ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター 作:ヘッズ
「見えたぞ」カワタの視界に朱色の堀が飛び込んでくる。ここまで最低で3回は危険運転をしていた。それでも稼げた時間は1分程度だろう。たかが1分だがその時間が欲しい。今でもニンジャが後ろから追ってくる映像がニューロンに鮮明に浮かびあがる。カワタは後ろの振り向き誰かが来ていないかを確認する。
そこにはテレポートしながら追跡するニンジャがいた。「ニンジャだ!スピード上げろ!」ケイジはアクセルを踏み込む。「イヤーッ!」ニンジャはクナイを投擲した。パン!パン!空気の破裂音が聞こえると車は激しく蛇行する。KRASHH!車は電柱に激突!
「クソ!こんなところで…兄貴大丈夫か」カワタは額から出る血を拭いながらケイジの肩を叩く。「ああ何とかな……何が起こった?」「車を出るぞ!ニンジャが来る!」2人は覚束ない足取りで車から出る。後ろを振り向くとゆっくりと歩きながらニンジャが迫っていた。次の瞬間ニンジャは背後に立っていた。ニンジャ装束に「一」「瞬」と刻まれたメンポ。
「ドーモ、モーメントです」ケイジは幼少期の記憶が蘇りNRSに陥りかけるが懸命に抗う。しかし身動きが取れない。一方カワタの心は絶望に染まる。オウテツミだ、すまないスノーホワイト=サン、ドラゴンナイト=サン。全てが無駄になってしまった。ニンジャには勝てない。観念したように俯く。
そして顔を上げる。その目には光が灯っていた。まだだ!最後まで、死ぬまでは希望がある!俺の作品、セブンニンジャの登場人物ならこの場面でもあきらめない!「イヤーッ!」カワタはカラテパンチを放つ!ムボウ!モーメントはパンチを掴むと容赦なく握りつぶした。骨が折れる音が鳴り響く。
「グワーッ!」「殺しはしない。インタビューが終わるまでは……」BLAM!BLAM!BLAM!ケイジはケビーシから拝借した拳銃を発砲!弾丸は一切当たらず、ケイジの背後にモーメントが出現する。断頭チョップのモーションを取るが何かに気づき、断頭チョップからキドニーブローに変更する。
モーメントにとって小突く程度の打撃だがケイジは悶絶しのたうち回る。「そのバッジ、キョート大使館の人間か、キョート大使館関係者にはまだ手を出すなと言われている。運が良いな」モーメントは言い放つとカワタの元にツカツカと向かう。 痛みで薄れゆくのなかケイジは願った。ブッダよ!頼むから助けてくれ!
淀む視界に棒状の何かが映りこみ、その後カワタを守るように何かがモーメントの間に立ちふさがった。その映像を最後に意識が途絶えた。
◇スノーホワイト
間一髪だった。
スリートラストとフレイムタンと交戦した後、全速力でキョート大使館に向かった。魔法少女の身体能力なら建物の上を移動することで文字通り地図を直進して進める。それは時と場合によって電車で移動するより速い。
あと少しでキョート大使館に着くというところで、ファルからドラゴンナイトがキョート大使館から離れた場所に居るという報せを受ける。何かが起こったと判断し、現場に向かうとボロボロのドラゴンナイトが居た。カワタを逃すために交戦したことを聞くとドラゴンナイトを担ぎ大使館に向かった。
向かっている途中でカワタの困った声を聞こえ現場に向かうと、今にも連れ去られそうだった。ドラゴンナイトを壁にもたれかけさせた後、即座に手に持っていたルーラを投擲し避けている隙にカワタの間に割って入った。
モーメントはスノーホワイトの乱入に一瞬驚いた様子を見せると姿を消した。スノーホワイトはすぐさま右手でカワタの襟首を掴み後ろに引き、左手でカワタを捕獲しようとしたモーメントの伸ばした手を捕獲した。
「貴様」
モーメントは驚きと苛立ちの伴った目で睨む。あの瞬間移動は体の一部を掴まれると使えない。その弱点は心の困った声ですぐに分かった。
「カワタさんは大使館に行ってください」
スノーホワイトはカワタに指示を出す。最大の目標は目の前の相手を倒す事ではない、カワタが大使館に逃げ込むことだ。
モーメントは右太もものホルダーからクナイを取り出そうとする。カワタの足を止めるつもりだ。握っている手で相手の体勢を崩す。
これは監査部で覚えた技、本来なら耳を掴んで相手の動きを制する技だが、それは難易度が高くまだ習得できていない。しかし今はこれで充分だ。体勢を崩し、苦無を掴もうとする右手と苦無ホルダーを挟むようにローキックを打つ。苦悶の表情を浮かべる。こちらからは攻めない。相手がアクションをした瞬間態勢を崩し妨害する。
相手の右手の引っ張る力が強まる。パワーで拘束を解くつもりのようでスノーホワイトも広背筋に力を込めて抗う。2人の綱引きが続く中モーメントが力を緩める。拮抗状態で力を緩め態勢を崩し、引っ張られる勢いを利用して攻撃を加える。有効な手だがスノーホワイトには悪手だった。そのまま右手を引いて一本背負いを決める。
予想外の技にモーメントは最低限の受け身しか取れずコンクリートに背中を強かに打ち付ける。そのまま腕ひしぎ逆十字固めに移行し腕をへし折る。
悶絶するなかホルダーからクナイを取り出しスノーホワイトの太腿に突き立てるがすぐに技を解除し攻撃を回避する。
痛みと遠のいていくカワタの姿を見てモーメントの困った声は大きくなる。相手は平常心を保てていない。この状態をキープする。
モーメントは攻めあぐんでいるのか動きを止める。その間にもカワタは着実に正門に近づいていく。門の中には職員がいるが一向に手助けしようとしないことに怒りを覚えるが職員も手助けしたいが規則で手助けできないようで『手助けできなくて困る』という声が聞こえる。
するとモーメントが動き始めスノーホワイトの表情が険しくなる。掴んでいるスノーホワイトの手に向けてゆっくりと手を伸ばす。一瞬でマインドセットしたのか動きに焦りが無い。掴んでいる手で動きを制御しようとするが態勢が崩れない、この技は相手の動きが大きくなる分だけ効果がある。このようにゆっくりとした動きには効果が少ない。
狙いは握っている手の親指、掴みへし折るつもりだ。普通の戦闘なら手を離せばいいだけなのだが、その瞬間に瞬間移動でカワタの元に向かい捕獲するだろう。瞬間移動先に先回りして攻撃する方法も考えたが、恐らく相手のほうが速い。
スノーホワイトは右手で顔面に拳を打ち込み防御に回らせようとする。だが相手は顔を動かし急所への攻撃を最低限防ぎ、手を防御に回さない。パンチを打ち込む間に手は確実にスノーホワイトの左親指に向かう。左手で相手を掴んでいる状態ではノックアウトするような打撃は打てない。そして左親指が掴まれた。
バキバキと鈍い音が響きスノーホワイトの親指は歪な方向に曲がる。だがスノーホワイトは奥歯を噛みしめ手を離さない。その間にカワタはキョート大使館の敷地内に入っていた。
これでアマクダリは手出しできない。
目標を達成したことへの安堵、数々の戦闘にアクシズ2名を同時に相手したことでの精神的肉体的疲労。親指を折られた痛み。それらが重なりスノーホワイトの拘束は緩む。その隙をモーメントは見逃さなかった。
拘束を解きジツを使用して正門に移動する。予想以上に速くあっと言う間にスノーホワイトを引き離す。大使館に逃げ込んだら手を出さないという前提が間違っていたのか?
己の失態を悔やむ前にすぐに正門に向かってダッシュする。正門に辿り着くと警官のような服を着た人間たちが立ちふさがる。キョート大使館の警備員のようなものだろう。スノーホワイトは一足飛びで超えていく。
中は白砂が広がり、白い大理石の噴水に柳の木、それはスノーホワイトが考える京都のイメージと似ていた。そして倒れる職員と白砂の波紋模様を乱すようにモーメントが組み伏せられていた。組み伏せていたのは藍色のニンジャ装束のニンジャだった。そして隣には1:9分けの奇妙な髪型のスーツの男が冷徹に告げる。
「キョート大使館への不法侵入、キョート人民及び大使館職員への暴行及び誘拐未遂。ここはネオサイタマではなくキョートだ。キョートの法で裁かれる」
藍色のニンジャとスーツの男はこちらに視線を向ける。その視線は侵入者に対する警戒と敵対心が見られた。
「どーも、はじめまして、スノーホワイトです」
先に挨拶をして敵対していないことを示し、礼儀知らずではないことをアピールする。藍色のニンジャはスーツの男に視線を向け、アイコンタクトした後挨拶した。
「ドーモ、スノーホワイト=サン、ハーキュリーズです」
◆◆◆
「少々お待ちくださいドスエ」大使館メイドはスノーホワイトを応接室に案内すると奥ゆかしく退場する。中には水墨画、『和』『おもてなし』『これがキョートのスタンダード』と書かれたショドー、これを書いた者はショドー10段以上あるワザマエだと分かる。タタミもキョート産の高級オーガニック製だ。
左を向くと庭園が見える。先ほどモーメントによって乱された白砂の描かれた波紋は直されている。中央に白い大理石の噴水。周りにコケが生えた石、オーガニックシダレヤナギ、ストーン灯篭に置かれたホンボリライト。優しい光が庭園を照らす。計算された配置による調和された美しさ。スノーホワイトは暫くの間庭園を眺めていた。
「お気に召しましたか?」1:9分けの髪型のスーツの男と作業着の男が入室する。「はい、とても綺麗です」「我が大使館の自慢です」スーツの男と作業着の男はザブトンに正座する。「ドーモ、キョート大使レツマギ・シトシです」「ドーモ、ハーキュリーズです」「どーも、レツマギさん、ハーキュリーズさん。スノーホワイトです」3人は改めてアイサツする。
「この度は同胞を助けて下さりアリガトウゴザイマス。大使館を代表して礼を述べさせていただきます」「いえ、大したことはしていません。それよりソウスケ=サンの治療をしていただいてありごとうございます」「いえいえ、同胞を助けるために怪我を負った勇気ある若者に何もしなければキョートの恥です。セプクものですよ」
レツマギの軽口に笑顔を向ける。カワタとケイジとドラゴンナイトは大使館の医務室で治療を受けている。「それでいくつか質問する前に、スノーホワイト=サンは食事を摂られましたか?」「いえ、まだですが」
「よろしければスシを食べていかれませんか?ネオサイタマのスシとはまた違う味を楽しめます。それに怪我をされているようですし」ハーキュリーズと視線が合い奥ゆかしく会釈する。それを見てレツマギの提案の意図を悟る。ニンジャはスシを食べると怪我の回復が早くなるようで、怪我をしているのを見抜いて提案したのだろう。
ここは素直に提案を受けるほうが今後の展開がスムーズになる。だがひと工夫加える。「いえ、心遣いだけ頂戴いたします」「イタマエシェフが作りすぎてしまって、食べていただけると助かります」「いえ、そんな高級食品を頂戴するわけにはいきません」「ブッダも怒りますよ」「では、いただきます」
これはエド様式の作法が時を経て変化したものがキョートで伝わったプロトコル!断る回数が少なければヨクバリとしてムラハチ、多すぎても思いやりがないとムラハチされる。かつてドラゴンナイトとエーリアスのやり取りを思い出し実践したのだ。ワザマエ!レツマギは片眉を上げる。
女子高校生ながらキョートの作法を知っている。豊かな教養を持ったカチグミのようだ。スノーホワイトへの評価をあげた。「では皆で頂きましょう」レツマギが手を叩くとフスマから大使館メイドが入室し、3人の前にスシを置く。「「「いただきます」」」スノーホワイトはレツマギに倣って手を合わしスシを食べる。
スノーホワイトはシツレイの無いようにスシを食しレツマギは様子を横目で見る。スシを口に運ぶ時間が1秒遅い、湯呑に手を置く位置が5センチ低い。一般レベルではシツレイはない。だが外交官同士の会食の場であれば指を数本はケジメするレベルのシツレイがあった。何たる複雑で厳格な作法か!外交官はそこまで作法に厳しいのか!フクマデン!
先ほどの向け答えで期待したが流石に外交官レベルの作法は身につけていないか。レツマギは見るレベルを下げて食事を楽しんだ。「それで、カワタ=サンは何故追われていたのですか?」レツマギはスノーホワイトが最後のスシを食べて一息ついた瞬間に問いかける。
「大使館としてはキョート人を守ります。ですが犯罪者など明らかに非がある人間は庇えません」「アマクダリセクト」スノーホワイトはぽつりと呟く。反応が薄いのを見て言葉を続ける。「ネオサイタマの行政にも根付くニンジャ組織アマクダリセクト。理由は知りませんがカワタ=サンの存在が邪魔だったようで始末しに刺客を差し向けたようです」
「それでネオサイタマから離れたキョートに亡命すれば、そのアマクダリセクトも手が出せないと此方に駆け込んだ」「その通りです」スノーホワイトは茶を一口飲む。アマクダリの影響がキョート大使館まで及んでいたら終わりだったが、魔法でそれはないことは分かっている。ならば正直に話し庇護を求めるべきだと判断した。
レツマギは顎に手を置く。ニンジャに追われている時点で厄介事だと思っていが、予想以上に事は大きい。ニンジャ組織についてはハーキュリーズから話は聞いている。このままカワタを亡命させればアマクダリとことを構えることになるのでは?大使館職員としての職務、打算、パワーバランス。ニューロンでUNIXめいて計算を開始する。
「カワタ=サンは責任を持って亡命させます。アマクダリという胡乱な組織になんかに身柄を引き渡しません」レツマギはスノーホワイトの思考を先回りするように力強く言う。この一件が外交問題になるかもしれない。だが弱腰にはならない。非は不法侵入し職員に暴行を働いた相手側に有る。
「よろしくお願いします」相手は嘘をついていない。スノーホワイトは深々と頭を下げた。「一つよろしいでしょうか」「何ですか?」スノーホワイトは話を切り出す。これからが話すことが本題だ。息を深く吸い込む。「私達はカワタさんを守るために結果的にアマクダリセクトに対して敵対行動を取ってしまいました」レツマギに視線を送る。
「これから恐ろしい報復が待っているかもしれません。私は構いません。ですがソウスケさんは巻き込まれただけです。ソウスケさんだけではなく家族にも危険が及ぶかもしれません。もしソウスケさん達に何かあってネオサイタマに居られなくなる事態が起きてしまったら亡命の手助けをしてくれませんか?お願いします」
スノーホワイト相手の目を見据えて頼み込む。ファルに偽装工作を頼んだ。姿からバレないように顔を隠した。それでもアマクダリにバレて攻撃を受けるかも知れない。起こっては欲しくないが起きる可能性はある。最悪の事態を想定し対策を取っておく。カワタを助けた交換条件のようで魔法少女の主義に反するが割り切る。
「それはできません」レツマギは首を横に振った。「困っている人を助けないのは腰抜けという言葉があります」ミヤモト・マサシのコトワザ!インテリジェンス!「ミヤモト・マサシですか。確かにそうです。ですが情にサスマタを突き刺せば、メイルストロームに流される」レツマギもミヤモト・マサシのコトワザで返す。インテリジェンス!
「キョート大使館はキョート人の為にあります。ネオサイタマ人の為に動く規則はありません。ここで例外を作ってしまったら、噂を聞きネオサイタマ人が自分も助けろと押し寄せ、助けてしまったので断れず、助けるべき本来のキョート人を助けるという業務ができなくなります」
レツマギは理性的に言う。スノーホワイトの言葉はドラゴンナイトを慮るばかりに出てしまった嫌味である。外交の場ならその言葉を逆手にセップクさせるほどに恥をかかせられるが、それを抑えた。相手は少女だ、キョート人は懐が深い。「我儘を言って申し訳ありませんでした」スノーホワイトは俯いて謝る。
レツマギの言葉と視線で自分の発言の幼さと奥ゆかしさの無さを痛感させられた。「代わりと言っては何ですか今日は泊まっていってください」「はい、迷惑ではなければ医務室で泊まっていいですか」「何故です?」「ドラゴンナイトさんがアマクダリに襲われる可能性があるからです。ここの警備は万全と思っていますが、ニンジャ相手には…」
スノーホワイトは言葉を濁す。「ハーキュリーズ=サン、どう思いますか?」「俺でもその気になれば可能です」「分かりました。空いているベッドを使ってください。案内してください」「ありがとうございます」レツマギが声をかけると大使館メイドが現れスノーホワイトを案内する。
「ちょっとよろしいか?」ハーキュリーズがスノーホワイトに声をかける。「何ですか」「あのモーメントとかいうニンジャだが、腕が折られダメージもあった。そのお陰で楽に捕まえられた。あれはスノーホワイト=サンが?」「いえ、手負いだったようです」スノーホワイトは無表情で答え部屋から出て行く。
「あれは中々のニンジャだった。あれにダメージを与えるとは若いのに大したカラテだ」「何故嘘を」「キョートの空気を吸って奥ゆかしくなったんでしょう」ハーキュリーズは軽口で答える。「アマクダリというニンジャを知っていて、あのカラテ。何者なんでしょうかね」ハーキュリーズはスノーホワイトの背を見ながら呟いた。
キョート大使館医務室。数あるベッドの中でドラゴンナイトとカワタが寝そべっていた。適切な治療が施されており、麻酔の影響か2人は規則正しい寝息をたてていた。スノーホワイトはエントリーすると近くのイスを手に取り、ドラゴンナイトの近くに置いて寝顔を覗く。
穏やかな顔だが怪我は軽くない。ニンジャでも当分は全快しないだろう。ドラゴンナイトはカワタの漫画を読むために体を張ったのは知っている。本人は何一つ後悔していないだろう。だがそんな娯楽のためにここまで危険に身を晒して良かったのか?漫画なんて人によっては下らないものだ。だがドラゴンナイトにとっては大切なものだ。
スノーホワイトは理想の魔法少女であるために行動し身の危険を晒し時には命を懸ける。理想の魔法少女のために命を懸けるなんて人によっては下らないと思うだろう。だがスノーホワイトにとっては大切なものだ。ドラゴンナイトの心情を汲んでカワタを守れた。スノーホワイトは楽観思考で強引に納得させた。
「これからは2人とも当分活動は自粛ぽん」ファルが喋りかける。「2人で8、9人のニンジャを相手にして、最低でも4人は殺したぽん。アマクダリにマークされないわけないぽん」「そうだね」スノーホワイトは素っ気なく答える。自分はともかくドラゴンナイトには活動を控えてもらう。ここは大人しくしてアマクダリの動向を見る。
「証拠隠滅は?」「チノ駅周辺でドラゴンナイトが戦っている映像は何とか消したぽん。でもアマクダリが先に映像データを保存している可能性もあるぽん。それに口コミでバレる可能性もあるぽん。こればかりは祈るしかないぽん」
スノーホワイトは月を見上げる。髑髏模様に見える月はインガオホーと呟いた。
◆カラカミ・ノシト
「ふう、スッキリした」
これでイライラが治まった。辺りには女秘書の撲殺死体が散乱している。これはカラカミ・ノシトによって作られたものだった。
カラカミ・ノシトはアマクダリセクト最高幹部12人の1人でありマスコミ部門と金融部門を担当している。メディアを通してアマクダリ的価値観を植え付け受け入れられる土壌を作るのも仕事の一つだ。
メディアでモータル達を操作するのに一番有効なのはテレビだ。テレビ映像が最も目に触れる機会が多い。NSTV社の筆頭株主であるカラカミ・ノシトが番組に口を出してアマクダリにとって都合の良い番組に作り替えている。最初はジャーナリズム精神だとぬかしてノシトの指示を聞かない業界人がいた。それらはアマクダリの力で従わせた。
メディアはTVだけではないがほかのメディアは無視してきた。それらの影響力はTVの影響力で簡単に塗りつぶされる。
ある日部下の1人が懸念することがあるとコミックを持ってきた。コミックなどガキか現実逃避の負け犬が読む下らないメディアだ、読むだけ時間の無駄どころか損失だ。その部下を即殺したが気まぐれで読んでみた。
アマクダリを匂わすニンジャ組織、妙に詳しいニンジャ像、所詮コミックの話しであり信じるものはいないが、ここからアマクダリの支配が瓦解する可能性があるかもしれない。所詮杞憂だが念の為にアマクダリを知っていないかのインタビューと殺害、知り合いのニンジャのリクルートのミッションを申請し、下部衛星組織にミッションを与えた。
それがミッションに失敗し複数人のニンジャが死亡、さらにアクシスを出動させての失敗、勿論下部衛星組織とアクシスのせいである。だがアマクダリの実質のトップのアガムノメンに報告した際に取るに足らないと言っていたがその声には落胆の色が含まれていた。それはノシトには我慢ならなかった。
アクシスは途中で別件の為に撤退したという。あの時ニンジャスレイヤーと最近現れた敵対ニンジャが現れなければこうはならなかった。そしてこの怒りは秘書を撲殺することで解消していた。もう忘れよう。所詮は虫が騒いでいるだけだ。ノシトはこの1件を記憶から消去しプレゼンの準備を始めた。
◆スリートラスト
何だこのオバケは!?こんな理不尽が許されていいのか!?スリートラストは唾を飲み込む。
スノーホワイトの戦いの後、フォーリナーXXX討伐の為に現地に向かった。派遣ニンジャは8名、ニンジャスレイヤーに戦力を傾けており、アクシスは1人だけだが仮にあの女ニンジャ相手でも倒せる戦力だ。
それが数分でスリートラスト以外は殺された。この場に残っているのは3人だけである。スリートラストとフォーリナーXXXと謎の生物。
身長は140センチ程度、オレンジ色の瞳に黒一色の非人間的肌、頭にはヘルムを被っておりてっぺんから青い炎が吹き出ている。手は身長と比べ長く目玉が描かれた剣を握っている。
半数以上はこの生物に殺された。数回打ち合ったが恐ろしいカラテの持ち主だった。恐らくフォーリナーXXXのジツで生み出された生物だが、明らかにフォーリナーXXXより強く、マンキヘイと呼ばれていた。
フォーリナーXXXもマンキヘイより劣るものの少なくともアクシスレベルのカラテの持ち主だった。そしてドク系統のジツを使っていた。
「キヒヒヒ、お前で最後だ。色々と聞いたあとで殺してやる」
フォーリナーXXXは余裕を見せつけながら近づいてくる。完全に舐めている。その証拠にマンキヘイと同時に仕掛けてこない。
すぐに離脱してアマクダリにフォーリナーXXXの脅威を報告し、もう一度部隊を編成して挑むべきだ。だが逃げようにも結界のようなものが貼られており逃げられない。
マンキヘイにドクジツに結界、これで3つのジツを使っているのが確認できた。3つのジツを同時に使うニンジャなんて聞いたことがない。チートすぎる。だが今はチャンスだ。マンキヘイと同時に攻撃してこない。フォーリナーXXXを殺せば結界も解かれマンキヘイも消えるだろう。
「そうだ。お前アタシのスパイになれ、そうすれば生かしてやらないこともない」
欺瞞だ。顔はニヤつき声色は完全に小馬鹿にしている。こんなものキッズでも分かる。サンシタなら希望に縋り戦うことを放棄するが、スリートラストはアクシスだ。いかに相手を殺し状況を切り抜けるか考える。
「そんな警戒…」
相手が無造作に間合いに入ってきた。今こそヒサツワザで殺す。両足の裏に仕込んだ火薬を爆発させ一気に間合いを詰める。詰め寄りながらカタナを突きの動作をしながらサイバネアームの肩と肘に仕込んだサイバネ機構を作動させリーチを伸ばす。最後に手のひらとカタナの柄頭に仕込んだ火薬を爆発させる。これがスリートラストのヒサツワザ。サイバネとカラテを融合させた最強最速の一撃だ。
カタナは高速でフォーリナーXXXの喉に迫る。殺った!スリートラストは勝利を確信した。だがカタナが刺さる瞬間、フォーリナーXXXの姿が忽然と消えた。何が起こった!?超スピードで逃げた。だがそれなら残像が映るはず。それならばテレポート。確かアマクダリにも短距離テレポートを使うニンジャがいた。これで4つ目のジツだ。一旦何種類のジツを使える……
スリートラストの思考は途切れた。
◆◆◆
アンダーガイオン第9層。太陽の光が届かないこの地下にあるアパートメント『ブブヅケ』その一室、部屋には机とUNIX以外何もなかった。机の上にはペンに修正液に定規、そして原稿があった。原稿には躍動感あふれる絵が描かれていた。コミック作家カワタは原稿を取り満足気に見つめる。
アマクダリ襲撃の後カワタは無事にキョートに亡命した。ファントムサマー社との契約や負債や違約金、セブンニンジャの権利などは兄であるケイジの尽力もあり、負債は減り権利も獲得できた。状況は幾分かマシになったが厳しいことには変わらない。フジサン連載時で抱えた負債は返さなければ良くてシベリアでのカニ漁、悪ければ臓器を売るしかない。
1人で描いたせいで1ヶ月もかかってしまった。だがコミックのクオリティーは満足気に見つめながらカワタは原稿をスキャナーで取り込みデータを作る。このネオセブンニンジャは週刊フジサンではなくIRC上での連載。一話を掲載して読みたい人が金を払う。上手くいく自信はない。だがキョートでマンガを描くには現時点ではこれしかない。
売れなければ臓器売買だ。だが極端な商業主義には走らない。商品でありながらエゴと生き様をできるだけ込める。抱えた負債、バクチめいたIRC連載。アシスタントが居ないことによる描くページの減少と体への負担。正直言えば不安だらけだ。破滅してもおかしくない。だがこうしてコミックを描けている。2人の友人のおかげで
「頼む売れてくれ!」カワタは祈りながらIRC上原稿をアップロードする。キャバーン!キャバーン!アップロード数秒後にさっそく購入だ!事前に告知していたが素直に嬉しかった。早速入金者数をチェックする。そしてUNIXを見て思わず微笑む。購入者のなかにドラゴンナイトの名前を見つけた
下らなくて大切なもの 終り