ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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これまでのあらすじ

落雷によりコールドスカルを撃退したスノーホワイト。
だが落雷によりコバヤシの心肺は停止してしまった





第二話 ニンポショウジョ・パワー♯6

 部屋の内装は剥がれ鉄骨とコンクリートとむき出しになっていた。窓もなく張られていたであろうガラスはそこらに散らばっている。窓が機能をなしていないことで重金属酸性雨が入り、それによって床は劣化しボロボロになっている。

 ここはネオサイタマにある廃ビルの一つ。スノーホワイトは雨宿りがてら廃ビルの一室を利用し壁に寄りかかり休息を取っていた。

 

「なかなか見つからないぽん」

 

 携帯端末から電子妖精のファルの姿が浮かび上がりスノーホワイトに声をかける。

 スノーホワイトはファルの声に反応すること無く、豪雨によって極彩色の色が滲むネオサイタマの街並みと、その街を遊泳するかのように飛行するマグロツェッペリンを眺めている。 

 するとゴロゴロと低く鈍い音が鳴り響くとともに高層ビルに雷が一つ落ちた。それを見て何かを思い出したかのように心配そうに呟いた。

 

「コバヤシさんはどうしているだろう」

 

◆◆◆

 

 時間は過去にさかのぼる。

 

 ニンジャであるコールドスカルを無力化し、コバヤシの元へ駆け寄るスノーホワイトの表情は険しくなった。呼吸音がなく心臓の鼓動の音も聞こえない。スノーホワイトはすぐさま心肺蘇生活動を開始した。

 コバヤシの心臓に右手を乗せ左手は右手の上に重ね心臓を押す。 

 魔法少女の力で心臓マッサージをすれば肋骨はクッキーのように簡単にヒビが入る。だが弱過ぎても意味がない、強すぎず弱すぎず丁度よい塩梅でおこなわなければならない。

 スノーホワイトは全神経を集中させる。雷によって心肺停止したのならばそう時間は経っていない、息を吹き返すはずだ。ただ祈るように心臓マッサージをした。

 

「カハッ」

 

 コバヤシの口から呼吸音が漏れる。スノーホワイトは心臓マッサージの手を止め安堵の表情を浮かべた。息は吹き返した。あとは救急車を呼ぶだけだ。

 詳しいことは分からないがネオサイタマと自分のいた世界の文明発達具合は近い。ならば自分の世界のように119のような救急システムがあるはずだ。あとはそこらにいる人を捕まえて救急車を呼んでもらう。

 スノーホワイトはコバヤシから背を向け人を探そうとした瞬間、顔は驚愕の色で染まる。

 そこにいたはずのコールドスカルの姿が忽然と消えていた。自力で逃げたのか?しかしあの状態で拘束を解くのは不可能である。

 仲間が居て回収したのか?心臓マッサージに集中していたので周りを警戒していなかったが数十秒から一分程度の間でそれをおこなったのか?様々な想定が思い浮かぶが強制的に打ち消す。 

 今考えることはコバヤシを助けることだ。スノーホワイトはよろめく体に喝を入れてアパートの屋根の上に昇り目を凝らしながら辺りを見渡す。そして偶然人を発見し、その人に救急車を呼ばせその場を逃げる様に後にしたのだった。

 

「スノーホワイトはやるべきことはやったぽん。きっと大丈夫だぽん」

「そうだといいけど」

 

 スノーホワイトはファルの言葉に生返事を返す。コバヤシの安否は気になるところでもある。

 だがあの日の晩コバヤシがどこに搬送されたかも知らない。家の近くまで行き様子を見ようにも、家がどこにあるかまるで覚えていなかった。元気でいればいいのだが。

 

 突如スノーホワイトは立ち上がる。外から困っている人の声が聞こえてきた。どうやら命に関わることのようだ、早く助けなければ。窓から隣のビルの屋上に飛び移り、また隣のビルの屋上にと移動を始めた。

 

 

◆◆◆

 

「9時ドスエ!キョウモイチニチガンバロ!」電子マイコの非人間的な声が部屋に響き渡る。それを切っ掛けにコバヤシは気怠そうにフートンから起き上がり目覚まし時計の時刻を見て目を見開いた。「ヤバイヤバイ遅刻する!」コバヤシはチャブ台にあった昨日の食事の残りのバイオシャケを手で掴み口に入れ家を出た。バイオシャケは焼きすぎており身が固く不味かった。

 

あの夜の後コバヤシは目覚めた時は病院のベッドの上だった。医者から雷に打たれたことによる外傷と急性バリキ中毒で病院に運ばれたことを聞かされる。見舞いに来ていた両親からは雷に当たったことについては労われたが、バリキ中毒になるまでバリキを飲んだことをひどく怒られた。

 

幸いにもバリキ中毒はすぐに治り雷による外傷も軽い火傷程度で済んでいた。検査のために一日だけ入院し退院した。それから数日が過ぎたが普段と変わらない生活が続きコバヤシの元にニンジャも魔法少女も現れない。コバヤシのニューロンにふとある考えが日に日に大きくなっていた。

 

あの日の出来事はバリキの飲み過ぎで見た幻覚だったのでは?退院した当初コバヤシはそんな考えはなかった。ニンジャもいるしニンポ少女も現実に居る。誰かに話せば自我科に連れ込まれ矯正カリキュラムを受けさせられるのは目に見えているので口には出さないが、そう信じていた。

 

だがIRCネットでいくら調べてもニンジャやニンポ少女に関する情報は何一つ手に入れることはできなかった。人は映像なり音声なり形が残るものを持っていないと確信が持てなくなる。次第にコバヤシの確信は次第に揺らぎ始めていく。あれはバリキの飲み過ぎによる幻覚だった、ニンポ少女もニンジャも居ないのだ。

 

そう考え始めるとコールドスカルのこともスノーホワイトのこともニューロンから消え始め、代わり映えのない日常の中で今ではあの日のことを思い出すことは無くなっていく。これはコバヤシのニューロンがニンジャのことを思い出さないように防衛本能を働かせた結果でもあった。

 

 

「インプラント無料」「ネオサイタマカットチャンピオン」「マイニチやっている」ネオン看板に書かれているミンチョ体の文字は目から高速に流れながれる。コバヤシはザマ・ステーションを目指していた。カレッジの講義に間に合う為には9時20分の電車に乗らなければならない。家を出たのは9時5分で駅からは徒歩で30分はかかる。歩いては間に合わないと判断し家から全力疾走をおこなう。

 

「ゼェーゼェー」コバヤシは乱れた呼吸を整えながら時計の時刻を確認する。9時15分、ギリギリ間に合った。息を乱しながら改札を目指すとあるニュービーサラリマンの姿が目に入った。駅前の広場を視線を落としながら見ながらズンビーめいて歩き回っていた。コバヤシには何をしているかすぐに理解した。

 

あれは何か重要なものを落として懸命に探しているのだろう。ニンポ少女シノビに憧れ人助けを日課にしているコバヤシはこういった落し物探しを手伝ったことが何回かある。その姿を一瞥して改札に向かう。今日の講義は休めるのはあと1回、遅刻は2回まで。これでサラリマンを手伝ったら遅刻は確定、下手したら授業を休むことになる。

 

そうなったら後はもうない。サラリマンに心の中で謝罪し数歩ほど改札に向かう。だがその足取りは数歩で止まる。「あー、もう!」数秒間停止したのち、頭をガシガシと掻き毟りサラリマンに向って歩きはじめた。本来ならそのままカレッジに行くつもりだった。だがもしかすると探している物は人生を左右するほどの重要な物かもしれない。

 

それならば自分の講義の出席より優先すべきだ。何よりシノビだったら見て見ぬふりはしない。そしてあのニンポ少女の……コバヤシのニューロンに磁気嵐めいたノイズが発生し思い出すことができない。「ドーモ、どうかしましたか?よろしければ探すのを手伝いましょうか」「ありがとうございます!これを会社に届けないとケジメなんです!」

 

コバヤシが声をかけるとニュービーサラリマンは頭を90度に下げて礼を述べた。「それで何を無くしたのですか?」「重要な書類が入った封筒です」「どこで落としたか分かりますか?」「いや、気がついたら無くなっていて……」コバヤシは顎に手を当てて考え込む。これは探すのには相当苦労しそうだ、むしろ見つかる可能性はかなり低いだろう。

 

「あの、これを落としましたか」すると少女に背後から声をかけられ二人は同じように振り向き同じように目を見開いた。ニュービーサラリマンは無くしたはずの書類を手に取り振り涙を流しながら相手に感謝の言葉を述べ一秒でも早く書類を届けようと駅に向かって走るサラリマン、そしてその様子を見送る少女をコバヤシはコケシめいて固まって見ていた。

 

ニューロンで大量の情報が洪水のように押し寄せる。豪雨、雷、ニンジャ、コールドスカル。ニンポ少女、シノビ、ユキコ=サン。コバヤシはあの日起こった出来事を完全に思い出していた。ニンジャは実在し、そしてニンポ少女も実在した!コバヤシは堰を切ったように大声で問いかけた「ユキコ=サン。ユキコ=サンですよね!ドーモ、コバヤシ・チャコです!覚えていますか」

 

 

♢♢♢スノーホワイト

 

 スノーホワイトは文字通り体が固まった。

 その要因としてはまずコバヤシと出会ったこと。封筒を無くして困ったという声を聞き、それらしきものを見つけた。声の主に届けようとしたところにコバヤシも一緒にいた。

 このような場所でコバヤシと会ったのには驚いたがそれは些細な事だった。そして何より驚いたのがスノーホワイトである自分をユキコと呼んだことだった。

 

 この世界でユキコと名乗ったのはコバヤシにだけである。そしてコバヤシの目の前でスノーホワイトに変身したことはない。

 だが今はスノーホワイトの姿をしているのにユキコと呼んだ。つまりユキコ=スノーホワイトであるとコバヤシは認知しているのである。

 魔法少女は正体を知られてはならない。知られた瞬間に魔法少女としての資格がはく奪される。スノーホワイトの脳内に魔法少女としての記憶と思い出が走馬灯ように駆け巡る。

 コバヤシがコールドスカルに襲われている時、あのまま魔法少女に変身せずに誰かに助けを求めるべきだったのかもしれない。 

 しかし放置していればコバヤシは殺されていた。魔法少女でいたいからと他人を見殺しにすることは正しい魔法少女のすることではない。

 これは必然、これはなるべくしてなる運命だったのかもしれない。

 スノーホワイトは目を瞑り魔法少女資格をはく奪される覚悟を決める。だがスノーホワイトから姫川小雪に戻る気配は一向にない。

 

「ファル、何で変身が解除されないの?」

 

 スノーホワイトはコバヤシに聞こえない様な小声でファルに問いかける。するとファルも困惑しながら答えた。

 

「わからないぽん。変身の瞬間が見られていないからOKなのかもしれないぽん」

 

 魔法の国のルールは相当緩いのかもしれない。スノーホワイトはそう結論付け、今起こっていることを強引に納得する。

 

 スノーホワイトの魔法少女としての資格がはく奪されない理由、それは場所によるものだった。

 資格のはく奪は魔法少女を統括している魔法の国が正体の発覚を知ることで初めておこなわれる。

 だが今いるこのネオサイタマ、正確に言えばネオサイタマがあるこの世界は魔法の国の管轄外の世界である。管理が届いていないこの場所で正体がバレても魔法の国に知られることは一切ない。

 

「はい…久しぶりです。コバヤシさん」

 

 普段の隙の無い対応をするスノーホワイトとはかけ離れたぎこちない表情を浮かべながらコバヤシの方へ振り向く。

 魔法少女の資格がはく奪されるのを待つ瞬間、それは絞首刑の実行を待つ死刑囚のような心境だった。

 歯を食いしばり体を強張らせるがはく奪されることなかった。それを知った瞬間緊張した心は安堵し、体は一気に弛緩する。

 そんな状態で話しかけられキチンとした対応するのは難しい。

 

「あの……怪我は大丈夫ですか?……」

 

 コバヤシは弱弱しい声で心配そうに尋ねる。その際に『傷が残っていたら困る』『荒事に巻き込んだことを怒っていたら困る』など大量の声が聞こえてきたので笑顔で大丈夫と答えておく。するとあからさまにほっとしたような顔をうかべていた。

 

「コバヤシさんこそ怪我は大丈夫ですか?」

「いやいや!アタシの方こそ問題ないです。検査も問題なかったし健康そのものですよ」

「よかったです」

 

 コバヤシもスノーホワイトが見せたように笑顔を向けて健康さをアピールし、その様子と『不安がらせたら困るな』という心の声を聞き胸をなでおろす。

 短時間とはいえ心肺停止したので後遺症が残らないか、心臓マッサージで肋骨を折っていないかなど気がかりではあった。

 それに雷に打たれ皮膚に酷い火傷を出来て、精神に変調をきたすことがあると聞いていたのだがそれもなさそうである。

 

「ところでコバヤシに聞きたい事があるのですが?」

「何ですか」

「あの時何であの男性のところに向かったのですか?」

 

 スノーホワイトはあることが気になっていた。 コバヤシはコールドスカルを明らかに恐れていた。それならば逃げればよかったのにあえて相手になってやると叫んで対峙した。

 そして目には強固な意志が宿っているふうに見えた。あの虚ろな目をしていたコバヤシに短時間で何が起こったのか?

 

 スノーホワイトの問いにコバヤシはすぐには答えられなかった。目線は右上に向け話す内容を整理している仕草を見せ、スノーホワイトはその仕草を見ながら待ち続ける。

 しばらくして内容が整理できたのか一呼吸ついたのち話し始めた。

 

「……直感であのニンジャと戦っているのはユキコ=サンでアタシを守るために戦ってくれていると。そしてこのままではやられてしまうと分かりました。ユキコ=サンが傷つくのも嫌だし助けたかった……何より理不尽に暴力を振るうあの悪いニンジャが許せませんでした……それが理由です」

 

 コバヤシの声は何か後ろめたいことを抱えているような陰気で小さな声だった。そして喋り終るとスノーホワイトから視線を逸らすように俯く。

 

「スノーホワイトそろそろ切り上げるぽん。魔法少女が一般人と関わるのはあまりよくないぽん」

 ファルが魔法少女の聴覚なら聞き取れる声でしゃべりかける。スノーホワイトは内心で頷いた。

 

「すみません……ニンポ少女見習いはあまり現地の人と関わるなと言われていまして。そろそろ失礼させてもらいます」

「そうですか……残念です」

 

 スノーホワイトは申し訳なさそうにコバヤシに告げる。コバヤシも言葉では名残惜しそうだが、態度は嫌なことが終わりそうだと安堵しているようだった。

 

「ユキコ=サン……あの時は見ず知らずのアタシをボロボロになるまで戦って助けてくれてありがとうございます……ユキコ=サンならきっと清く正しいニンポ少女になれます……」

 

 コバヤシは居た堪れないというように目線を伏せながら告げ、逃げ去るようにスノーホワイトの元から離れていった。

 

◆◆◆

 

コバヤシはスノーホワイトと別れた後カレッジには行かず家に引き返し、そのままフートンの中に飛び込んだ。スノーホワイトの問いに答えるためにあの時の状況を思い出し理解してしまった。あの時はバリキの過剰摂取でラリッていた。だから状況判断もできずニンジャに挑みに行った。

 

あれはただのジャンキーの狂った行動にすぎない。それなのにスノーホワイトに嫌われたくないと、あのニンジャが許せない。スノーホワイトを助けたいと、さもニンポ少女のような心境で動きましたと嘘をついたのだ。何て卑しい人間なのだろう、今すぐにでもセプクしたい気分だ。

 

それにあの雷もそうだ。意識を失う直前にはシノビから授かったニンポ力で発生させてスノーホワイトを助けたと思っていた。しかしあれは只の偶然にすぎない。それにバリキでラリった奴にニンポ少女が力を授けるはずがない。「私は卑怯者だ……」コバヤシは自己嫌悪に陥っていた。

 

コンコン、コバヤシの耳に窓を叩く音が届く。その音に警戒したのかコバヤシはフートンから飛び出し辺りを確認する。するとチャブ台の上に鶴の折り紙が置かれていた。これはオリガミメールだ。誰が置いたという不安より何が書いてあるかという興味が勝ったのか鶴の折り紙を正方形の形に戻す。

 

 

拝啓

 ユキコです。コバヤシさんのおかげで私は何回も救われました。ありがとうございます。コバヤシさんが立ち向かったのは正常な判断力を失っていたからではありません。心にある芯の部分の正義感が私を助けてくれたのだと思います。

 自分を卑下しないでください。コバヤシさんの精神は私が知る誰よりも清く正しいニンポ少女です。

 私もコバヤシさんのように他人を守るためにどんな強大な敵にも立ち向かえる心が強いニンポ少女になってみせます。

 

コバヤシは書かれている文章を見た瞬間に涙を流した。私はセプクしたいと思うほど否定した。でもスノーホワイトは肯定してくれた。ならばあの時にとった行動はラリッタのではない。自分の中にあったものが突き動かした故の行動だ。自分を卑下するのはやめよう。

 

「カレッジに行くか!」コバヤシは声を張り上げると荷物を持ち家を出る。その表情は晴れやかだった。

 

♢♢♢

 

「魔法少女が不法侵入だなんて、どこかの魔法少女狩りに聞かれたら捕まっちゃいそうだぽん」

 

 もしファルに表情が備わっていたら厭味ったらしい顔をしているだろうな。スノーホワイトはファルの言葉を無視しながらストリートを歩いていた。

 

 コバヤシが逃げ去るように走り去った直後、スノーホワイトは後をつけていた。

 そして家に着くと窓の鍵が開いていないことを確認し中に侵入。そしてチャブ台の上にオリガミメールを置き出て行った。魔法少女の身体能力であれば気づかずに侵入して物を置くことなど容易いことである。

 本当なら置手紙でも良かったのだがネオサイタマの文化であるオリガミメールを使うことにした。

 

「しかし、あのコバヤシという人間はいったい何だったぽん、魔法少女並みの戦闘力を持つ人間に立ち向かうなんて正気じゃないぽん。それに意味不明な呪文を唱えたらピンポイントに雷が落ちてくるなんて、まるで魔法だぽん」

「念のために聞くけど、コバヤシさんが魔法少女だったということはないよね」

「それは無いと言いきれるぽん。でもあの男みたいに魔法少女とは別種の超人という可能性は否定できないぽん」

「それはないと思う」

 

 スノーホワイトはコバヤシがコールドスカルに立ち向かえた本当の理由を知っていた。

 それは薬物摂取に錯乱し正常な判断を失っていたからだ。

 コバヤシはスノーホワイトと話している最中無意識にあの日の心境を分析し、ただハイになってシノビの幻覚に後押しされ破れかぶれで立ち向かったことを理解し、心の声で『真相を知ったら困る』と聞こえていた。

 

 ファルに話せばただの狂人の行動と悪態をつくだろう。だがスノーホワイトはそうは思わなかった。

 確かに薬物が引き出した行動かも知れない、だが根底に助けたいという気持ちがあったからこそシノビの幻覚が後押ししたのだ。でなければ幻覚が見捨ててさっさと逃げろと言うだろう。

 そしてコバヤシの行動の結果がスノーホワイトの命を救った。本来なら賞賛されるべきであり誇るべきことなのだが、薬物によって生み出された偽りの精神と思い込み自己嫌悪に陥っている。

 スノーホワイトはそれを否定したかったが咄嗟のことで上手く言葉にできずにいた。だから気持ちを整理し文字にしてコバヤシに伝えようと思った。そして面と向かって言葉で伝えるのは少しだけ恥ずかしかった。

 最初は余計なお世話かもしれないと考えた。だが落し物を拾い、チンピラから絡まれている人を助けるのが魔法少女のすべき人助けなら、人を励ましてあげるのもまた魔法少女の人助けだ。

 

 想いで人は救えない、気持ちだけでは人は救えない。スノーホワイトは痛いぐらいよく知っている。だからこそ誰かを救うための力を得る為に鍛えてきた。

 だがコバヤシは違っていた。コバヤシは魔法少女でも何でもない正真正銘の一般人だった。

 その一般人が魔法少女と同等の力を持つコールドスカルを撃退するということは、万に一つも有り得ないことのはずだった。

 コバヤシはそれをやってのけた。ただ偶然雷が相手に落ちただけかもしれない。しかしコバヤシがあそこで相手の目の前に立ち引きつけなければ起きなかったことであり、これはコバヤシが引き起こしたことだ。

 傷ついている人の為に強大な敵に立ち向かい想いの力で奇跡を起こすその姿は憧れていた魔法少女そのものだった。憧れが自己嫌悪で落ち込む姿は見たくない。

 

 

ニンポショウジョ・パワー終り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

#AMBSDR

@ycnan @njslyr

 

#AMBSDR: njslyr:例の物は手に入れた、だが問題発生。

#AMBSDR: ycnan:何?

#AMBSDR: njslyr:奴に雷が直撃、記憶端子のデータ破損可能性有り

#AMBSDR: ycnan:アンラッキーね。とりあえずこちらに持ってきて復元できるかも

#AMBSDR: njslyr:了解

 

ニンジャスレイヤーはIRC通信機の画面から壁にこびり付いた焦げ跡に目を移した。それはコールドスカルが爆発四散した際に生じた焦げ跡だった。ニンジャスレイヤーはコールドスカルが持っている記憶端子の奪取のために行動していた。居場所を突き止めロープで縛られているコールドスカルを確保したまではよかった。

 

だが雷に当たりデータが破損しているだろうとコールドスカルは言った。ならばデータの中身を吐かせようとインタビューを試みたが最後まで知らないの一点張りを通して爆発四散した。これでアマクダリの計画を知る足取りが途絶えるかもしれない。ここはナンシーの復元に期待するか。

 

ニンジャスレイヤーは部屋を後にし、ネオサイタマの街に消えていった。

 




実験的にニンジャスレイヤーの文体と魔法少女育成計画の文体を分けてみました。
見ずらいからもしれませんがこんな感じで書いていきます
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