ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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第十三話 ベースボール・フリークス・ブルース#5

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです」赤黒の殺戮者が決断的にエントリーだ!「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。ゲームメーカーです。何故お前がここに!?」「アマクダリの資金源の一部である薄汚い野球賭博を潰すことにした。まずはオヌシから殺す」ニンジャスレイヤーはジュージツを構える。

 

ニンジャスレイヤーは暗黒非合法探偵としての推理力とニンジャとの戦闘経験からドラゴンナイトと同じ結論に辿り着いていた。急ぎスタジアムに向かったところドラゴンナイトとのイクサを目撃しエントリーしたのだった。ニンジャスレイヤーはドラゴンナイトを一瞥する。

 

あれはスノーホワイトと一緒に行動していた若いニンジャだ、やはり復讐の為に来ていたか。サワムラの手紙を見てドラゴンナイトがゲームメーカーに戦いを挑む事を予期していた。ゲームメーカーはボールを旋回させる。アマクダリに応援要請を送ったが来るまで10分はかかる。指示は時間稼ぎ、援軍が来るまで持ちこたえなければならない。汗が頬を伝う。

 

「それがオヌシのジツか、モータルの球を微弱に動かし、試合を支配しているという矮小な優越感に浸り、日銭を稼ぐサンシタにふさわしいジツだ」「ホザケ!イヤーッ!」ボール5個がニンジャスレイヤーに向かって行く!ニンジャスレイヤーはスリケンで迎撃、ボールはジツによって硬度が増し超高性能モーターめいて回転しておりスリケンを弾く!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはブリッジ!ボールが3個頭上を通過!残りの2個は支えている手に向かう!すぐさまバックフリップで回避する!「どうだ!これがサンシタのジツだ!」ゲームメーカーは自慢げに叫びさらにボール2個を攻撃に回す。7個のボールが前後左右からニンジャスレイヤーに襲い掛かる!

 

ニンジャスレイヤーは回避しながらゲームメーカーから離れていく。その距離タタミ20枚分。ニンジャスレイヤーは回避しながら腰にぶら下げていたヌンチャクを手に取る。「イヤーッ!」後頭部を狙ったボールに向かってヌンチャクを振りぬく!ジツに操られたボールは飛ばされないように反発する。

 

ヌンチャクとの接触エネルギーが遥かに上回りボールは放物線を描き遥か彼方に飛んでいく!ホームラン!ニンジャスレイヤーのカラテがゲームメーカーのジツを上回った!射程距離から離れたボールはゲームメーカーの元に戻ってくることはない!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは左からきたボールをヌンチャクで迎撃、ボールは放物線を描き遥か彼方に飛んでいく!ホームラン!「イヤーッ!」右から来たボールをヌンチャクで迎撃、ボールは放物線を描き遥か彼方に飛んでいく!ホームラン!ニンジャスレイヤーはボールを次々に飛ばしていく!

 

7個目のボールが股間に向かって行く!ニンジャスレイヤーはヌンチャクを振りぬく!だがボールに当たる数インチ前で急激にホップし顔面に向かって行く。ワザマエ!単純なボールの軌道で眼を慣らしてからの急激な軌道の変化!なんたる一流のピッチャーめいた戦略!この変化に対応するのは困難だ!

 

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは腕と手首にカラテを込めてスイングの軌道を強引に変える!タツジン!ボールはロケットめいて打ち上げられる!ホームラン!「どうした?球遊びはもう終わりか?」ニンジャスレイヤーは挑発的に手招きをする。ゲームメーカーは怒りを抑え込むように噛みしめる。

 

ボールを小出しして攻撃するのは悪手だった。ボールを操る数が増えれば増えるほど威力と精密さが落ちていく。ドラゴンナイトには数で押し切れたが、ニンジャスレイヤーには弱点を突かれてボールを弾き飛ばされた。残りは4個。ゲームメーカーは2個のみにジツを使い、残りの2つはポトリと地面に落ちた。

 

ニンジャスレイヤーとの実力差を考えれば、防御に徹しても援軍が来るまでに爆発四散させられるのは明白、逃走して万が一生き残っても軍法会議にかけられ冷凍禁固刑、どちらにしてもノーフューチャーだ。ならば攻撃に全てを掛けニンジャスレイヤーを殺す。殺して生き残る。生き残って八百長試合を作る。

 

ジツでボールを大きく動かさず、奥ゆかしく僅かに動かし、真剣勝負のように見せかけ試合を指示された筋書き通り進行させる。それ故に誰もゲームメーカーの存在に気づかない。それが誇りだった。だがモータル如きが介入に気づいた。それはゲームメーカーのプライドを傷つけた。

 

それを癒すにはもっと完璧な八百長試合を作るしかない。ゲームメーカーは決断的にスプリントしてニンジャスレイヤーに近づく。「イヤーッ!」ゲームメーカーは渾身のポン・パンチを放つ!さらに同じタイミング左右からボールが悪夢めいた複雑な軌道で襲い掛かる!速度は通常の倍だ!同時三点攻撃!これが奥の手!

 

ニンジャスレイヤーのニンジャアドレナリンの分泌によって体感時間が鈍化する。「イヤーッ!」右手でヌンチャクを振りぬきボールを叩き落とす!ボールはコンクリートにめり込んだ!左手でボールをキャッチ!ポン・パンチが到達する前にケリキックを叩き込む!タツジン!同時三点攻撃破れたり!

 

「グワーッ!」ゲームメーカーはワイヤーアクションめいて後方に飛んでいく。ニンジャスレイヤーはツカツカと近寄っていく。「俺のヒサツワザが破れただと……」「ヒサツワザ?キッズでも捕れるボールと欠伸が出るほど遅いパンチが?」ニンジャスレイヤーは血反吐を吐くゲームメーカーを見下ろしながら吐き捨てる。ゲームメーカーの目が絶望に染まる。

 

「インタビューだゲームメーカー=サン。答えれば苦しめずに殺す。答えなければ援軍が来るギリギリまで痛めつけて殺す。オヌシに指示を出しているのはアマクダリの誰だ?」「知らない。俺は指示を受けただけだ」「他のアマクダリのニンジャの情報を洗いざらい吐け」「それなら赤い車の中に携帯端末がある。そこに連絡先があるから勝手にやれ」

 

ゲームメーカーは素直に話す。体は動かずジツも使えない。たった一撃で勝敗が決した。これがアマクダリに挑む狂人のカラテか、もうどうやっても勝てない。ここで粘ってもどうせ苦しんで殺される。ならば楽に死ぬ。ゲームメーカーの八百長野球への欲求もニンジャスレイヤーのカラテによってへし折られていた。

 

ニンジャスレイヤーは足を上げ頭部を踏み抜いた。「サヨナラ!」ゲームメーカーは爆発四散した。ニンジャスレイヤーは赤い車に近づきドアをこじ開けて携帯端末を回収する。そして倒れこんでいるドラゴンナイトを一瞥すると抱え上げこの場から離れていった。

 

 

◆ドラゴンナイト

 

 ネオサイタマの夜を彩るネオン光源が高速で流れていく。突如現れた赤黒のニンジャの肩に担がれていた。体はダメージで動かせないが意識はニンジャ回復力のおかげかはっきりしてきた。体が動かない分頭を動かし赤黒のニンジャのカラテについて思い出していた。

 あのゲームメーカーを一方的に打ちのめした。回避するのに精いっぱいだったボール攻撃をヌンチャクで弾き飛ばし無力化した。あの発想と実行するカラテは賞賛に値する。スノーホワイトでもできないかもしれない。

 暫くすると赤黒のニンジャは停止する。ここはどこかの雑居ビルの入り口前か、すると入り口の壁際にドラゴンナイトを置いた。とりあえず重金属酸性雨をしのげるのはありがたい。だが浮浪者に追剥されたら抵抗できないな。

 赤黒のニンジャは周りを見渡した後この場から離れようとする。

 

「ドーモ、ドラゴンナイトです」

 

 その前にアイサツする。このニンジャには色々と伝えたいこと聞きたいことがある。

 

「ドーモ、ドラゴンナイト=サン。ニンジャスレイヤーです」

 

 赤黒のニンジャはアイサツしニンジャスレイヤーと名乗った。思い出した。マタタビと一緒にいたニンジャだ。ニンジャネームと恐ろしいまでの殺気は強く印象付けられていた。

 

「スノーホワイト=サンはどうした?」

「いないです。最近は音信不通で連絡が取れていないから、ずっと1人です」

 

 思わぬところでスノーホワイトの名前が出た。顔を合わせた程度だが覚えているものなのか、余程記憶力が良いのか、少女のニンジャという部分で印象に残っているのか、ドラゴンナイトにはニンジャスレイヤーの心中を察することができない。

 

「ニンジャスレイヤー=サンが倒したニンジャ、あれはボクのセンパイの仇だった。殺してくれて、アリガトウゴザイマス」

 

 ダメージで体が動かないので頭を下げず言葉だけで礼を言う。仇を取ろうとして返り討ちにあい無念の失意のまま死亡、そうなったらネガティブマインドでオバケになっていただろう。そんな憎き仇を殺してくれた。感謝してもしきれない。ニンジャスレイヤーは言葉を発さず黙って見つめた。

 

「アマクダリって何ですか?」

 

 殺したことに礼を言うのが言いたかった事、そしてこの質問が聞きたかったことだ。唐突の質問にニンジャスレイヤーの表情が変わる。混濁する意識の中で確かに聞こえた。

 

―――指示を出しているのはアマクダリの誰だ?

 

 言葉から察するにゲームメーカーは実行犯に過ぎない。賭博野球を開催し多くのハイスクールベースボールプレイヤーの努力や尊厳や将来を踏みにじった者がいる。これでは復讐は半分達成したにすぎない。それがアマクダリにいる。

 

「そのアマクダリという組織が賭博野球のためにセンパイを負けさせた。これじゃ復讐は終わっていません。教えてください。オネガイシマス」

 

 動かない体に喝を入れて頭を下げる。だがニンジャスレイヤーはじっと見つめ見下ろす。

 

「オヌシの復讐は終わりだ」

「終わってない。アマクダリを潰さないと復讐はセンパイの魂はうかばれない。オネガイシマス。オネガイシマス」

 

 体を這わせニンジャスレイヤーの足元に縋りつき懇願する。ブザマといわれようが構わない。アマクダリにいる野球賭博関係者を殺す!殺しつくす!

 

「これ以上踏み込めば死ぬ。サワムラ=サンの無実は数日後に証明されオナーは回復する。オヌシはサワムラ=サンの記憶を語り継ぐのだ。それが弔いになる。そして忘れろ」

 

 ニンジャスレイヤーは一方的に告げるとその場から立ち去った。

 

 

◆◆◆

 

『先日セプクしたサワムラ・イチジュン=サンですが、エメリボール使用などの数々の悪行は虚偽であることが分かりました。全てはコーチのアメガクレ=サンによる行為でした』テレビにはマスコミから熾烈なインタビューを受け青い顔をしているアメガクレが映っている。

 

ゲームメーカーが爆発四散してから数日後、ワイドショーでサワムラを一斉に擁護し始めた。IRCネット上でサワムラを貶めようとしていたアメガクレの数々の工作行為が白日の元に晒された。数々の確固たる証拠はIRC上のデマと見過ごせるものではなく、最初に取り上げたTV局を失墜させるチャンスと他のTV局はこぞって取り上げた。

 

無実の人を貶めたとしてハナサキ・ハイスクール、ベースボールクラブは活動を自粛、在籍しているメンバーのナイシンポイントは大きく下がった。コーチのアメガクレは名誉失墜の責任を取り多額の負債を抱えた。インタビューに答えたアカツキ・ジュニアハイスクールの生徒もナイシンポイントを大きく下げ、ムラハチされている。

 

ドラゴンナイトはテレビを消すと重い体を動かしながら玄関を出て、自転車に乗り込む。目的地はサワムラの墓だ。ニンジャ回復力で傷が多少癒えたといえどダメージは有る。ペダルを漕ぐたびに体が軋む。暑さと痛みで額から汗が噴き出す。1時間程自転車を漕ぎ墓地に辿り着く。

 

「先祖が見ている」「奥ゆかしさ」「呪われてしまう」正門付近には利用者のマナーを促すショドー看板が設置されている。奥に入るとヤンク達が用も無く敷地に入り野球をしていた。ドラゴンナイトは顔を顰める。死者が眠る場所で野球をするな、ヤンク達を止めようとするが、その前にスタッフが駆け寄り棒で叩き止めさせた。

 

ドラゴンナイトは地図を見ながら自転車を漕ぐ、墓地のスペースは広大で移動するにも車が必要であり、徒歩で移動しようとすれば墓参りだけで一日は費やしてしまう。規則正しく墓石が並んでいる。それを見ると厳かな気分になる。噂では墓がスペースの無駄であり、電子ネットワーク上に墓地を作ろうという提案があるらしい。

 

確かに広大なスペースを狙ってか浮浪者が住み始め、犯罪行為に利用されているという話もある。だがそれには反対だ、遺骨がある墓石にこそ死者の魂はある。電子ネットワーク上には魂は宿らない。ソウスケはメモを見ながらサワムラの墓石を目指す。

 

墓石に着くと周りにはサワムラの母親がいた。周りはキレイに清掃されていた。「ドーモ」「ドーモ」2人はアイサツを交わす。「あのこれを」ソウスケはリュックから花を取り出す。バイオヒマワリだ。「ありがとう。イチジュンもヒマワリが見られて喜んでいるわ」母親は優しく微笑む。

 

ニカワ・ベースボールパークにはバイオヒマワリが植えられており、大会開催ごろには一面に咲き乱れる。野球賭博が無ければ今頃自身の目で見られた花だ。「イチジュンの正しさが証明されたよ。皆がイチジュンを讃えてくれている」母親は墓前に語り掛ける。ニンジャスレイヤーが言った通り、サワムラのオナーは回復した。これも彼の仕業だろうか。

 

「もう少し早かったら…セプクすることも無かったのにね」母親の目から涙が伝う。これは回避できた死だ。野球賭博が無ければ、アマクダリという組織が実施しなければ。ニンジャスレイヤーは手を引けと言った。だが知ってしまったからには止まれない。必ずアマクダリを見つけ、野球賭博を撲滅する。サワムラのような悲劇を起こさせない。

 

 ドラゴンナイトはもう一度手を合わせサワムラにアマクダリ打倒を誓った。

 

ベースボール・フリークス・ブルース 終

 

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