テリー 冒険のその後   作:ストイコピクシー

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ゲント族の族長チャムは、チャモロのおじいちゃんの名前です。公式の名前がわからなかったので、オリジナルの名前としました。公式の小説版とか読んどけばよかったです。
今回からシドー教がらみの話です。うまいこと元々考えていた話につながってくれると良いですが。



第14話 滅びの村のザンテ

ムドーのレイドック領への侵攻が始まりだした頃、とある村が人間の盗賊たちの襲撃により壊滅させられた。その報を聞いたゲント族の族長チャムは数人の部下を引き連れてその村へ向かった。殺された人間をきちんと弔わなければ恨みを持ったまま天に帰ることもできず、ゾンビや死霊の様な魔物となり、この世をさまよい続けると信じられていたからである。

チャム達がその村に着いたのは夕方であったが、破壊された建物には火の粉が残り、町の中を明るくしていた。チャムやその他のゲント族の者たちは消火活動や死者の弔いをしていたが、とある崩壊した民家の前で宙(ちゅう)を見上げる生き残りだと思われる少年を発見した。

「少年、死んだ両親の霊魂を見ているのか?」

チャムが少年に話を聞くと周りのゲント族の者たちはギョッとした目でチャムと少年を見つめた。

「へえ・・・、あんたにもこれが見えるの?大きいのが父さんでもうひとつが母さん。育ての親だけどね。捨て子だった俺を拾ってくれたんだ」少年は答えた。

「両親と話をしていたのか?」チャムは聞いた。

「うん、何十人もの馬に乗った男たちが襲って来て、すごく怖かったって。俺が隣の家のベンおじさんと一緒にちょっと離れた森に薬草採りに行っている間に襲われたみたい。ベンおじさんはまだ薬草探すっていうから俺一人で村に帰ってきたけど、もうその頃には村の人たちは誰も生き残っていなかった。何日か前にベンおじさんの娘のアンナが行方不明になってたから、その盗賊たちにさらわれて人質になってたんじゃないかなあ・・・。で、俺を遠ざけてる間に盗賊たちは村を襲ったの。村の人たちをみーんな殺して、色々奪ったんだって」

「・・・どういう事だ?なぜお前を村から離しておく必要がある?」

「ああ・・・、俺はね、周りの人から見ると不思議な力を持ってるの。俺は当たり前の事だと思うけどね。俺が思ってることがそのまま、そのとおりになるって事が」

いまいち、少年の言葉の意味がわからず、ゲントの民たちは黙っていた。

「ベンおじさんは炎に包まれて苦しんで死んだよ。アンナに罪はないからね。生かしておいた。この村を襲った奴らはそのうち捕まえて全員焼き殺す。そいつらにそいつらの家族の場所を吐かせてその家族も殺す。同じ思いをさせないとね。俺はね、相手の顔がわからないと力の出しようがないの。だからその盗賊たちを早く追いかけないと。父さんと母さんに別れを言い終えたらすぐに行くんだ」

「ちょっと待て、お前の言うベンおじさんとやらはこの村が襲われたあと会っていないんだろう?どうやって殺したんだ?」

チャムは恐る恐るこの少年を刺激しないように聞いた。

「俺が望むとね、叶うの。俺はベンおじさんに炎に焼かれて苦しんで死んでほしいと強く願った。だからベンおじさんはそうなった。それだけだよ」

ぞくりとゲントの民たちに悪寒がはしった。嘘を言っていないことはこの少年の目と雰囲気でわかる。ゲントの民たちは思った。この子は「魔族の落とし子」だ。戯れに人間の女を犯し、子を孕ませた上級の魔族がその種に大量の魔力を与える。大概死産となり母親共々死ぬことが多いのだが、まれにこの子のように生き残り成長していくことがある。そうなった場合も、幼児の段階で報告され近隣の国の兵隊や教会の者たちに「殺処分」される。しかしこの村はこの子を村ぐるみで隠しておいたのだろう。今となっては理由はわからないが。

「ああ、俺の力がわからない人たちか?見せようか?」

そう言ってその少年は一軒の家を指差した。「爆発しろ」少年がそう言うとその家の上部にできた球体に粒子が集まっている様子が見てとれた。

「いかんっ、伏せろ!」チャムがそう言うとゲントの者たちは頭に手を当てて地面に伏せた。ドゴオオオンッ!!と巨大な音をたてて爆発が起こった。

「あっ、あああ・・・」ゲントの民の一人が腰を抜かして座り込んだ。かつて家のあった場所は無くなり、地面が少し窪んでいた。

「大丈夫だって。あんたたちに被害が出ないように力を調整したからさ」

少年は何事も無かったかのように言った。

チャムは服についた土や埃を払いながら言った。

「私はゲント族の族長チャムという。少年、名前は?」

「ザンテだよ」

「ザンテ、お前の力で殺された村の人たちを生き返らせてやることはできないのか?」

「無理だよ。皆もう切り刻まれて体はボロボロだし、天国があるならそこに行きたいってさ。生き返りたくない人たちを生き返らせるのは無理なんだ。魔物がいたら魔物に殺されて、魔物が出ない所じゃ、悪い人間や偉い人間に殺される。生きてるのが嫌なんだってさ」

「ザンテ、お前はこれからどうする気だ?」

「さっき言ったよね。盗賊たちを皆殺しにするって」

「その後は?」

「考えていない。金持の人間を襲って、金もらって生きてくかも」

「それではこの村を襲った盗賊たちと変わらないだろう?」

チャムがそう言った瞬間、ザンテの体から殺気が上がるのが周りのゲントの民たちにも分かった。

「私と一緒に来ないか?ザンテ」

チャムの言葉にゲントの民たちは絶望感が増した。この魔族の落とし子を神の使いと言われるゲントの民の中に入れるつもりか?

「世界を救えるかどうかわからん。しかし世界に光を与えることはできる。我々ゲントの民は傷ついた者たちに癒しを与える存在だ。力というのは本来、強者が弱者に与えるものであるのだ。お前には魔法の才能がある。その才能を正しき方向へ導きたいと思う私の心は間違っているか?」

「わかんねえよ。でもさ、色々わかりたいと思っている。・・・俺さ、本とか読みてえな。この世界は俺の知らねえことばっかりだ。なんで俺はこんな力持ってんだ?俺はこの力を持て余してしょうがねえ。あんたの言う通りだ。父さんと母さんがいなくなったんだ。もう俺を怒る人間はいなくなったから、それこそ、俺はムカついたらムカつかせた奴を殺すだけの人間になるんだろうなって思ってた」

ザンテの言葉をチャムは黙って聞いていた。

「そしてベンおじさんの苦しんでる顔、アンナの悲鳴、すげえ怖かった。でもさ、どうしろっていうんだよ?そりゃ、盗賊たちが一番悪いのはわかってるよ。おじさんは脅されただけだってわかってるよ。でも、俺の気持はどうすりゃいいんだよ?」

「その答えを私と一緒に探さないか?」

「・・・行くよ。腹も減ったし。飯は食わせてくれるんだろ?」

「食事はきちんと出してやる。本についても心配するな。人間や魔物の歴史から魔法や神々についての考察、人体の破壊から治療まで一通り揃っている。読み書きはできるんだろうな?」

「あー・・・」そう言ってザンテは頭を掻いた。

「まあ、まずはゲントの民としての仕事だ。この村で亡くなった者たちを丁重に葬ってやらんといかん。その前に両親や村の者たちに、お前の勤め先が決まったと報告しろ。盗賊たちの捜索についてはレイドック王国に私から話しておく」

「わかったよ。チャム・・・さん」

「こっ、これ!ザンテ。チャム様と言わぬか!」

あわててそう言う部下をチャムは笑ってとめた。

 

チャムは安堵した。自分を含むゲントの民が魔族の落とし子にこの場で皆殺しにされるという最悪の事態を避けることはできた。だが自分には大いなる仕事ができてしまった。この魔族の落とし子を正しく矯正せねばならぬのだ。多少なりともザンテに「他人の話を聞く」ということを教育した育ての親には感謝しなければならないだろう。あとは自分が引き継ぐ番だ。ザンテの「魔」を少しずつ削っていくのだ。

 

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