ドラえもん のび太の聖杯戦争   作:悪・猫

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64.聖杯戦争開始九日目/追憶の古傷.後編【3】~希望の木編~

「ひっ……」

 

彼女は地面に突き刺さったナイフに思わず、声を漏らしてしまう…あのナイフは確実に自分を狙ったものだと気づいたからだ

 

「気をつけろ、あのナイフは魔術回路を破壊する毒が仕込まれている…ちょっとでも掠れば死ぬからな」

 

でもそれよりも気になったのは自分をその危険から守った彼だった、サバイバルナイフを抜いたのかわからなかった…一方、彼は冷静だった。

冷静に…まるで普段からこんな危険と隣り合わせの生活をしていたのかのようにごく普通に私に警告した

 

「どうして、そんなに冷静で…いられるの…さっきのナイフ…毒が…」

 

「あぁ、もう慣れてるからな…それにこんなの俺にとっては日常茶飯事だ。それに…お前を襲った人数は4人…まあ既に捕獲(・・)した」

 

「はっ?」

 

「はぁ…」

 

彼女の理解不能の言葉に俺は手をかざす…すると4つの黒い泥があられ、そこから拘束された4人の男女が現れた。

見覚えある4人に彼女は動揺した表情で俺を見た―――――――――

 

「嘘だよね…NOBITA、本当にこの人達が…希望の木(ホープ・ツリー)の職員が…」

 

「説明させるな…こいつらの武装を見ればわかるだろ?こいつらの装備はすべて、魔術師殺し専用の武具だ」

 

「だから魔術師ってなんなの!!どうして、私を殺そうとするの!!どうして!?」

 

パニックになるのも無理はない、気づけばこの状況だ、それに彼女は知らない、罪のない人々の血肉を喰らっていることを。そして、自分をその姿に変えたのが自分を育て上げてくれた施設側…

その真実を彼女に伝えるべきなのか…と悩みながらも俺はトカレフTT-33の内部に弾を入れ込んだ…

 

「まず、魔術師…簡単に説明すれば超能力…と考えればいい、おまえにはその素養がある…そして、そいつはその素養を持つ人間を実験台にしている輩だ」

 

「超…能力者?実験台…?何なのそれ…」

 

「つまり…おまえは実験台にされたんだ…そして、失敗して暴走したおまえを殺すためにこいつらが送り込まれた」

 

トカレフTT-33の銃口を男に突き付けると男の表情は真っ青になる…それを見かねた仲間が反論する。

 

「違う!私たちはNo.6599をあなたから回収するために送り込まれた特殊部隊よ!!決して…No.6599を殺そうとなんて…」

 

「言い訳が…下手だな」

 

俺は地面に突き刺さったナイフを抜き、女の頬に軽く傷をつけた………

 

「ひっ…!!いやだ!!いやだ!!死にたくない…死にたくない死にたくない!!しにだぐな”い”!!!!!!!」

 

軽く傷をつけてから一分も掛からず、毒の効果が現れた。頬は傷口から爛れ始め…その爛れが次々と女の皮膚を溶かしていく…

髪の毛はすべて抜け落ち…10分も掛からず、女の体は跡形もなく、溶かされ…泥に沈んだ

 

「こんな得物を救出任務で使う輩はいない…それにその軽武装からして…俺をどこかのイカれた誘拐犯と勘違いしたんだろ…だから安易に襲撃を仕掛けた、それに…彼女をナンバーで呼ぶ輩を信用できるほど、俺は優しくない」

 

「お前は……まさか、冬木の聖杯戦争の生存者…【冬木のビリー・ザ・キッド】!!」

 

「懐かしい名前だな…だが、俺は冬木のビリー・ザ・キッドでも野比のび太でもない…俺の名前は【NOBITA】だ…さて、吐いてもらおうか?彼女に何をした…」

 

「…………魔術協会から盗んだ、メドゥーサの聖遺物を移植した、その後、副作用で暴走、我々が捕獲するまえに脱走し、被害が甚大化…神秘の秘匿のため…当主様はNo.6599の暗殺を命じた」

 

魔法使いだと知った暗殺者たちは怯えながらも俺の尋問にあっさりと真実を俺と彼女に話した…彼女は動揺しながらも彼らの話を聞いた

彼女にとって、とてもつらい現実を突きつけれている…隠したい現実だがこの場で現実を知らなければ彼女はこの先、いかに守っても生き残ることはできない…魔術と言う弱肉強食の世界に引きづり込まれてしまった以上…

 

「ねぇ…嘘だよね、何かの…夢だよね?」

 

「いや…現実だ…この世界に足を踏み入れてしまった以上、おまえは優しい世界には戻れない…だが比較的に優しい世界に住むことなら可能だ…」

 

「あなたは…一体、何なのよ…」

 

「なんでもない、ただひたすら流され続けた死にたがりの放浪者だよ。でもおまえを救うことはできる…おまえを比較的に安全な場所に移す当てがある…」

 

「ダメ…」

 

俺の提案を蹴る彼女に俺は眉を細めた――――――――――――

 

「私には弟と妹がいる…あの子たちを置いてはいけない…」

 

その理由に俺はとても頭を悩ました――――――――――予想はついていた。あの施設にいる子供は彼女だけはではない、それは知っていた

しかし、彼女だけなら助けられる可能性は100%である…しかし、あの施設の子供全員を救うとなると話は別だった

 

その理由はあの施設は魔術協会の聖遺物を盗んでいる。魔術組織にろくな奴がいないことはあの聖杯戦争で嫌と言うほど知っている…必ずトラブルが待ち受けている

今回の件には3つの勢力図がある…【魔術協会】【聖堂教会】…そして、【衛宮士郎】の3つ…魔術協会はあの組織の殲滅と情報の回収と言う名目を今回の盗難事件で得ている…そして、【聖堂教会】は魔術の秘匿を脅かす組織を抹殺する必要性がある…そうとなると互いに執行者を送り込んでくるのは明確だ…そして、【衛宮士郎】…あいつの目的は不明だ、だが、あいつが何かとんでもないことをやらかそうとしていることは確かだった。

 

そんなトラブルだらけの中でも子供たちを救出できる自信はあるが、問題はその後……その子供たちと彼女の生存率である

魔術協会と聖堂教会はあの施設に収容している子供たちのことを把握している、しかし、数までは把握していない、一人いなくなっても彼女はあの二大勢力に感知されない

しかし、全員を救出するとなると話は全く違ってくる、あの二大勢力は血眼になって俺や収納された子供たちを殺害・実験台にするためにやってくる

なぜなら、彼女は特異体質の人間…普通の人間の子を収容しているとは思えない、どれも奴らにとっては貴重であり、そして危険な【物】にしか見えていないであろう

 

それだけの行動力をあの二大勢力は持っている、もちろん叩き潰すことは可能だ、しかし、子供たちの安全の保障はとてもじゃないが無理だった

 

「お前一人が助かって不服だろうが、無理だ…こいつらは厄介な敵勢力に対し、喧嘩を売っている…そんななかで子供全員を救うことは不可能だし、匿うこともできない」

 

「そんな…そんなに強いのに……いやよ!私だけ助かって、施設のみんなはあきらめろなんて…そんなの絶対ダメ!!」

 

「言っただろ…この世界は優しくない、魔術師同士が知恵と力で競り争う世界だ…そんな弱肉強食の世界で生き残ることはとても難しい……おまえは比較的に運がいい方だ、お前一人ならどんな兵器だろうが、魔術だろうが、魔法だろうが守ってやれる

だが、あの施設の子供…少年少女を守れと言われると話は全く違ってくる………おまえを守ってくれる伝手ならある、だが全員を匿える伝手はない」

 

「なら…私は守らなくてもいいから施設のみんなを守ってよ!!私だけ助かるだけなら…死んだほうがマシよ!!一人だけ助かって、最愛の弟や妹を見捨てるなんて…そんなことできない」

 

「つっ…」

 

駄目だ、この方向に進んでは駄目だ…この方向に行けば必ず彼女は死ぬ。NOBITAは過去の経験上…もはやその未来は見えていた…いつだってそうだ…

他人を守るために自身の身を亡ぼす道を選ぶ…どうして、俺が救いたい者たちはその道を選ぶ…

 

ドラえもんも…

 

桜も…

 

ジャックも…

 

美夜子も…

 

リルルも…

 

なぜ、破滅の道に手を伸ばす…そして、なぜ破滅の道を突き進む…俺は救いたいだけだ、生きて生きて生き残ってほしいだけだどんな状況でも…自分勝手でもいい。ただ生きてくれればそれでいい

なのに…どうして、俺の周りには他人のことばかり考えて、身を削る…わけがわからない…俺は自分勝手だ…救いたい者のためにすべてを蹂躙した

妻、子供がいる者も…優しき若き者も…自分の救いたい者のために殺した…殺して、殺して…殺して…殺して…殺し続けた、だが、そこから救いが生まれることはなかった…

 

救い出せる自信はあっても、全員を守れる自信がない…それが正直な答えだった…だが…今ここで彼女だけを救っても彼女は永遠に後悔し続ける。

 

 

「おい、主要している子供たちと構造、トラップ、警備部隊の人数を教えろ…」

 

トカレフTT-33をホルスターに収め、四次元ポケットからドラグノフ狙撃銃を取り出し、サイレンサーを取り付けた。

彼女は眼をキョトンとさせながらも俺の巨大な銃に見た…

 

「人数は250人…1歳から7歳が50人、8歳から12歳が150人…私と同じ年代が50人ほど…警備は厳重で…武装した警備員がたくさんいるわ、構造は地下1階から5階…」

 

「微妙なラインだな…了解だ、おまえの要件を飲んでやる…その代わり…死ぬんじゃないぞ?」

 

ガッチャンとドラグノフ狙撃銃のボルトを引き、内部に銃弾を送り込んだ。再び魔術の世界に足を踏み入れようとしている自分にもちろん、恐怖と不安もある

しかし、それは自分の身の心配ではない、これから何人犠牲になるか…何人救えないかと言う恐怖と不安だ…

 

今まで救えなかった―――――――手から零れる命を身で実感した8年間…そんな世界にもう戻りたくはないと思っていた、しかし、戻らなければならない、動かなければ誰も救えない。誰一人として――――――――――――

 

「まさか…一度捨てたはずの優しさを拾わなければならないとはな…」

 

拳を握りしめると泥は容赦なく三人の暗殺者たちを呑み込んだ――――――――――血一滴、髪の毛一本も残さずに…そこからあふれた黒い魔力を押さえつけながらもNOBITAは彼女の願いのために施設へ向かった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冷たい風が吹く―――――――――――そんな中、照らされる【希望の木(ホープ・ツリー)】は厳重な警戒態勢で警備に当たっていた

 

「衛宮君…本当に休まなくていいの?一度、セイバーの元に戻ったら…」

 

「そんな時間はない、それに遠坂のおかげで呪いは解呪できた…今のあいつなら即日、行動に移す…待ち受けていないとあいつとの接触のタイミングを見逃す」

 

「でも、野比くんが私たちと同じ目的とは限らない、忘れたの?今日あなた撃たれたのよ?」

 

「あぁ、撃たれたさ、でもあいつならきっと俺たちと同じ目的さ、それに…あいつに渡さなきゃいけない物もあるしな」

 

衛宮士郎の手に握られたカウボーイハット…そのハットを見た遠坂も彼女の死を思い出しながらも宝石を握りしめた―――――――――――――――――――――

 

「桜…」

 

 

 

 

 

 

 

 


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