銀魂×リリカルなのは 作:久坂
──坂田銀時が実は結婚していたという話を、かぶき町の知り合いたちに報告して、反応を見てみた。
スナックお登勢で働くオッサン面した猫耳女『キャサリン』の場合。
「ブワハハハハ!! 坂田サンガ結婚シテタッテ!? コイツハ傑作ダ!! 一体イクラ騙シ取ラレタンデスカ!?」
「いや結婚詐欺じゃねーから」
同じくスナックお登勢の従業員、からくり家政婦『たま』の場合。
「銀時様がご結婚ですか? わかりました、データに加えておきますので、騙し取られた金額を入力してください」
「いや結婚詐欺じゃねーから」
主に公園に生息する無職の
「え? 銀さん結婚してたの? へーそうなんだ、知らなかったよ。で、いくら騙し取られたの?」
「いや結婚詐欺じゃねーから」
週刊少年ジャンプを愛読する元御庭番衆の忍者『服部全蔵』の場合。
「なに、オマエ既婚者だったのか。うん、まぁいつか絶対やる男だと思ってたよ俺ァ。で、いくら騙し取られたんだ?」
「いや結婚詐欺じゃねーから」
名門『柳生家』の次期当主『柳生九兵衛』とその護衛『東城歩』の場合。
「そうか、君が結婚か。これから大変だとは思うが頑張ってくれ。それで、一体いくら騙し取られたんだ?」
「いや結婚詐欺じゃねーから」
「若、違いますよ。銀時殿はそういうプレイが出来るお店でぼったくられたんですよきっと」
「それはオメーだろ」
キャバクラで働く新八の姉『志村妙』の場合。
「まぁ銀さんが結婚? それは大変ねぇ。で、いくら騙し取られたんですか?」
「だから結婚詐欺じゃねえって言ってんだろうがァァァァアアアア!!!!」
新八の実家、志村家の居間でついに我慢の限界になった銀時が力の限り叫ぶ。
「いい加減にしろよォォ!! どいつもこいつも真っ先に結婚詐欺って決めつけやがって!! そんなに銀さんが既婚者だったのが信じられねえのかバカヤロォォ!!!」
「ぎ、銀時、抑えて抑えて……」
怒り狂う銀時を、彼の妻と名乗るフェイトが何とか落ち着かせる。そして少し困ったように笑いながら、フェイトが挨拶の言葉を述べる。
「改めまして、坂田銀時の妻のフェイトです。いつも夫がお世話になってます。あ、これつまらない物ですけど」
そう言って持参した菓子折りをお妙に渡し、お妙も微笑みながらそれを受け取って言葉を返す。
「まぁまぁご丁寧に。こちらこそ、いつも銀さんにはお世話かけられています」
「あれ? なんか文法おかしくね?」
違和感のある言葉に銀時はツッコミを入れたが、お妙は普通に無視して話を続けた。
「それにしても驚いたわ、まさか銀さんに美人な奥さんがいたなんて。一体いくら騙し取られるのかしら」
「おい、そろそろ結婚詐欺から離れてくんない? 殺すよホント」
再度呟いた銀時の言葉はまたもやスルーされ、今度は他のメンバーたちが口々に言い始める。
「いやでも、確かにそう思われても仕方ないですよ。正直僕たちだってまだ信じられないんですから」
と、新八。
「まったくネ。これは大事件アル。銀ちゃんが全国のフェイトファンにぶっ殺されかねないヨ」
と、神楽。
「そうよねぇ、銀さんが結婚詐欺にあったっていう方がまだ信憑性あるものねぇ」
と、お妙。
「お妙さんの言う通り。万事屋がこんな別嬪さんと結婚してただなんて、信じろというのが無理な話だ」
と、ゴリラ。
………………ゴリラ?
「何当たり前のように話に加わってんだゴリラァ!! どっから湧いて出やがったァ!!!」
「ギャアアア!!!」
突如、般若のような顔に豹変したお妙がゴリラ顔の男をシバきにかかる。馬乗りでタコ殴りにされるゴリラの断末魔が響き渡る中、フェイトが首を傾げながら銀時に尋ねる。
「ねえ銀時、あの人って……」
「気にすんな、ただのストーカーゴリラだ。手紙にも書いておいただろ」
「じゃあ、あの人が近藤さんなんだ。手紙に書いてあった、真選組っていうチンピラ警察のトップに立つストーカーが趣味のボスゴリラって」
「オイィィィ待てェェエ!! 万事屋テメェ! 嫁さんに俺たちの事をどう説明してんだァァ!!?」
なんとかお妙の折檻を切り抜けたゴリラ──『近藤勲』がシャウトしながら銀時に詰め寄る。だが当の銀時は、右手の小指で鼻をほじりながら不遜な態度で応じる。
「うっせーな、ちょっとした前情報を与えただけじゃねーか」
「前情報に悪意が満ち溢れてるじゃねーか! これ要約した俺、チンピラでストーカーでボスゴリラじゃん! 失礼極まりねえよ!!」
「いや、あながち間違ってないですよね」
近藤の必死の抗議に対して新八が小さくツッコミを入れると、そのままの流れでフェイトに声をかける。
「それにしても、どうしてフェイトさんは今まで万事屋に居なかったんですか? 僕たちも銀さんと知り合って結構長いですけど、フェイトさんのことも結婚のことも初耳ですよ」
「やっぱり? 相変わらず銀時は自分の事は全然話さないんだね」
「うっせーなぁ。俺ァ自分を語るとか昔を振り返るとか嫌いだっつってんだろ」
「はいはい」
罰が悪そうな顔でそっぽを向く銀時に対して、フェイトは余裕のある笑顔を浮かべながら頷き、新八の問いに答えた。
「私は万事屋とは別にもう1つ仕事してるの。どちらかと言うと、そっちが本業なんだけど。そっちの方で長期の仕事が入ってしまって、しばらく出張に出てたの」
「まぁそうなんですか? 一体どんなお仕事を?」
「時空管理局の執務官です」
「「じ…時空管理局ゥゥゥ!!?」」
それを聞いた途端、新八と近藤が驚愕で目を見開きながら叫んだ。
「なにアルか、時空管理局って? 飛○神の術とかそんなんアルか?」
「いやそれ時空間忍術! わかりにくいボケやめて!」
神楽の発言にきっちりツッコミながら、新八は時空管理局について説明する。
「時空管理局っていうのは、地球や宇宙とはまったく違う次元にある世界、つまり異世界を管理・維持するための機関で、警察・軍隊・裁判所といった治安維持や法務執行の機能全てを併せ持っている巨大組織なんだよ」
「その通り。かく言うこの『江戸』という世界も、幕府開国時より彼らの管理・保護下にある世界の1つだ。そして驚くべきなのは、管理局に所属する武装隊は全員『魔導師』と呼ばれる魔法使いによって構成されているということ。そこの執務官という役職は、事件の捜査・指揮・法の執行などを管理する統括担当者。つまり、エリート中のエリート魔導師ということだ!!」
新八と近藤の説明を聞いた神楽は、興奮したようにフェイトに詰め寄った。
「マジアルか!? フェイトは魔法少女でエリートだったアルか!?」
「えっと……もう少女っていう年齢じゃないけど……」
「そうだよ、フェイトはスゲーんだよ。もっと敬えコノヤロー」
「なんでアンタが偉そうなんですか」
何故かフェイトの代わりにふんぞり返っている銀時に新八がツッコミを入れる。
「でも何でそんな凄い奴が、銀ちゃんみたいなうだつの上がらない万年金欠ダメ人間の嫁なんかになってるアルか?」
これまでの話を聞いて、純粋に疑問に思ったことを口にする神楽。それに便乗して、新八やお妙も口々に言った。
「そうですよ、フェイトさんみたいな綺麗な人ならもっと良い人がいますよね? なんでよりによって金に意地汚くて、爛れた恋愛しかしてなさそうで、家賃も給料もまともに払わないちゃらんぽらんな銀さんと結婚したんですか?」
「ひょっとして何か弱味でも握られてるのかしら? もしそうだったら言って頂戴、その時は私が貴女の弱味ごとあの天パをぶっ潰しますから」
「ねえ、何でお前ら本人を目の前にしてそんなに言いたい放題なの? 泣いちゃうよ? いくら銀さんでも泣いちゃうよ?」
顔を引きつらせた銀時はそう言うが、当然のごとく全員スルー。すると、新八たちの疑問に対してフェイトは、可笑しそうにクスクスと笑うと、優しい表情を浮かべながら語り始めた。
「確かに銀時には欠点がいっぱいあるよ。色々いい加減だし、お金もないのに飲みに行ったりするし、酒癖は悪いし、パチンコとかの賭け事はするし、え…えっちな本をたくさん隠し持ってるし、たとえ知らないおじさんが相手でもパフェとか甘いものを与えれれば簡単にホイホイついていくレベルの甘党だし……」
「なんでお前も言いたい放題なの? おいホントに泣くぞ!! いいのか!? ガチで泣くぞ!! いい大人のガチ泣きだぞ!! おまえら絶対引くぞォ!!」
「でもね──」
そこで一度言葉を区切ってから、フェイトは再び語る。
「それと同じくらい、銀時の良い所を知ってる。情が厚くて仲間を大切にするところも、大切なものを守る為に本気になれるところも、どんな約束でもちゃんと守ろうとするところも、憎まれ口を叩くけど本当は誰よりも優しいところも、だからみんなに慕われているところも、本当は幽霊とかが怖いのに強がってるところも……私は──全部好き」
頬を朱色に染めながらも、ハッキリとそう言い放ったフェイトの言葉を、誰も茶化すことなく黙って聞いている。
「良い所も悪い所も全部ひっくるめて、私は坂田銀時という人が大好きなんです。だから、彼と結婚したことは間違いなく、私にとっての誇りです」
「「「……………」」」
──お…思った以上にマジだったァァァアアアア!!!!
フェイト以外のこの場にいる全員の心が一致した瞬間だった。
「(ど、どうしましょう姉上、フェイトさん完全に銀さんにベタ惚れなんですけど! ベタ惚れでベタ褒めなんですけど! 銀魂らしく悪ふざけ感覚で言ってみたら、とんでもないカウンターパンチ喰らったんですけど! 藪蛇どころか藪をつついたらヤマタノオロチが出てきたんですけどォ!)」
「(だ、大丈夫よ新ちゃん、まだヤマタノオロチなんてたいそうなものじゃないわ。せいぜい大蛇○レベルよ)」
「(いやそれも色んな意味でヤバいんですけど)」
「(だからこっちもお登勢さんを出せばバランスを保てるわ)」
「(何も保ててねーよ! 最終的に出てきたのく○らじゃねーか! てゆーか落ち着けェェ!!)」
姉弟だからこそできる声には出さない、心の中での新八とお妙のやり取り。何気に高度な以心伝心である。
「なにアルかこの気持ち……フェイトの話を聞いたら私、ヒロインとしての自信をなくしてしまったネ……ゲロを吐いたり下ネタに走ったり、ヒロインどころか人として最低アル……自分が恥ずかしいネ」
「これが本当の人としての愛だと言うのか……それに比べて俺ァ、お妙さんを追いかけ回すストーカー行為を愛だの何だの言って正当化していた……人どころかゴリラとして最低だ……そうだ、真選組に自首しよう」
「(こっちはこっちでエライことになってるんですけど! フェイトさんのヒロイン力と愛を目の当たりにして、ゲロインとゴリラストーカーがもの凄い勢いで反省してるんですけど! フェイトさんって菩薩かなにか!?)」
打ちのめされたかのように両手と両膝をつきながら、懺悔の言葉を口にしている神楽と近藤。
「……………」
「(そして何気に銀さんが一番ダメージ受けてるよ!! 耳まで真っ赤にして俯いちゃってるよ!! あんな銀さん見たことありませんよ!!)」
そしてフェイトの隣で自分の惚気話を聞かされ、何も言わずに俯いている銀時。新八の言う通り、何気に一番ダメージが大きかったりする。恥ずか死ぬ勢いだったりする。
「(お、恐ろしい人だ、フェイトさん! 銀魂的ノリなら、銀さんを完膚なきまでにこき下ろす流れなのに、それをぶった切って恋愛方面にシフトチェンジしただけじゃなく、ヒロインとしての格の違いと銀さんへの愛を見せつけてきた! 今までにないタイプの女性だ! これが、リリカルなのはとクロスオーバーするということなのかァァ!!)」
フェイトという存在の慄きながら内心でシャウトする新八。
と、その時……フェイトがふと思い出したかのように、銀時に声をかけた。
「あ、そういえば銀時」
「へえっ!? な、なんだ……?」
まだダメージが抜け切らない銀時は、顔を赤くしながら上擦った声で返事をする。そして……
「さっき新八が家賃も給料もまともに払わないって言ってたけど──どういうこと?」
「ヒョッ?」
僅かに低くなったフェイトの声を聞いて、真っ赤になった顔から一転、一気に真っ青な顔に変わる銀時。
「私、出張に行く前に言ったよね? 仕送りはするから、お世話になってるお登勢さんにはちゃんと家賃を払うことって、言ったよね?」
「はい……」
「それに送り返した手紙にも、新八君と神楽ちゃんにちゃんとした給料渡してあげてねって書いて、仕送りも増やしたよね?」
「はい……」
「なのにそれがまったく払われてないって……どういうこと?」
「……………」
影を帯びた笑顔を浮かべながら問い詰めるフェイトに対し、ダラダラと滝のように冷汗を流しながら沈黙を貫こうとする銀時。その様子を固唾を呑んで見守る新八たち。というか、雰囲気が変わったフェイトが怖すぎて口を挟めない。
「……パチンコ」
ギクッ!
「競馬」
ギクゥッ!
「お酒」
ギクゥゥッ!!
3回連続で肩を跳ねらせる銀時。バレバレである。
「やっぱり……私が仕送りは全部、ギャンブルと飲み代で使い果たしたんだね」
「…………」
銀時は尚も沈黙を貫こうとするが、すでに有罪確定である。
するとフェイトはゆっくりと立ち上がり、服のポケットから、逆三角形の金色のアクセサリのようなものを取り出す。
「バルディッシュ」
《Yes sir》
その名前を呟くと同時に、逆三角形のアクセサリは一瞬でその形状を変え、黒い斧のような形態になった。そしてその黒い斧──『バルディッシュ』を手に持ったフェイトは冷たい笑みで、眼下にいる銀時を見据えながら言った。
「銀時……少し、頭冷やそうか?」
「それおまえの親友の魔王のセリフ!!」
《Guilty》
「バルディッシュも不吉なこと言ってんじゃねェェエエエ!!!」
堪らず銀時はすぐさま立ち上がって居間を飛び出し、縁側から外へと脱出しようとする。しかし……
「逃がさない」
《Ring bind》
「ゲェェ!!?」
逃げようとした銀時を、フェイトは金色の輪で相手を拘束する魔法『リングバインド』で捕まえる。そして身動きの取れなくなった銀時に向かって、フェイトはバチバチと電気を帯電させたバルディッシュを向ける。
「ま、待て待て待て!! フェイト、話し合おう! 俺たち夫婦だろ!? 夫婦喧嘩の前に、まずはちゃんと話し合うことが大切だと思うなぁ銀さんは!!」
「サンダァァァ……」
「ねえお願いだから待って!! 銀さんが悪かったから!! 謝るから!! 謝るからやめてェェェエ!!!」
「スマッシャーーーーーー!!!!」
「アァァァァァァァァァアアアアアアア!!!!!」
フェイトが放った電気を帯びた金色の閃光が銀時を飲み込み、爆発した。そしてその爆発によって銀時は、アフロヘア―になりながら断末魔を上げて、江戸の空の彼方へと消えていった。
「ふう……もう、銀時ってば」
「「「………………」」」
バルディッシュを再びアクセサリ型へと戻しながら、フェイトは片頬を膨らませながら呟く。そしてそこでようやく、新八たちがポカンとした表情で固まっていることに気がついた。
「あっ、わ…私ったらつい……ごめんなさい! すごく見苦しいところを……」
「「「いえ、お気になさらず」」」
顔を赤くして、ワタワタと慌てながら謝罪をするフェイトに、全員が声を揃えてそう言った。そして同時に──
『フェイトさんは絶対に怒らせないようにしよう!』
──という、暗黙の了解が出来た瞬間だった。
そしてそんな中で……新八はふと、こう思った……
「(よかった……オチはすごく銀魂っぽい……)」
つづく
─オマケ─
「(ん? 管理局といえば……そういやぁ松平のとっつぁんが、今度管理局から
この小説では銀さんたちの世界も『江戸』という名前で管理世界になっているという設定です。詳しいことは後々の本編でやるかもしれない。