ニンジャスレイヤー・バーサス・マジカルガールハンター 作:ヘッズ
◆フォーリナーXXX
「ドーモ、スノーホワイト=サン」
フォーリナーXXXはアイサツを拒絶しようとするが半ば強制的に口と体が勝手に動く。
ニンジャ魔法少女はニンジャや魔法少女と比べれば優れている。それは認めるところだ、だがそんな優れた生物でも欠点は存在する。それはアイサツされたら返礼してしまうという点だ。
戦いの前で視線を逸らす。それは魔法少女の戦いにおいてはボーナスステージのような致命的な隙だ。ニンジャ魔法少女になり相手がアイサツをした時は『こいつはバカかと』と攻撃を加えようとした。だが何かしらの魔法にかかったように体は全く動かず、気が付けばアイサツしていた。
ニンジャにとってアイサツは本能であり、魔法少女の要素が入ったニンジャ魔法少女であってもその本能に逆らえない。
本来であれば問題ない欠点だった。ニンジャであれば先にアイサツしても攻撃することなく返礼し、魔法少女もわざわざ頭を下げてアイサツする間抜けはいない。
だがスノーホワイトは違う。魔法少女でありながらニンジャの習性を理解し利用してくる。ファーストコンタクトでも見事に利用され、何とか防御できたが危うくやられるところだった。そして今もその習性を利用されている。
「フォーリナー……」
視界の端でスノーホワイトが近づいてくるのが見える。頭を下げ無防備にさらしている頭頂部目掛けヤリを振り下ろそうとしている
相手がアイサツする意志がなければこちらもアイサツをキャンセルでき、不意打ちをすると分かっていれば対処できる。体の自由が戻り右に動き辛うじて攻撃を回避し大剣を横薙ぎに振るう。
スノーホワイトは地を這うように身を屈めヤリで足元を突く。フォーリナーXXXは小ジャンプするが、ヤリは足元に到達する前に止まり、穂先は胴体に向かう。フォーリナーXXXは体を捻り腹部を斬られながら回避、その回転を生かして斬りつけるがこれもあっさりと躱される。
スノーホワイトは一気に攻め立てる。最初の戦いで感じたやりにくさは健在で、魔法の袋からアイテムを取り出す隙を与えられず守勢に回り、胸中に焦りと不安が募っていく。
今までより強くなったというのは漠然と理解していた。それは初めて魔法少女になった時のような無敵の感覚だった。であれば相手との実力差は開き、ニンジャの習性を利用した不意打ちによっての不利な形勢はすぐさま逆転すると思っていた。だが予想と反して形勢は全く変わらなかった。
フォーリナーXXXは防御していくうちに自然に後退しビルを移り渡る。それは一種の逃走であり、プライドが高い彼女であれば許さない。だがそのプライドを忘れるほどに困惑していた。何故脇腹の大怪我が治り未だに倒せない?
2人は閉店になったコケシマート近くの立体駐車場に移り、そこで足を止めて戦う。前の戦いのようにいずれ地力の差が出てくるはずだ。この無敵の感覚を信じろ。
フォーリナーXXXはスノーホワイトが数歩ほど間合いを詰めたのを確認して上段から大剣を振り下ろす。相手は反応できていない、殺った。
だが大剣は目測を誤ったかのように空を切る、いや攻撃が来るのを予測し何かしらの動きで目測を誤らせられた。スノーホワイトはその隙に心臓を突き、ブリッジで辛うじて躱す。
「なんでそんな強くなっている!?」
フォーリナーXXXは思わず叫ぶ。相手が答えるわけが無いと分かりながらも叫ばずにはいられなかった。スノーホワイトをコトダマ空間に送って再び対峙するまでの時間は数分程度だ、その間で広がっていないどころか明らかに実力差が縮まっている。
何が起こっているか見当がつかない。今のフォーリナーXXXはマンキヘイを失った憎しみや悲しみより、謎を知りたいという知的好奇心が上回っていた。
「覚醒という言葉を知ってる?」
「あ?アニメとかにある。実は秘めたる力が有って、土壇場でその力が使えるようになるとかいうあれか?」
「大まかに言えばそう。魔法少女は想いの力で強くなる。私は自分の想いを再確認して決意した。貴女のような魔法少女を決して野放しにしないって」
「覚醒か、魔法少女にはそんなのがあるのか」
フォーリナーXXXは納得すると同時に思わず舌打ちする。想いの力で強くなる。マンキヘイを失ったと同時に強くなったという自覚があった。だとすれば自分は覚醒したのだろう。
お互いに覚醒して実力差が縮まっている。即ち覚醒の質はスノーホワイトの方が上だということになる。気に入らない。
「そもそもなんで生きている!?インクィジターの元に送ったよな!?」
苛立ちをぶつける様に声を荒げながら質問する。インクィジターはコトダマ空間において絶対的な強者だった。対面して逃げおおせられたが、次は逃げられる保証はない。
ニンジャ魔法少女として絶対的な自信を持つフォーリナーXXXであるが、率先して戦おうとは思えない程恐ろしい相手だった。だからこそ自ら止めを刺すのではなく、インクィジターの元に送るという方法を選んだのだ。
スノーホワイトは少なくともフォーリナーXXXよりコトダマ空間適性はない。そんな者がインクィジターに対面して逃げられる道理はない。それだけにスノーホワイトがこの場に居ることは天地がひっくり返ってもあり得ない出来事だった。
「確かに、私ではインクィジターを倒すどころか、逃げることすら無理だった」
予想に反してスノーホワイトは攻撃の手を止めて語り始める。この間に魔法の袋からアイテムを取り出して攻撃するなどの選択肢が有ったが、スノーホワイトの言葉に耳を傾ける。
「じゃあ何で生きている!?」
「私には大切な友達が居た。ラ・ピュセル、優しくて頼りになって大切な人、ねむりん、いつも楽しそうに私の話を聞いてくれて、話すのが本当に楽しかった」
「そいつらがどうした!?」
「私はインクィジターに殺されそうになった。死ぬのを覚悟して走馬灯みたいなものが過った。その中でラ・ピュセルやねむりんとの思い出が蘇って、助けてラ・ピュセルって願った」
スノーホワイトはゆっくりと語る。友達との思い出や襲われた時の心境などこれっぽっちも興味はない。今すぐにでも結論を言えと襲い掛かりたいが、謎を知りたいという欲が静観させる。
「そうしたら目の前にラ・ピュセルが居て、インクィジターの大軍を真っ二つにして、ねむりんがビームで倒してくれた」
「なんだ?絶体絶命のピンチでお友達が助けてくれたってか?」
「そう」
「何でお前だけなんだよ!」
フォーリナーXXXは力の限り叫ぶ。絶体絶命のピンチに仲間が助けてくれる。それはフィクションではあり触れ、ご都合主義すぎると嫌われるほど普遍的な展開だ。その結果絶対に死ぬはずだったスノーホワイトが生きている。
そして負けるはずがないマンキヘイが死んだ。自分が消滅する前に駆けつけられるわけでもなく、幸運によって奇跡的に生き残るわけでもなく死んだ。
何だこの理不尽は!許されるわけではない!
フォーリナーXXXはスノーホワイトに対する憎しみはニンジャスレイヤーと比べればそこまで無かった。だからこそ知的好奇心が勝り、覚醒についてやコトダマ空間からの脱出方法を訊いた。
だが今は違う。スノーホワイトは理不尽の象徴でありニンジャスレイヤーと同等に憎しみを抱く相手になっていた。
「スノーホワイト、お前はこの世にいちゃいけない存在だ、死ね」
「それはオヌシだ、フォーリナーXXX=サン」
憎悪の塊のような声が聞こえると同時にニンジャスレイヤーがスノーホワイトの隣に立っていた。
◆◆◆
ニンジャスレイヤーはスノーホワイトの姿を見て安堵する。殺されたと思っていたが生きていた。スノーホワイトのカラテへの過小評価を反省すると同時に生きていたことに嬉しさを感じていた。そしてスノーホワイトは後ろ手でニンジャスレイヤーに向けてピースサインを作る。余裕のサインか?違う。
これはフォーリナーXXXとのイクサに向けてニンジャマジカルブリーフィングをした際に決めたサインだ。それと同時に一瞬スノーホワイトと視線が合う。ニンジャスレイヤーの胸元に何かが当り。瞼を空けて確認する。それはスシパックとチャとキャンディーだった。パックを開けるとスシを口に放り込むと高速で咀嚼しチャで流し込む。
そして即座にチャド―の呼吸をする。「スゥーッ……ハァーッ……」チャドーの呼吸はニンジャ新陳代謝を増幅させ傷を癒す。だが万能ではない。チャドーの呼吸をするのにはカロリーを消費する。ニンジャスレイヤーはマンキヘイとの戦いでカロリーを消費尽くしたと同時に、補給用のスシも戦闘の余波によって破壊されていた。
スノーホワイトは魔法でニンジャスレイヤーの状況を察し、補給アイテムを渡していた。何たる偶然だろうか!否、必然である。ニンジャスレイヤーとスノーホワイトはニンジャマジカルブリーフィングによってお互いの長所と短所を全て話した。それは敵になれば致命的な情報も入っていた。
それでも2人は情報を明かした。だからこそスノーホワイトは自分には必要ないスシをストックしていたのだ。「スゥーッ……ハァーッ……」ニンジャスレイヤーはチャドーの呼吸を続ける。タタミ数枚分先ではスノーホワイトとフォーリナーXXXがイクサを繰り広げている。今襲われれば確実に殺されるだろう。だがヘイキンテキは全く乱れていない。
スノーホワイトはアイコンタクトでメッセージを込めた。1人では厳しい。早く回復して加勢してくれ、時間は稼ぐと。ニンジャスレイヤーはそのメッセージを受け取り体力回復に努める。スノーホワイトのカラテとフォーリナーXXXを倒すという決断的な意志を信じた。何たるニンジャと魔法少女の種族を超えた信頼関係か!
スノーホワイト達はこの場から離れ、ニンジャスレイヤーだけが取り残される。回復しきれずいけば足手まとい、回復に時間をかけすぎればスノーホワイトが殺されるかもしれない。フォーリナーXXXとスノーホワイトと己のカラテを吟味し、ベストなタイミングを探る。(((ヌウ……間に合わぬ)))ニンジャスレイヤーのヘイキンテキが僅かに乱れる。
このままでは回復が間に合わず、ベストの状況でエントリーできないと長年のイクサで鍛えたニンジャセンスがニューロン内で無慈悲な結論を告げていた。すると手元にあるキャンディーに意識が移る。スノーホワイトはこの状況において無意味な物を渡さない。であれば回復を手助けするアイテムの1つ可能性が高い。
ニンジャスレイヤーは躊躇なく口にキャンディーを放り込んだ。「ヌゥ…」心臓が万力めいて締め付けられ思わず声が出る。だがニンジャ新陳代謝が上がり傷を癒し体力が回復していく。それはスノーホワイトが入手したマジカルドーピングの一種であり、現時点で入手不可能な貴重品だが保険の為に渡していた。
スノーホワイトの判断は正しく、これが無ければニンジャスレイヤーは満足に回復出来ていなかっただろう。そこからチャドーの呼吸で体力回復に努めていた。スノーホワイトはニンジャスレイヤーの様子を見て安心する。全快とまではいかないが、ある程度回復している。当初は1人で何とかするつもりだった。
だがフォーリナーXXXのアトモスフィアが覚醒したと告げていた。これは1人では倒せない。プランを変更し、時間を稼ぎニンジャスレイヤーのチャドーで回復して戦線に復帰してもらうつもりだった。アイコンタクト1つで伝わるか心配だったが、ニンジャスレイヤーを信じた。
そして1秒でも時間を稼ぐために長々と喋り、ねむりんやラ・ピュセルを話題に出した。大切な思い出が穢されるような不快感が有ったが悪い魔法少女を倒す為なら仕方がないと割り切った。「あのキャンディー実際利いた。あれは何だ?」「こちらのドーピング剤のようなものです」「すまぬ」
「ニンジャスレイヤー!スノーホワイト!マンキヘイの仇だ!お前ら2人は何が何でも殺す!」フォーリナーXXXのキリングオーラが充満する。ニューロンが冴えわたる。あまりにキレすぎると人はかえって冷静になると聞いたが本当だったようだ。アマクダリを解体することもこの後の生活もどうでもいい!2人を殺すことに全てを賭ける!
「やってみろ。ニンジャ魔法少女だろうが関係ない。ニンジャ殺すべし」ニンジャスレイヤーは双眸に圧倒的な殺意を漲らせながらジュージツの構えを取る。「私は魔法少女としてアナタを止める」スノーホワイトは理想と決意を双眸に宿らせながらルーラを構える。魔法少女とニンジャ対ニンジャ魔法少女の最後の戦いが始まる。