病犬は夜も死亡フラグが立つ   作:ボージョレ

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第1話 発×硬×幻影旅団

「"纏"」

 

不規則に波打っているオーラが、静かに平面に形作っていく。

よーし次は…。

ふんぬっ。

そんな踏ん張り声を心で叫ぶ。

 

「おおおおお…」

 

あまりの力強さに俺は思わず声を漏らす。今俺が行なっているのは"練"。体のオーラをより多く纏わせる四大行の1つだ。これをやり続けると体力が減って疲れ果ててしまう。

 

よし次は"絶"

 

精孔を閉じて、オーラを出さない技術。俺は目を瞑り、自分は影が薄いと念じ始める。

すると、纏っていたオーラが体内に吸収されていくのを感じる。

どうやら纏絶練の3つは習得できた様だ…。

俺は一息をつき、丁度いい高さの壁に腰がける。

 

この3つの修練…俺は5ヶ月かかってしまった。本来は1、2カ月程度でできるとタカをくくっていたが…。

これをたった3日程度で会得できたゴンやキルアの化け物具合がよくわかる。ありゃあウイングさんも汗ダラダラになるわ。

 

さて、後は念能力を作る…"発"だけだ。

 

水見式をやって見たが、やはりというか強化系だった。牙を強化する能力ではあったので、そこは既に認知していたのだが。

 

俺が悩んでいるのは、牙を強化するべきか否か。

 

強化系自体は、硬パンチでも十分な必殺技になりうる。発自体が必要かどうかなのだ。ウヴォーギンのビッグバンインパクト自体も、ぶっちゃけ発と呼んでいいかわからない。

 

ジャジャン拳みたいに、基本的な硬パンチを強化する為、に簡単な制約と誓約をかければいいんだけれども。

でもゴンはジャンケンに思い入れがあったから、あの凄まじい威力が発揮できたのだ。

念は思い入れがあるものに対して十分な効力を発揮する。

 

それならば病犬さんの牙を強化するのは妥当だ。硬いきのみや鉄分補給の為の石などを食べる時などは、難なくガリガリ細かく噛めた。

噛む力と、その歯…牙の強度は並みの人間よりも数段上だ。

 

だとしたら、牙を強化する能力しかない。制約と誓約だが…やめておこう。そんな事をしてしまったとしたら不便な事になってしまう。

ウヴォーギンの肉を噛みちぎれたのは、別に誓約や制約が力を増幅させている訳でなく、元々のAOPのポテンシャルが高かったためだろう。

 

「よし…」

 

全身に纏っていたオーラを牙に集中させる。…今の所、ただ牙にオーラを纏わせているだけだ。

このまま噛み付けばいいんだろうか。

廃墟の壁へと噛み付いてみる。

 

「おお…!」

 

すると、硬い壁がまるで豆腐の様に砕けたのだ。

 

「…ん?」

 

しかし、そんな興奮もすぐに冷めてしまい、ある事に疑問を抱く。

 

「…いや、これは別にオーラを纏わせているだけじゃないか?」

 

強化系は身体の部位の機能を強化する。しかし、俺のやった事はただ牙の部分に"凝"をしただけ。機能などへったくれもない。

豪嵐(やまあらし)やキメラアントと化したパームは髪や体毛などを針や鎧にさせる発を会得していた。つまりはその部位の"強靭さ"、そして攻撃に用いるという"鋭さ"を強化させていたという訳だ。

 

それに比べ、俺のさっき行った事はただオーラを込める部位が拳から牙に移動させただけ。牙の強度などは上がるものの、それを攻撃に生かす鋭さ。それを強化していない。まぁ、強化系の"凝"や"周"などは他の系統よりも優れている為、今俺が行った事自体は発と呼べる代物かもしれないが。

 

「発の会得ってこんなにも難しいのかよ…」

 

俺は地面に伏し、溜息をつく。

原作のヒソカの言う通り、念は奥深いな。それ故に色々と考えさせられる。これは修練あるのみと言う事だな。

 

発を会得するのは後回しにしよう。強化系は特別に発が大事と言うわけでもない。

四大行の応用技術である、"硬"、"堅"、"凝"、"流"、"周"、"円"、"隠"を習得するか。"凝"は四大行をやるにつれて、会得できていた。

 

よし、じゃあ最初は"硬"だ。原作でゴンがやった通りにすればいいんだよな。

 

「まずは練」

 

練を行い、纏で抑え…そして凝!

 

「んギギギ…」

 

全身のありとあらゆる筋肉が力んで震える。オーラを動かすのはやはり気が滅入る。

纏っていたオーラが拳へと集中した所で…

 

「絶!」

 

拳以外の体全体でのオーラを、絶で消す。

 

「ふんぬぅ!!」

 

き、キツイ…絶だなんて全身でしかやった事がない。拳の精孔だけを開いて…それ以外は閉じる。

 

「クウゥ…!」

 

やばい、最終段階の絶の部分に力を込めすぎて拳に集中してたオーラがゆらゆらと落ち着きがない動きをしている。

だめだな…そう諦観し、俺は地面へと倒れた。

 

「難しいな…」

 

やっぱりゴンみたいに1発という訳にはいかないようだ。凝なら瞬間的にやれるけどなぁ。硬は過程が多い為、難しいのかもしれない。

練習あるのみだな。念は鍛える程にその成果に応えてくれる。努力は裏切らないという訳だ。

 

よーし旅団にも勝る念の使い手になるぞ!

 

「んー!何寝転んでるんだぁ?」

 

思いの外何処からか男の野太い声が聞こえた。…この感じからしてここ肝試しに来た連中か。

この廃墟は巷では噂の幽霊スポットと呼ばれているらしい。それにより、物好きな奴等が夜に徘徊しては俺の姿を見て逃げる。

そこまで不気味じゃないだろ…じゃないよね?

 

とにかく、また同じような奴等が来たらしいのでさっさと追い出して…

 

「団長ー!!ここがいいんじゃねぇか!?」

 

…団長?

 

その男の言葉に、俺はすかさず声の主の方に目を向ける。男は雪崩が起きた後のような形になっているゴミ山の上にいた。

ライオンのたてがみの様なヘアースタイル。そして何かの獣の皮みたいな服。ゴリラ並みの巨体。

わかる。一瞬見ただけでもうわかる。俺こと病犬さんを殺した幻影旅団の1人。

 

ウヴォーギンだ。

 

「案外ゴミ山だらけとおもてたね」

 

「ここなら見つかる場合もないし、拠点にするのにはうってつけだ」

 

その背後から、続々と。ちっさい背のフェイタン。童顔マッチョのシャルナーク。

他にもぞろぞろと旅団の奴等が出てくる。

そして…

 

「成る程…何となく流星街と似ている」

 

幻影旅団のリーダーを務め、念能力を盗む能力、盗賊の極意(スキルハンター)を持った男、クロロが姿を現した。

 

 

------

 

 

俺は確かに旅団に勝る念能力者になるとは言ったよ?神様。

 

でもだからってフラグを回収するの早くない?もはや俺自身の言っている事が死に繋がっていくと思うと、怖くてたまらない。

 

それはともかくだ。ともかく…この状況をどう打破すればいいのか。

 

周りには旅団らが囲んでおり、俺は全方向から視線を浴びていた。ヒソカの姿も見えている為、少なくとも原作の時間帯が遠い未来の話ではない事がわかる。

 

「まさか、こんな所に人がいるなんて」

 

パクノダが特徴的な鷲鼻を摘んでこちらを睨む。どうやら俺の体臭に、鼻が曲がりそうだったらしい。風呂なんて入ってなかったしな。つってもお前らも流星街出身ばかりなんだから俺の体臭以外にもよりひどい臭いなんざ数え切れないほどあるだろ。

 

「ここで暮らしているということか…孤児…いや、こいつの貧相な面持ちからするとホームレスといった方がお似合いだな」

 

眉なし野郎のフィンクスがエジプト的な被り物を外しながら、俺に対して毒を吐く。

貧相とかムカつく言い方だが、今は逃げる事を考えるしかない。

念を使う…いや、あいつらは俺よりも戦闘技術が遥か上回っている。俺が念能力者とバレるようであるなら、只々殺されるか、それとも無残に玩具として生殺しにされるか…。

どちらにせよ殺される事には変わらない。

 

ならばどうすればいい?話し合う?それは無理だ。身内の死以外はゴミの様に扱う連中にそんなのは通用するはずもない。

 

どうすればいい。

 

「念が使えるんだろう?」

 

「!!」

 

クロロの口からとんでもない言葉が出てきた。何故バレたんだ…?俺は一般人の様にオーラを自然に垂れ流していた筈だ。

 

「念を使えないと悟られない為だったろうが…オーラの纏い方が綺麗すぎる」

 

…やはりこいつらは化け物だ。こんな奴らに敵うはずがない。

 

「へぇ…こんな人気が全くない場所でどうやって念を会得した?」

 

ノブナガとマチがこちらを見て訝しむ。

 

「おいおい…!そんなのはどうでもいい。こいつが念能力者ってなら、ヤらせてくれよ団長!」

 

今まで黙っていたウヴォーギンが俺の顔を血走った目で見つめる。なんつー目をしてんだこいつ。

 

「いいが…力は抑えろ。此処は拠点となる」

 

「へへへ…わかってるよ。流石に100%で戦う程俺も馬鹿じゃない。それに…」

 

奴の体からとてつもないオーラの塊が溢れ出る。俺の練した時とは数倍以上の大きさだ。目にするだけで実力の差を感じて、戦う気力が失う。

 

「本気の力でかかったらつまんねぇからな」

 

いや、何諦めているんだ。

病犬さんはウヴォーギンを仕留める事が可能だったんだ。可能性はゼロではない…!

戦う前に、負けを認めてどうするんだ!

 

他の団員らは手を出すつもりではなさそうだ。つまり俺とウヴォーギンのタイマン。

 

こいつらは余興程度で殺しにくる。

そんな奴らに一矢報いる為、俺は体の中に溜めていたオーラを一気に体に放出した。

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