銀魂×リリカルなのは   作:久坂

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おかしい……今回でカブト狩りが終わる予定のハズ。

最初はキャンプシーンにちょっと手を加えて、前回あんまり目立ってなかったフェイトを少しだけ目立たせるつもりだったんです。なのに気がついたら色んなキャラたちが好き勝手に動き始めて、気がついたらキャンプシーンだけで丸々1話分になっていたんです。

そんな感じで出来てしまった8話目です。


主婦が余ったカレーとかを近所におすそ分けするのは勿体ないからとご近所付合いを大切にしているからである

 

 

 

 

 

 

「おいしいアル! フェイトの作ったカレーは最高ネ!!」

 

 

「だな。材料はスーパーで買ったやっすい野菜とルーだが、フェイトが作ると極上のカレーに早変わりだ」

 

 

「フフ、そう? ありがとう」

 

 

カブト狩りの為に森へとやって来た万事屋一行。そこで真選組とのイザコザや思わぬ再会などもあったりしたその夜……宿営地にて、彼らはフェイト特製のカレーに舌鼓を打っていた。

その美味しさに神楽と銀時も満足そうに称賛し、フェイトは嬉しそうに微笑む。

 

 

「いやー、銀さんも神楽ちゃんも真選組に会ってカリカリしてたからどうなるかと思いましたけど、フェイトさんのカレーのおかげで気分も直ったみたいでよかったです。ご飯くらい楽しく食べたいですからね」

 

 

バチ…バチ……

 

 

「それにしてもあの人たち、ホントにカブトムシとりに来たんですかね? それにしちゃ随分と物々しかったような……」

 

 

バチ…バチ……

 

 

「そうだよね。今、真選組に出向で来てるはやて達も……まぁはやては普段から悪ふざけとかよくするけど、シグナムやヴィータたちまで総出でっていうのはちょっと引っ掛かるかも」

 

 

バチ…バチ……

 

 

「それだけカブト狩りに本気ってことだろ。アイツらの頭ン中は、毎日中二の夏休みみてーなモンだからな。まァ、アイツらにはこの森のカブトは1匹たりとも渡しゃしねーけどな」

 

 

バチ…バチ……

 

 

「その通りアル! あの野郎には負けないネ! 絶対に定春28号の仇をとってみせるアル!」

 

 

バチ…バチ……

 

 

「……にしてもさっきからバチバチうるせーな。何の音だ?」

 

 

「あ、銀さんも気になってました? 何なんでしょう?」

 

 

「ああ、ゴメン、言うの忘れてたよ」

 

 

先ほどから聞こえるバチバチという、まるで電気が迸るような音に、銀時と新八が何の音かと周囲を見回していると、フェイトが思い出したようにそう言った。

 

 

「実はね…森で寝泊まりするとヤブ蚊とかが多くて大変だと思って、電撃殺虫器を置いといたの」

 

 

そう言ってフェイトが指差す先には、テント近くにぶら下がっているランタンのような外装の中に青く光る電灯が入った機材があった。

 

これは電撃殺虫器と言って、接触した蚊などの害虫に電気ショックを与えて殺虫するというものである。しかもフェイトが用意したのは、二酸化炭素を発生させることで蚊を誘導するという優れものである。

 

どうやら先ほどから鳴っていたバチバチという音も、誘導した蚊を仕留めた音だったらしい。

 

 

「すごい! こんなものまで用意してたんですね! 流石フェイトさん!」

 

 

「こりゃいいな。これで寝る時もうぜー羽虫どもに邪魔されずに済むな」

 

 

「やっぱりフェイトは銀ちゃんの嫁なんかにしとくには勿体ないくらい出来る女アル!」

 

 

「どういう意味だクソガキ」

 

 

用意周到なフェイトに銀時たちは絶賛する。

 

 

しかし、その光景を見て面白くない人達もいた。

 

 

「チッ、余計なモン用意しやがって」

 

 

「ホントですね。奴ら単純ですから、蚊ぐらいでも仲間割れすると思ったんですが……」

 

 

万事屋の宿営地から少し離れた草陰の中で、土方と山崎はそう呟く。彼らは万事屋一行をこの森から追い出すために、捕まえた蚊をけしかけて仲間割れを誘おうとしたのだが、フェイトが用意した電撃殺虫器によって未然に防がれてしまったのだ。

 

 

「それにしても…あの旦那の嫁さん、相当気が回りますよ。しかもめちゃくちゃキレーな金髪美人。一体旦那はどこであんなイイ人捕まえたんでしょうね」

 

 

「知るか、興味もねェ。んなことより次の作戦に移るぞ」

 

 

「ヘイ」

 

 

そう言って土方と山崎は、気づかれないように草陰から消えて行ったのだった。

 

 

 

 

 

      *

 

 

 

 

 

「プフぅ~、お腹いっぱいで幸せアル」

 

 

その後、お腹をパンパンに膨らませた神楽は満足そうにそう言いながら地面に寝転がった。それは銀時たちも同じで、寝転がりはしないがお腹を満たす満腹感に浸っていた。

 

 

「いや~食った食った」

 

 

「そうですね~。あ、でも…カレーもお米も余っちゃいましたね」

 

 

「うん、神楽がいっぱい食べると思ってかなり量を作ったからね」

 

 

そう言うフェイトと新八の視線の先にあるのは、巨大な寸胴鍋の中に余ったカレーと炊いた米の入ったいくつかの飯盒。

1人で十人分以上は食べる神楽の為にと思って沢山作ったフェイトだったが、どうやらそれ以上に作り過ぎてしまったようである。少なくみても10人前以上はある。

 

 

「別に明日食えばいいだろ。カレーは一晩寝かした方がウマイって言うしな」

 

 

「それって迷信じゃありませんでしたっけ?」

 

 

「そうだったけか? まァどっちでもいいだろ。ウマイもんはウマイんだからよ」

 

 

「ん、わかった。じゃあ何個か大きめのタッパーも持ってきてるから、それに移してクーラーボックスの中に保存しとこう。ご飯はおにぎりにして、明日の朝ご飯にしよう。新八、手伝ってくれる? 銀時も」

 

 

「はい!」

 

 

「しゃーねーなァ」

 

 

そう言って銀時たちはフェイトの指示のもと、余ったカレーとご飯の保存作業に取り掛かろうとする。

 

 

するとその時……何やら香ばしい匂いが、彼らの鼻腔をくすぐった。

 

 

「「「?」」」

 

 

「何アルか? この匂い」

 

 

突然漂ってきたその匂いに銀時とフェイトと新八は首を傾げ、起き上った神楽はその匂いの元に視線を向ける。

するとそこには……真選組の隊士たちがいつの間に用意したのかバーベキューをしていた。

 

 

「うめェェェ!! やっぱキャンプにはバーベキューだよな!」

 

 

「カレーなんて家でも食えるしィ! 福神漬け持ってくるのめんどくせーしィ!」

 

 

わざとらしく銀時たちに聞こえるような大声で、これ見よがしにバーベキューを食べる真選組。

 

 

「オイ、マヨネーズはどうした?」

 

 

「副長、これはおいしそうに見せつける作戦です。マヨネーズはちょっと」

 

 

「てめェェェ! マヨネーズなめてんのかァァ!! マヨネーズはなんにでも合うように作られてるんだよ!」

 

 

どうやらこれも銀時たちを森から追い出す為の作戦らしい。しかし銀時たちはフェイト特製のカレーですでに満腹状態なので、正直あまり効果はない。

 

 

「……何なんですかあの人たち? 何でわざわざ僕らの目の前でバーベキューなんてやってんですか」

 

 

「知らねーよ。知らねーし羨ましくもねーけど何か腹立つ。おいフェイト、ちょっと魔王呼んで来い。あの咎人達(バカども)に滅びの光を」

 

 

「そ…それは流石に……」

 

 

「うっとうしいアル。アイツらの目の前でゲロ吐いちゃろか」

 

 

効果はないが何となくムカつくので銀時と新八と神楽は顔に青筋を浮かべている。

 

 

「よォ旦那方、まだいたんですかィ?」

 

 

そこに、串を持った沖田がわざとらしく口に含んだ肉をクチャクチャと音を立てて咀嚼しながら銀時たちに歩み寄る。

 

 

「そんな粗末なテントで寝てたら蚊に刺されますよ──あっ」

 

 

すると沖田は、これまたわざとらしく躓いたフリをして持っていた串を放る。それはわざと串を銀時たちの目の前に落として挑発するという、ドSの沖田としての作戦だった。

 

 

しかし……

 

 

「危ない!」

 

 

「!?」

 

 

そんな声と共に飛び出して来たフェイトが、躓いてよろけたフリをした沖田の身体を支えた。予想もしなかった反応に、沖田も目を見開く。

 

 

「大丈夫? 夜の森は暗いんだから、足元には気を付けないとダメだよ?」

 

 

「いや…あの……ヘイ、すいやせん」

 

 

フェイトに注意された沖田は何か言おうとしたが、戸惑いのせいで言葉にできずに結局頷いただけだった。そしてフェイトは、地面に落ちてしまった串を拾い上げる。

 

 

「あぁ、落としちゃったね」

 

 

「あ…それ別に食べても」

 

 

「そうだ! ちょっと待っててね!」

 

 

沖田のS発言を最後まで聞かず、パタパタと自陣へ返っていくフェイト。それから十数秒もしないうちに、その手にカレーライスを盛ったお皿を持って戻ってきた。もちろん使い捨てのプラスチック製スプーン付き。

 

 

「コレ、余り物のカレーだけど、よかったら食べて」

 

 

「え? いや、俺ァバーベキューあるんで別にカレーは……」

 

 

「はい、どうぞ」

 

 

「……………いただきやす」

 

 

満面の笑顔でカレーを差し出され、その笑顔に当てられた沖田は、言いかけた言葉を引っ込めてカレーを受け取ったのだった。

 

 

「もらっちゃいやした」

 

 

「──じゃねェェェだろォォォォ!!!」

 

 

そう言ってカレーを持って帰って来た沖田に対し、土方が大シャウトでツッコんだ。

 

 

「一体何しに行ったんだてめーは!? 何で奴らのカレーをテイクアウトしてんだァ!?」

 

 

「そうですよ沖田隊長らしくない! いつものドSはどうしたんですか!?」

 

 

「うるせーなァ。あの人と話してると何か調子狂うんでさァ。あ、うめェ」

 

 

怒鳴る土方と山崎に対し、もらったカレーを頬張りながらそっぽを向く沖田。

 

 

「……なんとなく、あの人に似てる気がしたからかもしれやせんねィ」

 

 

ポツリと沖田が呟いたその言葉は、誰の耳にも届くことはなかった。

 

 

「ところでいいんですかィ? 土方さん」

 

 

「あ? なにが?」

 

 

「いや……アレのことでさァ」

 

 

そう言って沖田がスプーンで指し示す先には……

 

 

「いやー、フェイトちゃんが作ったカレー、ホンマ美味しいなぁ」

 

 

「おいタヌキ、てめーなにシレっとウチのカレーたかりに来てんだ。もっかい投げ飛ばして森に還すぞコノヤロー」

 

 

「硬いこと言いなや銀ちゃん。トシちゃん達が銀ちゃんを森から追い出す為にバーベキューするって言いだして、私の出る幕がなくなってもうてヒマやってん。ヒドない? 普通ここはフェイトちゃんより、公式料理上手キャラの私の腕の見せ所やろ? ホンマ台無しやわ~」

 

 

「いや知らねーよ。つーか何で俺がおめーの愚痴なんざ聞かなきゃなんねーんだ。さっさと帰れ。出る幕どころか永久に出番をなくされたくなかったら今すぐリリカルなのはに帰れ」

 

 

「あ、おかわりもらえる?」

 

 

「おいフェイト、ちょっとお前の兄貴呼んで来い。このタヌキ、凍てつく棺のうちにて永遠の眠りを与える」

 

 

「まぁまぁ銀時、カレーはまだまだあるんだから」

 

 

カレーをたかりに来たはやてに、うんざりしたような銀時。そしてそれを見ながら微笑むフェイト。

 

 

「ほう、志村は剣道場の当主なのか。その歳で大したものだ」

 

 

「いやでも、当主なんで名ばかりですよ。廃刀令のご時世で剣を習いに来る人も、門下生もいなくなって、すっかり廃れちゃいましたから。今は姉上と一緒に、なんとか存続させるのが精一杯で……」

 

 

「それでもお前は、当主として道場をちゃんと守っているのだろう。それだけでも十分立派さ、誇れ志村。ここは侍の国なのだろう? ならばいつか、侍達が剣を取り戻す日も来るさ」

 

 

「………………」

 

 

「ん? どうした?」

 

 

「いや、あの…僕いつも、駄眼鏡やら眼鏡かけ機やらツッコミ係やら色々言われてて……優しい言葉をかけられたのも、励まされたのも久しぶりで………なんか…涙が………」

 

 

「………苦労しているんだな」

 

 

語り合っている内に励まされて涙目になった新八の肩に、ポンっと手を置くシグナム。

 

 

「お前、それ何食ってんだ?」

 

 

「酢昆布アル。やらないアルヨ」

 

 

「いや別にいらねーよ、そんな酸っぱそうなモン」

 

 

「ああん!? てめー酢昆布バカにしてるアルか!? ガキにはこの大人の味がわからないネ!!」

 

 

「あァ!? ガキにガキって言われたくねーんだよ!! つーかアタシはお前の数倍は年上だからな!!」

 

 

「お前みてーなチビが年上なわけないネ!! 寝言は寝て言うアル!! 鏡見たことあんのかゲボ子がァ!!」

 

 

「誰がゲボ子だエセチャイナ娘ェ!! ケンカ売ってんのかゴラァ!!」

 

 

「上等アル!! 高値で売りつけてやるネ!!」

 

 

「ハッ! はした金で買い叩いてやらァ!!」

 

 

何か馬が合わないのか、ギャーギャーと騒ぎながら取っ組み合いのケンカをする神楽とヴィータ。

 

 

「平和ですね~」

「そうね~」

「うむ」

 

 

カレーを食べながらその光景を見て、のほほんとしているリィンとシャマルとザフィーラ。

 

 

いつの間にか真選組側にいるハズの八神一家が万事屋一行と和気藹々としていた。

 

 

「はやて姐さん達もあっち行っちゃってやすけど」

 

 

「オイィィィ!! 何やってんだあのアホ共ォ!!」

 

 

その光景を見て、土方は絶叫に似たツッコミを入れる。

 

 

「まァはやて姐さん達と旦那の奥さんは昔なじみらしいですから、仕方ねーんじゃないですかィ。あ、土方さん、俺もちょっとおかわり行ってきやす。このカレーすげー美味かったんで」

 

 

「ハァ!? てめ、何言って…オイ総悟ォォ!!」

 

 

土方の制止も聞かず、食べ終わったカレー皿を持ってあちら側へと行ってしまう沖田。

 

 

「オイ、沖田隊長がわざわざおかわりに行ったぞ……」

「あのカレー、そんなに美味いのか……?」

「ヤベ、俺もなんかあっちのカレー食いたくなってきたかも……」

「俺も…」

 

 

「オメーらがカレーに誘惑されてどうすんだァ!!」

 

 

そんな沖田に釣られてゴクリと生唾を飲み込む山崎や他の隊士達を、青筋を浮かべて一喝する土方。

 

 

すると……

 

 

「あの……」

 

 

「あァ!?」

 

 

後ろから声をかけられて、土方はギロリと睨むように振り返る。

 

 

「! お前……」

 

 

そこにいたのは、優しげに微笑んでるフェイトだった。思わぬ人物が目の前にいたことに土方が呆気に取られていると、フェイトは真選組に向かって口を開いた。

 

 

「もしよかったらですけど、真選組の皆さんもカレーいかがですか? まだたくさん余ってますので」

 

 

「あ? ふざけんな、誰がそんなモン──」

 

 

「え!? いいんですか奥さん!」

 

 

「「「ゴチになりまーす!!」」」

 

 

拒否しようとした土方の言葉を遮って、山崎をはじめとした隊士達が一斉にカレーの方へと走り去ってしまった。

 

 

「オイィィィ!! てめーら全員、士道不覚悟で切腹させんぞゴラァァ!!!」

 

 

土方のその言葉も耳には入らず、彼らはカレーへと群がるのだった。直後、銀時たちの声も聴こえてくる。

 

 

「うわァァァ!? なんかいっぱい来たんですけどォ!?」

 

 

「オイコラァ! チンピラ警察風情がなに坂田家の食卓に入って来てんだァ!? 突○隣の晩ご飯ですかコノヤロー!! おいタヌキ! このバカどもを遠き地にて闇に沈めろ!!」

 

 

「嫌や」

 

 

「奥さんに招かれたんでさァ。旦那に文句言われる筋合いはねーですぜィ」

 

 

「大ありに決まってるアル!! 税金泥棒どもに食わせるくらいなら、私が全部平らげてやるネ!!」

 

 

あっという間にやいのやいの騒ぎながら、万事屋と真選組が宴のような喧騒を繰り広げている光景に、土方は1人呆れたように片手で顔を抑えたのだった。

 

 

するとそんな土方の目の前にスッと、カレーが盛られた皿が差し出された。相手は当然、フェイトだ。

 

 

「土方さん…でしたよね? あなたもいかがですか?」

 

 

「……いらねーよ。お前らのカレーなんざ、俺の口に合わねェ」

 

 

「……そうですか」

 

 

咥えたタバコに火を着け、紫煙を吐きながら突き放すようにそう言い放つ土方。それを聞いて、フェイトは差し出していた皿を下げる。

 

 

「確かに……このままじゃ、土方さんの口には合わないかもしれませんね」

 

 

「?」

 

 

そう言うとフェイトは、皿を持っている右手とは反対の左手で持っているソレを、土方に見せるように持ち上げる。

 

 

「なっ……!?」

 

 

それを見た土方は大きく目を見開く。何故ならフェイトが持っていたソレは、土方が愛してやまない魅惑の調味料……マヨネーズだったのだから。

 

 

「さっきはやてから聞きました。土方さんは、どんな料理にもかけて食べるほどのマヨネーズ好きだって」

 

 

そしてフェイトは片手の指で器用にキャップを開けると、そのままニュルニュルとカレーにマヨネーズをかけ始める。それも少しではない。1本丸々使い切るのではないかというほどマヨネーズを絞り出していった。

 

 

「はい、これならお口に合いますか?」

 

 

そう言って再び差し出したそれは、茶色だったがハズが薄い黄色に染め上げられた、もはやカレーとは言えない程のカレーだった。

しかしそれは土方の目にはとても魅力的な料理として映っており、思わずゴクリと喉を鳴らすほどである。それでも…土方は受け取らない。

 

 

「…………なんのマネだ?」

 

 

土方は仏頂面のまま、疑惑の視線でフェイトを睨んだ。何故わざわざ敵対しているハズの自分の好物を用意してまで、彼女がカレーを振る舞おうとするのか、その意図がまったくわからないのだ。意図がわからない以上、それを安易に受け取るような土方ではない。

 

 

「そんな目で睨まなくても、他意はありませんよ」

 

 

それを感じ取ったフェイトは、苦笑を浮かべながらそう言うと、続けて静かに語り始める。

 

 

「私たちが、真選組のお仕事の邪魔なのはわかってます。その為に私たちを森から追い出そうとしてることも。けど、ウチの主人も神楽もは何かとあなた方と張り合おうとしますから、きっと頑として森を出て行きませんよ。それは真選組も同じだと思います。今日1日見てて、万事屋《ウチ》と真選組(あなたたち)はそういう関係なんだって何となくわかりましたから。でも──」

 

 

そこで一旦言葉を区切ると、フェイトはニッコリと笑って言った。

 

 

 

「──せめて晩ご飯くらいは、一緒に楽しく食べませんか?」

 

 

 

「っ………………」

 

 

それを聞いた土方は、呆気に取られて言葉を失う。

するとどこか諦めたようにそっと目を伏せて、ガシガシと自身の頭を掻く。タバコから口を放し、溜息に似た仕草で紫煙を吐き出す。そしてそのままタバコを地面に捨てて足で火をもみ消すと……

 

 

「よこせ」

 

 

と、フェイトに言った。

 

 

「バーベキューにも飽きてきた所だ。ここらでカレーでも食って口直しがしてェ。だからそれ…よこせ」

 

 

「フフッ……はい」

 

 

それを聞いたフェイトはクスクスと可笑しそうに笑いながらカレーを差し出し、土方もそれをぶっきらぼうな態度で受け取った。

そしてフェイトは満足そうに踵を翻して宿営地へ戻ろうとすると、思い出したように口を開く。

 

 

「あ、そうだ。たくさん余ってるって言っても、あの人数じゃすぐ無くなってしまいそうですから、おかわりは早めに言ってくださいね──土方十四郎さん」

 

 

「!」

 

 

そう言ってフェイトが去り際に、何気なく言った土方のフルネーム。

 

 

 

──十四郎さん。

 

 

 

それを聞いた瞬間……ある1人の、着物を着た女性の姿と声が脳裏をよぎった。

 

 

「…………チッ」

 

 

思わず舌打ちを漏らす土方。そして手元にある、マヨネーズまみれのカレーを見ながら……先ほど沖田が言っていた言葉を思い出す。

 

 

「……確かに、あの女と話してると調子が狂うな」

 

 

そうぼやくように言うと、土方はフェイトから受け取ったマヨネーズカレーをスプーンですくい上げ、一口頬張った。

 

 

 

「──うめェ」

 

 

 

呟くように言ったその感想は、誰の耳にも届くことなく、森の中へと溶け込んで消えて行ったのであった。

 

 

 

 

 

つづく




もうカブト狩りこれで終わりでいいんじゃないかな?


これ別の題名つけるとしたら『フェイトvs真選組』ですね。そしてフェイトの圧勝で終わりました。


あと誤解のないように言っておくと、ミツバはまだ生きてます。ちゃんとミツバ篇を後々やりますので。
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