提督は夜の街に行ってみたい。   作:鉄仮面

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古鷹山登レ 前編

 

 悍ましい真実を知ってから一週間。精神注入棒の傷が癒えてから4日。ケツが破けたトラウザーズの代わりが届いてから2日。

 その間何とか風俗に行けないか色々考えたがド直球の禁止令は流石に穴がなく、もはやここに至りルビコン川を渡るしかなくなった。

 

「艦娘から、許可を貰うしかない」

 

 しかし、その策は大淀によってストップをかけられてもいる。

 

「WW2のドーバー海峡でどんちゃん騒ぎをするより危険なので止めて下さい」

 

 彼女はその理由を尋ねてもチベットスナキツネのような目でこちらを見るばかり。その間にも風俗への性的好奇心は高まるばかり。

 もはや猶予はない。封印されたピンナップに手を伸ばしかけ、どんな内容だったかの記憶をこじ開け始め、艦娘の香りにムラムラしている現状に、消極的判断を取れというのは無理があった。火中の栗を拾うしか手はないのだ。

 

 だが当然、一つの疑問を生む。

 

 【誰に打ち明けるか?】

 

 艦娘は自分にとって大事な部下だ。それは『家族の様な〜』という使い古された表現を拒否する程の特別な関係であると、ハッキリと断じよう。

 彼女達は自分の指揮によって死地に赴き、深海棲艦と一進一退の攻防を成す。時には勝ち、時には負ける。勝敗は兵家の常なれば、如何なる結果にも真摯に応える。

 短いながらも過ごした激闘の日々によって自分達は、お釈迦様の蜘蛛の糸とは比べにもならない強い絆で結ばれていると確信している。

 

 そんな彼女達に『ちょっと風俗行きたいから許可チョーダイ☆』何て言えるのか? 

 

 

 

 ―――自分は風俗に行きたいので言います。

 

 世の男共よ。畜生と言えばいい、外道と蔑めばいい、悪魔と罵るがいい。もはや彼女達を襲わんとする獣性を抑える為という大義名分すら虚構と化した。

 

 風俗に行きたい。

 綺麗な巨乳のお姉さんと乳繰り合いたい。

 女性の甘い香りを胸一杯にしたい。

 ……これで艦娘達からの評価が地に落ちようとも知ったことか。

 思い起こすが忌々しくも、一昨日の早朝に自分のパンツの洗濯をしなければならない事態に陥ったのだ。自尊心を始めとした理性による抑制は限界を優に超えている。

 

 

 自分は、いや俺は悪魔に魂ですら売ってでも、風俗に行きたい。

 ……多分こうやって人は道を踏み外すのだろう。短い天国であった。

 同胞よ。我此処に、地獄の淵を見つけたり。

 

 さて、だからと言っておいそれとそこらへんの艦娘捕まえても逃げられるばかりだろうし色々と問題だ。

 書類に署名して貰わなくてはいけないのだ。説明しないでサインさせてもいいかもしれないと素人ならば思うかもしれない。だがそれは下手すれば詐欺や恐喝、果ては公文書偽造になってしまう。流石にまだ臭い飯は食いたくはない。

 何ゝ? セクハラは留置所行きにならないのかだって? フフフ。これは重要機密なのだが、艦娘相手なら初犯の場合のみ警告で済む。おぉまさに悪魔の頭脳。自分が恐ろしい。

 女性の人権を! と高らかに掲げる諸氏が知れば憤死しかねん内容だが艦娘と海軍上層部で取り決めた密約なので無問題なのだよ。ホホホ。

 とは言え、このような阿呆な事を相談できるのは前提条件として、信頼かつ信用のある艦娘。サインしてくれるのはそんな人物であり、自ずと彼女の姿を思い浮かぶ。でなければ艦娘によっては防犯ブザーを鳴らされて3日は憲兵さんのお世話になるだろう。

 あえて例を言えば霰とか霞とか。まぁ霞の場合は防犯ブザーではなく防犯スタンロッドだと思うが。何で持ってんの? と質問は俺が聞きたい。誰だ持たせたの。

 ともあれ、丁度と言うか、だからこそと言うべきか。かの条件に該当するであろう、そんな素敵な彼女は今日の担当秘書艦。内緒話をするのにはうってつけであった。

   

「失礼します。重巡古鷹、今日も頑張ります!」

 

 元気一杯にまるで入学したての後輩のように入室した彼女こそ、自分が最も信頼していると断言している古鷹型重巡洋艦の艦娘『古鷹』である。

 

 無論、皆自分の指揮に能く従い能く動く良き兵達であるのは疑いようは無い。しかし、それ故一癖二癖ある者が大半を占める。

 そんな中、確かな判断力を持ちながら真っ直ぐ真面目かつ責任感のある彼女は自分の言いたい事をしっかりと捉え、それを分かりやすく周囲に伝える事に長けていた。

 自分が最初に現場裁量権を与え、彼女が率いる第二機動部隊が当鎮守府で最も高い戦績を収めていることこそ、自分の判断が間違っていない何よりの証左であろう。

 その分、当然ながら責任も業務量も多大であるが、彼女は嫌な顔をせず軍務をこなしている。天使かな。

 

 まぁ、その信頼を水底へと沈めようとしているのだがね。ふへへ。それさえも快楽に感じ始めているのは本当にもう駄目だねこれは。

 早いとこ自分へと引導を渡さねばならん。

 

「古鷹、執務の前に少し頼みがある」

 

「? 何でしょうか提督。私に出来る事ならお任せ下さい!」

 

 

 説明を始める際、古鷹の汚れを知らぬ朗らかな笑顔に良心がチクリと傷んだが、許せ。これもいわゆるコラテラルダメージに過ぎない。大事の為の致し方ない犠牲だ。

 まぁ、古鷹だから笑って許してくれるだろうから気楽なものだ。

 信頼って大事。はっきり分かんだね。

 

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