ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター   作:ヘッズ

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最終話 ニンジャスレイヤー・アンド・マジカルガールハンター・バーサス・ニンジャマジカルガール #1

(((キッヒヒヒ!どうだ!これがマジックアイテムのリトオの効果とアタシの魔法だ!)))ニューロン内でフォーリナーXXXがバリキ中毒者めいてハイテンションで叫ぶ耳障りな声がリフレインする。ニンジャスレイヤーのニューロンに憎しみの炎が灯る。

 

(((何が真のカラテだ!非魔法少女のカス!アタシのカラテと魔法とジツと異世界のアイテムがあればこんなもんだ!それにまだまだ奥の手はいっぱい有ったんだからなバ~カ!)))フォーリナーXXXが見下ろし足蹴にする。憎しみの炎に燃料が加わり激しく燃え上がる。

 

「ニンジャ殺すべし!」ニンジャスレイヤーは勢いよく起き上がる。周りを見ると「スゴイモルヒネ」「ハイパーメチロン」とラベリングされた薬品や医療器具が乱雑に置かれている。ここは病院か?ニンジャスレイヤーは過去の記憶を整理する。スノーホワイトの救援に向かって、フォーリナーXXXと戦って敗れた。

 

ニンジャスレイヤーのニューロンは敗北の瞬間の映像を再生し、屈辱と怒りでキリングオーラを漲らせる。「気が付いて……アイエエエ!ニンジャナンデ!?」部屋に入ってきた医者はニンジャスレイヤーのキリングオーラを受けてNRSを発症し、その場に倒れこみ失禁する。

 

「起き抜けに悪いけど、少し落ち着いてもらえるかしら」医者の後に続いて金髪のコーカソイド女性がエントリーする。その胸は豊満だった。「ドーモ、ナンシー=サン」ニンジャスレイヤーはキリングオーラを収めアイサツをする。「何故オヌシがここに?」「アナタの通信機からメッセージが届いて、駆け付けて病院に運んだ。覚えている?」

 

ニンジャスレイヤーはニューロンからボンヤリとした記憶を引き出す。確かナンシーに救援を依頼した。「貸しを作ってしまったな。感謝する」「この貸しはいずれ返してもらうとして、礼はこの子にも言っといたほうがいいわ」ナンシーはニンジャスレイヤーの隣を指さす。そこにはティーンエイジの少女がベッドから体を起こし見つめていた。

 

「この子がアナタの通信機を借りて、私に救援メッセージを送って重傷のアナタを運んでくれたようね」少女は頭を軽く下げる。「オヌシは誰だ?」ニンジャスレイヤーは訝しむ。隣に居る少女とは全く面識が無かった。「どーも、ニンジャスレイヤーさん。スノーホワイトです」スノーホワイトと名乗る少女はアイサツをする。

 

「ジョークか?オヌシとスノーホワイト=サンとは容姿が全く違う」ニンジャスレイヤーの記憶ではスノーホワイトの髪はピンク色で容姿もハリウッド女優めいて整っていた。だがこの少女は黒髪で容姿もまるで違う。ニンジャスレイヤーの問いにスノーホワイトは予想していたのか、平静な態度で喋る。

 

「そのことについても説明したいのですが、聞いていただけますか?」「よかろう」「じゃあ食事でも取りながらブリーフィングでもしましょう。私もアナタについて色々と訊きたいし」ナンシーは明るい口調でビニール袋からスシパックを取り出した。

 

 

「「いただきます」」タタミ部屋の中チャブ台を挟んでニンジャスレイヤーとナンシーが手を合わせスシを食べ始める。スノーホワイトも2人に倣うように手を合わせスシを食べる。一口食べると旨味と栄養が体中に染みわたる。どうやらよほど体は栄養を失っていたようだ。スノーホワイトは黙々とスシを食べる。

 

スノーホワイトは気が付けば2個ほど食べており、3個目を口に入れた時に目的を思い出すと寿司を急いで食べて、2人に視線を送り喋り始める。「ニンジャスレイヤーさんが知っているスノーホワイトはこの姿ですよね」スノーホワイトは人間の姿から魔法少女に変身する。

 

血痕で汚れたコスチュームは治っている。ダメージも自己再生能力で完治はしていないがある程度治っていた。「ワオ。凄いわね」ナンシーは思わず感嘆の声をあげる。スノーホワイトが喋ってから瞬きすらしていない、それでも姿が変わった瞬間を目視できなかった。「これもニンジャの力なのニンジャスレイヤー=サン?」ナンシーは質問する。

 

「これは……ジツではない。オヌシはニンジャではない、そしてフォーリナーXXXと何かしらの同じ存在、マホウショウジョか?」ニンジャスレイヤーは数秒の沈黙思考の後言い放つ。ナンシーは首を傾げ、スノーホワイトの眉根を寄せる。「私とフォーリナーXXXが魔法少女であるという根拠は?」スノーホワイトは表情を戻し問う。

 

「まずマタタビ=サンの件で出会った時から違和感があった」スノーホワイトはアイサツした。アイサツはニンジャの礼儀だ。だがニンジャソウルがなかった。正確に言えばニンジャソウルと似た何かが宿っている。その奇妙な感覚に違和感を覚えながらも疑問を胸にしまい込んでいた。

 

その後何回か出会い時には共闘し、時には戦った。その戦闘力はニンジャそのものだった。だがニンジャソウルに似た何かは感じられたが、ニンジャソウルは一向に感じられなかった。ニンジャの力を持つニンジャと似て非なる者、それがスノーホワイトへの認識だった。

 

「そしてフォーリナーXXXとオヌシから同じ何かを感じた」フォーリナーXXXと対峙した時、ニンジャソウルとそしてスノーホワイトから感じた違和感も有った。そして非魔法少女のカスという言葉、ニンジャソウルが憑依した者がモータルを非ニンジャのクズと罵倒するがそれと同じニュアンスを感じた。

 

「フォーリナーXXXはマホウショウジョである可能性がある」ナンシーは首を傾げ、スノーホワイトをじっと見つめる。「そうです。私とフォーリナーXXXは魔法少女です」ゴウランガ!何たる暗黒私立探偵としての活動で培った推理力か!ニンジャスレイヤーは数々の違和感と観察力と経験則でそれらの情報を掛け合わせ、正解を導き出した。

 

「それでマホウショウジョとは何だ?」「簡単に言えば魔法少女はこの世界とは別の世界における。超常的な存在です」「オヌシ、クスリでもやっているのか?」「自我科に行ったほうがいいわよ」ニンジャスレイヤーは真面目に答えないことへの怒り、ナンシーは妄言を言うスノーホワイトへ憐みの感情を向ける。

 

「信じられないのは当然です。順々に説明していきます」スノーホワイトは能面めいた表情で話し始める。「魔法少女は人間が特殊な力で変身した姿です。ですのでニンジャと違って人間の時はとても無力です」スノーホワイトは変身を解き人間状態に戻る。「ニンジャスレイヤーさん、手加減して寸止めで攻撃してくれますか?」

 

ニンジャスレイヤーは返答代わりにジャブパンチを打つ。拳は鼻先数インチ手前で止まり、拳圧で髪が靡く。「このように人間状態では手加減されてもニンジャの攻撃には全く反応できません」「そのようだな」相手が反応できないか反応しないかの違いは分かる。今の反応は明らかに後者だった。

 

「今ぐらいの攻撃をもう一度お願いします」スノーホワイトは魔法少女に変身して頼む。ニンジャスレイヤーは同じようにジャブパンチを打つ。拳は鼻先数インチ手前に止まる前にスノーホワイトに掴まれた。「ですが魔法少女なら手加減したニンジャの攻撃なら止められます」「そのようだな」スノーホワイトはニンジャスレイヤーの手を離す。

 

「なるほど、人間とそのマホウショウジョでは能力が全く違う」ナンシーは興味深そうな視線を向けながら事実確認を行う。「はい、そして魔法少女はニンジャのジツのような特殊能力である魔法を使え、私は『困った声が聞こえるよ』という魔法が使えます。例えばナンシーさんの銀行口座番号は…29867943ですね」ナンシーは驚きの表情を見せる。

 

ナンシーの隠し口座は一部のヤバイ級ハッカーでは無い限り、プロテクトを解除して調べることは不可能である。「銀行口座番号という言葉の後に『番号が29867943と知られたら困る』という声が聞こえたので分かりました」「でもそれだけじゃアナタがその魔法が使えるとも限らない。ハッキングで調べておいて、今魔法で知ったふうに言う。マジックである手口」ナンシーは動揺した表情から軽く笑みを見せて挑発的に言う。

 

「その可能性もあります。ナンシーさんが知られて困ることはを耳打ちで言っていいですか?」「モチロン」スノーホワイトはナンシーに近づき耳打ちする。ナンシーの表情は次第に驚きで目を見開いていく。「ギブアップ。今度取材に同行してくれない?アナタがいれば取材のインタビューが捗りそう」ナンシーは両手を上げおどけるように言う。

 

「でも今のは一種の読心術を使えると証明したにすぎない」ナンシーは笑みを浮かべていたがシリアスな表情に戻る。「その読心術もジツの一種かもしれないし、マホウショウジョと一般人の違いもニンジャスレイヤー=サンが知らないだけでニンジャの特性の1つかもしれない。ニンジャスレイヤー=サンはニンジャの全てを知っているわけではない」

 

ナンシーは疑いの目を向ける。「マホウショジョがニンジャではないということを完全に証明できなければ、それが別の世界のものと証明できない。違う?」ナンシーの問いにスノーホワイトは沈黙思考をする。確かにそうだ、これで証明できたと思ったがまだ説明が足りない。

 

「続きはファルが説明するぽん」ニンジャスレイヤーとナンシーはスノーホワイトの懐に視線を向ける。スノーホワイトは懐に入っていた携帯端末をチャブ台に置く、するとファルの立体映像が浮かび上がる。「どーもだぽん。ニンジャスレイヤーにナンシー、ファルだぽん」ファルの映像は体を上下に動かしてアイサツする。

 

「なんだこれは?」「モーターチイサイのシリーズ?」「オムラのポンコツとはスペックが違うぽん。ファルのほうが圧倒的に優れているぽん」ファルの映像は黄金の鱗粉をバラまき怒りを表現する。「ハッキングだってできるぽん。ヤバイ級のハッカーだぽん」「ファル…FAL、思い出した。オカチモチストリートの監視カメラ」ナンシーは手を叩く。

 

ナンシーは依然侵入の痕跡を消すために、オカチモチストリート一帯の監視カメラの映像から自身の姿を消そうとハッキングしたことがあった。その際に先に先に侵入されプロテクトが解除され作業が楽だった記憶が有った。かなりのワザマエで侵入ログからFALという名前だけ知ることができた。

 

「コトダマ空間って分かるぽん?それを通して他のハッカーと違って、無線でハッキングができるぽん」「コトダマ空間が見えるの?」ナンシーは思わず身を乗り出す。「そうだぽん。それまでは技術の違いで無線接続できなくて、有線もLAN端子の規格が違い接続できなかったぽん。でも急に大きい老婆が現れてコトダマ空間が見えるようになったぽん」

 

ナンシーとニンジャスレイヤーはファルを見つめる。その巨大な老婆はバーバヤガ、2人ともコトダマ空間で出会ったことがある。それはコトダマ空間に入ったことがある何よりの証拠だ。「この世界のAIでコタダマ空間が見えるぽん?ファルのスペックやAIはこの世界のオーパーツだぽん。でもスノーホワイトが居た世界ではファルレベルが普通だぽん」

 

ファルは魔法の国で作られたものであり、元のキークによって改造を繰り返し従来の電子妖精よりスペックは高い、だがそれらを説明すると面倒になるのでハッタリを利かせる為に黙っておいた。スノーホワイトは2人のアトモスフィアの変化を感じ取った。徐々に異世界を信じ始めている。

 

「まだ信じていないぽん?じゃあこれを見るぽん」ファルは映像を映し出す。それはスノーホワイトが居た世界のニュースや歴史の資料などのデータ、そしてこっそり収集した魔法少女のデータと映像だ。2人はそれらを食い入るように見つめる。映像は1時間程で一旦止まる。2人はシリアスな表情で沈黙思考をする。

 

ファルが見せてくれた資料や映像、フェイクニュースにしてはあまりにも出来すぎて辻褄が合っている。暗黒非合法探偵とジャーナリストとしての活動で培った勘がフェイクではないと判断した。「UMAを追っていたりしたけど、まさか別の世界が有るだなんて、ミステリーというより最早ファンタジーね」「うむ」

 

ナンシーは重々しく喋り、ニンジャスレイヤーも重々しく頷く。2人はモータルがニンジャの存在を知ったような強い衝撃を受けていた。今まで培った価値観を破壊される。それは理性的な人間であるほど受け入れるのに時間がかかるものである。2人はそのショックから抜け切れていなかった。

 

◇スノーホワイト

 

「どうぞ」

「ドーモ」

「ありがとう」

 

 スノーホワイトはニンジャスレイヤーとナンシーにザゼンドリンクを手渡す。本題に入ろうとしたが、2人が異世界の存在を知ったショックが治まり切っていないようなので、一旦中座し精神を落ち着かせるザゼンドリンクを買ってきた。

 魔法少女が実在すると知った時はショックでは無かった。元々夢見がちで魔法少女は居ないと建前では思っていながらも心の奥底では信じており、プロフィールで妄想癖があると書かれるような少女だった。

 だが2人は夢見がちな若者ではなく立派な大人だ。ニンジャスレイヤーはマジメそう、悪く言えば堅物で、ナンシーはジャーナリストを名乗り話しただけで聡明であることは分かる。そういった人間がファンタジーを受け入れるのは普通より難しいだろう。

 

「では、話を続けてもよろしいですか?」

「う…うむ」

 

 ニンジャスレイヤーが歯切れの悪い返事をする。まだショックが抜けきっていないようだ。

 

「私は魔法少女として独自に悪い魔法少女を捕まえたりしていました。そしてフォーリナーXXXの魔法は異世界に行くもので、その魔法を使い他の異世界で悪い事をしているということを知りました。フォーリナーXXXを捕まえようとして争いになり魔法が暴発した結果、私とフォーリナーXXXはネオサイタマに来てしまいました」

 

 スノーホワイトは話を区切るようにザゼンドリンクを一口飲み、一息ついて話を続ける。

 

「そしてフォーリナーXXXはネオサイタマでも悪い事をしていました。それが許せず実力行使で阻止しようとしましたが、負けました。そして私の友達を拉致しました」

「友達とはドラゴンナイト=サンのことか?」

「はい、私の大切な友達です」

 

 スノーホワイトは俯き唇を噛みしめる。ドラゴンナイトはアマクダリに殺されそうになっていた。それを察知し必死に逃す為に奔走し、やっとアマクダリの魔の手から逃せそうになったところにフォーリナーXXXと出会ってしまった。

 よりによって何故あそこに居た?それより困った声を無視していればフォーリナーXXXに出会わなかった。体中に後悔の念が渦巻くが即座にそれらを打ち払い顔を上げる。

 

「フォーリナーXXXはこれからもネオサイタマの人々を好き勝手に虐げるでしょう。別の世界の人間が、魔法少女が悪い事をするのは許せません。何よりドラゴンナイトさんを助けたいです。ですが私では決して勝てない。だからニンジャスレイヤーさん、私と一緒にフォーリナーXXXを倒すのを手伝ってください」

 

 スノーホワイトは床に正座すると土下座をして額を畳に擦りつける。ネオサイタマにおいて土下座は最大級の謝罪や懇願の態度であり、最も屈辱的なものとされている。それを知っての上での土下座だった。

 

 魔法少女についてや自分の世界について説明したのは素性を晒したのは誠意を見せるためであり、全ては共闘を申し込む為だった。

 魔法少女について喋ってもこの世界では特に罰則はないのはコバヤシ・チャコの件で実証済みだ。仮に罰則が無くとも魔法の国にバレないように隠蔽してニンジャスレイヤーに話していただろう。

 スノーホワイトは自分の信念を貫き理想を実現する為に慣習やルールを無視する。そして悪い魔法少女を倒すために、ドラゴンナイトを救う為にネオサイタマのドゲザの意味も理解しながらプライドをかなぐり捨てて躊躇なく利用する。それが魔法少女スノーホワイトである。

 

「スノーホワイト=サンとファル=サンに1つ聞きたい。フォーリナーXXXはマホウショウジョだがニンジャソウルが宿っていた。それがどういう事か分かるか?」

「分かるぽん。魔法少女の変身が解けて死にかかっている時にニンジャになったらしいぽん。その後魔法少女になったらニンジャと混じった状態、あいつはニンジャ魔法少女と名付けているぽん」

「そうか。スノーホワイト=サン、ヨロシクオネガイシマス」

 

 下げた視線にニンジャスレイヤーが90°で頭を下げる姿が映る。

 ニンジャスレイヤーは病的に悪しきニンジャに憎悪を燃やし殺していく。フォーリナーXXXがニンジャであるスノーホワイトが共闘を頼もうが戦いを挑むのは決定事項であり、付いていこうか来ないが関係なく、礼を言う筋合いはないはずだ。だが土下座に対して最大限の返礼をしてくれた。礼儀正しく奥ゆかしい人だ。

 

「ちょっと待つぽん。ニンジャスレイヤーはフォーリナーXXXを殺すぽん?」

「そうだファル=サン」

「やめろぽん。フォーリナーXXXを殺したらスノーホワイトが元の世界に帰れないぽん」

「そうか、だがニンジャは殺す」

「話聞いているぽん?スノーホワイトが帰れなくなるぽん! 年頃の女の子が家族と一生会えなくていいぽん?アンタは鬼かぽん!?悪魔かぽん!?」

「ぬぅ……」

「ファル」

 

 スノーホワイトはファルを嗜める。ニンジャスレイヤーは態度でも声でも困っている様子を見せており助け船を出した。

 

「フォーリナーXXXは2対1でも手加減できる相手じゃない。ニンジャスレイヤーさんが殺してしまっても仕方がない」

「仕方がないって、それでいいぽん!?両親や友達やリップルともう二度と会えなくなるぽん!」

「覚悟は出来ているから」

 

 スノーホワイトの実力、ニンジャスレイヤーの実力、そしてフォーリナーXXXとの実力を冷静に分析した結果を口に出す。手心を加えた結果2人とも殺されるのが最悪の事態である。悪い魔法少女を止める、それが第一目標だ。それにこれはニンジャスレイヤーの戦いでもある。口を出す権利はない。

 

「あ~あ分かったぽん!じゃあ殺さないようにするためにブリーフィングだぽん!ニンジャスレイヤーもフォーリナーXXXについての情報を洗いざらい吐くぽん!」

 

 ファルの立体映像は飛び跳ねながらは黄金の鱗粉をバラまき声を荒げる。そこからフォーリナーXXXとの戦いに向けてブリーフィングが始まった。

 

◆◆◆

 

スゥーッ、ハァーッ、スゥーッ、ハァーッ。部屋に規則正しい呼吸音が響く。ニンジャスレイヤーがタタミに正座で座り目を瞑りながら深呼吸を繰り返す。これはチャドーの呼吸、太古の暗殺術チャドーの技術の1つで、独特の呼吸法で精神をヘイキンテキにし、ニンジャ新陳代謝を活性化させ回復力を高める。

 

ニンジャスレイヤーは対フォーリナーXXXのブリーフィングが終わった後、隠れ家の1つに戻りチャドーの呼吸を繰り返し傷の回復に努めた。まだ戦える状態ではない、早く回復させなければ。ニンジャスレイヤーは逸る気持ちを抑える。昨日ブリーフィングが終了直後にニンジャスレイヤーとスノーホワイトにフォーリナーXXXのメッセージが届けられた。

 

明日のウシミツアワー、ジングウスタジアムでドラゴンナイトを賭けて戦うという内容だった。決闘か罠か、どちらかは分からないが関係ない。ただ殺すのみだ。チャドーの呼吸をしながらイマジナリーカラテでフォーリナーXXXと戦い、殺意を研ぎ澄ましていく。

 

「失礼します」部屋にスノーホワイトがエントリーしてくる。指定された日時迄ニンジャスレイヤーの隠れ家に居ることになった。彼女もアマクダリにマークされているようで、捕捉されていない隠れ家はセーフティーゾーンともいえる。スノーホワイトはニンジャスレイヤーからタタミ3枚分スペースを開けて正座し同じように目をつむる。

 

スノーホワイトはフォーリナーXXXのメッセージを聞いた直後からヘイキンテキではないのを自覚していた。ドラゴンナイトは無事だろうか?フォーリナーXXXにインタビューされていないだろうか?フォーリナーXXXに勝てるだろうか、殺してしまえば元の世界に二度と戻れない。様々なネガティブマインドがニューロンに駆け巡る。

 

その時ドラゴンナイトに勧めたイマジナリーカラテのトレーニング方法を思い出す。あれには精神を落ち着かせる効果もある。スノーホワイトはタタミ部屋にニンジャスレイヤーに居るのは分かっていたが、部屋に入り邪魔にならないように正座しイマジナリートレーニングを始める。

 

ニューロンに現れるフォーリナーXXXとマンキヘイ。2人の連携を断たなければならない。ニンジャスレイヤーにマンキヘイを相手してもらい、スノーホワイトはフォーリナーXXXを相手する。大剣で斬りつける。それを魔法で察知しルーラでいなすがスワローリターンで斬りつける。それも魔法で察知し防御してがら空きの胴を突く。

 

フォーリナーXXX単体であれば充分に対応できる。だが気になるのは異世界のアイテムだ、こればかりは想像が出来ない。イマジナリーカラテトレーニングは無意味ではないかという考えが浮かび、今一つ集中できずにいた。部屋にはニンジャスレイヤーの呼吸音が響く。呼吸音を聞いていると不思議と心が落ち着く気がする。

 

スノーホワイトはイマジナリーカラテトレーニングから瞑想に切り替え、ニンジャスレイヤーの呼吸を見様見真似で実践する。スゥーッ、ハァーッ、スゥーッ、ハァーッ。呼吸を繰り返していくうちにネガティブマインドが薄れていきヘイキンテキを取り戻している気がする。スノーホワイトは瞑想に没頭し呼吸音が重なり合い部屋を満たす。

 

「ニンジャスレイヤーさん」スノーホワイトは瞑想の態勢を崩さず声をかける。ニンジャスレイヤーの呼吸が一瞬乱れるが即座にチャドーの呼吸を続ける。「ニンジャスレイヤーさんは自分がやっていることが正しいと思いますか?」スノーホワイトはいつもより少しだけトーンが下がった声で問いかける。

 

スノーホワイトは自分のエゴで魔法の国のルールを時には破り、暴力を行使し悪い魔法少女を検挙し、時には人間界の悪事を止めに行く。一方ニンジャスレイヤーも社会のルールから逸脱し自身の価値基準で判断しニンジャを殺していく。そのスタンスにどことなくシンパシーを感じていた。

 

今の姿は魔法少女になる前に描いていた清く正しく美しい姿と異なっている。現実に打ちひしがれ己の無力さを知り、自分なりに理想の魔法少女を目指して今のスタンスになった。それでも自分が選んだ道が正しかったのか時々考え、ニンジャスレイヤーも同じような疑問を抱えているのではと思い問うていた。

 

「正しいか正しくないかは関係ない。全ては私のエゴだ」ニンジャスレイヤーは端的に答える。やりたいからやる。一見傲慢にも見える決断的な答え、あっさりと答えたように聞こえたがその言葉には幾千もの自問自答の過程を感じられた。「エゴが鈍ればカラテが鈍る」ニンジャスレイヤーはポツリと呟く。

 

「え?」思わぬ返答にスノーホワイトは聞き返すが答えは返ってこなかった。エゴが鈍ればカラテが鈍る?これはアドバイスなのだろうか?スノーホワイトは言葉の意味を考える。エゴとは自分の意志だ。そして意志が鈍れば行動に迷いが生まれ、迷いが生まれれば隙が生まれ、隙があれば死に繋がるということか。

 

ニンジャスレイヤーのカラテには決断的にニンジャを殺すという憎悪とエゴが込められている。それは迷いとは対極にあるカラテであり対峙して嫌というほど感じた。清く、正しく、美しい魔法少女とは何か?何が正しいか?現時点でその答えは見つからず、これからも悩み続けるだろう。

 

それは一旦ニューロンの奥底にしまっておく。フォーリナーXXXを倒しドラゴンナイトを取り戻す。それが自分のエゴであり、そのエゴを練り上げる。それが決断的な意志になる。スノーホワイトはエゴを練り上げるように瞑想に没頭した

 

 

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