ルーラにより、無事に着地ポイントである祠に着いた。少しでもイメージと違うとルーラは発動しない為安心した。そこから山の奥に歩いて行った。道中何度か魔物に出会ったがスラリンのイオナズンにより撃退した。正直、イオラでも十分な相手であったが、得意そうにテリーを見るスラリンを見て苦笑するしかなかった。ノリで「ガンガンいこうぜ」とか言うと本当に相手が弱小な魔物でも最大火力で倒そうとするから困る。この辺りなら「呪文つかうな」でもいいだろう。そもそもここらへんでは、自分にもスラリンにもピエールにも熟練度が入らないのではないか。
1時間ほど歩いてようやくドランゴと別れた場所に着いた。どっかに巣みたいなものを作ってないかなあと近くを探していたら、木の枝を積み上げ、中をくり抜いた様な巣があった。たぶんここがそうなのだろう。
おーい、ドランゴと呼ぼうとして気配に気づいた。囲まれている。十数体の魔物に。「テリー殿・・・」ピエールが警戒しながら言った。ギリギリまで攻撃しないでくれよとテリーは言った。ドランゴの子供でないならとっくにこちらから攻撃している。だからと言って攻撃をくらうわけにはいかない。襲ってくるならやむを得ない。撃退するしかない。そう考えていた時、「グオオオッ!!」大気が震えるようなおたけびがあった。
テリーでさえ気が抜けばショックを受けて腰が抜けそうだった。テリーたちを囲んでいたもの達の殺気が消えた。
「ニンゲン・・・、オソウ、ダメ」
のしのしと二足歩行の竜族のバトルレックスが出てきた。スラリンやピエール、ドランゴの子供たちがいなければこちらから抱きしめていただろう。そんなテリーの我慢を尻目にドランゴはダッシュでテリーに近づいてきた。
「テリー!テリー!ウレシイ!ウレシイ!」そう言ってドランゴはテリーに頬ずりをした。
「ドランゴ!元気だったか?俺も嬉しいよ!」そう言ってテリーはドランゴの頭を撫で回した。周りからはドランゴの子供たちと思われるヘルバイパーの様な魔物たちが出てきた。
なんでドラゴンの子供がヘビなんだと思っていたが今も変わらないらしい。
「ドランゴ、お久しぶりです。ピエールです」
「僕はスラリンっていうんだよ。はじめましてだね」
「オマエタチ・・・、ダレ?テリーノ、ナカマ?」
少なくとも、ピエールには少しは会ったことがあるはずなのにドランゴはピエールをすっかり忘れている様子だった。ピエールは少しガッカリしていた。ドランゴの周りにドランゴの子供たちが集まってきた。
「オマエタチ、アソンデ、オイデ。ワタシ、テリート、ハナシ、スル」
「キェー」「キー」「キキッ、キー」「キキー」とドランゴの子供たちは声を上げた。中には聞こえ様によっては「テリー」と言っているものもいた。子供たちは2、3匹でグループを作ったり、1匹であったりしてこの場を離れて行った。
「もうすっかりお母さんだな。ドランゴ」テリーは言った。
「ワタシ、コドモタチ、マモル」ドランゴは言った。
ああ、そういや、俺がアークボルト付近に巣を作っていたドランゴの卵を潰しまくったんだっけ。今考えりゃ、悪いことをしたなあ。だがこれは何度もドランゴと話し合い、人間を襲っていた当時のドランゴとお互い様ということになっていた。
「今のドランゴなら子供たちを守れるよ。ドランゴは強いからな」
「ワタシ、テリーノ、タメニ、ガンバッタ」
「すまなかったな。俺がお前や皆を守ってやると言っていたのに。俺がお前や皆に守られちまった」
「テリー、ヨワイ、チガウ。テリー、イル、ワタシ、ガンバル」
ドランゴの言葉にテリーは下を向いてしまった。
「テリー、レック、ナカマ、ミンナ、ヤサシカッタ。ワタシ、マモノ、デモ、ヤサシ、カッタ」
ドランゴはたどたどしくも想いを伝えた。
「ワタシ、マモノ、ニンゲン、ナカヨク、デキル、オモウ。コドモタチニ、オシエテイル。
マモノ、ニンゲン、ナカヨク」
テリーは下を向きながらうんうんと頷いていた。
「テリー、イマ、ナニ、シテイル?」
テリーは何も言えなかった。ドランゴの前で自分が強くなるために魔物を狩っているとは言えなかった。
「テリー殿は今、私達魔物を仲間にして下さり、旅をしています」
見かねたのか、ピエールが口を出してきた。
「残念ながら、世界にはまだ人間に害をなす魔物がいるのです。テリー殿はそんな魔物達を倒し、世界を平和にしようと励んでおられるのです」
「テリー、ワタシノ、ユウシャ」
デスタムーア討伐パーティーでの勇者は職業としてもリーダーとしてもレックであることは間違いない。だが、ドランゴにとっては、自分の世界を救ってくれた勇者はテリーなのだ。
「・・・ドランゴ。俺は勇者じゃない」テリーは言った。
「チガウ、テリー、ワタシノ、ユウシャ」ドランゴは譲らなかった。
「そろそろ日も暮れてきたようですね。ドランゴも子供たちを集めねばならないでしょうし、我々もそろそろおいとましましょう」ピエールの言葉にテリーも頷いた。
「テリー、キテクレテ、ウレシカッタ」
ドランゴの言葉に、テリーはうんと頷いた。
ドランゴの巣から離れていくテリーたち一行に、ドランゴは短い手を振っていた。しばらくするとウオオッというドランゴの声が聞こえてきた。多分自分の子供たちを呼んでいるのだろう。
「申し訳ありません、テリー殿。私が余計な提案をしなければ・・・」
ドランゴが見えなくなるとピエールが深々と頭を下げた。
「行くと決めたのは俺だ。そしてドランゴが元気でやっているとわかった。それだけだよ。さて、本当に暗くなってきたから宿に行こうぜ。今からまた夢の世界に行くのもなんだから、この世界の金出しゃ、魔物でも泊めてくれる所に行こう。メシもうまいし、フロもあるんだよ」
「ありがとうございます。テリー殿」ピエールは言った。
「こっちの世界の宿に行くのは久しぶりだね。楽しみだね。楽しみだね」スラリンも喜んでいるようだった。
「ああ、それからな、ピエール。もう俺のことはテリー殿じゃなくてテリーって呼んでくれ。俺はお前たちに戦闘で力を借りる。お前たちは俺にスライム格闘場に連れてってもらう。対等だろう?」テリーは言った。
「・・・わかりました。テリー。しかしこの口調は変えませんよ。いわゆる礼儀というやつです。騎士のたしなみです。私はナイトですからね」
テリーはピエールがまた、鎧の奥でニヤリと笑っている気がした。