ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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第八話 電子妖精が見た新世界#1

◇ファル

 

 魔法少女をサポートするために作られた使い魔をマスコットキャラクターと呼ぶ。主に小動物タイプ、妖精タイプ、電子妖精タイプに分類され、ファルは電子妖精タイプに分類され、実体を持たず魔法の端末に住んでいる。

 マスコットキャラクターは特別な役割を持つ魔法少女のみに与えられ、それを持つことが一種のステータスとなっている。以前の主人のキークは魔法の国のIT部門のトップであり、ファルを与えられ改造を施し、普通のマスコットキャラクターには無い機能を備え付けた。そして紆余曲折があり今はスノーホワイトのマスコットキャラクターになっている。

 

 マスコットキャラクターのすることは異世界に行っても変わらない。スノーホワイトの最優先事項は元の世界に帰る為にこの世界に送り込んだフォーリナーXを探すことであり、それをサポートするのが最優先事項である。

 スノーホワイトが捜索兼人助けの為にネオサイタマの各地を移動しており、その情報をもとにファルはネオサイタマの地図を作成し、常にアップデートしながら次に向かうべき場所をナビゲーションする。また人の噂話なども重要な情報源であり、自主的に録音するなどして常に情報収集を行っている。

 またニンジャという存在、魔法少女と同等の戦闘能力を持つ危険な存在だ。スノーホワイトが行動する際には接触し戦闘になる可能性もあるので、今まで会ったニンジャを元にニンジャは何ができるのか、どのような特殊能力を持っているか等の考察も行っている。

 

 土地勘のないスノーホワイトにとってファルの作成した地図は非常に役立つものであり、ファルが情報収集で得たものはネオサイタマの文化や風土を理解するのに一役買っている。マスコットキャラクターとしては充分な働きだが、ファルは自身の働きに不満を持っていた。

 ファルはそれらの仕事を同時に行っている。人間であれば同時に進行させることは困難だが、圧倒的演算速度を持つ電子妖精のファルであれば片手間だった。元の世界であれば今の仕事に加え、ネットワークを使用した情報収集も同時にできるスペックを有している。

 だが元の世界とネオサイタマのネットワークの作りが違うせいか、ネットと繋がることは一切出来ていない。もしネットワークに繋がることができれば、スノーホワイトの捜索を元に地図を作るなどまどろっこしいことをせず、ネットワークから直接情報をダウンロードし今とは比べ物にならない詳細な地図を作成できる。

 それだけではない、フォーリナーX探しでも取り込んだ画像を元に街中の監視カメラ映像から探し出すことや、IRCログというものからワード検索などしてそこから探索することもできる。

 だが今は本来の力を十全に発揮できない状態であり、只の情報端末にすぎない。これだったら嗅覚などで探索できる小動物型マスコットのほうが遥かに役に立つだろう。

 もし以前出会った魔法少女シャドウゲールがいれば「機械を改造してパワーアップできるよ」の魔法で改造し、ネットワークに繋がることができたかもしれない。しかし所詮無いものねだりだ。可能性がゼロに等しいことを考えるより今できる事をやるべきだ。ファルは電子妖精的な合理的考えに切り替え、情報を収集すると同時に情報を整理する。

 

「ぽん?」

 

 ファルは端末内で思わず訝しみの声をあげてしまう。今は周りの声を聴くために録音機能を作動させていたはずだ。だが気づくと周囲の音声が一切聞こえなくなっていた。そして目の前に見えるのは奇妙な光景だった。

 無限の地平線に黒色に緑の格子模様が描かれた地面、周囲は遥か先まで暗黒に染まっており、その黒さは夜とは違う異様な黒さだった。暗黒には時々緑色の流星群のようなものが落ち、頭上には黄金色の立方体がゆっくりと回っている。

 何だこの奇妙な空間は?まず考えたのは夢の世界であるという仮説だった。だがコンマ数秒で否定する。人間や他のマスコットキャラクターならともかく電子妖精は夢を見ることはないし、そもそも眠る機能は備わってはいない。

 

 次に考えたのは魔法少女による仕業だった。以前のマスターである魔法少女のキークは自分が作った電脳空間に他者を引きずり込むことができる。似たような魔法で引きずり込んだのか?だが何のために?キークは作ったゲームをやらせるために引きずり込んだが、こんな異様な空間で何をさせようというのか。

 ファルは様々な憶測を導き出すがそれらを一旦保留する。答えを導き出そうにも情報が少なすぎる、今は相手の出方を待つしかない。取り敢えずスノーホワイトが巻き込まれなかっただけ良しとする。

 ファルは謎の空間を黄金の鱗粉を振りまきながら直進する。仮説にキークのような魔法と挙げたがこの仮説は合っているかもしれない。この空間はキークの魔法で作り上げた電脳空間と雰囲気が似ている。だがこの空間にはキークの電脳空間とは違う不気味さがあった。人間は恐怖を感じると鳥肌が立つと言うが、ファルも思考にノイズが走るのを感じた。

 直進する間に七つの鳥居の下を潜った。鳥居が有るという事は日本人がこの空間を作り上げたのか?だがこの空間は誰かが作ったものではない。ファルは考察を続けながら進んでいく。

 

「ファ~ファ~ファ~。なンだいあンたは?どうやって入ってきたンだい」

 

 ファルの目の前に突如人型の物体が音も無く出現した。高さは10メートル以上で浮浪者が切るような襤褸布を重ね、声や雰囲気からして老婆のような印象を受けた。この老婆に向けてwhoisコマンドを打ち込む。この空間は電脳空間のようなものでコマンドも使用できると予想し、実際コマンドを打ち込むことができた。

 

「ドーモ、アタシャ、バーバヤガっていうンだ」

 

 バーバヤガは名乗ると頭上にwhoisコマンドが見える。ファルはコマンドに従うように名乗る。

 

「ファルだぽん」

「ドーモ、ファル=サン、正規品のUNIXから繋いできたわけじゃないね。アドレスがデタラメすぎる。けどニンジャでもないね。ネコネコカワイイ?それとも違う。あンたは何者でどうやって入ってきたか教えてくれンかね」

「いいだぽん。けど交換条件だぽん。ファルの事を話すからこの空間が何だか教えてほしいだぽん」

「フェフェフェ、交換条件ときたかい。いいよ教えよう、そっちが先だ」

 

 ファルはコンマ数秒ほど思考をめぐらす。正直に自分のことを話すか?しかし正直に話せば荒唐無稽な作り話のようになってしまう。だが自分の存在についてある程度当りをつけ多少は合っている。ここはある程度正直に話したほうがいいのかもしれない。

 

「ファルは人では無いぽん。そっちの……まあAIみたいなもんだぽん。それで録音機能を起動していたらいつの間にかにこの空間に居て、七つの鳥居を潜ったらアンタが現れたぽん。次はそっちの番だぽん。ここは何だぽん」

 

 正確に言うならば違う世界の技術で作られたAI的なものだが、そんなことを言っても信じないのでそこは伏せる。バーバヤガは顎に手をやりじっと見つめ、ある程度納得した素振りを見せながら喋り始める。

 

「まあいいさね、信じるとしよう。ここはコトダマ空間と呼ばれているネットワーク空間さ、適性があるもンは只のデータを視覚イメージに置き換えることができるンだよ。今見ているのがまさにそれさ。イメージはそれぞれによって変わる。別の者には黒髪の美女に見えるらしいフェフェフェ」

「適性が無いものは入れないぽん?」

「適性が無いもンには只のデータの羅列にしか見えない。まあ、偶然入れたとしてもニューロンが耐え切れず死ぬだろうね」

 

 ファルは笑い話な口調で言う言葉を聞きながら考える。老婆に見えているのが自分の構築したイメージであり、別の者には違う姿で見えるという事か。元の世界でネットワークに入り調べる時は今のようにイメージ映像が描かれることはなかった。

 だがこの世界ではこのようにネットの世界をイメージ化して見え調べることができるらしい。何でそのようなことができるかは知らないが、異世界なのだからそういうものだろうと納得するしかなく、原理や理屈について左程興味はない。それより大切なことがあった。

 

「ここはネットワーク空間ということはファルはネットワークと繋がっているってことかぽん。ならファルはこれからネットワークに繋がれるのかぽん」

「おかしなことをいうンだね。繋がれるさ」

 

 ファルは思わず黄金の鱗粉がいつもより多く振りまく、これでローテクな探索ではなく、自分の本領を発揮してフォーリナーXを探すことができる。

 

「まあニュービーみたいだから、ほどほどにしときな。深入りしすぎるとアイツがくるよ」

「アイツ?誰だぽん」

「この世界の門番みたいなもン。今は大人しいみたいだから早く帰りな」

「よくわからないけど、そうさせてもらうぽん」

 

 ファルは言葉通りに帰ろうとすると背中に黒と白の羽のようなものが生えている。なるほど速くログアウトするための必要なコマンドが黒と白の羽のイメージになったのだろう。翼をはためかせ高速で地面すれすれを戦闘機のようなスピードで移動し鳥居を通過した。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「……ル……ァル……ファル、聞いてるファル」

 

 意識を取り戻すと目の前にはスノーホワイトの顔があった。どうやらコトダマ空間と呼ばれる場所から戻ってきたらしい。先ほど得た情報を整理しながらスノーホワイトの話を聞く。

 

「何だぽん?」

「ネオサイタマで治安が悪い場所分かる?」

「確かツチノコストリートって場所が治安悪いらしいぽん。それでスノーホワイトに報告しておくことがあるぽん」

 

 今起こった体験は奇妙なものだった。非日常に触れている魔法少女すら与太話として扱うかもしれない。それでポンコツになってしまったと憐みの目で見られてもかまわない。

 何か有れば主人に報告、連絡、相談をするのはマスコットキャラクターの務め、スノーホワイトのように怠るわけにはいかない。ファルはスノーホワイトに全てを報告した。

 

「という事が有ったぽん」

「そう、今はネットに繋がっているんだ」

「そうだぽん。これでスペックをフル活用できるぽん」

「そうなの?だったらあの電脳空間に引きずり込む機能は使える?」

 

 スノーホワイトは元の世界では魔法少女狩りとしての活動で恨みを買い、親しい人々が人質に取られ、危害が加えられることを危惧していた、その対策として其々の携帯端末に特殊なプログラムを仕込み、有事の際にはキークが使用していた電脳空間の空きスペースに引きずり込み、敵に手を出させないようにしていた。

 だがネオサイタマに来てからはその機能は使えない、しかしネットワークに繋がったことで電脳空間に干渉できると期待しているのだろう。

 

「使えると思うぽん、けど、止めておいた方がいいぽん」

「どうして?使えるんだよね」

「電脳空間に引きずり込んだ瞬間に死ぬ可能性が有るぽん」

 

 ファルは体を左右に振る。以前と同じように電脳空間に引きずり込む事は可能だという確信はあった。だがこの世界の電脳空間は恐らくコトダマ空間だろう。バーバヤガは適性の無い者はニューロンが焼き切れると言っていた。

 引きずり込む相手、恐らくドラゴンナイトだろう。そしてファルにはドラゴンナイトに適性が有るかは判断できない。適性があれば最高の避難シェルターだが、適性が無ければ電脳空間はニューロンを焼き切る断頭台となる。それはあまりにもリスクが高い。

 

「使うとしたら相手が何もしなければ死ぬという場面だぽん。これはあくまでもファルの仮説であって、案外何ともないかもしれないぽん」

「わかった。使えないと思っておく」

 

 スノーホワイトはファルの言葉を聞き、僅かに落胆の様子を見せる。方法を問わないのなら、誰かを電脳空間に引きずり込めば分かるのだが、その人物が死ぬ可能性が出てくる。そんな外道な方法は取らないだろうし、したとしても止める。

 

「それで、ちょっとコトダマ空間に入って何が出来るか試してくるぽん。もしかして応答できないかもしれないけどいいぽん?」

「いいよ」

「じゃあ、ちょっと行ってくるぽん」

 

ファルはスノーホワイトから許可を取るとコトダマ空間に意識を移動させた。

 

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