銀魂×リリカルなのは   作:久坂

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特に書くことはありません。

感想お待ちしております。


最近柿ピーのピーナッツ抜きが売ってるけどそれはそれで何か物足りない気がする

 

 

 

 

 

突然万事屋に押しかけてきた、八郎の母ちゃんなるオバちゃんの依頼を受けて、その息子である八郎を探すことになった銀時たち万事屋。

 

そして紆余曲折ありながらも、八郎と名乗る人物を発見した。しかもかぶき町でホストをやっているという。

 

八郎と同じで店で働く男とトラブルを起こした銀時たちは、迷惑をかけたそのお詫びとして、八郎の案内でかぶき町NO,1ホストである『本城狂死郎』が営むホストクラブ『高天原』へとやって来たのだった

 

 

「そうネ、じゃあドンペリでも持ってきてもらおうかしら」

 

 

「いやでもお嬢さん未成年でしょ?ジュースとかの方が……うぶっ!!」

 

 

「あんまり私を怒らせないでくれる? ボウヤ。お嬢さんじゃない、女王様と呼べと言ったはずよ」

 

 

「申し訳ございませんでした! かぶき町の女王様!!」

 

 

店の一角で、神楽が何やらホストたちを侍らせて自分の世界に浸っている。

 

 

「神楽、また変な昼ドラ見たんだね。お店の人たちも困ってるし、注意してこようか」

 

 

「ほっとけほっとけ。あれ位のガキはなァ、ちょっと背伸びしたがる年頃なんだよ」

 

 

「いや背伸びってレベルじゃないよアレ、生まれて初めてハイヒールを履いて視点が高くなって調子に乗ってるやつだよアレ、でも全然履き慣れなくて最終的にケガするやつだよアレ」

 

 

「そうやって痛みを伴ってこそ、ガキは大人へと成長していくんだよ」

 

 

「ハァ……単に銀時が放任主義でめんどくさがりなだけでしょう」

 

 

フェイトはそう言って溜息をつくと、諦めたように銀時の隣の席に腰を据える。

 

 

「いや~、これがホストクラブか」

 

 

「んだか落ち着かねーなオイ」

 

 

「そうだね、私もこういう店はちょっと……」

 

 

神楽はともかく、男客である銀時と新八はもちろん、こういった店に縁がないフェイトも居心地が悪そうにしながらお店を見回す。どうにも居場所がない感じがするのだ。

 

 

「ただ酒飲めるだけでヨシとしよーや。新八は飲むなよ? オロナミンCまでなら許してやっから。1本だけだぞ。フェイトもなんか飲むか?」

 

 

「私はいいよ、お酒はあんまり得意じゃないし。ホストさんの代わりに、銀時のお酌でもしてるよ」

 

 

「おっ、悪ィな」

 

 

そう言いながら銀時の持つグラスにお酒を注いでお酌をするフェイト。と、その時……

 

 

「いやぁぁぁ!!」

 

 

近くの席に座って2人のホストに囲まれている母ちゃんが、突然悲鳴を上げた。

 

 

「さわった! 今このコさわったわ、私のこと!」

 

 

「いえさわってませんって。お酒ついだだけ…」

 

 

「いえさわりましたっ! ヒジでオッパイさわりましたァ今! アンタもアンタで何チラチラいやらしい目で見てるの?」

 

 

「……い…いや、見てません」

 

 

「見てたじゃないの! さっきからチラチラ私とフェイトちゃんのボデーばっかり! セクハラ! セクシャルハラスメント!」

 

 

「えっ!?」

 

 

母ちゃんがそう指摘すると、それを聞いたフェイトが顔を赤くして己の体を隠すように身をよじる。

 

 

「オイババアうるせーよ。セクハラはアンタの顔面だ。あとそこの兄ちゃん、人の嫁をあんまそういう目で見ないでくんない。殺すよホント」

 

 

呆れた口調で母ちゃんにそうツッコミを入れる銀時。その際、フェイトをいやらしい目で見たというホストにはきっちり釘を刺しておくことも忘れない。

 

 

「ちょ、もういやーよ銀さん! 何ココ!! 私たち八郎を捜しにきたんでしょ! こんな所にいるっていうの!?」

 

 

「まぁまぁお母さん、ちょっと落ち着いて」

 

 

「アンタらもういいから。俺たち勝手に飲むから」

 

 

そう言ってフェイトが母ちゃんを落ち着かせ、銀時がホストたちを退散させる。その時、新八が銀時とフェイトにしか聞こえないような声で話す。

 

 

「銀さん、お母さんやっぱりまだ気づいてないみたいですね」

 

 

「そりゃそーだろ」

 

 

そう答えながら銀時はふと、店の中を見回っている巨大アフロの男──八郎に目を向ける。

 

 

「いくら息子でも、あんな変わっちまったんじゃ……八郎なんて名前、よくある名前だしな」

 

 

「でも、八郎さんはどういうつもりなんだろう? 一切お母さんに息子だって名乗り出る様子もないし……五年間音信不通で、あんなに変わっちゃったんじゃ言い出しづらいのはわかる。多分、会いたくなかったんでしょうけど…じゃあなんでわざわざ向こうから接触してきたんだろう?」

 

 

「理屈じゃねーんだよ人間なんざ。うっとーしい母ちゃんでも、目の前で暴漢に襲われりゃ助けちまうのが息子ってもんだろ」

 

 

「そうだよ。たとえ娘を鞭で叩いたりするような母親でも、娘にとってはたった1人の大切な母さんなんだから、助けたりするのは当然だよ」

 

 

「襲われたっていうか、襲ってましたよねアンタら。つーかフェイトさんの話に何か妙な重みがあるんですけど、何かあったんですか?」

 

 

「ちょっとね」

 

 

新八はツッコミを入れながらフェイトに何があったのか訊ねるが、普通にはぐらかされてしまった。

 

 

「皆さん、お楽しみ頂けてますか?」

 

 

「あ、狂死郎さん」

 

 

するとそこへ、この店のオーナーである狂死郎がやって来た。

 

 

「悪ィな、野郎に酒ついでもらってもなんだから、嫁に酌してもらうことにしたわ」

 

 

「フフ…それは出過ぎたマネを致しました。どうぞ奥様と一緒にお好きなだけ飲んでいってください。あ、何かお食べになりますか?」

 

 

「あ、じゃあコレ……」

 

 

「いらないよそんなの。ちゃんとウチから持ってきたから」

 

 

狂死郎がそう言うと、銀時はその好意に甘えてメニューを眺めながら注文しようとするが、それを遮って母ちゃんがどこからか取り出した重箱をテーブルに置いた。

 

 

「ホラ、煮豆! コレ年の数だけ食べな。ガンにならないよコレ」

 

 

そして重箱を開くと、そこには黒豆で作られた煮豆が詰まっていた。

 

 

「何持ち込んでんの!? 貧乏くせーからやめてくんない!! こういう所くらいお前、スタイリッシュにキメさせろよ! 何で甘い豆!? 酒に合うかよ!!」

 

 

「そーいう怒りっぽいところも治るからこの豆は! 食べな早く! ホラ、そこの派手な兄ちゃんも!」

 

 

「え? あ、はい」

 

 

母ちゃんに怒鳴られながら促され、狂死郎も戸惑いながら席の空いているスペースに座る。

 

 

「あ、美味しいこの煮豆。お母さん、コレどうやって作ってるんですか?」

 

 

「これはね奥さん、まず黒豆を水が入った器にそっと入れて洗うんだよ。何回か水を取り替えるのも忘れずにね。それでね……」

 

 

主婦らしく母ちゃんに煮豆の作り方を教わっているフェイトを尻目に、新八は隣に座った狂死郎に八郎の事を聞く為に話しかける。

 

 

「狂死郎さん、ちょっとお伺いしたい事が…」

 

 

「え? なんですか」

 

 

「狂死郎さん、この店のオーナーでもあるんですよね?」

 

 

「ええ」

 

 

「あの巨大アフロさんなんですけど、いつからこの店で働いてらっしゃるんですか?」

 

 

「八郎ですか? 彼はこの店の立ち上げの時から一緒にやってきた僕の親友です。以前は僕も別の店で働いていたんですが、二年前独立しようと彼と2人で。彼も昔はホストだったんですが、今は裏方の仕事を……以前ちょっと整形で失敗しまして、それからは」

 

 

「整形に失敗ってどんな失敗したらあんなんなるんですか? オペ室爆発したんですか?」

 

 

新八はしっかりとツッコミを入れつつも、狂死郎から八郎の情報を聞き出すことを忘れない。

 

 

「……さっきのような事も、八郎さんの仕事なんですか?」

 

 

新八の言うさっきの事とは、八郎が勘吉と呼ばれるチャラ男をシバき回していたことだろう。

 

 

「ええまァ、用心棒的な事も……先ほどはお見苦しい所をお見せしました。物騒な街ですから、そういった事もね…この街でのし上がるには、キレイなままではいられないですから。私もかぶき町NO.1ホストとまで言われるようになりましたが、得たものより失ったもの方が多い」

 

 

母ちゃんの煮豆を口にしながら、八郎はそう語る。

 

 

「恥ずかしい話……親に顔向けできない連中ばかりですよ」

 

 

そう言い放つ狂死郎の顔は、どこか悲しげな感情に満ちていた。そんな彼の顔に新八は何か感じ取ったのか、何も言わずに彼を見ていた。

 

 

「で、八郎になにか……」

 

 

と、狂死郎はそう言いかけたその時……ガシャァァァっという派手な音が店の中に響き渡る。

 

 

「!!」

 

 

その音の出所を見てみるとそこには、八郎がいかにもヤクザのような風貌をした男たちに倒されていた。

 

 

「アニキ、おりましたわ。コイツが八郎です」

 

 

「ほーかィ、ほな早うこっち連れてきてェ。店に迷惑かかるやん」

 

 

ヤクザにアニキと呼ばれた、顔の中心を通るように傷跡があり、口には串を咥えた七三分けの男がそう言った。

 

 

「エライ騒がしてすんませんでした。皆さん気にせんとどうぞ続けて下さい。ほなこれで」

 

 

男はそう言うが、彼を恐れた女客たちは一斉に席から立ち上がって1人残らず店から走って逃げて行ってしまった。

 

 

「アララ、みんな逃げてもうた。すんまへん八狂死郎はん、営業妨害で訴えんといてな」

 

 

「勝男さん、またあなたですか八郎を離して下さい。嫌がらせはもうやめて下さい」

 

 

勝男という七三分けの男に狂死郎はそう言うが、勝男は首を横に振って弁解する。

 

 

「ちゃうねんちゃうねん。今日はあの件ちゃうねんって狂死郎はん。ホンマ、ワシもこないな事で出張るの正直しんどいんやで」

 

 

そう言いながら、近くの席にドカっと仰々しく腰かける勝男。

 

 

「今ウチのダックスフント産気づいてまんねん。立ち会いたいねん出産に。ホンマ、ガキの喧嘩に顔突っ込んでる暇ないんやで、オッサン」

 

 

「ガキの喧嘩?」

 

 

勝男と呼ばれた男の言い分は、昼間に八郎がシバき倒したチャラ男の勘吉は、彼らが所属する『溝鼠組』の親分の親戚の親戚の親戚の親戚らしく、そのケジメをつける為に来たという。

ただその親戚を勝男が平気で蹴り飛ばしている所を見るに、完全な言い掛かりである。

 

 

その一方で、銀時たち万事屋一行は、客が逃げ帰ったのに紛れてソファの影に身を隠し、その様子を伺っていた。

 

 

「銀さんヤバいよ、八郎さんが……」

 

 

「何なの、あいつら」

 

 

「ありゃ恐らく、溝鼠組の黒駒の勝男。かぶき町四天王の1人、侠客『泥水次郎長』んトコの若頭だ。アブネー奴とは聞いてたが、また厄介な奴と何モメてやがるな」

 

 

「ヤクよヤク」

 

 

「うわっ!」

 

 

「ヤク……クスリだね」

 

 

銀時と新八の間に、オロナミンCの瓶を持った神楽が割り込んでそう言った。彼女の言うヤクとは、間違いなくそういうクスリのことだろうとフェイトは察した。執務官という職業柄、そういったものを取り締まることも少なくないのだ。今も万事屋ではなく執務官として行動してる時だったら、すかさずあそこに割って入って取り締まっていただろう。

 

 

「チャラ男どもが言ってたアル。溝鼠組の連中、自分達が持ち込んだヤクをこのクラブでさばけと何度も店に来てたみたいヨ。それを狂死郎が断ってから、嫌がらせしに来るようになったって」

 

 

「ちゃんと情報収集してたんだ」

 

 

神楽は遊んでいるように見えて、実はしっかりと情報を集めていたらしく、フェイトは少し見直した。

 

 

「……ったく、次から次に手のかかる息子だぜ。なぁ母ちゃんよ……アレ? そういやババァは?」

 

 

「アレ、いないアル」

 

 

銀時がそう呼びかけるが、母ちゃんからの返事はない。辺りを見回すと、さっきまでその辺にいたハズの母ちゃんがいなかった。

 

 

「……銀時」

 

 

「あん?」

 

 

「アレ」

 

 

そう言って唖然とした表情で、何かを指差すフェイト。銀時はその指が指し示す方向を見ると、そこには……

 

 

「ちょっとォォォォ!! 何やってんのォォ!!」

 

 

何故かヤクザとホストのいざこざの中にいる母ちゃんの姿があった。それを見た銀時たちは、お前が何やってんだと心の底から叫びたかった。

 

 

「血だらけじゃないのちょっとォォォ! どうしたのコレェェ!!」

 

 

「なんや? このオバはん」

 

 

「ちょっとォォォ! コレっ…あのっ…ちょっとォォォ!!」

 

 

「何回言うねん」

 

 

突然現れた母ちゃんに、勝男も訝しげな顔をしている。

 

 

「マズイ、お母さんを助けなくちゃ!」

 

 

「待てフェイト!!」

 

 

「銀時、なんで止め──!?」

 

 

フェイトは母ちゃんを助ける為にソファの影から飛び出そうとするが、銀時に止められる。何故止めるのかと銀時に問おうとしたが、銀時がクイクイっと何かを指差しているのに気づいて言葉を止める。

 

 

その銀時が指し示す先には──『関係者以外立入禁止』と書かれた、裏方への入り口があったのだった。

 

 

一方で、母ちゃんの方は……

 

 

「確かに柿ピーはお酒と合うけれどもォォ! 食べ過ぎちゃダメって……」

 

 

「ピーナッツの食い過ぎでこない血ィ出るワケないやろ!!」

 

 

「柿とピーナッツは6:4の割合でイケと言ったじゃないのォォ!!」

 

 

空気を読まずに喚く母ちゃん。だがその時、母ちゃんの前に勝男がズイッと乗り出す。

 

 

「おいオバはん、ええ加減にしいや。ワシら遊びに来たんとちゃうねん。ナメとったらアカンど……───柿とピーナッツの割合は7:3に決まっとるやろーがァァ!!」

 

 

母ちゃんを見下ろしながら力強くそう言い放つ勝男。

 

 

「世の中の事は全てコレ、7:3でピッチリうまく分けられるよーなっとんじゃ!! 7:3が宇宙万物根元の黄金比じゃボケコラカスぅ!!」

 

 

7:3に並々ならぬこだわりがあるのか、自分の七三分けにした髪を撫でながら怒鳴る勝男。しかしそれに対して、母ちゃんも負けじと怒鳴り返す。

 

 

「7:3ってそれ柿ピーじゃなくて柿の種食いたいだけじゃろーが!! テメーは一生、猿カニ合戦読んでろボケコラクズぅ!!」

 

 

「アホか!! この比率が柿とピーナッツ双方を引き立たせる黄金比なんじゃ!! ボケコラブスぅ!!」

 

 

「テメーはその黄金比という言葉に酔ってるだけで考える事を放棄し、ただ明日を死んだように生きていけボケコラナスぅ!!」

 

 

「上等やオバはん、今夜は朝まで柿ピー生討論や」

 

 

「白黒ハッキリつけようじゃないのさ」

 

 

そう言って互いに向かい合うようにして席に座る勝男と母ちゃん。

 

 

「アニキ、ワシら何しに来たんですか?」

 

 

最終的には子分にまでツッコミを入れられてしまっていた。

 

 

「酒持ってこんかい!! なんやこの店、ホストクラブのくせに接客もようせんのか?」

 

 

すると勝男は酒を要求しながらテーブルを蹴り倒す。どうやらまどろっこしい方法は止めて、ヤクザらしいやり方に切り替えたらしい。

 

 

「ハーイ、今お持ちしまーす」

 

 

そんな勝男に他のホストたちが怖気づく中……そんな声が響き渡ると、その場にいたヤクザもホストもその声が聞こえた方へと視線を向ける。

 

 

するとそこには、4人のホストが立っていた。

 

 

「今宵はホストクラブ高天原へようこそいらっしゃいました。当クラブトップ4ホストの1人──シンです」

 

 

1人は黒いスーツに黒いネクタイを締めてメガネをかけ……

 

 

「ギンです。ジャストドゥーイット!」

 

 

1人は赤いワイシャツの上から黒いジャケットを羽織り……

 

 

「グラだぜ、フゥー」

 

 

1人は黒いYシャツに上下白のスーツと白のネクタイ、さらに髪型をオールバックにしており……

 

 

「フェイです、イッツショータイム」

 

 

最後の1人は長い金髪をストレートにおろし、黄色のワイシャツに黒ネクタイ、そして上下黒のスーツをきっちりと着こなしていた。

 

 

言わずもがな……上から新八、銀時、神楽、フェイトの万事屋一行である。先ほど裏方に入って、ホストたちの衣装を拝借してきたのである。因みにフェイトは胸を隠すため、サラシをこれでもかというほど巻いているのは余談である。

 

 

「なっ……」

 

 

そんな彼らの登場に、狂死郎も絶句する。しかし勝男は好意的に笑う。

 

 

「度胸あるやないか、こっち来い。ホンマはキレーな姉ちゃん侍らしたいトコやけどな」

 

 

「? アレ? 銀さ……ぐぇふっ!!」

 

 

その時、母ちゃんが銀時に気付いてその名を呼ぼうとした瞬間……鳩尾に神楽のボディブローが叩き込まれ、母ちゃんは意識を失った。

 

 

「アレ? お客さん? アララ~もう潰れちゃったぜ、フゥー」

 

 

「いや、オバはんまだ飲んでへんで」

 

 

「オイ、シン。ババ…お客さんをあちらに寝かせてジャストドゥーイット」

 

 

「オッケェイ、我が命にかえても」

 

 

「なんやウザイんやけど」

 

 

銀時の指示通り、ぐったりとしてしまった母ちゃんを新八が奥へと運んで行く。そんな彼らの行動に勝男は不審に思いながらも、狂死郎との話を再開させようとする。

 

 

「まァエエわ。狂死郎はん、話を元に戻…」

「何飲みますか?」

 

 

しかしそこで、すかさず銀時が注文を聞く。

 

 

「焼酎水割り7:3で、話を元に戻…」

「焼酎3ですか? 水3ですか?」

 

 

「焼酎や。話を元に戻…」

「焼酎3ですか?」

 

 

「せやから焼酎3やて! 話を元に戻…」

「焼酎さん、何飲みますか?」

 

 

「焼酎さんちゃうわァァァ!!」

 

 

あまりにもしつこい銀時の注文に、勝男は叫ぶ。

 

 

「いや焼酎3やけれども! この『3』は『さん』やのーてスリーや! 焼酎スリー、水セブン、オッケー?」

 

 

「オッケェー、我が命にかえても」

 

 

「流行んねーからそれ! さっきから何か押してるけども! イラッとくるからそれ!!」

 

 

そう怒鳴りながら勝男が銀時にひとしきりツッコミを入れると、今度はフェイトが銀時と入れ替わるように勝男の前に立つ。

 

 

「大変失礼致しました、お客様。お詫びとは言っては何ですが、カクテルなどいかがでしょうか?」

 

 

きっちりとした佇まいでそう言いながら、フェイトは勝男にカクテルのメニューを渡す。それを受け取った勝男の顔は少々難色を表していた。

 

 

「カクテルのォ…ワシァあんまり小洒落た酒は好きやないんじゃが」

 

 

「いえいえ、お客様のようなダンディズムに溢れた男性にこそ、カクテルが似合うというものです」

 

 

「ほう、なかなか世辞っちゅうモンんがわかっとるやないか。ほんならカクテルもらおか。あんま詳しないから、種類は任せるわ」

 

 

「オッケェー、我が命にかえても」

 

 

「せやから流行らんからなそれ!!」

 

 

返事は変だが、ペコリとしっかり45度のお辞儀をして、フェイトはカクテルを作る為に店の奥のカウンター席の方へと歩いて行く。

 

 

「ほな話を元に戻すでェ、狂死郎は…」

「お待たせしましたー」

「早っ!?」

 

 

勝男の話を遮って、ものの数秒で戻って来たフェイトに、勝男はすかさずツッコミを入れる。

 

 

「オイ、えらい早ないか? カクテルってそない速攻で出来るもんなんか?」

 

 

「速さがわたくしの自慢ですから。こちら、スクリュードライバーになります」

 

 

そう言ってフェイトは、ウオッカとオレンジジュースの組み合わせで作られたカクテル……スクリュードライバーを置いた。

 

 

──グラスの中にドライバー(+)を突き立てた状態で。

 

 

「……ちょお待てオイ」

 

 

「何か?」

 

 

「何かやあらへんやろ! 明らかにおかしいやろコレ!! 何でグラスん中にドライバーが突き刺さっとんねん!?」

 

 

「スクリュードライバーですから」

 

 

「騙されへんぞォ!! カクテルに詳しないワシでもわかる!! そのスクリュードライバーとこのスクリュードライバーは絶対にちゃう!! 絶対に別モンやろォ!!」

 

 

そう青筋を浮かべてツッコミを入れる勝男。するとフェイトはくすくすと笑いながら、グラスを取り下げる。

 

 

「失礼致しました、軽いジョークでございます。すぐにお取替えしますので」

 

 

「オウ、頼むでホンマ」

 

 

そう言って再びカウンター席の方へと引っ込んでいくフェイト。

 

 

「ほな狂死…」

「お待たせしましたー」

「早っ!? さっきより早っ!?」

 

 

またもや勝男の話を遮って、ものの数秒で戻って来たフェイト。

 

 

「こちら、スクリュードライバーでございます」

 

 

そして再び勝男の前にグラスを置いた。しかしそのグラスには、酒と氷以外にまたもやドライバーが突き立てられていた。

 

 

「………………」

 

 

一見変わり映えのしていないグラスを、勝男は無言で見つめている。そして何気なくグラスから引き抜いたドライバーを見て、勝男は気づいた。

 

 

──ドライバーの先端が(-)になっていることに。

 

 

「ドライバー(+)からドライバー(-)に変わっただけやないかァァァ!!!」

 

 

顔に青筋を浮かべて、ドライバーを床に叩きつけながら勝男は渾身のツッコミを叫んだ。

 

 

「ホンマええ加減にせェよ!! 何でドライバーの種類変えただけやねん!! しかもプラスからマイナスって、なんや損した気分になるやろがァ!!」

 

 

「他にも六角ドライバーやボックスドライバー、パイルドライバーなどもご用意しております」

 

 

「いらんいらんいらん!! 何で頑なにドライバーを酒に突っ込むねん!? ドライバーになんか恨みでもあんのか!? ってか最後のドライバーはプロレス技やろ!!!」

 

 

一通りフェイトにツッコミを入れると、勝男は疲れたように溜息をつきながらソファに座る。

 

 

「ハァ……もうカクテルはエエわ。これ以上お前と話しとったらドライバーがゲシュタルト崩壊起こしてまいそうやわ」

 

 

そして今度こそ話を元に戻すため、勝男は狂死郎に視線を向けて口を開く。

 

 

「狂死郎はん、もう面倒やからぶっちゃけて話さしてもらうけどな。オタクのツレ、ケガさしとーないんやったらワシらの要求呑めっちゅー話や。悪い話やないやろ、簡単や。いつものように甘いトークで女ども誑かして、金落とさせたらエエねん。クスリ買わせてな。それでワシらこの店の用心棒代わりしたるし、儲けもキッチリ7:3で分けたろーゆーてんねん。もうこないな事も無くなるし万々歳やないの」

 

 

そう言いながら、勝男は懐から取り出したタバコを1本口に咥えて、隣に座る神楽の方へと向ける。火を着けろということだろう。

 

 

「前にも言ったはずです。僕らはあなたたちのような人たちの力を借りるつもりはない。僕らは自分たちの力だけでこの街で生きてきた。これからも変わるつもりはない」

 

 

カンカンカンカンカンカンカン…

 

 

「ほぅ。ほなツレがどーなっても…いっ!」

 

 

そう言いかけたその時、タバコに火を着けようと打ち鳴らしていた神楽の火打ち石が、勝男の頬に直撃する。

 

 

「ちょっともう痛い! 痛いしうるさい! 何で火打ち石? さっきからガツンガツン当たっとんねん!」

 

 

怒鳴りながら勝男は、自分のライターを神楽に渡す。

 

 

「ライター無いんか。ほなコレ使って」

 

 

「いや、いいですプレゼントとか…重たい。なんか付き合ってみたいな」

 

 

「お前にあげたんちゃうっちゅーねん! ソレ使って火ィつけて言うてんの!!」

 

 

「フゥー!」

 

 

「火打ち石とコラボレーションすな!!」

 

 

神楽は受け取ったライターを火打ち石で挟んで、粉々に粉砕したのだった。

 

 

「お前何さらしてくれとんねん、高かったんやでコレ」

 

 

ライターを破壊されて勝男が嘆いていると、ヤクザに取り押さえられていた八郎が叫ぶ。

 

 

「狂死郎さん!! オラに構うことはない! こんな奴らの言いなりになるな!! 泥水すすって顔まで変えて、それでもオラたち、自分たちの足で歩いていこうって、この街で生きていこうって決めたじゃないか!!」

 

 

だがその時、勝男が八郎のアフロを掴んで床に投げ飛ばす。

 

 

「ええ度胸やないかァ。ほな、この街で生きてくゆーのがどんだけ恐いか教えたるで」

 

 

勝男は八郎の右手を足で踏み付け、腰に差していた長ドスを鞘から引き抜く。

 

 

「エンコヅメゆーの知っとるか? ワシらヤクザはケジメつける時、指落とすんや。とりわけ溝鼠組(ウチら)の掟は厳しいで~。指全部や」

 

 

「やめろっ!!」

 

 

狂死郎は止めようとしたが、ヤクザ2人に抑えられて動きを封じられてしまう。

 

 

「今更遅いで。お前らとワシらじゃ覚悟がちゃうちゅーこと──思い知れやァァ‼︎」

 

 

そして勝男は振り上げた長ドスの刃を、八郎の手に振り下ろす。

 

 

だがその時──長ドスを握る勝男の右手首が、背後から伸びてきた手によって掴まれ、ゴキリと音を立てた。

 

 

「なァオイ、切腹って知ってるかァ? 俺たち侍はなァ、ケジメつける時、腹切んだよ」

 

 

そう言葉が続けられるにつれ、手首を握る強さが増していき、とうとう長ドスが勝男の手から滑り落ちる。

 

 

「痛そうだから俺はやんないけど」

 

 

その手を掴んでいたのは、不敵な笑みを浮かべた銀時だった。

 

 

「……お前、誰やねん」

 

 

掴まれた手首の痛みなど気にした様子もなく、勝男は銀時に対してそう呟く。

 

 

「何しとんじゃーワレェェェ!!!」

 

 

その瞬間、近くにいた2人のヤクザが銀時に襲い掛かる。

 

 

「ドンペルィィィニョ、3本入りまぁーす!!」

 

 

「オッケェー! 我が命にかえてもォ!」

 

 

銀時が叫ぶと、カウンター席にいた新八が3本の酒瓶を回転させながら投げ渡す。

 

 

「オー、ジャストドゥーイット」

 

 

「「ぷがァァァ!!」」

 

 

それを両手で1本ずつキャッチした銀時は、そのままそれをヤクザ2人の顔面に叩きつけて倒す。そして残った1本もキャッチし、それを勝男に振り下ろそうとした瞬間、銀時の眼前に勝男が咥えていた鋭い串が突き付けられる。

 

 

「そううまくはいかんで、世の中」

 

 

銀時と勝男が睨み合い、緊張感が走る中……突然勝男の懐からピルルルっと、ケータイの着信音らしき音がなる。

 

 

「…ん、メール──あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 

どうやらメールが届いたらしく、ケータイを取り出してその内容を確認する。途端、奇声にも似た大声を張り上げた。

 

 

「メルちゃんがァァァ!! メルちゃんがワシのいぬ間にママになってしまいよったァァ!!」

 

 

「あ、生まれたんですかついに。おめでとうございます」

 

 

どうやら先ほど言っていた産気づいたダックスフントが無事に出産を終えたという内容のメールらしく、それを知った勝男と他のヤクザたちは大喜びである。

 

 

「おめでとうであるかァボケェ!! こうしちゃおれん、スグ引き上げるでェ!!」

 

 

「「「ヘイ!」」」

 

 

「お前ら覚えときィ! 次会う時はこんなモンやすまへんからな!」

 

 

そんな捨て台詞を残して、ヤクザたちは一目散に店から引き上げて行った。

 

 

そしてヤクザがいなくなった途端、誰ともなく一斉に「ハァ~」と安堵の息を吐いた。一時的かもしれないが、とりあえず一安心だろう。すると、ボロボロの八郎が立ち上がって銀時にお礼の言葉を述べる。

 

 

「あ……ありがとうございました。皆さん助かりましたァ」

 

 

「フー、ったく、手間かけさせやがって」

 

 

「まぁまぁ、こうして八郎さんとお母さんはちゃんと守れたんだから」

 

 

「ま、母ちゃん目の前で息子死なせるワケにはいかねーからな」

 

 

「母ちゃん?」

 

 

銀時の言葉に、八郎がキョトンとした顔で疑問符を浮かべる。

 

 

「とぼけんじゃねーよ。どうして隠してたか知らねーが、もういいだろ。名乗り出てやれや、あのババァによー」

 

 

「いや、何を言っているのかよく……」

 

 

「いい加減にして下さい。お母さんがどれだけアナタを心配したと思ってんですか」

 

 

「え?……いやでもオラの母さん、もう死んでるし」

 

 

「……え? 死んでるってどういう……」

 

 

「死にました、1年前に。ちなみにオラ、息子じゃなくてこう見えても元娘です。オナベですから、オラ。八郎は源氏名、本名は花子です」

 

 

「「………………」」

 

 

八郎から返ってきた予想だにしていない答えに、銀時と新八は固まる。

 

 

「銀ちゃん、大変アル!」

 

 

すると、店の奥から神楽が慌てた様子で駆けてきた。

 

 

「オバちゃんが……どこ探してもいないアル!! ひょっとして連中にさらわれてしまったのかも……!」

 

 

「!! 母ちゃんが!!」

 

 

「──え?」

 

 

神楽の言葉を聞いて、驚愕と焦燥が入り混じった顔でそう叫んだのは───狂死郎だった。

 

 

 

 

 

つづく

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