銀魂×リリカルなのは   作:久坂

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とりあえず個人的に好きな話からやっていくことに決めました。

感想お待ちしております。


どこの母ちゃんも大体同じ

 

 

 

 

 

「カー…コー…カー……」

 

 

「スゥー…スゥー……」

 

 

チュンチュンと小鳥がさえずる穏やかな朝。暖かな朝日が差し込む万事屋の寝室では、銀時とフェイトの夫婦が2枚並べて敷かれた布団の中で仲良く並んで眠っていた。

 

 

「ん……うーん……」

 

 

すると、フェイトがうっすらと目を覚ます。寝ぼけまなこのまま上半身だけ布団から起こし、「んん~~っ」と両手を頭の上にあげて体を伸ばす。

 

 

「8時半……顔洗って朝ご飯の用意しなくちゃ」

 

 

枕元の目覚まし時計を見ながらそう呟き、主婦として朝の仕度をする為にフェイトは布団から立ち上がろうとする。

しかしその時、未だ隣でぐーぐーと眠る銀時の姿がフェイトの目に映った。

 

 

「………………」

 

 

するとフェイトは起き上るのを止め、再び布団で横になる。しかも自分の布団ではなく、銀時の布団の中にもぞもぞと侵入し、眠っている彼にぴったりと体を寄せ付けた。

 

 

「フフッ……♪」

 

 

布団のぬくもりと一緒に旦那のぬくもりを感じるフェイトは、胸いっぱいに広がる幸福感で顔を綻ばせた。

 

 

そのままやって来るまどろみの中へと再び身を任せ──

 

 

 

 

 

「アンタたちィィィ!! いつまで寝てんのォ!! ホントもォォ!!」

 

 

 

 

 

──ようとした瞬間、見知らぬおばちゃんが寝室の襖をパァンっと勢いよく開けてダミ声を響かせた。

 

 

「え?」

 

 

いきなりの乱入者に「誰!?」とフェイトは唖然としながら心の中で叫ぶ。

 

そんな彼女を他所に、縦縞模様の着物に眼鏡をかけたパンチパーマのオバちゃんはズカズカと寝室に入って来ると、銀時の掛け布団を思いっきり引っぺがす。

 

 

「ホラぁ起きる! 朝ご飯できたよ!」

 

 

「あーもういいって、朝いらねーって」

 

 

「バカ言ってんじゃないの! 朝ご飯は1日の頭のエネルギーの源になるんだよ! のみもんたもテレビで言ってたんだから!」

 

 

そう言うとオバちゃんは銀時の両足を掴んで小脇に抱えると、そのままズルズルと引きずって寝室から連れ出す。

 

 

「ホラァ! アンタもいつまでも寝惚けてないで、さっさと朝ご飯食べなァ!!」

 

 

「えっ!? あ、はい!」

 

 

その光景を呆然と眺めていたフェイトだが、オバちゃんに怒鳴られて我に返ると同時に慌てて寝室を出た。

 

 

「ちょ、もうホントマジ勘弁して…二日酔いなんだって」

 

 

「いい年こいてそんなになるまで飲むんじゃないの! シャキッとしなさい!」

 

 

「なんだヨ~、朝からうるっさいな」

 

 

オバちゃんが銀時に怒鳴ると、騒がしさのあまり別の部屋で寝ていた神楽が起きてきた。ただしまだ半分眠っており、鼻には鼻ちょうちん、目には目ヤニをつけた状態だった。

 

 

「あ~もう、女の子がそんな目ヤニつけた顔で~! 顔洗ってきなさい!」

 

 

「うるっさいアル。私は何者の指図も受けないネ」

 

 

そんな神楽にも怒鳴るが、寝惚け状態の神楽はカクカクと頭を揺らしながらそれを拒否した。

 

 

「しょーがないわね。どれ、こっち向きなさい」

 

 

「うわっ、くさっ!」

 

 

「ほらキレーになった。女の子はキレーにしないとダメ!」

 

 

そう言うとオバちゃんは左手で神楽の顔を掴むと、右手で取り出したハンカチに「ぺぺっ」と唾を吐きかけて、そのままそのハンカチで神楽の目ヤニを拭き取る。

 

 

それからオバちゃんは銀時とフェイトと神楽の3人を食卓につかせ、焼き魚や味噌汁などの朝食をテーブルに並べる。

 

 

「ホントにもうしょーがない子達なんだからァ。ご飯どうするの? 大盛り? 中盛り?」

 

 

「……じゃ中盛りで」

 

 

「何言ってんのそんな痩せた体で! 男はね、ちょっと太ってる位がちょうどいいの!」

 

 

「うるせーな。じゃあハナから聞くなよ」

 

 

「口答えすんじゃないの! アンタはもうホント人のアゲ足ばっかりとってェェェ!!」

 

 

怒鳴りながらオバちゃんは大盛りに盛った茶碗を銀時に渡すと、今度はフェイトに訊ねる。

 

 

「アンタは? 大盛り? 中盛り?」

 

 

「………大盛りで」

 

 

「何言ってんのそんな大きなオッパイつけてェ!! 女の胸はね、慎ましやかな位でちょうどいいの!! 作者もそれくらいの子が好きなんだから!!」

 

 

「いや女同士でもセクハラですよそれ。あと何で作者の好みを暴露したんですか」

 

 

「口答えすんじゃないの! アンタはもうホント人のアゲ足ばっかりとってェェェ!!」

 

 

銀時とオバちゃんのやり取りを見て大盛りを選択したのに、結局怒られてしまったフェイト。しかも渡されたお茶碗に盛られたご飯も結局大盛りだった。

 

 

「お早うございます」

 

 

するとそこへ、万事屋に出勤してきた新八が部屋に入って来た。

 

 

「アラおはよう」

 

 

「わっ!! お…おはようございます」

 

 

「何やってんの、早くご飯食べなさい」

 

 

定春にドックフードをあげていた見知らぬオバちゃんに、新八は驚きながらも挨拶をする。そしてオバちゃんはそんな新八も食卓につかせる。

 

 

「ご飯は? 中盛り? 大盛り?」

 

 

「いや、僕もう食べてきたんで」

 

 

「何言ってんのアンタそんなメガネかけてェ! しっかり食べないから目が悪くなるんだよ!」

 

 

「いやメガネ関係ないでしょ」

 

 

「口答えすんじゃないの! アンタはもうホント人のアゲ足ばっかりとってェェェ!!」

 

 

そう言って新八も大盛りのご飯を渡された。

 

 

「残さず食べるんだよ。ちょっとゴミ捨ててくるから」

 

 

そう言い残して、オバちゃんは部屋から出て行く。

 

 

そして4人が静かに朝食をとっていると、おもむろに新八が口を開いた。

 

 

「銀さん」

 

 

「あ?」

 

 

「誰ですか、アレ」

 

 

「アレだろ、母ちゃんだろ」

 

 

新八の問いに対して、銀時は平然とそう答える。

 

 

「え? 銀さんの?」

 

 

「いやいや俺、家族は(フェイト)しかいねーから。オメーのだろ。スイマセンねなんか」

 

 

「言っとくけど、僕も母さんは物心つく前に死にました。神楽ちゃんでしょ」

 

 

「私のマミー、もっと別嬪アル。それに今は星になったヨ。きっとフェイトのアル」

 

 

「私の母さんも子供の頃に病気で亡くなってるから。義理の母親はいるけど、あんなんじゃないから」

 

 

じゃあ誰なんだよ……と、言葉には出していないが全員の心の声が一致した。そこへまた、オバちゃんが戻って来る。

 

 

「もの食べながら喋るんじゃないの!!」

 

 

「あ、スンマセン」

 

 

「ちゃんと噛むんだよ! 20回噛んでから飲み込みな!!」

 

 

そう言って、再び部屋から出て行く。

 

 

「「「「……1、2、3、4……」」」」

 

 

残された銀時たちは、ただただ噛んだ数を数えながら朝食を進めていくしかなかった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「母ちゃんだよ、八郎の母ちゃん」

 

 

朝食を終えてから、謎のオバちゃんである八郎の母ちゃんはそう名乗った。

 

 

「八郎って誰だよ。つーか八郎の母ちゃんが何故ウチで母ちゃんやってんだよ」

 

 

「ウチの田舎じゃね、母ちゃんはみーんなの母ちゃん。子供はみーんなの子供」

 

 

「グレートマザー気取り? グレートマサみたいな顔して……オイそれ何? 何で食べてんの? ウチのメシ何で食べてんのオイ」

 

 

銀時のツッコミを受けながらも、母ちゃんは気にせず朝食を食べながら事情を説明する。

 

 

「息子に会おうと田舎から江戸に出てきたんだけどね、ま~都会はわからない事だらけでまいったわ~。地下鉄とかもう迷路よ。ウィザドリィ~よ」

 

 

「オイそれ何杯目だオイ。それ何? そのパーマどこであてたんだオイ。何パーマだそれオイ」

 

 

「で、迷って困ってる時にここの看板見つけてね。まァこれからお世話になる事だしみんな寝てる間に朝げでもと思ってね」

 

 

「オイちょっとそれ俺のプリンだよオイ。何勝手に人のデザート食べてんのオイ。それ何? スイッチ? 眉毛の上のオイ、自爆スイッチ? それ押したらいなくなってくれるのオイ」

 

 

「銀時、話進まないから少し落ち着いて。プリンならまた買って来てあげるから」

 

 

母ちゃんに突っかかる銀時をフェイトが宥め、万事屋に来た用件を訊ねる。

 

 

「それで、ここにお世話になるってことは、何か依頼があるってことですか?」

 

 

「そうなのよ。コレ、ウチの息子の八郎なんだけどさ」

 

 

そう言って母ちゃんがテーブルに置いたのは1枚の写真。そこには、たらこ唇に細目で、髪型はちょんまげにした男が写っていた。

 

 

「5年前江戸に上京してから音信不通で、この町で働いてるのは確かなんだよ……一緒に探してくれないかィ?」

 

 

「……いや仕事なら引き受けますけどね、おばちゃんお金とかちゃんと持ってんの?」

 

 

「……コレ八郎に食べさしてあげようと思ったんだけどね……仕方ないね」

 

 

そう言って母ちゃんが持っていた風呂敷を広げてテーブルに並べたのは、お金ではなく大量のかぼちゃだった。

 

 

「オイオイおばちゃんおばちゃん、誠意って何かね?」

 

 

「……成程、そーいう事ですか。つくづく腐ってるねメガロポリス江戸」

 

 

銀時が苛立ち混じりにそう言うと、何を思ったか母ちゃんは溜め息をつきながら立ち上がり、寝室の敷きっぱなしになってる布団の上に大の字になって寝そべる。

 

 

「わかったよ、好きにすればいい……ただ1つだけ言っておく──アンタに真実の愛なんてつかめやしない!!」

 

 

「深読みしてんじゃねェェェェ!!! 気持ちワリーんだよクソババア!! 金だ金!! だいたい俺にはもう嫁さんがいるんだよ!! とっくに真実の愛ってのをつかんで幸せに生きてんだよ!!!」

 

 

「ぎ…銀時……」

 

 

青筋を立てて怒鳴るそう銀時に、フェイトは嬉し恥ずかしそうに頬を紅葉させた。

 

 

「「……ペッ」」

 

 

そんな2人を眺めていた新八と神楽は、やってらんねーと言いたげな顔で床にツバを吐き捨てたのだった。

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「まァ、報酬はその息子さんとやらからたんまり貰うとして、どーだ、見たことあるか?」

 

 

それから結局依頼を受けることになった銀時たち万事屋一行は、まずは身近なところから情報を集める為に、万事屋の下にあるスナックのオーナーであり、万事屋銀ちゃんの大家でもある『お登勢』のもとを訪ねた。

仕事柄、色んな客を相手にすることが多いお登勢はこのかぶき町でも顔が広くし利く。さらにこの街に君臨する四天王の1人としても有名なのだ。

八郎の写真を見せた銀時がそう聞くと、お登勢はタバコを吹かしながら首を横に振った。

 

 

「とんと見かけないツラだねェ」

 

 

「名前は黒板八郎って言うらしいんですけど」

 

 

「名前なんざ、このかぶき町じゃあってなきようなもの。名前も過去も捨てて生きてる連中も多いからねェ」

 

 

「ちょっとちょっと奥さん何? ウチの子が何? なんか胡散臭いことでもやってるって言うの?」

 

 

「いやいや、そういう奴も多いって言ってんだィ、この街には」

 

 

「冗談じゃないよ! 八郎はそんなんじゃないよ!」

 

 

自分の息子が良からぬことをやっているかもしれないと聞いて、母ちゃんは怒鳴る。

 

 

「あの子は小さい頃から真面目で賢くて孝行者で、私の自慢の子だったんだい! 5年前、単身江戸に出たのだって、父ちゃんが急に死んじまって貧乏になったウチを何とかする為に……あの子……」

 

 

語るに連れて泣き崩れ、両膝と両手を床についた母ちゃんは涙を流しながら、叫ぶ。

 

 

「ぐすっ…絶対……トレジャーハンターになるって……!!」

 

 

「「「どこが賢い子!?」」」

 

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

とにかく、八郎がこの街で生きているのは間違いないとのこと。万事屋一行は散り散りに手分けして情報集めに乗り出していた。

 

 

「そーかィ、ありがとよ。また何かあったら頼むわ」

 

 

そう言ってカウンターに座る受付嬢に礼を述べ、階段をおりて薄汚れたビルから出てくる。そこで何を知ったのか、めんどくさそうな面持ちでボリボリと頭をかいた。

 

 

「銀時ー!」

「銀さーん!」

「銀ちゃーん!」

 

 

そこへ別行動で情報を集めてたフェイト、新八、神楽、定春が合流する。しかしその表情を見るに、成果はよろしくないらしい。

 

 

「こっちはダメでした」

 

 

「私もダメネ。これオバちゃんの匂いが染みつきすぎて、定春鼻がおかしくなってしまったアル」

 

 

「私も。この街の知り合いに色々当たってみたんだけど、全然。銀時は?」

 

 

フェイトがそう問い掛けると、銀時は無言で後ろのビルの看板に目を向ける。フェイトもその視線を追って見上げると、そこには『町医者 ホワイトジャック』と書かれた看板があった。

 

 

「ここって、非合法の闇医者の……」

 

 

それを見てフェイトは、管理局の執務官として思うところはあるが、今は万事屋としての仕事中だと割り切っている為、何も言わない。

代わりに「まさか」と、ある考えが頭をよぎった。それを察した銀時は、フェイトに頷きながら口を開く。

 

 

「あちこち情報屋をあたってもアタリがねーんで視点を変えてみた。どーやら孝行者の息子は親からもらったツラ、2、3度変えてるな」

 

 

「それって整形!? どうして……」

 

 

「しかも、ここだけじゃなくあちこちで顔いじりまわしてるようだ。もう写真(コイツ)はアテにならねェ」

 

 

銀時は懐から母ちゃんに渡された八郎の写真を取り出しながらそう言った。

 

 

「顔コロコロ変えるなんて、まるで犯罪者アルな~」

 

 

「……銀さん、この件はあまり深くつっこまない方がいいかもしれませんね。これ以上何か知っても…八郎さんも嫌がりそうだし、お母さんも何も知らない方がいいかも……」

 

 

新八は少しは離れた所にある店で商品を眺めている母ちゃんを気遣って、そう提案する。

 

 

「そいつァ俺たちが決めるこっちゃねェ。とにもかくにも、まず孝行息子を見つけてからの話だ」

 

 

「でも写真はもう使えないし…どうやって?」

 

 

「整形っつったって、骨格まではなかなか変わんねーだろ」

 

 

そう言うと銀時は、どこからか取り出した黒の油性マジックで八郎の写真に何やら書き込んでいる。

 

 

「整形美人なんてみんな似たツラしてるじゃねーか。予想くらいつくだろ……こんなカンジで」

 

 

そして写真を見せると、それ八郎の頭の部分を黒く塗って髪を付け足しただけだった。

 

 

「ちょっと何やってんスか、整形じゃないよ、それただのヅラですよ」

 

 

「私『ビュー○ィーコロ○アム』見てたネ、やらしてよ」

 

 

そこへ銀時からマジックをひったくった神楽が更に、目やら鼻毛やら悟○ヘアやらウ○コやらを描き足していく。

 

 

「おいィィ! 教科書の写真じゃねーんだよ!」

 

 

「こんなに落書きしてどうするのコレ、油性だから修正できないよ」

 

 

「こっからこうカバーすればいいネ」

 

 

「アレッ、これちょっといくね? オイ」

 

 

「あ、うん確かに。探そうと思えば……」

 

 

「ああ…そうですね、いそうコレ。お台場あたりに結構……」

 

 

 

「「いねェェェェェよ!!!」」

 

 

 

フェイトと新八によるダブルツッコミが響き渡る。

 

 

すでに写真は悪ノリに悪ノリが重ねられ、写真の半分を埋め尽くすアフロヘアにもモミアゲと繋がった鼻毛など、色々ととんでもないことになっている。

 

 

「どこにもいねェェよ!! いても外出てこれねェェよ!!」

 

 

「いやいるよ。ネバーランドあたりに結構」

 

 

「ネバーランドにもいないよこんなの!! 妖精の国にこんな毛玉存在しないよ!! 仮にいたとしても何の妖精なのコレ!?」

 

 

「つーかなァ、お前らコレ整形じゃねーんだよ! 毛しか描いてねーじゃねーか!」

 

 

フェイトと新八の怒涛のツッコミ。余談だが、通りの真ん中で騒いでいる彼らは通行人から奇異の目で見られているが、本人たちは気づいていない。

 

 

「やめだやめだ! やっぱやめよう! こんな仕事、どうせ……」

 

 

と、新八が依頼の中断を申し出ようとしたその時……万事屋一行の隣を、1人の男が通り過ぎた。

 

 

その男は、誰もが目を引く巨大なアフロに鼻からモミアゲまで繋がった、鼻毛なのかヒゲなのか髪の毛なのかよく分からない毛が特徴の、白スーツを着た男だった。

 

 

「オス、オラ八郎。あ、ハイ、今からお迎えに参りますんで」

 

 

巨大なアフロから取り出したケータイで電話をして、八郎と言う男はそのまま通りを歩いて行った。

 

 

 

 

 

──いっ…いたァァァァァァ!!!

 

 

 

 

 

万事屋一行全員が心の中で大シャウトする。まさか悪ノリと悪ふざけから生まれた写真と人相が一致する人物が現れるとは思わなかったのだ。しかも名前まで八郎という。もはや奇跡である。

 

 

「マッ…マジでかァァ!? いっ、いたぞオイぃぃ!!」

 

 

「どどど、どーすればいいの! 何をすればいいの僕たち!?」

 

 

「お、落ち着いて! とりあえずお母さんを呼んでこよう!!」

 

 

まさかの事態に狼狽える銀時たち。とにかくまずは母ちゃんを呼ぼうと、少し離れた所で待ってもらっている場所へと視線を向ける。

 

 

「お母……アレ? 何やってんの? アレ……」

 

 

するとそこには、母ちゃんの周囲を派手な着物を来た茶色い肌の若い女達が囲んでいる光景があった。

 

 

「ギャルとメンチ切り合ってるアル」

 

 

「バババぁぁぁ!!!」

 

 

そして当の母ちゃんは、超至近距離でギャルの1人にメンチを切っていた。

 

 

「アレは俺とフェイトがなんとかすっから、お前ら八郎追え!」

 

 

「「うす!!」」

 

 

即座に新八と神楽に八郎を追うように指示した銀時は、自身もフェイトと共に母ちゃんのもとへと走る。

 

 

「ちょ、何このババア。マジムカつくんですけどォ。メッチャガン見してるんですけどウチらのこと。何この間合いありえなくね? ウチら人として見られてなくね? つーかキモくね?」

 

 

何も言わずにただただ至近距離でメンチを切っている母ちゃんに、相対するギャルも少し引いていた。

 

 

「救急車ぁぁぁぁ!!」

 

 

すると突然、母ちゃんは大声でそう叫んだ。

 

 

「ちょっ、何呼んでんの!? ありえなくね!? 何ちょっ、何やってんの!?」

 

 

「誰かァァァァ! 救急車を早くぅ!! この人たち顔色が土色の上、吐き気を訴えていますぅぅ!!」

 

 

「テメーがキモいって言ったんだよババア! ちょ、マジムカつくんだけど!!」

 

 

そんな母ちゃんに行動に呆れながら、銀時とフェイトは母ちゃんを連れて行こうとする。

 

 

「お母さん、早くこっちに行きましょう」

 

 

「ワリーな、田舎者だから許してやってくれ」

 

 

フェイトが母ちゃんの手を引き、銀時はギャルたちに適当な謝罪を述べてその場を去ろうとする。しかし母ちゃんは叫びを止めない。

 

 

「ちょっ、ダメよ銀さん! フェイトちゃん! あの娘たちの顔見て! アレ、父ちゃんが死んだ時と同じ顔色よ!」

 

 

「ああアレな、こえだめから生まれてきたんだアレ」

 

 

「それどーいう意味だコルァ!!!」

 

 

「そーいう意味だ。ちょ、忙しいからこえだめに帰れ」

 

 

尚も騒ぐ母ちゃんとギャルに頭を抱えながらも、その場を離れようとする銀時とフェイト。

 

 

「ちょっと何ィ何ィ? お咲ちゃんモメ事~? イェ~」

 

 

「勘吉さん!」

 

 

すると、通りの向こうから、ダルダルのズボンを履いたチャラ男の2人組が近づいてきた。どうやらギャルたちの知り合いらしい。

 

 

「なんかァ~、このダセー親子が私らに絡んできて~」

 

 

「オイオイ、何3人はおのぼりさん? イェ~」

 

 

どうやら母ちゃんを銀時とフェイトのどちらかの母ちゃんと思っているらしい。どちらかというと銀時だろうか。

 

 

「どこの山奥からきたのか知らないけどさ~、あんま俺の街で調子こいてっと殺すよマジで」

 

 

ギャルたちを侍らせながらそう言って銀時たちを睨む、勘吉と呼ばれたチャラ男。すると母ちゃんが、その勘吉を指差しながらコソコソと銀時とフェイトに聞こえる位の小声で言った。

 

 

「アレ、あの人足短い」

 

 

「ファッションだコラァァァァ!!!」

 

 

しかしどうやら勘吉にも聞こえていたらしく、大声でシャウトする。

 

 

「ごめんなさい、この人田舎から来たんで、多少のことは目をつむってあげてください」

 

 

「すいません。ちょっ、忙しいんで俺たちはこれで」

 

 

とりあえず場を収めるため、銀時とフェイトは適当に謝ってから再びこの場を後にしようとする。その際、銀時がこっそりと母ちゃんに耳打ちをする。

 

 

「オイいい加減にしろよ。アレはな、今江戸で流行ってる足の短さをごまかすファッショ…」

 

 

「オメーが一番失礼なんだよ!!」」

 

 

しかしそれも聞こえていたらしく、とうとうキレた勘吉ともう1人のチャラ男が銀時たちに襲い掛かる。

 

 

「コルァァ待てやァ!! マジなめてっと、ババァだろーと容赦しねーっ……」

 

 

と、その時……母ちゃんに襲い掛かろうとしたチャラ男2人の体に、フワリとした浮遊感が走る。

 

 

「ねェ、聞こえなかったかなァ? 私たちは今、忙しいって言ったの」

 

 

「足袋でも袴でもルーズにキメんのは結構ですけどね」

 

 

見ると、銀時が勘吉のダルダルスボンの股下を…フェイトがもう1人のチャラ男の胸倉を掴みあげて、揃って宙吊り状態にされていた。

 

 

「ババァに手ェ上げるたァ、どういう了見だィお兄ちゃんたち……足袋はルーズでもさァ」

 

 

そして……

 

 

 

 

「人の道理くらい──」

「──キッチリしやがれェェ!!!!」

 

 

 

 

 

「「ぎゃあああ!!!」」

 

 

そのまま思いっ切り地面に頭から叩き付けたのだった。さらに銀時はフェイトに倒されたチャラ男の股下まで持ち上げて叫ぶ。

 

 

「オラァァァ! ズボンをあげろボケがァァァァ!!」

 

 

「足袋をあげろォ!」

 

 

それに便乗して母ちゃんも、ギャルたちの足袋をあげて直させていた。

 

 

「翔のアニキを見習えェェ!! ベルトは乳首のちょい下だったぞォォ!!!」

 

 

そう言って2人組を地面に投げ捨てると、続けて勘吉の胸倉をつかむ銀時。

 

 

「その辺にしておきたまえよ!」

 

 

「「!!」」

 

 

するとその時、少し高めでよく通るような男の声が聞こえた。

 

 

「勘吉、こんな所で何をやっているんだ君は」

 

 

「!! きっ…狂死郎さん!!」

 

 

七三分けにセットされ金髪に切れ長の眼をしたイケメンが、凛とした態度で立っていた。

 

 

「(あ…八郎!?)」

 

 

そしてその狂死郎と呼ばれたイケメンの隣には、巨大アフロの男──八郎。すると八郎は、ズンズンと勘吉に歩み寄ると……

 

 

「このボケがぁぁぁぁ!!」

 

 

「ぐふぅ!!」

 

 

思いっ切り足を振り上げて、勘吉を蹴り飛ばす。

 

 

「下っぱとはいえウチの店に勤めてるモンが、狂死郎さんの顔に泥塗るようなマネしやがってェェ!!」

 

 

更に追い打ちをかけるように、何度も踏み付けるように蹴る。

 

 

「てめーはクビだ。二度とこのかぶき町に足ふみいれんじゃねぇ」

 

 

気絶している勘吉にそう言い残し、八郎は狂死郎のもとへと戻る。

 

 

「(えっと……え?)」

 

 

「(どーいうこと?)」

 

 

あまりの展開に銀時とフェイトが疑問符を浮かべていると、周囲の野次馬の中にいた若い娘たちの声が聞こえた。

 

 

「キャー!狂死郎様と八郎様だわ!」

 

 

「ヘェー、あれがかぶき町No.1ホスト、本城狂死郎」

 

 

「カッコイイけどちょっと恐くない?ヤクザチックっていうか」

 

 

──ホスト? アレ……ホストってなんだっけ?

 

 

「なんだィアレ? 銀さん、ポストってなんだィ。ねェ…ちょっと」

 

 

「……あん? アレだよ、ホステスの男バージョン。選ばれたイケメンのみがなれ…」

 

 

そこまで言いかけて、銀時は改めて八郎の顔を見る。

 

 

──ホスト? アレ…ホストって何だっけ? 選ばれたイケメ……アレ? ホスト?

 

 

銀時の頭の中で、目の前の八郎とホストという言葉がどうしても結びつかなかった。無理もない……巨大アフロに、鼻毛とヒゲとモミアゲと眉毛が繋がっている八郎は、どう見てもホストという風体ではない。

 

 

──これ…ホスト? ホスト!?

 

 

今度は横の母ちゃんに視線を向ける銀時。

 

 

──コレの…息子(アレ)が……

 

 

「──ホストぉぉぉ!?」

 

 

銀時の突然の大声に、野次馬を含む全員がビクッと体を震わせる。

 

 

ふと、銀時はフェイトに視線を向ける。

 

 

「……………」

 

 

銀時と同じ考えに至ったのか、顔を引きつらせて愕然としている。

 

 

続けて、野次馬の中で見つけた新八と神楽に視線を向ける。

 

 

「「(コクコク)」」

 

 

無言で頷き返される。もう言葉も出ないほどの衝撃を受けた銀時であった。

 

 

するとそこへ、事の張本人である八郎が、銀時たちに声をかける。

 

 

「ウチのモンが迷惑かけて大変申し訳ありません。おケガありませんか?」

 

 

「ああ、平気だよこんなモン」

 

 

謝罪してくる八郎に、母ちゃんがこともなげに返す。

 

 

「ぜひお詫びがしたいので、ウチの店へきてくださいませんか?」

 

 

「店?」

 

 

首を傾げる母ちゃんに、八郎が頷きながら静かに告げた。

 

 

 

 

 

「俺たちの城──高天原へ」

 

 

 

 

 

つづく

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