかないだろう。スノーホワイトの服装は学校の制服のような素材、それでは鞭の痛みを防ぐことはできず手首のみで振るやり方で充分だった。
だがスノーホワイトには通用しない。この振り方は手首のみで振るやり方より鞭のスピードは速く威力も大きく掠っただけで肉をそぎ落とす。攻撃のリズムを変えてスノーホワイトを惑わせる心算だった。
ゴオ、ゴオ、ゴオ。
鞭の風切り音が変わり柄で防ぐ衝撃も打撃のように重く鞭のそれではない。さらに他の部位を使って鞭を振るい手首に余力があるせいか、手首の返しで鞭の軌道が変化していく。だがこの攻撃もスノーホワイトは表情を変えることなく事も無げに対処していく。
鞭のスピードが上がろうが途中軌道が変化しようが、心の声が聞こえ狙いどころが分かるスノーホワイトには対処可能だった。スノーホワイトは無表情のまま鞭を捌き間合いを詰める、エンプティーネストは困惑と動揺の表情をさらに深める。
「ムチ・ウォール!イヤーッ!」
エンプティーネストは一心不乱に鞭を振るう。鞭は壁やタタミをランダムに破壊し破片が周囲に散乱する。
スノーホワイトは瞬間的に危険を察知し詰めていた間合いを外し後ろに飛んで距離を取る。
目の前にあるのは壁だった。エンプティーネストが全力で鞭を振るうことで、残像を生み壁のようになっていた。
スピード威力ともに今までの最大だ、この壁に振れれば魔法少女の強靭な体でも只では済まないだろう。そして今まで違い狙いを定めずやたらめったら振るっているため、心の声で狙っている場所を察知し回避するという方法はとれない。
さらに鞭の壁はこの部屋の横と高さを覆いつくしており逃げ場はなく、鞭の壁は徐々に迫っている。このままでは攻撃を食らう、スノーホワイトは脳内で対処法を浮かべ消していく作業を繰り返し、思いついた案を実行する。
スノーホワイトは構えていたルーラを左手で宙に放る、そのルーラの石突を右手の人差し指と中指の間に添えて左足を力いっぱい踏み込む。踏み込みによってタタミは数センチめり込み、踏み込みから腰、背中、肩、肘と連動させ動かし指先に力に集め解き放った。
「グワーッ!」
エンプティーネストの悲鳴が部屋に木霊し、鞭の壁は消失する。鞭を持った義手の肩にルーラが突き刺さり義手は後ろの壁に縫い付けられていた。 鞭を避けられないのならば鞭自体を止めればいい、そう考えたスノーホワイトは鞭を振るう腕を破壊するためにルーラを投擲し、鞭の壁を突き抜けて腕を破壊することに成功した。
義手を失った痛みと困惑で動きが停止する。その隙を突いてスノーホワイトは一気に間合いを詰めた。間合いを不意に詰められたエンプティーネストは痛みに堪えながら反射的に横殴りに左手を振る。 その攻撃を避け掌底で顎を打ち上げると同時に足を刈り一気に後頭部をタタミに叩きつけた。この瞬間エンプティーネストの意識は断たれた。
「投げ槍なんてファルには考えつかなかったぽん」
「強い人だったら鞭を素手で捕まえて止めただろうけど、私には無理だからあれしかなかった。リップルやドラゴンナイトさんが手裏剣投げているのをヒントにしてやったけど、初めてやったけど上手くいった」
「ぶっつけ本番かぽん!?よくやるぽん」
「肩は動かないし、動かない的なら十数メートルぐらいなら当てられるかなって」
「それでこの空き巣はどうするぽん?」
「警察に連絡して捕まえてもらう。色々喋っていた犯罪を調べれば逮捕されると思う」
スノーホワイトはエンプティーネストを縄で捕縛した後、突き刺さったルーラを回収し、気絶したエンプティーネストを魔法の袋に回収した。その際に開錠された金庫が目に入る。スノーホワイトは一瞥すると部屋の出口に向かっていく。
「金庫の中身はどうするぽん?回収しろとは言わないけど一目ぐらい見ていかないぽん?」
「いいよ」
「そうかぽん」
スノーホワイトは興味なさそうに告げると、ファルは残念そうにしながら引き下がった。
あれだけのトラップに守られた物品、それだけで非常に高価で価値が有る物と予想できる。ああは言ったが興味は有る。
だがそれはあの機械人形が意志を持って守ろうとした物だ。ボロボロになりスクラップになってでも守ろうとして、その結果自分がたどり着きあのニンジャを倒した。ならば機械人形が守ったと同じといっていいだろう。守った物を見ようとするのは違う気がする。
スノーホワイトは部屋を出てコンクリートの通路に置いてあった首を拾い上げると、部屋にあった胴体にくっつけるように置き手を合わし、部屋を出て行った。
◆忍殺◆
ニンジャ魔法少女名鑑#11
【マタタビ】
ニンジャのジツを受け飼い主を殺してしまい、瀕死の重傷を受けたところでニンジャソウルが憑依しニンジャアニマルとなる。飼い主を殺させたニンジャを追っているなかドラゴンナイトとスノーホワイトと出会う
◆魔狩◆
◆忍殺◆
ニンジャ魔法少女名鑑#12
【アイアンフィスト】
壁に耳あり障子に目あり計画を成功させるために派遣されたアマクダリ・ニンジャ。両腕のサイバネアームのギミックを駆使し敵を倒す。だがスノーホワイトにはギミックは通用せず捕縛された後、ニンジャスレイヤーに見つかりインタビューを受ける
◆魔狩◆
◆忍殺◆
ニンジャ魔法少女名鑑#13
【ストライプブルー】
壁に耳あり障子に目あり計画を成功させるために派遣されたアマクダリ・ニンジャ。テレキネシス・ジツの使い手、クナイダードを操作して敵を倒す。だがスノーホワイトにはギミックは通用せず捕縛された後、ニンジャスレイヤーに見つかりインタビューを受ける
◆忍殺◆
ニンジャ魔法少女名鑑#14
【テイマー】
壁に耳あり障子に目あり計画を成功させるために派遣されたアマクダリ・ニンジャ。動物を操作し操るジツを使う。この計画の重要人物であり、アイアンフィストとストライプブルーから護衛を受けていた
◆忍殺◆
ニンジャ魔法少女名鑑#15
【ディスピアー】
壁に耳あり障子に目あり計画を成功させるために派遣されたアマクダリ・ニンジャ。テイマーによる計画が失敗した保険として計画に参加させられる。カラテは弱いがカラテで敵を倒したいという願望は強い