「おはようございます。テリー」ピエールは朝から礼儀正しかった。
「テリー!テリー!朝だよ!おきてよ!おきてよ!」スラリンはまだ眠っているテリーの上に乗りぴょんぴょんと跳ねた。
「ああ、だいじょうぶ。起きるよ」テリーはガシガシと頭を掻きながら起き上った。酒も少ししか飲んでいない。久しぶりの酒場で若い娘に声をかけられたが連れがいるからと断った。一人旅をしていた頃には結構羽目を外していたからなと思った。
「まず、飯を食おうぜ。洗濯ものは乾いて・・・ねーよな。いいや。持ってるやつ使おう」
この世界の人間はなぜか気に入ったら同じ服を着続ける。だからこそ「ベストドレッサ-コンテスト」などというものが珍しくてもてはやされているのかもしれないが。一行は食事をとり、携帯食や保存食を買った後宿を出た。
「よし、まずは俺の家行こうぜ」テリーは言った。
「装備をそろえるのではないのですか?」ピエールは尋ねた。
「まあまあ、行けばわかるって」テリーはそう言い、一行はルーラでアークボルト近くのテリーの家に行った。
テリーの家は二部屋だけだった。一部屋はベッドがあるだけで、もう一部屋は物置となっていた。
「俺も修行僧じゃねーから、仮眠する以外は町のキレイな宿屋で寝たいんだよね」テリーはてれた様子で言った。その物置のカギを開けると、スラリンとピエールはおおっと声を上げた。2匹が見たこともない様な武器や防具があった。
「デスタムーア倒した後、持っててもしょうがないからって、他のメンバーたちの装備品預かってるんだ。なかなかのものだろ?」
スラリンやピエールが見たこともない狭間の世界や数が足りなくてあきらめたメダル王の城でもらえる装備品やカジノの景品があった。
「俺が思うんだけど、装備品ってのは単純に数値が上がるのを選ぶんじゃなくて、自分が好きな物を選ぶ方がテンションが上がって強さが増すと思うんだよな。だからお前らが好きなもの装備しろよ。俺何もいわねーから」
スラリンとピエールはごそごそと武器や防具を選び始めた。ちなみにテリーは軽装備だ。どうせ今の、はぐれメタル職の体力(HP)なら、レイルーラありきの避けやすい、動きやすい装備がいい。
ピエールはきせきの剣、メタルキングのよろい、みかがみのたて、メタルキングヘルム、はやてのリングを装備した。
「テリー様、本当に私の様な者がこのような高級なものを装備してよろしいのでしょうか?」ピエールは聞いた。
「急にへりくだってんじゃねーよ。いいって、気にしなくて。ああ、メタルキングの剣はハッサンが自分で持っときたいって言ったからここにはないんだ。そういや、メタルキングのたてはあるんだろうけど、どこにあるのかなあ?見たことないなあ」テリーは言った。
スラリンはほのおのブーメラン、スライムアーマー、シルバートレイ、スライムメット、おしゃれなバンダナを装備していた。
「僕はこれっ!これっ!」スラリンはぴょんぴょん跳ねながら言った。
「いいよな、ブーメラン。俺なんでか装備できないんだよな」テリーは言った。
テリーは薬草、アモールの水等が揃っていることを確認した。
「よし、武器も道具も揃ったな。作戦はとりあえず(じゅもんつかうな)だ。魔物に出会ったら俺はしんくうは、ピエールもしんくうは、スラリンはほのおのブーメランで攻撃だ。で、敵が近づいてきたら俺はレイルーラで回り込んで剣で攻撃、ピエールは正面から剣で攻撃、スラリンはまじゅうのキバに装備変更して攻撃だ!」テリーは言った。
「およそ作戦とよべるものではありませんな・・・」ピエールは呆れて言った。
「いいんだよ。臨機応変ってやつだ。ダメージくらったら回復だぞ。レベルや熟練度上げは戦闘回数をこなすことが重要だからな。魔力の無駄使いはダメだぞ。よし、行くぞ!」
テリーはガンディーノの町をイメージしてルーラを唱えた。
目的地に着いた。しつこいようだがと、テリーは一息入れて言った。
「俺ははぐれメタルの職業だ。体力(HP)が低いから魔物から攻撃をくらえば瀕死になるだろう。死ぬかもしれない。だから攻撃を受けそうならレイルーラを使う。俺はレベルはお前らより高いかもしれないが、お前らを守ってやる力は無いからな」
「わかっております。自分のことは自分で守ります」
「ピキ~、だいじょうぶだよ。だいじょうぶだよ」
2匹はまるで自分に言い聞かせるように言った。一行は森の中に足を踏み入れた。
魔物がテリー達の前にあらわれた。キングイーター3体である。動きはのろいが攻撃力はある。
「レイルーラでキングイーター3体を撹乱する。キングイーターが俺を見失っている間に攻撃してくれ」テリーはスラリンとピエールにそう言ってキングイーターの元へ走って行った。キングイーター達は標的をテリーと定めた。キングイーター達の直接攻撃が届くギリギリの場所でテリーの体が消え、すぐにキングイーター達の背後に現れた。「ええっ!?」スラリンとピエールは驚いた。
「おい、何してんだよ!早く攻撃しろ!」テリーはどなった。
「おっとと、しんくうは!」「いけー、ブーメラン!」2匹の攻撃がキングイーター達に直撃した。キングイーター達の視線がスラリンとピエールに向いた。「しんくうは」テリーのしんくうはが背後からキングイーターに当たり、キングイーター達は倒れ、その後ピエールのさみだれけんでとどめをさされた。
「こらー!お前ら、戦いの最中にボーッとするなよ!」テリーは言った。
「いやいや、まさか本当に瞬間移動するとは・・・」ピエールはまだ信じられないものを見たという表情だった。
「だから言ったじゃん、レイルーラって呪文が使えるようになったって」
「テリー自身が高速で移動する技のことをレイルーラと名付けていると思っていました」
「いやいや、どんだけイタいやつなんだよ。そんな恥ずかしいこと言う訳ないじゃん」
「だって、ねえ、ピエール・・・」スラリンはちらりとピエールを見た。
「こら、よしなさい、スラリン・・・」ピエールはスラリンを注意した。
「テリーってさ、その、青い・・・プププッ・・・」スラリンは笑いを堪えていた。
「スラリン・・・、いけません、クククッ・・・」ピエールも同様だった。
「何だよ。言いたいことあるなら言えよ」テリーは何となく気付いていた。
「テリーって青い閃光って言われてたんでしょ!?センコーだって!センコー!!お盆になったら仏壇にあげたりするの?」
「テリーが先生になったらその生徒達はテリーを青い先公と呼ぶんでしょうな」
スラリンとピエールはそう言って笑い転げた。
「お・ま・え・ら~」
青い閃光というのはテリーがレック達と会う前に一人旅をしていた時の通り名で、おそらくドランゴ討伐の任務の際、ドランゴと戦う様を見たアークボルトの兵士達が付けた名だろう。そこまではいい。だが、それを聞いて調子にのったテリー自身が行く先々で名前を聞かれるたびに「俺はテリー、巷じゃ青い閃光と呼ばれている」と言っていた。さらに調子に乗って「俺はテリー(右手の人差し指を上げる)、巷じゃ青い閃光と呼ばれている(左手を伸ばし、左手の人差し指を名前を聞いた相手に向ける)」とポーズまでつけていた。2~3年前のことだが恥ずかしい。あの時は若かった。いや、今もまだ10代なのだが。
「お前ら今日はメシ抜きだ。まもののエサの匂いでも嗅いで、その辺のペンペン草食ってろ」テリーは言った。
「ゴメーン、もう言わないよ。言わないよ」
「どうかお情けを、テリー様。でなければ仲間の魔物虐待としてルイーダの酒場に正式に抗議文書を送り、最悪の場合、最高裁まで争うことに・・・」
すっかり人間の食べ物に餌付けされている2匹であった。
「いやー、良かった、良かった。今日1日で戦闘回数30回以上だもんな。ダメージもあんまり受けなかったし」
本日の戦闘を終えて、クリアベールの宿屋で休んでいる一行の中で、テリーはひたすら上機嫌だった。
「おめーら、結構強いじゃん。レベル30代前半とは思えねーな」
テリーに言われてスラリンとピエールは困惑していた。そうだ、自分たちはこんなに強いはずがないのだ。自分の実力以上の装備をしているからかと思ったがそうではない。身体の内側からあふれるエネルギーが、かつてない程に湧いてくるのである。
「なんていうかその・・・、テリーと一緒に戦っていると、力が溢れてくるのです」ピエールは言った。
「・・・テンションが上がるんだよね」スラリンも言った。
「おめーら、気を使わなくていいって」テリーは恥ずかしそうに言った。
「レック殿達と旅をしていた時はこんなことはありませんでした。アモス殿がまもの使いの職業についていたのですが、だからといって私とスラリンが強くなるということはなかった。考えられる理由は2つ。ひとつはテリーの現在の職であるはぐれメタルの職が一緒に戦う魔物を強くする特性を持っているのか。もうひとつはテリー自身が一緒に戦う魔物を強くするという特性の持ち主なのか・・・。私は後者だと思いますがね。であればバトルレックスにすぎないドランゴがあれほど強大な力を有していたということも納得できます。竜族の中でもバトルレックスはそれほど上位という訳ではありませんからね」ピエールは言った。
「いやいや、俺にそんな力はねーよ」自分が強くなることしか考えていなかったからな、とまではテリーは言わなかった。
「テリーはモンスターマスターかもしれません」ピエールは言った。
「そうだよ。テリーはモンスターマスターだよ!モンスターマスターだよ!」
「え?何?モンスターマスターって?」
「モンスターマスターとは魔物と一緒に仲間を集め、戦い、冒険する魔物の導き手です。モンスターマスターがいれば、そのパーティーの魔物は実力以上の力が出せると言われています」
「ふーん・・・」俺は勇者になりたいんだけどなとテリーは思った。一人になっても戦い抜ける力が欲しいのだ。もちろん仲間も大切だが、デスタムーア討伐の旅の時のように仲間に助けられるだけの者になりたくない。
「テリー、ドランゴの勧誘は失敗しましたが、魔物の仲間を作りましょう。私とスラリンはスライム族であるがゆえに体力(HP)は低い。ハッサン殿のような敵の攻撃を受けきれる仲間が必要です。いずれは8人編成の部隊を作りダーマダンジョンを目指しましょう。
それから、それから・・・」
「もー!今日は寝ようぜ。話し合いは明日の朝。今日はみんなすごーく頑張ったから考えるは明日!おやすみ」
テリーはベッドにもぐり、眠りについた。
テリーは夢を見ていた。幼い自分が魔物達を率いて様々な旅の扉に入り、大事な何かを探している旅・・・。目を覚ますといつも忘れてしまう夢。しかしその夢を見ると、辛いだけだと思っていた自分の子供時代の中にも、幸せな時があったと思えるのである。
青い閃光というのは私が幼少時代に愛読していた「ドラゴンクエスト6 幻の大地」の漫画の中に出てきたテリーの通り名で、私はこの漫画に出てくるテリーが格好良くて大好きでした。(キャラデザは少しDBのトランクスを意識してあった様に思えますが)
当初、私はこの漫画のようなムチャクチャ強いテリー(アクバーを一撃で倒します)を主人公にしようと思っていましたが、文章となると全く深みが出ない為、この様な後ろ向きなテリーとなりました。一応強キャラの場合も考えていて、無双をするテリーを敵幹部が「あいつは伝説の魔物を食う魔神、ダークドレアムではないのか!?」と驚くセリフも考えていました。
この漫画は本当に面白く、主人公のボッツのキャラや口調がコロコロ変わることや、呪文の威力がいろいろおかしいことや、幸せの国に行った人が「普通」を考えた際、「母ちゃんの作ったシチューを食う」というセリフで、それって結構幸せなことじゃないかと子供ながらにつっこんだものです。漫画表現が難しそうな場面はダイジェストになりましたし。
まあ、何が言いたいのかというと、この漫画が好きな同志の方、ネタにして本当にすいませんでした。